童話、児童文学集

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森のホットケーキ屋さん

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 あいちゃんはムカついたとき、森のホットケーキ屋さんへ行きます。 
 ホットケーキ屋さんはあいちゃんの目の前でホットケーキを作りながらあいちゃんの話をよく聞き、熱々のホットケーキをお皿に乗せて、
「そんな嫌な奴はホットケーキ」
 そんなことを言って、お皿をあいちゃんに渡してくれます。

 あいちゃんはクスッと笑って、ホットケーキを食べます。
 すると、何だか『落ち着く』のでした。


 ある日、あいちゃんはまたムカつくことがあって、森のホットケーキ屋さんへ行きました。
 するとホットケーキ屋さんは落ち込んだ様子です。
「どうしたの?」
 尋ねると、奥さんとケンカしてしまい、奥さんは子どもを連れて実家に帰ってしまったそうです。

 いつもホットケーキ屋さんに慰めてもらっているあいちゃんは、何とかホットケーキ屋さんを励ましたいと思いました。
 代わりにホットケーキを焼こうか……?
 でも
『奥さんのことなんてホットケーキ』
 なんて言って、渡すわけにはいきません……
 
 あいちゃんは考えました。

 そして、閃きました。

 あいちゃんはホットケーキ屋さんがいつも使っているホットプレートに、生地を薄く流しました。
 そして、破れないように気を付けてお皿に移すと、生クリームとバナナとチョコレートを入れて包み、ホットケーキ屋さんに、
「元気を出してクレープ」
 と手渡しました。

 ホットケーキ屋さんは笑顔になりました。


 ――

 その後、ホットケーキ屋さんは『クレープ』も作り始めました。
 もちろん奥さんと仲直りして、家族皆で暮らしています。

 あいちゃんはやはり自分で作るよりホットケーキ屋さんのプロの『クレープ』の方が美味しいので、ときどき『クレープ』も頼みます。

 今日のホットケーキ屋さんは
「笑顔を見せてクレープ」
 とあいちゃんに言いました。

 クレープは『言葉を作りやすい』と二人はときどき笑い合います……




 〈終〉
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