ひきこもり生活を満喫していたら異世界JKと異世界ネコが押しかけてきた件について

汗茄子w8

文字の大きさ
25 / 87
台風一夜

22話 学校の怪談

しおりを挟む
 
「はくさいっ!」
「しいたけー」
「にーんじん。」

 じゃんけんで語り手の順番が決まる。
 一人目、あかり。
 二人目、小森。
 三人目、ヌー。
 という内訳になった。

 机の上のものはローソク以外すべて片付けて、三人は怖い話に集中する他ない状況を作り上げた。

「わっ、わたしから、ですね……」
「ヌーがトイレに行けなくなるくらいのを頼むぜ」
「ぬっはは。お手柔らかにたのむよ。」

 ローソクの火が揺らめく。
 外界と隔絶された小森の家は、今が台風のピークだということを忘れてしまうくらい静かだった。

 あかりは深く呼吸をすると、顔色をがらりと変えて、とつとつと語り始めた。

「今からお話しすることは、わたしの実体験なのです……」

 他の二人がごくりと喉をならす。
 これはスイッチが入ったなと、誰が見てもひと目で分かる変化だった。

「わたしがまだ漫画家を目指していたころ──」

 ☆

 その日は遅くまで部室に残って、お絵描きをしていました。
 ゾーン状態とでもいいますか、とにかくものすごい集中できる日で、時間の経過が分からなくなるくらいでした。
 ふと、われに返って時計を見ると、時刻は午後の21時。
 こんなに遅くまで残っていたのは初めてのことでした。なにせ遅くまでいたら、普通は先生が来て「はやく帰りなさーい!」とせっついてくるからです。
 でも、なぜかこの日は誰も部室に顔を出しませんでした。

 不思議だなぁ。もう学校にはだれもいないのかなぁ。と思うと、とても寂しく感じました。

 もう帰ろうと思い、ノートをしまっていると窓の方からコツン、コツン、と何かがぶつかるような音が聞こえてきます……。

 気味が悪いし無視して帰ろうかとも思ったのですが、もし先生だったら悪いなとも思い、窓に手をかけました。

 そして、窓を開いてわたしは気付いたのです。
 あ、ここは2階だから先生がドアを叩くなんて不可能だ……と。

 わたしは急に恐ろしくなり、窓をすぐに閉めようとしました! しかし!

 ばちーん!

 ──こぶし大のカナブンがわたしの額にぶつかってきたのですっ!!!

 ☆

「とても痛かったのです……」
「……おいィ?」
「ぬふっ。」

 椅子からずり落ちる小森。

「まさか今のがオチなのか?」
「えっ、ダメですかっ!?」
「ダメだろう……」
「あっあははっ……まだ続きがあります、ありますとも!」

 ☆

 ……でっかいカナブンを追いやることに成功した頃にはもう22時をまわっていました。
 さすがにこんな時間までいたら不良だ! と思い、わたしは急いで教室をあとにします。

 すでに廊下は消灯されて、真っ暗になっていました。ところどころ点いている非常灯の緑色の明かりが逆に怖かったのをよく覚えています……。

 スマホの電灯機能に頼りながら、暗い廊下をゆっくりと歩いていきます。

 そして、何事もなく1階までたどり着き、出口が見えてくると、わたしの心に余裕が生まれました。

 ――なんだ、夜の校舎も大したことなかったですね!

 心の余裕と、少し廊下が冷えていたこともあって、わたしは……その、尿意を催していました。人間なので仕方ないですね。生理現象です。
 すぐ近くのトイレはスイッチを押せば照明が点くので、ほっと安心しました。

 わたしは一番奥の個室へと入ります。

 そして、便座に腰を下ろして集中していると、妙な音が聞こえてきました。

 コン……コン……。

 扉を叩くような音です……。
 最初は控えめだったその音は、

 コンッ、コンッ、コンッ。

 少しずつ大きくなっていきます。
 しかも、だんだんこちらへ近づいてくるのです!

 わたしは慌てて下着をはいて立ち上がりました。

 コンコンコンコンコンコン!

 激しい音はもう目の前の扉に到達しています。
 よせばいいのに、パニック状態に陥っていたわたしは、その扉を勢いよく開けてしまいます!

 ガチャッ…………。

 あれ? 誰もいない?

 そう思った次の瞬間……っ


 べちーん!

 こぶし大のカナブンがわたしのおでこにぶつかってきたのです!!!

 ☆

「大きかったです……」
「いや、さっきのヤツまた入ってきてるじゃねーか!? 追い払ったなら窓閉めとけよ……」
「ぬはははっ。」

 ヌーが笑っているのを見てあかりは満足そうにしていた。

「趣旨、わかってるよな……?」
「え?……ええ、ええ、まだ続きますともっ」
「頼むぞまじで……」

 ☆

 なんとか一命を取り止めたわたしは、心身ともにボロボロになりながらもトイレを脱出します。
 大げさではないですよ。カナブンに二度もおでこ突撃をされると人は凹むんです。精神的に。

 ……ともかく、わたしは真っ暗な下駄箱で苦労しながら靴を履き替えました。暗闇を背に視線を外さなければならないというのは、本能的に危機を感じてしまうものですね。
 何度も振り返りながら、わたしは校舎から出ることに成功しました。

 お月様のよく見える日でしたので、外の方が明るいくらいでした。

 そして、ようやく恐ろしい学校から出られたことに安堵したのもつかの間のことです。

 ふぅっ……と。

 生暖かい風が首筋に当たったのです……。
 反射的に、わたしは振り返りました。
 でも、誰もいません。
 今出てきたばかりの校舎が、真っ黒な口を開けて笑っているように見えます。

 周囲を見渡しても、隠れられるような場所はどこにもありません。月明かりで視界は良好なくらいなのです。

 こわい……こわい!

 ここまで蓄積された恐怖心が爆発して、足がすくんでしまいました。

 でも歩かなきゃ……このままだとあの黒い口から何かが出てきてわたしを捕まえてしまうかもしれない!

 そんな妄念に追いかけられるようにして、足を動かしていきます。
 一歩、また一歩と、ふらふらになった足になんとか力を込めて歩いていると──。

 ふぅっ。

 また首にを感じました。

 もういやだ……はやくかえりたい……。

 わたしは振り向かずに、気味の悪い風を無視してまっすぐ歩きます。

 ふぅっ。ふぅっ。

 首だけでなく、耳、ほっぺたまでも、ぬるぬると風が撫でていきます……!

 もう……もう! やめてください!

 わたしは半狂乱になりながら、振り返りざまに持っているかばんを振り回します!
 ……しかし、手応えはありませんでした。

 わたしは愕然として、立ちすくんでしまいます。

 すると、校舎の黒い口の中から物凄い勢いで、

 ☆

「べちーん。こぶし大のカナブンだった。」
「ぁ……ああああ! ヌーさんっ……あんまりですっ……」

 あかりは力なく、椅子からずり落ちた。

「うわぁ……ヌーさすがにそれはお前……」
「ぬあっ。ごっごめん……つい。」

 別に二人はヌーのことを本気で責めているわけではなかった。
 どんな顔をしながらあかりの話を聞いていたかよく観察してたからである。

「わたしの話はこれで終わりですぅ……」
「よかったっ。おもしろかったっ。」
「うむ、妨害があったが中々良かったぞ。致命的なジャンルエラーを起こしてる気がしないでもないが」
「苦手って言ったじゃないですか~」

 木漏れ日通りを吹き荒ぶ風雨は、未だとどまるところを知らず。
 台風一夜はまだ始まったばかりである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...