天使は人間に恋して堕ちる

白霧雪。

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 真っ白な天使がおりました。
 純白の髪、白銀の瞳、白雪の両翼。
 とても美しい容姿の天使は神様のお気に入りでした。

 役割を与えられる他の天使とは違い、神様にめでられることが役割の純白の天使は、雲の切れ間からいつも地上を眺めておりました。

 地上では人間がせっせと動いて働いております。

 今日も雲の切れ間から地上を見ていると、ふと目に付く青年がおりました。

 艶やかな黒髪、蒼い瞳。天使には負けるとも、勝気で美しい青年でした。

 地上に降りることを禁じられている天使は、展開からこっそり青年を見つめ続けました。



 いつしか天使は、青年に恋をしておりました。

 ほんのちょっぴりの幸せと、天使の加護を青年へと与えます。

 怒った神様は天使の翼を捥いで、地上へと落としてしまいます。
 純白だった髪はくすんだ灰色に、白銀だった瞳は鈍色に変わってしまいました。

 翼を捥がれた天使は、二度と天上へ行くことはできません。

 瞳が溶けてしまいそうなくらい泣いている天使を見つけたのは、あの青年でした。

 行く当てがないのだと、捨てられてしまったのだと泣く天使に、青年はとても優しくしてくれました。

 青年は一国の王子だったのです。
 王子様は天使に衣食住を与え、婚約者という立場まで与えてくれました。

 見たことも食べたことも無い食事に、華やかなドレス。雲のように柔らかな寝台。
 天使は、天にも昇る嬉しさに身を震わせます。
 まぁ、二度と天には戻れないのですが。

 しかしある時、王子様は艶やかな女性を連れてきます。

「彼女が僕の妻になる」

 天使は絶望して部屋に閉じこもってしまいます。

 それからというもの、王子様は連れて来た女性にかかりきりでした。
 お茶会に誘うのも、夜を共にするのも、朝一番に顔を合わせるのも、天使ではなくなってしまったのです。



 ふと、天使は目を覚まします。

 わたしは天使なのだから、あの方を幸せにしてさしあげないと。

 天使は、王子様の傍らで微笑む女性にナイフを突き刺します。
 真っ赤なドレスに黒いシミが広がっていくのを見つめ、呆然としながら天使は兵に捕らえられてしまいました。

 女性は三日三晩苦しんで、息を引き取りました。

 天使は、五日後に処刑されます。

 処刑台にて、王子の姿を認めた天使は笑みを深めました。

「これで、あなたはしあわせよ」

 王子様に、真っ赤な地が降り注ぎます。

 以降、妻を娶ることの無かった王は、歴代随一の栄華に栄えた国を誇りに思いながら息を引き取りました。

 
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