悪役令嬢は傍観に徹したい!

白霧雪。

文字の大きさ
30 / 46
課外授業にトラブルは付き物です。

03

しおりを挟む
 
 きらきら。ふわふわ。
 顔のすぐ横を、美しい妖精たちが駆け抜けていく。
 妖精や精霊を視認できる人間は少ない。見える人間を見つけると、妖精たちはキラキラ光りを振りまいて喜ぶのだ。ヴィオラはそれがとても綺麗で可愛くて、一等好きだった。

「がぁう」
「……なぁに、アダム。私はちゃんとアダムのことも好きよ」

 使い魔のアダムは機嫌が悪そうに首に巻きついて顔をこすり付けてくる。

 マーキングかな? と思い調べてみれば、まさにその通りだった。匂いをこすり付けて、他所の使い魔や妖精が近づかないように牽制している、と図鑑に書かれていた。
 竜とは総じて嫉妬深い種族、という一文を見た瞬間に納得してしまった。
 スヴェンやユリアとの距離が近くなるたびに、かまってアピールをするんだもの。嫉妬深い性格なのかと思っていたが、そういう性分ならば仕方ない。

 アダムと鼻キッスをする後ろで、「僕は?」と聞いてくる大人気ない二人に溜め息を吐いた。
 喧嘩するほど仲がいい、と言うが意外と息ぴったりなんじゃなかろうか。

「――見つけたわ。精霊たちの住む湖よ」

 森の中心部、ひときわ大きな生命の樹が育つふもと、プールふたつ分ほどの湖が広がっていた。
 鮮やかな花が咲き、妖精や精霊が飛び跳ねている。
 真っ青な、空の青さを映したような美しい湖に息を飲んだ。

「うーん、僕には妖精の類は見えないからなぁ」
「……かろうじて、水妖精は確認できるけど、精霊も見える?」
「いる、と思いたいのだけれど……とにかく、近づいてみましょう」

 純度の高い青い湖。樹よりも高い位置を箒で飛んでいた三人はゆっくりと降下していく。

 箒の扱いには未だ慣れない。だって、飛行機とかならまだしも、風にあおられる身体を守る鉄だってなければ、不安定な棒に腰掛けないといけない。
 今でこそ、横座りで安定して飛べるようになったが、箒の授業を始めたばっかりの頃は散々だった。
 上手くバランスを取れずに逆さまになっては同輩たちに笑われたものだ。

「……凄い純度だ」
「それに、透き通った魔力を感じるね。肌がピリピリするよ」

 苦い表情で箒から手を離して腕をさするスヴェン。湖の上で箒から手を離すなんて絶対にできない芸当だ。
 スヴェンも、ユリアも箒乗りとして最優秀の成績を収めている。ちなみに、ヴィオラは優秀・・だ。
 魔法使いと言えば、箒に乗って空を飛ぶ姿をイメージするが、魔法使いであるなら箒に乗れなくとも空を飛べてもおかしくない、というのがヴィオラの持論である。もっか、箒無しでの飛行魔法を研究中だ。

「うげぇ……気持悪くなってきた」
「僕も、胸焼けしたみたいだよ」

 男の子がふたり揃って顔色を悪くする中、慎重に箒を操り水面ギリギリまで降りていく。

 ――透き通る青の向こう側に、尾びれを持った美しい精霊たちの姿が見えた。

「あ、」

 間抜けな声と共に、白魚の指先にローブを引かれ、ドボン、と青色の中に引きずり込まれてしまう。
 水越しに、「ヴィオレティーナ!」と叫ぶ声が聞こえた。
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...