【完結】脇役モブの悪役令息に転成したら、脇役モブの双子騎士にヤンデレられた。

白霧雪。

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本編

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 正解を、無事に導き出せた。
「可愛い息子が増えるわね」と喜ぶ夫人と、疲れ切って項垂れる閣下に、ほっと胸を撫で下ろした。

 分岐点はふたつ。ティーセットをミラー式でいただくか、デズモンド式でいただくか、たったそれだけだ。
 もしデズモンド式でいただいていたなら、俺の印象は地の底まで落ち、何を言っても聞いてもらえない状況に陥っていた。たったそれだけ、言葉ひとつ、仕草ひとつ違うだけで生死をわけることとなる。

「――『宝石』探しに躍起になっているみたいだぞ」
「兄上、それは、今話すことではないのでは?」
「むしろ今話さないでどうする?」

 むしろ探さないわけがない。『先見』なんて有能すぎる異能の使い手を手元に置いておきたいんだろう。あとは単純に血の裏切り者俺とノアの処刑をしたいだけか。

「黒の屋敷は全焼、デズモンド一族は当主や夫人たちを除いて行方不明だったのが、ここ数日、デズモンドを名乗る輩が王都で目撃されていると言う」
「……おそらくですが、イザベラ――長女の伝手を使って王都まで逃げ延びたのでしょう。きょうだいの中で一番顔が広いから」

 顔の広さと、社交性の高さゆえに原作ではヒロインたちを陥れる一手を担っている
 イーディスをさらう悪漢の手配をしたり、アリスをの飛び交う悪い大人たちの中に誘い込んだり。ただ顔が広いだけじゃなく、そっち方面にも顔が利くからイザベラは厄介なんだ。

「どうせ、俺に懸賞金でもかけられているのでしょう?」
「……すごいな、そこまでわかるのか」
「一応、血の繋がった姉ですから。どんな行動をするかくらい、予測がつきます」
「では、弟にも懸賞金がついていると言ったらどうする?」

 は――?
 絶句とはこのことを言うんだろう。ノアにも、懸賞金が?

「AliveOnlyで『宝石』に二百万ディル。『天使』に百万ディルだそうだ」
「…………あー、そう、ですか。……うん、アデル、カイン、デートはまた今度だな」
「皆殺しにすればいいのでは?」
「物騒やめろ」

 頭が痛い。
 どれだけ俺たちを取り戻したい、いや、連れ帰りたいのか?
 なんだかもうよくわからないが、懸賞金なんてかけられてはおちおち外も出歩けない。俺たちがミラー本邸に身を寄せているのもとっくにわかっているだろうし、早々に対処しなくてはならない事案が多すぎて嫌になる。

「いっそ、死んだふり?」
「それなら私たちも一緒に死ぬよ」
「いや、フリだから、あくまでもフリだって」
「フリでも、ノエルが死ぬなんて耐えられない……!」
「兄上、死んじゃうんですかっ」

 嗚呼また混沌が戻ってきた。

「……王都に向かえば、いいのではないでしょうか?」

 小さく、消えそうな声音で少女が呟いた。

「セラフィーナ? 何を言うの?」
「デズモンド閣下や、その夫人の遺体は神殿に届けられているでしょう。由緒正しい貴族を弔うには、穢れなどを禊ぎすすいで、親族が鐘を鳴らして見送らなきゃいけません、って神官様がおっしゃっていました。それで、弔うために集まったところを、まとめて、その、やっつけてしまえば……」

 自信なさげで、徐々に声音が小さくしぼんでいく。
 円卓についた全員の視線が自分に向いているのに気まずそうにして、言い終わる前に声は聞こえなくなってしまった。

「――なるほど、いい案だ。喪に服した貴族は、遺産を目当てにした野党から狙われやすくなる。神殿で弔いの儀を行う場合、そこへ向かうまでの道中から、終わってからの七日間、王都の騎士団を護衛に着けてもらえる」
「王都の騎士団となればそこらへんのゴロツキじゃあ確かに手に負えないな」
「けど、弔いの儀を行うために王都へ行って、それからどうする?」

 中心人物であるはずの俺たちを置いてけぼりにして閣下たちで話がどんどん進んでいってしまう。
 どうやら、王都へ行くのは決定事項らしい。

 控えていたフットマンにより、大聖教会に所属するセラフィーナ経由でデズモンド閣下たちの弔いの儀を行う旨をしたためた文が送られることになった。
 文に俺とノアの血判も捺すことで重要性が増し、すぐにでも王都の騎士団が派遣されてくる。

「――王家を立会人とした、血統裁判を行います」

 血統裁判。一対一の血で血を洗う、勝てば正義を掲げられる、絶対の裁判だ。

 言葉を失う俺たちを、静かな眼差しで見渡すアデルとカイン。

「アデル、カイン、お前たち、わかっているのか……?」

 ミラー閣下の声は、怒りで震えていた。
 勝てば正しくなくとも正義と認められる。負ければ正しくとも悪と定められる。血統裁判とは、そういうものだ。一族の代表をひとり選び、剣のみで戦う、剣闘。

 光を司り、聖なる一族の名を冠するミラー家に敗けがあってはならない。アデルとカインは、一族の栄華を巻き込んだ血統裁判を行うと言う。
 こめかみに青筋が浮かび、握り締めた拳が震えている。俺は何も言えず、ただ黙ってアデルとカインを見た。

「俺はいいと思う」
「セドリック!? お前まで、何を!」
「父上も、いい加減三大貴族だとか嫌気が差しているだろう? どんどん巨悪になりつつあるデズモンドの当主が死んだ今、叩くのに絶好のチャンスじゃないか」
「ぐ……しかしだな……」
「――まさか父上、デズモンドに恐れを成したのか?」

 ガツンッ、と円卓がひっくり返るんじゃないかと思うほど、強く拳が叩きつけられる。ガチャン、と茶器やらなにやらが一瞬浮いて、大きな音を立てた。
 心底驚いたと言うようなセドリックの言葉に、閣下が拳を叩きつけたんだ。

 負けず嫌いの熱血野郎、とデズモンド閣下がよく口の端で呟いていたをふと思い出す。

「いいだろう。そこまで言うのなら、陛下に血統裁判の申告状を書こうじゃないか」

 蒼い瞳に燃え盛る激情を見た。
 その目は、俺へ睦言を語り囁くアデルとカインの瞳とよく似ていて、心臓が大きくドキリと鳴った。

「お前たち、絶対に勝つんだぞ。我らミラーに敗けなどあってはならない」

 勝利への貪欲を秘めたミラー閣下の言葉に、セドリックはにんまりと笑みを深め、双子は自信満々に頷いてみせる。

「ミラー閣下の、仰せのままに」

 なんだ、心配して損した。なんだかんだで、ちゃんと仲が良いんじゃないか。

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