世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~

fuwamofu

文字の大きさ
19 / 30

第19話 古代魔王軍の復活

しおりを挟む
王都を覆っていた黒い雲が、さらに濃く渦を巻いていた。  
上空には雷鳴が奔り、地上では崩れた城壁から無数の闇の獣が湧き出している。  
街はすでに人の息を失っていた。音だけが生き、呻きだけが残る。  

リアンたちはその中心、王立大通りを駆け抜けていた。  
「ひどい……まるで地獄ね」ミリアが口を押さえる。  
「アーゼルの術よ。死者の魂を使って、古代の魔王軍を呼び起こしているの」ルシェリアが唇をかむ。  
「昔の記録にあった“終末召喚”か。王都を生きた祭壇にするつもりだな」リアンが低く呟いた。  
「間に合うの?」ミリアが不安げに問う。  
「間に合わせる。どんな方法でも」リアンは握る剣に力を込めた。  

城門の前に辿り着くと、広場の地面が不気味に光っていた。  
魔法陣の中から、巨大な影が姿を現す。  
かつての伝承に語られた“七魔将”のひとり、骸骨の巨人が轟音と共に蘇る。  
黒い鎧を着込み、表情のない頭蓋に二つの赤い光が灯った。  
「愚かなる生者よ、王に抗うとは」  
その声は、低いのに空全体を震わせた。  

ルシェリアが叫ぶ。「リアン、まさかこれ全部復活させる気じゃないでしょうね!」  
「全部さ。アーゼルは“過去を完全な闇で塗り替える”つもりだ」  
リアンが一歩前へ出る。  
「最初の門番か。なら通らせてもらう!」  
彼が地を蹴った瞬間、金紅の光が爆ぜた。  

剣の輝きと巨人の黒い大剣がぶつかり合い、衝撃波が街を裂く。  
瓦礫が空を舞い、周囲の建物が次々と崩れ落ちた。  
「ひとりで突っ込むなんて、ほんとに無茶なんだから!」ルシェリアが支援魔法を展開し、雷を降らせる。  
ミリアも祈りを紡ぎ、癒しの光でリアンの身体を包んだ。  

「ふたりの力、借りる!」リアンの声が響いた。  
極限まで集中し、剣を振り下ろす。  
一撃。巨人の右腕が蒸発する。  
しかし骸骨の笑いが響いた。  
「無駄だ。その光は、闇の核に届かぬ」  
巨人の体が再生し、次の瞬間、無数の鎖がリアンを包み込む。  
「くそっ……!」光を放つが、鎖の中で剣の動きが止まる。  

ルシェリアが叫ぶ。「リアン、体から吸われてる! 魔力を奪われてるわ!」  
「そう簡単に渡してたまるか!」彼の胸の刻印が輝き、双竜の光が鎖を焼き切った。  
しかしその焦げた影が空中で再び形を取り――闇の人影へと変わっていく。  

「この気配……“蛇の牙”の幹部よ!」  
霧の中から赤髪の女戦士が現れた。かつて王都でリアンたちを監視していた人物。  
「懐かしい顔だね、勇者リアン。ここで終わらせてあげる」  
「よく来たな。今度こそ全力で相手してやる」  
彼女が剣を抜くと、炎が舞い上がる。  
彼女の周りには数十の魔族が現れ、リアンたちを囲んだ。  

「ミリア、結界を!」  
「はい!」  
聖なる光の壁が展開され、敵の炎を遮る。  
ルシェリアが同時に竜の魔法陣を起動し、地面から蒼い竜の幻影が姿を現した。  
「竜王ヴァルスの加護、ここに!」  
巨大な蒼竜が咆哮し、炎と闇を押し返す。  

「ふふ……面白い。勇者と竜族と聖女。まるでおとぎ話ね」  
女戦士が飛び込み、剣が火花を散らした。  
リアンと彼女の刃が何度も交錯し、空気が歪む。  
「お前、アーゼルに魂を売ったのか!」  
「魂? 違うわ。“信仰”よ。力こそが真理。アーゼル様こそ新しい創造の神になるの!」  
「なら、お前はいつかその神に喰われる!」  
リアンが叫び、一閃。  
火花が散り、女戦士の剣が宙に弾け飛ぶ。  

「ぐっ……!」彼女が膝をついた。  
リアンは剣を振り上げたが、刃を止めた。  
「命を奪っても意味はない。アーゼルの奴に情報を流すんだ。奴はどこにいる!」  
女戦士が笑う。「もうすぐあなたも会えるわ。玉座の間で……神の再誕が始まる」  
彼女の体が黒い光に包まれ、跡形もなく消えた。  

「転移した……自らを捧げて門を開いたのね」ルシェリアの声が静かに響く。  
突如として地面が震えた。城の方から轟く音と共に黒い柱が立ち上がる。  
「何だ、あれ……」ミリアが息を呑む。  
「“復活の核”だ」リアンが顔を上げた。  
「アーゼルが古代魔王軍を完全に戻すつもりだ!」  

黒い柱はゆっくりと天を突き抜け、空の裂け目から無数の影が降ってくる。  
それは人でも獣でもない、古代の災厄の記録にしか存在しない存在たち。  
空飛ぶ黒翼の軍団、大地を這う巨獣、炎を吐く影狼――そして最後に、城の尖塔から一体の巨大な影が姿を現した。  

「まさか……“古代魔王バラム”……!」  
ルシェリアが叫ぶ。  
闇の中でその巨躯が笑った。  
「千年。長い眠りだった。だが今、再びこの世界を食らえるとは」  
アーゼルの声が重なり、空を覆った。  
「勇者リアン。待っていた。光と闇を併せ持つその器――私のために用意された魂だ」  

リアンは剣を構えた。  
「お前のためじゃない。誰も、お前の神話になんてならない!」  
声が轟き、空気が爆ぜる。  
アーゼルの影が笑い、世界が一瞬、夜よりも暗くなる。  
「なら証明してみろ、勇者。“光の神”が“闇の神”に勝てるかどうかをな!」  

雷鳴と共に、再び戦火が走った。  
ルシェリアが翼を広げ、ミリアが祈りの杖を掲げる。  
リアンの剣が金紅の光を放ち、三人の力が一つに重なる。  
「終わらせよう、この戦いを!」  
「ええ、私たちのこの手で!」  

地を揺るがす咆哮と共に、古代魔王軍と勇者たちの最初の衝突が始まった。  
王都の夜は光と闇の奔流に裂け、世界が真に運命の選択へと向かい始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...