14 / 87
ネトゲ日和
11話 三者三様
しおりを挟む「私がいるのは白を基調とした町ですね。ごつごつ鎧のガードNPCが巡回してるみたいです。あとチャットが勢いよく挨拶で流れていきます」
「俺がいるのは黒とか赤が多い町だな。肩にトゲトゲのパッドをつけたNPCが巡回してる。プレイヤーは剥き身の武器を振り回して遊んでる野蛮人ばかりだ」
「ボクのとこは大きな教会がある。ジャンプして遊んでたらみんな集まってきて……。今みんなでジャンプしてる。」
それぞれ初期地点が違うみたいだな。
ずいぶんと特徴的な分かれ方をしてるみたいだが……。
「ちなみに性向は三種類からどれを選んだ? 俺はほら、暗黒卿だから分かってると思うが……」
「もちろん『善』です! あ、でも暗黒卿さまには絶対服従の訳ありの善ですよ。深いですね」
「こまったから中立にした。」
「そうか……。きれいに分かれたな……」
っかー! ただのフレーバーだと思ってたが甘かった。初期地点まで変えてくるなんて。
というか敵対してるまであるぞこれは。
「とりあえず三つの拠点からの中点を合流場所とする」
「その中点へはどうやって行くのでしょう?」
「地図がないからなぁ……各自情報収集すること。恐らく三つ巴の対人戦のある世界だ。つまり、最前線が三国の中点になっている可能性が大きい」
こういうゲームはバランスを慎重視するからな。
戦線も距離的に均等な場所に無いと、国家間の絶妙なバランスがくずれてしまう。
「あっ! 今、チャットでちょうど小森さんと同じ考えの人が出てきました。前線を探すチームを作っているみたいです」
なるほど。プレイヤーは俺たちだけではないからな。
という事はこっちの国も――
武器を持ったプレイヤーたちが走り回っているが、一つの流れができている事に気付いた。
どうやら皆、同じ方角を目指しているらしい。
チャットログは『ヒャッハー』とか『ヌッコロース』とかおよそ知能を感じ取れない言葉たちで埋め尽くされている。……意思疎通は難しそう。
「……俺もそれっぽい流れ見つけた。あかり君もそのチームと行動してみるといい。ヌーは?」
慣れない手付きでキーボードを叩いている。
「ぬぅ~。一緒についていくから先導してだって……。」
「ヌーがリーダーか、面白いな」
初心者っぽい動きに魅了されてるのかもしれない。ネトゲあるあるだ。それに中立というお国がら、フレンドリーな奴らが集まったんだろう。……主体性が無いとも言えるが。
それから、性向『悪』国の軍団(軍というか山賊のノリだが)は足を止めることもなく前へ前へと進み続けた。
平地を超えて山に入り、明らかにレベルが足りなさそうなモンスターにも率先して殴りかかり、死屍累々を築きながらも後続は絶えず、ひたすら進軍する。
俺は前の方にいると危険なので真ん中くらいを維持しながら進んだ。
落石やドラゴンのブレスで前衛が消し飛び、あっという間に最前列になっていたりするので気を抜けない。
そして、戦場におあつらえ向きな平原に降りた俺たちは進行方向に荘厳な青白い旗を見つけた。
彼らは横一列にぴったりと隊列をつくり、各々の武器を突き立てて、ずっしりと構えている。
「あー、見つけたかも……」
「何やらガラの悪い方たちが一直線に向かってきます!」
活気付いた……というよりいきり立った野郎どもが俺を追い抜いて次から次へと『善』の軍団に突撃していく。作戦も陣形もあったものではない。
「くそっ、巻き込まれる前に合流しないと……」
「私、こっそりパーティから抜けました! 裏切り者ですね……ふふふ」
周囲を見渡すと少し離れたところでぴょんぴょんと飛び跳ねている集団を発見した。
「ヌーの群れだ!」
「それ違う意味になる……。」
「ヌーさんそのまま『中立』の皆さんとぴょんぴょんしていてください! そちらで落ち合いましょう! 閣下もよろしいですね!?」
「うむ! そうと決まればダッシュだー!」
流れ矢にビビりながらも俺は駆けていく。
すると、向こう側……『善』の陣営にも同じ方向へ走っている人影が見えた。あかり君だ。
白い鎧と大きな盾の重厚な装備をしている。やはり前衛戦士タイプなのだろう。
「おお! 閣下は魔法使いですねっ」
「うむ。回復は任せてくれたまえ!」
あかり君がぶんぶんと手を振っている。
この緊迫した状況でモーション操作とは中々の手練れだ。
俺も負けていられない。
走りながらキャラクターシートを開き、適当なモーションを選んでスキルスロットに登録する。この間わずか3秒。
そして発動。
暗黒卿は雄叫びを上げた。
『うおおおおおおオォオォおお!!』と周囲の剣戟の音を吹き飛ばすくらいの声量だ。
「あっやべ」
「ちょっ、小森さん!?」
戦線からやや外れていたとはいえ、暗黒卿のウォークライは『悪』の野郎ども全員に行き届いたらしい。
奴ら戦いの最中だというのにわざわざウォークライをセットして発動し始めた。
『『『ヴァおおおおおおぁぁおあ!!』』』
呼応し伝播していくウォークライ。同時にチャットログは高速で流れ始める。内容はやっぱり何の意味もない『ヌッコロース』なのだが、ウォークライとの相乗効果により、戦場は混沌を極めている。
そして、最初に叫んでしまった者の運命と言わんばかりに、戦火の渦は俺を中心として再集結されようとしていた。
「ぬうー。怖いんだけど。戦場どんどんこっちに移動してきてる。」
「ヌーもぴょんぴょんはもういいから反対側へ走ってくれ! 轢き殺されるぞ!」
「あはははは! なんでっ……こんなことにぃっっ……ひぃひぃ」
あかり君はツボに入ってしまったらしく大声で笑っている。それでもしっかりと操作はしているのがまたエライ。
「ヌー聞いてたか? 早く逃げないとまじで死ぬぞ! 死んだらまた街からやり直しになる!」
「もう逃げてる。」
「なに? じゃあ、あのぴょんぴょんしてる奴らは……」
答えはすぐに分かった。
『中立』のやつらは武器を構えて迎撃の意思表示をしていたからだ。
「クッソ! どこがフレンドリーなんだ……あかり君、突破するぞ」
覚悟を決めて杖を構える。
すると、どういうわけか彼らは道を譲るように道を空けた。
まるで海を真っ二つに割ったモーセにでもなった気分だった。
罠かと思い立ち止まっていると、彼らは次々にチャットで意思を伝達してきた。
『我々はうさぎちゃん親衛隊!』
『暗黒卿と日輪の花嫁あかりはうさぎちゃんのご友人!』
『ここは我々に任せて行ってください!』
『うさぎちゃんのツイ垢教えてください!』
一瞬誰のことかと思ったが、よく考えなくともヌーのことを言っていると分かった。
「サンキューうさぎちゃん! 助かったぜ」
「ぬぅ……。ぬこなのに。」
「あはは、ぴょんぴょんしてたから気に入られてしまったんですね」
駆け抜けざまにウォークライで礼をすると、向こうもノータイムで返礼を送ってくれた。
それから俺たちがヌーと合流するのと、背後で三国大戦争が始まるのは、ほぼ同じタイミングだった。
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる