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If
もし、神様がホストだったら
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とんだお笑い草だ。結局、彼にとって自分はその程度の存在でしかないのだと、自覚せざるを得なかった。
赤いパンプスの女を傍らに置いて、往生際悪く引き留めようとする夫であった男の手を振り払い、職場へと戻るべく駆け出した。
「この泥棒猫!」くらいは言っても許されたかもしれない。引き返して桃色に染まったその頬を引っぱたいて、それで、それで……どうしろって言うんだ。
口の端を強く噛み締めすぎたのだろう。かすかに血が滲んでいた。
「っ、きゃあっ」
前後不覚、前方不注意の状態で駆けていた彼女は盛大に人にぶつかってしまう。強く握りしめていたカバンがぽろりと地面に転がった。
慣れない靴を履いていたせいもあるだろう。バランスを崩しそうになったのを支えたのはぶつかってしまった男だ。男、とわかったのは大きい体格にスラックスと革靴が見えたからだ。
巫女という神職に就き、世俗に疎い彼女はパンツスーツは男性が着るもの、という意識しかなかった。もし彼女の思考が読み取れて、パンツスーツを着る女性もいる、と指摘する者がいたならたいそう彼女は驚いただろう。二重の意味で。
「ぁ、ご、ごめんなさい、少し急いでて、ちゃんと前を見ていなかったみたい」
すぐにハッとして、男から離れようとするが、支えてくれる手は強く彼女のことを掴んだままだ。
訝しげにその整った顔を顰めて「あの」と声をかければ、慌てたように声をかけられる。
「お姉さん、すごい綺麗だね。ねぇ、もしよかったらご飯食べに行かない? おすすめの店があるんだけど」
「え、え? いえ、あの、私、急いでて」
「大丈夫だって。ご飯食べるだけだからさ。どうしてもダメ? だったら連絡先教えてよ」
「あの、えっと、」
「わ、目、青いんだ。外国の血とか混ざってるんの?」
終いには肩を抱かれ、顔を近づけてくる。どうすればいいかなんてわからなかった。夜は外を出歩かないし、こんな時間にここら辺――歓楽街を通るのも初めてだ。ナンパ、と思ってもいいのだろうか。
容姿に自信はあるが、こうして声をかけられるなんて初めてだ。どちらかと言うと遠目に見られる、近づきがたい、と同僚に言われてしまっている。どうあしらえばいいのかなんて、わかるはずもなかった。
カバンは、と男が先に拾ってしまった。どうしよう。荷物は男の手の中だ。ひったくって逃げる、思い浮かぶのはそれだけだが自分にできるわけがない。どうしよう。
おろおろ、と視線をさまよわせて男から距離を取ろうとするがグイグイと近づいてくる男の力に負けてしまう。周りを見渡しても、早足に歩いて行くサラリーマンか、派手に着飾った女性やら、道行く人に声をかける男性ばかり。
夜の街、なんて初めてだ。初めて見る景色ばかり。
改めて、自分の格好がとても浮いていることに気が付いた。帯がいらない二部式の着物に、簪でひとつにまとめた髪、からんころんと鳴る赤い鼻緒の下駄。どう見ても夜遊びする恰好じゃあない。
助けてくれそうな人なんて、どこにも――
「ぁ、」
「ねぇ、お姉さん聞いてる?」
ひとり、目が合った。
淡い、紫色の不思議な瞳だ。
「おねーさんって、」
「俺の女に何か用か?」
気付いたとき、淡い紫の男は目の前にいた。
「な、なんだよ、アンタ、」
「ほら、こちらへおいで」
「何勝手なこと言って! …って、お姉さん!?」
逃げるなら今しかない、カバンをひったくり、紫の男の元へと駆け寄った。右へ流された長い前髪が顔の半分を隠してなお損なわない美しい男は、うっそりと笑みを深めて駆け寄る彼女を腕の中に抱き留めた。
「大事ないか?」
「え、えぇ……その、ありがとうございます」
「良い良い。お前が無事なら俺はいいさ。……それで? そこのお前はいつまでいるつもりだ?」
笑みを浮かべていたはずの人いは冷たく暗い光を灯し、未だ彼女に視線を向ける害虫を睥睨する。
「ッ……くそっ」
またね、お姉さん、と手を振って夜の街並みへと消えて切った後ろ姿に溜め息を吐いた。
「大丈夫か?」
「……ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません。助かりました」
「いやいや、困っているようだったのでな。ところで、お嬢さん、これから時間はあるか?」
お、お嬢さん?
「おや、急ぎだったか……これからどこへ?」
「職場へ、戻る途中で」
「なんと! こんな時間から仕事とは」
しょぼん、と眉根を下げた男性になんだか耳の垂れた大型犬が重なって見えてしまった。犬か猫かと問われれば間髪入れずに猫派と答えるが、犬も嫌いじゃない。なんとなく罪悪感が沸いてきて、「少しだけなら」とつい口から出てしまった。
「本当か!」
キラキラキラ。イケメンパウダーが眩しい。なんだかいい香りもする。
「……日付が変わる前には、戻りたいので」
「良い良い!」
時間は無駄にはできないな、とにっこり笑みを深めた男性は彼女の腰に手を添えて歩き出した。
――流されてしまったが、名前も知らない、出会ったばかりの男性に着いてきてしまってもよかったのだろうか、と表情を曇らせる。それになんだか、絡まれていたときよりも注目を浴びているような、正しくは隣の麗しい男に視線が向かっている気がするのだ。もしかして、とんでもない男に着いてきてしまったのではないかと、不安がよぎる。
「あの、どこへ向かっているのでしょうか……」
「俺の働いてる店だ。夕餉は食べたか?」
「いえ、まだ、ですけど……」
「そうかそうか。ならちょうどいい。うちは料理もうまいと評判なんだ。食べていくといい」
「でも、お金とか」
きょとん、と目を丸くして男性は首を傾げた。
「金のことなら気にすることはない。無理に誘っているのだから俺が出す。酒も飲み放題だぞ」
「でも、見ず知らずの方にそんな」
ふむ、とひとつ頷いた男性は満面の笑みを携えて口を開いた。
「浮橋夢頼と言う」
「……はぁ」
「お前の名前は?」
「壹岐宮依弦と申します」
うむ、依弦だな。これで俺たちは見ず知らずではないだろ?
え、そうなの?
いつる、いつる、と何が楽しいのか花を飛ばしながら話しかけてくる男性、浮橋は悪い人ではないのだろうが、なかなかこうして異性と連れ立って歩くなんてできない体験だ。
もしや、これは夫に対する裏切りになるのでは――とそこまで考えて頭を振った。先に裏切ったのはあっちなんだ。気にする必要はない。床とともにしたわけでもなし、ご飯を食べるだけだ。気分転換と思って、とそう言い聞かせなければ気持ちが落ち着かなかった。
「ほら、着いたぞ」
立ち止まり、かけられた声に顔を上げる。キラキラと電飾が光り、存在を主張するそれ――ホストクラブ『楼閣塔』
「え」
頬を引き攣らせた私は悪くないはずだ。
ナンパから助けてもらったと思ったら、連れて行かれた先がホストクラブだった。
赤いパンプスの女を傍らに置いて、往生際悪く引き留めようとする夫であった男の手を振り払い、職場へと戻るべく駆け出した。
「この泥棒猫!」くらいは言っても許されたかもしれない。引き返して桃色に染まったその頬を引っぱたいて、それで、それで……どうしろって言うんだ。
口の端を強く噛み締めすぎたのだろう。かすかに血が滲んでいた。
「っ、きゃあっ」
前後不覚、前方不注意の状態で駆けていた彼女は盛大に人にぶつかってしまう。強く握りしめていたカバンがぽろりと地面に転がった。
慣れない靴を履いていたせいもあるだろう。バランスを崩しそうになったのを支えたのはぶつかってしまった男だ。男、とわかったのは大きい体格にスラックスと革靴が見えたからだ。
巫女という神職に就き、世俗に疎い彼女はパンツスーツは男性が着るもの、という意識しかなかった。もし彼女の思考が読み取れて、パンツスーツを着る女性もいる、と指摘する者がいたならたいそう彼女は驚いただろう。二重の意味で。
「ぁ、ご、ごめんなさい、少し急いでて、ちゃんと前を見ていなかったみたい」
すぐにハッとして、男から離れようとするが、支えてくれる手は強く彼女のことを掴んだままだ。
訝しげにその整った顔を顰めて「あの」と声をかければ、慌てたように声をかけられる。
「お姉さん、すごい綺麗だね。ねぇ、もしよかったらご飯食べに行かない? おすすめの店があるんだけど」
「え、え? いえ、あの、私、急いでて」
「大丈夫だって。ご飯食べるだけだからさ。どうしてもダメ? だったら連絡先教えてよ」
「あの、えっと、」
「わ、目、青いんだ。外国の血とか混ざってるんの?」
終いには肩を抱かれ、顔を近づけてくる。どうすればいいかなんてわからなかった。夜は外を出歩かないし、こんな時間にここら辺――歓楽街を通るのも初めてだ。ナンパ、と思ってもいいのだろうか。
容姿に自信はあるが、こうして声をかけられるなんて初めてだ。どちらかと言うと遠目に見られる、近づきがたい、と同僚に言われてしまっている。どうあしらえばいいのかなんて、わかるはずもなかった。
カバンは、と男が先に拾ってしまった。どうしよう。荷物は男の手の中だ。ひったくって逃げる、思い浮かぶのはそれだけだが自分にできるわけがない。どうしよう。
おろおろ、と視線をさまよわせて男から距離を取ろうとするがグイグイと近づいてくる男の力に負けてしまう。周りを見渡しても、早足に歩いて行くサラリーマンか、派手に着飾った女性やら、道行く人に声をかける男性ばかり。
夜の街、なんて初めてだ。初めて見る景色ばかり。
改めて、自分の格好がとても浮いていることに気が付いた。帯がいらない二部式の着物に、簪でひとつにまとめた髪、からんころんと鳴る赤い鼻緒の下駄。どう見ても夜遊びする恰好じゃあない。
助けてくれそうな人なんて、どこにも――
「ぁ、」
「ねぇ、お姉さん聞いてる?」
ひとり、目が合った。
淡い、紫色の不思議な瞳だ。
「おねーさんって、」
「俺の女に何か用か?」
気付いたとき、淡い紫の男は目の前にいた。
「な、なんだよ、アンタ、」
「ほら、こちらへおいで」
「何勝手なこと言って! …って、お姉さん!?」
逃げるなら今しかない、カバンをひったくり、紫の男の元へと駆け寄った。右へ流された長い前髪が顔の半分を隠してなお損なわない美しい男は、うっそりと笑みを深めて駆け寄る彼女を腕の中に抱き留めた。
「大事ないか?」
「え、えぇ……その、ありがとうございます」
「良い良い。お前が無事なら俺はいいさ。……それで? そこのお前はいつまでいるつもりだ?」
笑みを浮かべていたはずの人いは冷たく暗い光を灯し、未だ彼女に視線を向ける害虫を睥睨する。
「ッ……くそっ」
またね、お姉さん、と手を振って夜の街並みへと消えて切った後ろ姿に溜め息を吐いた。
「大丈夫か?」
「……ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません。助かりました」
「いやいや、困っているようだったのでな。ところで、お嬢さん、これから時間はあるか?」
お、お嬢さん?
「おや、急ぎだったか……これからどこへ?」
「職場へ、戻る途中で」
「なんと! こんな時間から仕事とは」
しょぼん、と眉根を下げた男性になんだか耳の垂れた大型犬が重なって見えてしまった。犬か猫かと問われれば間髪入れずに猫派と答えるが、犬も嫌いじゃない。なんとなく罪悪感が沸いてきて、「少しだけなら」とつい口から出てしまった。
「本当か!」
キラキラキラ。イケメンパウダーが眩しい。なんだかいい香りもする。
「……日付が変わる前には、戻りたいので」
「良い良い!」
時間は無駄にはできないな、とにっこり笑みを深めた男性は彼女の腰に手を添えて歩き出した。
――流されてしまったが、名前も知らない、出会ったばかりの男性に着いてきてしまってもよかったのだろうか、と表情を曇らせる。それになんだか、絡まれていたときよりも注目を浴びているような、正しくは隣の麗しい男に視線が向かっている気がするのだ。もしかして、とんでもない男に着いてきてしまったのではないかと、不安がよぎる。
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「俺の働いてる店だ。夕餉は食べたか?」
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きょとん、と目を丸くして男性は首を傾げた。
「金のことなら気にすることはない。無理に誘っているのだから俺が出す。酒も飲み放題だぞ」
「でも、見ず知らずの方にそんな」
ふむ、とひとつ頷いた男性は満面の笑みを携えて口を開いた。
「浮橋夢頼と言う」
「……はぁ」
「お前の名前は?」
「壹岐宮依弦と申します」
うむ、依弦だな。これで俺たちは見ず知らずではないだろ?
え、そうなの?
いつる、いつる、と何が楽しいのか花を飛ばしながら話しかけてくる男性、浮橋は悪い人ではないのだろうが、なかなかこうして異性と連れ立って歩くなんてできない体験だ。
もしや、これは夫に対する裏切りになるのでは――とそこまで考えて頭を振った。先に裏切ったのはあっちなんだ。気にする必要はない。床とともにしたわけでもなし、ご飯を食べるだけだ。気分転換と思って、とそう言い聞かせなければ気持ちが落ち着かなかった。
「ほら、着いたぞ」
立ち止まり、かけられた声に顔を上げる。キラキラと電飾が光り、存在を主張するそれ――ホストクラブ『楼閣塔』
「え」
頬を引き攣らせた私は悪くないはずだ。
ナンパから助けてもらったと思ったら、連れて行かれた先がホストクラブだった。
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