追放された村人、実は世界最強でした~勇者パーティーを救ったら全員土下座してきた件~

fuwamofu

文字の大きさ
2 / 4

第2話 崖から落ちて見つけた謎の遺跡

しおりを挟む
アレンが勇者パーティーから追放されて三日が経った。歩き慣れない森道を抜け、川を渡りながら、彼は一人で旅を続けていた。地図も目的地もない。ただ足を止めると、あの日の出来事が鮮やかに蘇るから、進むしかなかった。

「俺は……本当に、危険な存在だったのか……」

夜風が頬を冷やす。火を起こそうと枝を集め、手のひらをかざした瞬間、ふと光が揺らめいた。火打石を使ってもいないのに、炎が自然と灯った。驚いて手を引くが、炎はまるでアレンの意思に反応してゆらゆらと揺れ続ける。

「これ……もしかして、俺の力なのか……?」

恐ろしさと同時に、どこか静かな温もりも感じた。まるで小さな焔が、「まだ終わっていない」と語りかけてくるようだった。

翌朝、アレンは小高い崖の上に立っていた。遠くには霧が流れ、森と山の境目に白い光が差し込んでいる。地面はぬかるみ、何度も足を滑らせた。だが、そんなことも気にならないほど、黙々と歩を進めた。

そのときだった。足元の地面が突然崩れた。

「うわっ……!」

叫ぶ間もなく、身体が宙に浮く。崖の下は濃い霧に覆われて、どれほどの高さかもわからない。とっさに近くの枝に手を伸ばしたが、指先は空を切った。重力に引かれ、アレンの体は深い霧の底へと落ちていく。

全身を風が叩き、視界がぐるぐると回る。だが途中で、まるで光の糸のような何かが彼の体を包み込んだ。衝撃が柔らかくなり、ふわりと地面に着地する。生きている。まるでこの場所が彼を拒まなかったかのように。

「……ここ、どこだ?」

周囲を見回すと、そこは巨大な洞窟のような空間だった。天井は高く、壁面に青白い鉱石が散りばめられて光っている。歩みを進めるたび、その光が呼吸するように明滅した。まるで巨大な生き物の体内にいるような錯覚を覚える。

奥に進むと、奇妙な遺跡が現れた。石造りの階段、浮かび上がる古文字、そして中央に鎮座する石碑。だが何よりも彼の視線を奪ったのは、祭壇の上で微かに輝く球体だった。淡い金色の光を放ち、脈を打つように揺れている。

「……宝玉?」

近づこうとすると、足元の石床が青く光り、何本もの魔法陣が広がった。思わず後退した瞬間、周囲に声が響いた。それは女性の声。どこからともなく、優しく、しかし力強く響く。

『来訪者よ。封印の地に至りし者よ。汝の名を告げなさい』

アレンは反射的に答えた。

「アレン……アレン=ロウズ。俺は……ただの村人だ」

静寂。だが次の瞬間、球体の光が強まり、柔らかな風が吹き抜けた。その風には懐かしいような、泣き出したくなるような温もりがあった。

『名を告げた者、アレン。汝は選ばれし創造の継承者。世界の核に触れし唯一の人間』

「えっ……? なんだ、それ……」

『汝の中に眠る“創造の権能”は、かつてこの世界を築いた者の力。長き封印の果て、ここに再び目覚める』

頭がくらくらした。何を言われているのかわからない。だが手のひらからあのときと同じ光がにじみ出ている。まるで自分自身が、世界と繋がっているような感覚があった。

『恐れることはありません。その力は破壊ではなく、再生のためにある。世界を創り、癒す者――それがあなたです』

アレンはゆっくりと拳を握った。恐怖はまだあった。けれど同時に、どこかで納得している自分もいた。なぜ自分だけ特別なことが起きるのか。なぜ勇者たちが恐れたのか。すべて、この力に理由があったのかもしれない。

「俺が……世界を創る、だと……? そんな馬鹿な……俺は戦うことだってまともにできないのに……」

『力とは刃ではなく、願いです。あなたが何を想い、何を望むかで、その力は形を変えるでしょう』

声が微笑むように静まると、光の球がゆっくりとアレンの胸に吸い込まれた。身体の奥が温かくなり、心臓の鼓動と光が一体化していく。視界が白く染まり、そして――再び静寂。

気がつくと、遺跡の中はただの廃墟に戻っていた。球体も、声も、もうない。だが胸の奥には確かに残っている。穏やかな力の流れと、言葉の残響。

「……創造の継承者、か」

地面に手をつくと、折れた草がゆっくりと起き上がり、緑の新芽を出した。驚きに息を呑む。意識せずに“再生”していた。恐る恐るもう一度試す。枯れ木に触れると、それもまた瑞々しい木肌に戻ってゆく。

「まるで……命を作り出してるみたいだ」

世界が静かにいびつさを取り戻していくように見えた。だがその美しさの裏で、何かが動き出していた。遺跡の奥の暗闇から、低い唸り声が響く。

「誰か……いるのか?」

返事はない。その代わり、闇の中から巨大な影が揺れた。光に照らされ、姿を現したのは、岩でできた獣のような存在。石の体に紅い魔核を宿し、鬱蒼とした気配を放つ“守護魔像”だった。

『侵入者、確認……排除開始……』

無機質な声が洞窟に響き渡った。アレンは無我夢中で走り出す。避ける間もなく拳が地を砕き、衝撃波が体を弾き飛ばした。壁に叩きつけられ、呼吸が止まる。

「くそっ、なんで追い打ちかけてくるんだよ!」

手探りで拾い上げた石を投げるが、まったく通じない。石像は巨体を揺らしながら迫ってくる。逃げ場はない。足元には崖。背後には魔像。どうすることもできなかった。

「……せめて、生きてみせる!」

胸元が熱くなる。無意識に手を突き出した瞬間、地面の光が迸った。創造の紋章が拡がり、地の底から蔦が飛び出して魔像の腕を絡み取る。まるで生き物のように締めつけ、動きを封じる。

「今だ……!」

アレンの声に反応するかのように、光が爆ぜ、魔像の身体がきしみ始めた。巨大な石の体が崩れ、赤い魔核が地面に転がる。砕けた瞬間、轟音とともに遺跡が揺れ、光の柱が天井を突き抜けた。

激しい閃光のあと、静寂が戻った。アレンはその場に座り込み、荒い呼吸を整える。恐怖で震える手を見つめながら、思わず笑ってしまった。

「……やっぱり、俺、どう考えても普通じゃないな」

笑いながらも、胸の奥には奇妙な安心感があった。勇者に必要とされなかった。でも、この力なら自分にしかできないことがある。世界を壊すためではなく、守るために。

崩れた天井の隙間から、一筋の光が差し込む。その先には森と空が広がっていた。傷ついた体を引きずりながら立ち上がり、アレンはその出口へ歩いていった。

「行こう。どうせなら、この世界のことを少しでも知ってから、答えを見つけよう」

外の風が頬を撫で、草の香りが満ちてくる。遺跡がゆっくりと沈み、再び静寂に包まれた。ただ一人の青年が去った跡に、淡い創造の光が、まだかすかに瞬いていた。

(次回 第3話「女神との邂逅~封印されし力~」へ続く)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界の底辺村で静かに暮らしたいだけなのに、気づけば世界最強の勇者だった件

fuwamofu
ファンタジー
「村の畑を守りたいだけなんだが…?」──勇者召喚に巻き込まれて異世界に来た青年レオン。しかし才能を測る水晶が“無能”を示したため、勇者パーティから追放される。失意のまま辺境の小村でのんびりスローライフを目指すが、土を耕せば豊穣の奇跡、狩りに出れば魔王級を一撃、助けた少女たちは次々と彼に恋をする。 本人はただ平穏に暮らしたいだけなのに、気づけば国を救い、人々に「救世の英雄」と讃えられていた──。 ざまぁ、逆転、ハーレム、爽快、全部乗せ! 無自覚最強スローライフ・ファンタジー開幕!

追放された錬金術師は知らぬ間に神話級、気づけば王女と聖女と竜姫に囲まれていた件

fuwamofu
ファンタジー
錬金術師アレンは、勇者パーティから「足手まとい」として追放された──。 だが彼が作っていた薬と装備は、実は神すら凌駕する代物だった。 森で静かにスローライフ……のはずが、いつの間にか王女・聖女・竜姫に囲まれ、世界の命運を任されていた!? 無自覚に最強で無自覚にモテまくる、ざまぁたっぷりの異世界成り上がりファンタジー。 気づいたときには、全ての強者が彼の足元にひれ伏していた。

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~

fuwamofu
ファンタジー
魔力量ゼロの落ちこぼれとして勇者パーティを追放された少年リアン。 絶望の果てに始めた自由な旅の中で、偶然助けた少女たちが次々と彼に惹かれていく。 だが誰も知らない。彼こそが古代勇者の血を継ぎ、世界を滅ぼす運命の「真なる勇者」だということを──。 無自覚最強の少年が、世界を変える奇跡を紡ぐ異世界ファンタジー!

追放された雑用係、実は神々の隠し子でした~無自覚に世界最強で、気づいたら女神と姫と勇者パーティがハーレム化していた件~

fuwamofu
ファンタジー
異世界ギルドの「雑用係」としてコキ使われていた青年レオン。だが彼は、自分が神々の血を継ぐ存在だとは知らなかった。追放をきっかけに本来の力が目覚め、魔王軍・帝国・勇者をも圧倒する無自覚最強へと覚醒する。 皮肉にも、かつて見下していた仲間たちは再び彼に跪き、女神、聖女、王女までが彼の味方に!? 誰もが予想しなかった「ざまぁ」の嵐が、今、幕を開ける——!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~

eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。 行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。 無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。 彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。 ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

処理中です...