世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~

fuwamofu

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第13話 闇組織『蛇の牙』との戦い

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冷たい風が吹き抜ける北の荒野。リアンたちは女神アリアの神託を受け、竜王の眠る浮遊山脈を目指していた。  
道中には荒地と廃墟が連なり、かつて繁栄した都市の名残だけが残る。空には黒雲が渦巻き、大気中に重い魔気が漂っていた。  

「空気が濁ってる……“蛇の牙”の封印術が使われた跡ですね」  
ルシェリアは周囲の地面に指を滑らせ、淡く輝く黒い線をなぞる。  
「女神の結界の外……つまり、完全に奴らの支配域ってことか」  
「はい。普通の人間じゃ近づくこともできないほど濃い瘴気です」  
「いよいよ、ってわけか」リアンは剣の柄を握り直した。  

聖都を出立してから三日。彼らはようやく北境の拠点群に辿り着いた。  
そこには、“蛇の牙”の根城と呼ばれる黒い塔がそびえていた。塔の周囲には黒い結界が張られ、内部からは不気味な唸りが響いている。  

「まるで生きているみたいだな」  
「ええ。結界そのものが魔物の一部なんでしょう。破壊すれば暴走します」  
「ってことは、中から切るしかないのか」  
ルシェリアが苦笑して頷く。  
「あなた、本当にそういう無茶な道を好みますね」  
「効率的だろ?」リアンの軽口に、ルシェリアが呆れた表情を返す。  

ふたりが塔の周囲を観察していると、低い音が地面の下から響いた。  
「来る!」  
地面を突き破って現れたのは、黒い鎧を纏った戦士たち。仮面のような紋章が顔に刻まれ、手には蛇の形をした長槍を握っている。  
「“蛇の牙”の近衛兵です!」  
数は二十。ルシェリアが後ろに下がると同時に、リアンが前に出た。  

「邪魔する気なら、倒すだけだ!」  
その瞬間、剣が光を帯びる。  
金と紅が入り混じり、一瞬で炎のような奔流が地面を駆ける。  
敵が一斉に槍を構えるが、リアンの一撃がそれを上から包み込み、空間ごと焼き払った。  
轟音が響き渡り、黒い兵士たちは灰と化した。  

「貴様……何者だ……」残った一人が呻く。  
リアンは静かに答えた。  
「ただの旅人だ。ただ、闇を放っておけないだけだ」  
「……勇者、か」  
仮面の兵は崩れ落ち、跡形もなく消えた。  

外の結界はその衝撃で一部ひび割れを起こしていた。  
ルシェリアが杖を構える。  
「今です、リアン!」  
リアンが剣を振り上げ、ひびの中心に突き刺す。  
刃先から流れた光が巨大な裂け目を生み、結界が砕け散った。  

内部はまるで別世界だった。  
黒い塔の内部には魔術の陣が幾重にも浮かび、壁は脈動している。  
ルシェリアが顔をしかめる。  
「ここは……人の心を喰らうための“魔喰の祭壇”。こんな規模の術式を、誰が……」  
リアンが奥を見ると、玉座のような椅子に男が座っていた。  
その姿に見覚えがあった。赤髪の女戦士と共にフェルンで自分を見ていた黒衣の魔導士だ。  

「やはり来たか、勇者リアン=グレイハート」  
「お前が……“蛇の牙”の頭か」  
「頭の一人だ。私の名はラドゥス。“影の学徒”と呼ばれている」  
ラドゥスはゆっくり立ち上がり、冷笑を浮かべた。  
「君の中に宿る光、その純度を確かめたい。我らが主――アーゼル様も興味を持っておられる」  
その名を聞いた瞬間、リアンの胸が熱くなった。  
「アーゼル……! 奴はどこだ!」  
「焦るな。まずは私を越えてみろ」  

ラドゥスが黒い杖を振り上げた瞬間、床一面の魔法陣が輝き出した。  
無数の黒い影が立ち上がり、塔の内部が闇に飲まれる。  
「くっ……ルシェリア、下がれ!」  
リアンが剣を振ると、光と影の波動が激突した。衝突の衝撃で空間が裂け、天井から黒い結晶の欠片が降り注ぐ。  

「この力……尋常じゃない!」ルシェリアの声が響く。  
「分かってる!」  
リアンは一歩も退かず、剣を構え直した。胸の刻印が輝きを増していく。  
その光に呼応するように、女神アリアの声が微かに頭の奥に響く。  
――力に溺れぬ心を。闇に触れるな。光を信じるのです。  

「分かってるさ、女神!」  
リアンは剣を天に掲げ、地を蹴った。  
渾身の一撃が放たれ、閃光が塔の中心を貫く。  
ラドゥスは咆哮とともに杖を構えるが、光の奔流に飲み込まれた。  

爆風とともに塔が崩れ始める。  
「行くぞ!」リアンがルシェリアの腕を掴む。  
出口へ向かって走る二人の背後で、崩れ落ちる瓦礫の中からラドゥスの声が響いた。  
「勇者よ……我らの主はすでに動いている。竜王は……闇に堕ちた……」  

外に飛び出した瞬間、塔が轟音を立てて崩落した。  
黒雲が空を覆い、遠くの山脈から赤黒い稲妻が走る。  

「……竜王が、闇に?」  
ルシェリアの声は震えていた。  
リアンは額の汗を拭い、深く息を吸う。  
「なら、間に合ううちに行くしかない。女神が言った場所へ」  
ルシェリアは頷き、空を見上げた。  
「竜族の里、“ヴァルスの眠る頂”……。そこが次の戦場ね」  

風が立ち、灰が宙に舞う。  
リアンは剣を背に背負い直し、曇天の彼方へと視線を向けた。  
「待ってろ、竜王。誰が相手でも、救い出してやる」  

その言葉は約束のように、赤い空の下で強く響き渡った。  
そして二人を包む風は、まるで戦いの始まりを告げる鼓動のように脈打っていた。
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