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1章 Reincarnation
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しおりを挟むもう、荷馬車が走り始めて30分は経っただろうか。それなのに、荷馬車は止まる気配が無かった。
一体何時まで走り続けるのだろう…いよいよ不安になってきたころ
「おい!どーなってるんだ!?こいつらたかが孤児だろ!?なんで追いかけてくるんだ!?」
「しらねぇーよ!俺だって知りたいわ!」
なにやら前の操縦席からそんなやり取りが聞こえてきた。
「なんなんだよ!全く!なんで神父が馬に乗って追いかけてくんだよ!?おかしいだろ!?」
神父……と聞いてあの男の顔が思い浮かんだ
が、
(いや、そんなことがあるわけない…)
と直ぐに頭を降った。希望をもっちゃダメだ。また裏切られるぞ…と。
(でも、ほんとにあの神父が来てくれたのなら…)
一筋の光が見えたような気がした。
結論から言おう。俺たちは神父と共にやってきた駐在所の騎士たちに救われた。
悪党ども全員がお縄に着いた瞬間、誘拐された孤児は、強い力でぎゅっと抱きしめられた。言わずもがな神父様にである。
「あぁ…、本当に良かった。あなた達が無事で……良かった。」
その言葉を聞いた瞬間、ぶわっと何かが腹の底から湧き上がってきた。それは、恐怖とも怒りとも、感謝とも安堵とも言えるような不思議な感情だった。そして、その感情はせき止めることを知らずに涙となって溢れ出した。
壊れてしまった水道の蛇口のように1度溢れてしまったものを止めれるわけもなく。俺たちは、神父の腕の中で泣き疲れて眠ってしまうまで泣き続けてしまったのだった。
あの誘拐騒動から俺は、神父様に少しずつ歩み寄ってみることにした。
きっとこの人なら大丈夫。
俺に話しかけられて嬉しそうに微笑む優しい人なら俺は信じてもいいと思えるようになった。
あの誘拐事件から5年がたち、俺はやっと俺の任務の対象を発見した。
「ほら、皆今日からここで皆の家族になる新しい子達だよ!シェリーとマークとアシュバトだよ!皆なかよくしてあげてね!」
初顔合わせの
任務対象は無表情でとおくをみつめていた。
俺はすぐに任務を遂行すべく、に話しかけた。
が、
「おれ、ルークって言うんだ。君はアシュバトだよな?よろしく。」
「......」
この無反応である。
(んー人と関わるのが怖いのか...?...いや、この無反応さは、人に興味がないのかもな...)
そんなこんなでこれが俺とアシュバトのファーストコンタクトである。
それから、俺はアシュバトに話しかけまくった。
「おはよう、アシュバト。今日もいい天気だな。」
「アシュバト、この絵本読んでやるよ。」
「アシュバト今日はなにか楽しいことあった
か?」
まあ、しつこすぎても良くないだろうから神父のジャン様を見習って一日、一言ぐらいだけど。
だって俺だって人と話すのが苦手だし、会話を続かせるなんて高等テク俺には出来ない。
所詮俺は、人間不信のコミュ障だから。頑張って取り繕ってもこれが限界である。
(なんで天使様は、俺なんかに頼み事したんだろうな…)
ふと、そんなことを考えながら、今日もアシュバトに話しかけようとした時、
「なんで…?」
「?」
初めて、アシュバトがその目におれを捕らえた。紫紺の瞳は、暗く淀んで見えて、透き通っていたら本当に宝石のように輝くだろうなっと見つめ返すと。
「なんで、おれなんかにかまうの?」
困った。これは正直にいっていいものだろうか…?天使から"お前の事を導くように頼まれた"なんて言ってしまっても良いのだろうか。
ふと、下げた視線をもう一度同じ位置に戻すと、先ほどと同じような淀んだ紫紺の瞳。だが、よく見るとその瞳が少し不安げに揺れていることに気付いた。
「…弟が」
「?」
「弟分が欲しかったから」
ただ、それだけと言い切った。そう、俺は言えなかった。こんな不安そうな瞳を揺らしている幼気な少年に対して、頼まれたから世話を焼いているなんて、
(言ったら余計に不安にさせるだろうからな…)
だが、この答えを目の前の少年はお気に召したようで、
この日から、アシュバトは俺の後ろをカルガモの子供のようについて回るようになったのだった。
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