世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~

fuwamofu

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第7話 大商会の陰謀と隠された力

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朝日が差し込むリーフ村の中央広場では、昨夜の騒動を終えたばかりの村人たちが後片付けをしていた。  
黒い霧の魔物を退けたことで村は平穏を取り戻したが、皆の表情にはまだ不安が残っている。  

リアンは村長の家の縁側で腰を下ろし、ぼんやりと空を見上げていた。  
「久しぶりに畑の匂いを嗅いだ気がするな」  
「あなた、戦闘直後とは思えないほどのんびりしてますね」  
ルシェリアが茶を差し出しながら苦笑する。  
「緊張しすぎてもいいことないさ。疲れてる時は腹を満たして寝る。それが一番効くんだ」  
リアンが受け取って飲むと、ほっとするような香りが鼻を抜けた。  

そのとき、家の方からミリアが小走りでやってきた。  
「リアン! 商人の一行が来てるの。あなたに話があるって」  
「俺に? 商人が?」  
ルシェリアと顔を見合わせ、リアンは立ち上がった。  

村の入口では、豪奢な馬車が停まっていた。  
その前に立つのは、派手な赤い外套を纏った大柄な男。大商会“ヴァルデン貿易”の支配人だという。  
「ほぅ、君がリアン=グレイハート殿か。王都でも話題になっておる」  
「噂よりだいぶ近いな。で、俺に何の用だ?」  
「実はこの村の土地を買い取りたいのだ。新しく商路を拓くにあたり、ここが拠点として好都合でね」  
男の声は穏やかだったが、その目の奥は冷たく濁っていた。  

「しかし村の者たちは断ったと聞いたが」  
「そう。土地を奪うような真似はしたくないが、我々も“協力”を得られなければ困ってしまう」  
「協力?」  
「例えば――魔物退治を請け負ってくれる勇者様に、正式に護衛依頼を出す。報酬も悪くない。だが条件として、村長に土地譲渡を承諾させてほしい」  

リアンの表情が冷えた。  
「脅しか?」  
大商人は薄く笑う。  
「脅しだなんて滅相もない。ビジネスですとも」  

その一言で、周囲にいた村人たちの怒りが弾けた。  
「土地を奪うつもりか!」「出ていけ!」  
男は冷笑を浮かべながら部下を数人呼び寄せた。  
鎧をまとった傭兵たちが前に出る。  
「まあまあ。血を見るのは得策じゃない。だが誤解のないように言っておこう。すでに王都の役人には手を回してある。我々が合法的にこの地を得るのは時間の問題だ」  

リアンは静かに歩み出た。  
「だったら、その手回しを止めてもらおうか」  
「ほう? 勇者様が、商会のやり方に口を出すと?」  
「人の生活を踏みにじる“商談”が正しいと思うなら、叩き潰してでも止める」  
空気が一気に張り詰めた。  

傭兵たちが剣を抜く。  
ルシェリアが手を伸ばした瞬間、リアンはすでに動いていた。  
地面を蹴る音すらほとんど聞こえない。次に見えたのは、傭兵全員の武器が宙を舞っている光景だった。  
風の流れが止まり、沈黙が訪れる。  
そして一拍遅れて、地面に金属音が散らばった。  

「……もう終わりか?」  
リアンの袖にはかすり傷ひとつない。  
ルシェリアが肩をすくめて言った。  
「あなた、本当に無自覚ですよね」  
商会の支配人は青ざめて後ずさる。  
「お、おのれ……覚えていろ! 王都を敵に回すつもりか!?」  
「敵になった覚えはない。ただ、人を守るのが俺のやり方だ」  

商人たちは慌てて逃げ出した。  
だがルシェリアは眉をひそめたままだった。  
「リアン、あの人たち……ただの商人じゃありません。奇妙な気配がありました」  
「気配?」  
「人間なのに、どこか“魔の気”を感じました。背後に何かいます」  
リアンの表情が引き締まる。  
「となると、あの影の魔物と無関係じゃないな」  

その夜。  
村の宿に泊まる三人の部屋では、ミリアが温かいスープを運んできた。  
「これ、宿の人が作ってくれたの。疲れたでしょう?」  
「ありがとう、ミリア」  
「……ねえ、リアン。最近、あなたのまわりで妙なことが多くない?」  
「妙なこと?」  
「魔物の出現とか、力の暴走とか。まるで、あなたを狙って何かが動いてるみたい」  
リアンはスープを置き、少し黙ったあと苦笑した。  
「さあな。でも、もしそうだとしても俺はもう逃げないさ」  
「ほんと、そういうときだけ頼もしいんだから」  
ミリアが柔らかく微笑む。その視線を見たルシェリアの表情がほんの少しだけ曇る。  

その日の深夜。  
宿の外で、黒い外套を纏った数人の影が集まっていた。  
「商会の者ども、役立たずめ。勇者の力は予想以上だ」  
中央で低く声を発するのは、焔色の瞳を持つ男。  
「報告を上げる。やはり“封印の継承者”はこの地で覚醒を始めた」  
「では“蛇の牙”として動く時か」  
「そうだ。勇者の覚醒を抑えるため、次の試練を与えよう」  
男の足元に黒い紋章が広がり、夜風が呻くように回った。  

一方そのころ、リアンはふと目を覚ました。  
胸の奥が熱い。皮膚の下で、何かがうねるような感じがする。  
ルシェリアが側で寝息を立てていたが、その小さな光に気づき目を開けた。  
「リアン……その紋、また……」  
リアンの背中に、金色の紋章が浮かび上がっていた。  
「これ、また出てきたのか……」  
「ええ。きっと封印が解け始めている。あなたの中に“本来の力”が戻ろうとしているのです」  
「本来の力……?」  
リアンは困惑したように拳を握った。  

月光が二人の間に差し込む。  
「この力が目覚めれば、きっと多くの者が動き出します。だから、リアン――」  
「分かってる。どんな敵が来ても、俺が守る」  
その眼差しには、確かな決意の光があった。  

遠く離れた王都の塔では、その瞬間、巨大な魔力波が観測された。  
魔導塔の魔力石が淡く震える。  
研究員が慌てて走り込む。  
「報告! 北方リーフ村から、異常な魔力反応! 勇者顧問リアン=グレイハートの方向です!」  
塔の奥で、宰相カーディウスが目を開ける。  
「……いよいよか。そして闇もまた目を覚ます」  

夜の帳の下で、光と影の両方が動き始めた。  
リアンはまだ知らない。  
その覚醒が、世界の均衡そのものを揺るがすことになるということを――。
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