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1章 ローヌの決闘
10.初仕事②
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朝日が出る頃、オレは宿舎付の侍従に、ナイヤとロゼを呼び出してもらった。
同じ宿泊施設なので距離は近いのだが、女性棟はセキュリティーレベルが高いので、簡単にオレが行くことはできない。
侍従は最初「まだお休みになられていると思いますが…」とオレの指示に難色を示したが、一度呼びかけてみて返事がなかったら引き返すという条件で飲んでくれた。
すぐに2人はオレの部屋にやってきた。
ナイヤの顔は明るく、珍しくロゼの顔は曇っていた。
「すみません。朝は苦手で…。」
ロゼは昨日は座りもしなかったオレのベットに腰を掛けると、うとうとしはじめていた。
「すまない。私のせいだ。夜遅くまでいろいろ話を聞いてもらっていた」
オレはベットに置いたままになっていた鎧などを移動させ、ロゼが休めるようにした。侍従に掃除してもらったのは2日前だが、それ以来使ってないからシーツもきれいなはずだ。
「レッグホルスターに似ているのだな」
ナイヤがテーブルに置いてあった。装具を見て言った。
「そうですね。大腿部…ふともものところは似てますね。武器は装着できませんけどね。」
ナイヤも笑った。
「大丈夫だ。私は暗器は使わない。
それより、どのように使うのだ? その…」
「膝用の装具です」
オレはホルスターと呼ばれた膝装具の部品のひとつを手にとって、ナイヤの太ももに巻きつけた。ベルトできつめに締め付けなければならない。
「きついな」
「脚に痺れる感じがあったら締めすぎなので言ってください。」
ホルスターは固定具だった。その部品に、金属の金具が付けられたブーツのような部品取り付けるというより、履くような感じで装着する。
二本の骨のような棒状の金属が、太ももの両サイドからから踵まで伸びている。金属部品は膝の部分で曲がるようにできていた。
「動きにくいな。圧迫感も強い」
「はい。これは激しい運動をする。たとえば、模擬戦や基礎訓練のときに装着ください。
普段の生活のときは付けなくて良いです。」
「そうなのか? いつも付けていたほうが早く治るのではないのか?」
「いえ、ナイヤさんの場合は、平時は痛みが無いようなので必要ないと思います。
締め付けが強いので、付けないほうが良いでしょう。歩き難いですし」
「そうか」
ナイヤは嬉々とした表情で、自分の脚に付けられた装具を見回していた。
ふと思い出してベットのほうに目をやると、ロゼは横になって熟睡していた。
そういえば、オレも徹夜だったので眠い。
ロゼの寝顔につられたのか、あくびが出た。
「私も眠れなかった。
そういえばロゼが褒めていたぞ?」
「嘘でしょ。怒ってたの間違いではないですか?」
「いや、感心してた。『敬語もちゃんと使えるんだ』と、まるで不器用な弟心配するようにな」
ロゼにそこまで心配されるとは、我ながら情けない。
「敬語は、仕事用です。普段は使うつもりありません」
「そうか」
ナイヤは少し寂しそうな顔をしたが、すぐに顔を上げた。
「お前には迷惑を掛けることになったが、今日の模擬戦が楽しみでしかたない。」
「あー、模擬戦なんですけど。しばらく走るのは控えてください」
それまで笑顔だったナイヤの顔色が変わった。
「まさか、治療中は負けろというのか?」
「はい…」
といっても、この猛獣のようなお嬢さんは、いう事聞かないだろうなぁと思いつつ。
訓練場、講義室。
眠たい。
眠たい。
寝不足すぎて午前中のテンションはおかしかった。
講義内容がまったく入ってこない。でも、気持ちはすこぶるよい。
凛々しく講義に参加しているナイヤを診ているだけで、へらへらとニヤついてしまう。
あのきれいな脚に、オレの装具がくっついて、衝撃が加わると、ガチャーンと金属部分が支える。
そんでもって、ナイヤの膝を守る。
完璧だ!
「オレの第一号♪」
オレは一人浮かれていた。
だから、冷たい視線が注がれていることに気づいてなかった。
模擬戦の時間。
パートナーは、わかりきったことだが、ペアの模擬戦訓練が始まって以来ずっとナイヤだった。
「ナイヤ」と声を掛けると、
模擬戦では初めて「ルカか」と返事を交わしてくれた。
フレンドリーになれたことも、やっぱり嬉しい。
「装着済みだ」
ちらりと左足を見ると、装具が装着されてある。
しっかり固定されているか実際に触って確認したかったが、ここではひと目があってできない。我慢するしかなかった。
それにしても…
うーん。上出来だ。頑張ってくれオレの装具ちゃん。
苦心の傑作が実際に装着されているのを見ると、なんとも言えない幸福感に満たされる。
そんなオレの浮かれた気持ちに活を入れるかのように、模擬戦開始のドラがなった。
ナイヤは、オレの指示を守りダッシュしなかった。軽いステップで距離をとり、戦闘回避の動きをとってくれた。今までは使うことのなかった闘技場内の建造物を利用して、姿を消した。
「ナイヤは、指示通り動いてくれている。ここはオレが頑張らないと!」
オレは背中に背負っていた幅広の盾ラージシールドを構えた。
まもなく、オレの前に2人の戦士が現れた。どちらも兜を脱いでいた。
ナイヤのとりまき組の二人だった。ランキングは、大柄の戦士タイユほどではなかったが、高かったはずだ。
「きさま!」
「下級市民の分際で」
近づいてきた二人の目が血走っているのに気がついて、ようやくただ事ではないことに気がついた。
同じ宿泊施設なので距離は近いのだが、女性棟はセキュリティーレベルが高いので、簡単にオレが行くことはできない。
侍従は最初「まだお休みになられていると思いますが…」とオレの指示に難色を示したが、一度呼びかけてみて返事がなかったら引き返すという条件で飲んでくれた。
すぐに2人はオレの部屋にやってきた。
ナイヤの顔は明るく、珍しくロゼの顔は曇っていた。
「すみません。朝は苦手で…。」
ロゼは昨日は座りもしなかったオレのベットに腰を掛けると、うとうとしはじめていた。
「すまない。私のせいだ。夜遅くまでいろいろ話を聞いてもらっていた」
オレはベットに置いたままになっていた鎧などを移動させ、ロゼが休めるようにした。侍従に掃除してもらったのは2日前だが、それ以来使ってないからシーツもきれいなはずだ。
「レッグホルスターに似ているのだな」
ナイヤがテーブルに置いてあった。装具を見て言った。
「そうですね。大腿部…ふともものところは似てますね。武器は装着できませんけどね。」
ナイヤも笑った。
「大丈夫だ。私は暗器は使わない。
それより、どのように使うのだ? その…」
「膝用の装具です」
オレはホルスターと呼ばれた膝装具の部品のひとつを手にとって、ナイヤの太ももに巻きつけた。ベルトできつめに締め付けなければならない。
「きついな」
「脚に痺れる感じがあったら締めすぎなので言ってください。」
ホルスターは固定具だった。その部品に、金属の金具が付けられたブーツのような部品取り付けるというより、履くような感じで装着する。
二本の骨のような棒状の金属が、太ももの両サイドからから踵まで伸びている。金属部品は膝の部分で曲がるようにできていた。
「動きにくいな。圧迫感も強い」
「はい。これは激しい運動をする。たとえば、模擬戦や基礎訓練のときに装着ください。
普段の生活のときは付けなくて良いです。」
「そうなのか? いつも付けていたほうが早く治るのではないのか?」
「いえ、ナイヤさんの場合は、平時は痛みが無いようなので必要ないと思います。
締め付けが強いので、付けないほうが良いでしょう。歩き難いですし」
「そうか」
ナイヤは嬉々とした表情で、自分の脚に付けられた装具を見回していた。
ふと思い出してベットのほうに目をやると、ロゼは横になって熟睡していた。
そういえば、オレも徹夜だったので眠い。
ロゼの寝顔につられたのか、あくびが出た。
「私も眠れなかった。
そういえばロゼが褒めていたぞ?」
「嘘でしょ。怒ってたの間違いではないですか?」
「いや、感心してた。『敬語もちゃんと使えるんだ』と、まるで不器用な弟心配するようにな」
ロゼにそこまで心配されるとは、我ながら情けない。
「敬語は、仕事用です。普段は使うつもりありません」
「そうか」
ナイヤは少し寂しそうな顔をしたが、すぐに顔を上げた。
「お前には迷惑を掛けることになったが、今日の模擬戦が楽しみでしかたない。」
「あー、模擬戦なんですけど。しばらく走るのは控えてください」
それまで笑顔だったナイヤの顔色が変わった。
「まさか、治療中は負けろというのか?」
「はい…」
といっても、この猛獣のようなお嬢さんは、いう事聞かないだろうなぁと思いつつ。
訓練場、講義室。
眠たい。
眠たい。
寝不足すぎて午前中のテンションはおかしかった。
講義内容がまったく入ってこない。でも、気持ちはすこぶるよい。
凛々しく講義に参加しているナイヤを診ているだけで、へらへらとニヤついてしまう。
あのきれいな脚に、オレの装具がくっついて、衝撃が加わると、ガチャーンと金属部分が支える。
そんでもって、ナイヤの膝を守る。
完璧だ!
「オレの第一号♪」
オレは一人浮かれていた。
だから、冷たい視線が注がれていることに気づいてなかった。
模擬戦の時間。
パートナーは、わかりきったことだが、ペアの模擬戦訓練が始まって以来ずっとナイヤだった。
「ナイヤ」と声を掛けると、
模擬戦では初めて「ルカか」と返事を交わしてくれた。
フレンドリーになれたことも、やっぱり嬉しい。
「装着済みだ」
ちらりと左足を見ると、装具が装着されてある。
しっかり固定されているか実際に触って確認したかったが、ここではひと目があってできない。我慢するしかなかった。
それにしても…
うーん。上出来だ。頑張ってくれオレの装具ちゃん。
苦心の傑作が実際に装着されているのを見ると、なんとも言えない幸福感に満たされる。
そんなオレの浮かれた気持ちに活を入れるかのように、模擬戦開始のドラがなった。
ナイヤは、オレの指示を守りダッシュしなかった。軽いステップで距離をとり、戦闘回避の動きをとってくれた。今までは使うことのなかった闘技場内の建造物を利用して、姿を消した。
「ナイヤは、指示通り動いてくれている。ここはオレが頑張らないと!」
オレは背中に背負っていた幅広の盾ラージシールドを構えた。
まもなく、オレの前に2人の戦士が現れた。どちらも兜を脱いでいた。
ナイヤのとりまき組の二人だった。ランキングは、大柄の戦士タイユほどではなかったが、高かったはずだ。
「きさま!」
「下級市民の分際で」
近づいてきた二人の目が血走っているのに気がついて、ようやくただ事ではないことに気がついた。
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