ひきこもり生活を満喫していたら異世界JKと異世界ネコが押しかけてきた件について

汗茄子w8

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扉の外

28話 『穴』

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「きゃあっ」
「熱っつッ!?」

 目の前を巨大な光の柱が吹き上がる。
 高温の風圧と真夏の太陽のような輝きに圧倒され、小森たちは腰を抜かしたまま、立ち上がることもできない。

「直視しない方がいいっ。目をやられる……っ。」
「言われなくてもマトモに見れん!」

 小森やヌーの鋭敏になった視力は逆効果となっていた。
 できるだけ視線を外すことで状況を把握しようとするが、霧が光を乱反射して視線の逃げ道がない。
 目を閉じる他に選択肢はなかった。


 ――やがて、少しずつ轟音が止み、強烈な閃光も収まっていった。

「もう、大丈夫みたいです」

 二人が目を開けると、景色は一変していた。
 濃霧が晴れ、昼間のような明るさになっていたのだ。

「今通り過ぎたのは、太陽だった……とか」

 小森が見上げる空には、太陽が浮かんでいた。

「いえ、虫……ホタルの群れみたいな感じでした」
「あの轟音。羽音だったのか。」
「熱風もそのホタルが出してたってことか」

 再び、霧が晴れた崖下をのぞく。
 木々や岩肌、あるいは小川が流れているような層が幾重もあり、まるで巨人の階段のようになっているのが見える。最下層については、小森の視力をもってしても黒々とした穴という認識しかできなかった。

「というかですね……わたしたち、下に降りようとしてましたけど──」

 あかりが崖のぎりぎり先でぐるりと周囲を見やった。
 他の二人も追うように視線をずらしていき――愕然とした。

「どこを向いても壁しか無い……ということは、俺たちは今、巨大な縦穴の中にいるのか……!」

 壁の端から壁の端まで5千メートルはくだらない。
 壁の高さは未知数。小森たちからすれば、大空に浮かぶ太陽まで伸びているように見えるほどの高さである。

 崖下から吹き込んでくる風は冷たいものに変わっていた。
 周囲の風景と、自分たちの置かれた状況に圧倒されて、しばらく沈黙が続いた。

 山を下るのと崖を登るのとでは、難易度に差がありすぎる。
 そもそも、登山靴程度ならまだしも、ロッククライミング用の道具などは小森の倉庫にも存在しなかった。
 人を探すにしても、このような秘境めいた土地に好んで暮らしているような人間などいるのだろうか。

 小森は彼女たちを安全に先導しなくてはならない。もはや大切な家族なのだ。
 しかしどうすればこの窮地を乗り切れるかが分からない。いくら考えても明確な答えは出てこない。
 小森は、ぬかるんだ沼に足からずぶずぶと沈み込んでいくような感覚に陥っていた。

「小森。向こう側。家があるぞ。」
「なにっ!?」

 ヌーは、ほとんど真上のような方向を指し示した。
 それは対岸の崖が天高く伸びた先で、窓のついた建築物が無数に崖に張り付いているものだった。

「え? どこですか?」
「かなり遠いし逆光になって見えづらいが……居住群みたいなのがあるな! しかも多いぞ」
「最初はせり出した岩かと思った。でも不自然だったから目をきゅっとやった。街だった。」
「でかしたぞヌー! よし……希望がもてた」

 しかしそれは常人には目視できないほどの距離。あかりは何度も目を細めていたが、結局、彼らの言う街を発見することはかなわなかった。

「どうやって登るんだ。ひどい高さだけど。」
「傾斜や段差の浅いところを選んであそこに近づいていくしかないな」
「やっぱり登っていくしかないのですね……」

 途方もない高さにあかりは少し気後れしていた。
 しかし、小森の瞳には明るい色が灯っている。

「あかり君。わざわざこんな秘境の崖っぷちに拠点を作る意味はなんだと思う?」
「それは、えーっと……あ、宝探しとかでしょうかっ」
「 そうだな。そんな感じだと俺も思う。崖っぷちの住人は、おそらくここを調査したくて、アレを築き上げたに違いない」

 だから、きっと。彼らは下を目指しているのだろう。
 俺たちは上を目指している。高所の拠点まで行かなくとも、途中で遭遇できる可能性は十分あるのだ。

「なるほどなるほど……さすが小森さんです。わたし、希望がもてましたよ!」
「どんな奴らか楽しみだな。」
「ああ、きっと冒険大好き野郎どもに違いない」


 目的地を新たに定め、気勢を取り戻す小森たち。

 人を避け、陽光から隠れるように過ごしていた過去とは違い、今では人と太陽の温もりを追い求めている。
 状況が状況であるとはいえ、小森は真実、自分が生まれ変わった――あるいは『進化』していることを実感していた。
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