世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~

fuwamofu

文字の大きさ
27 / 30

第27話 決戦、世界を懸けた最終戦争

しおりを挟む
それから一年――。  
光と闇が拮抗を保っていた世界に、再び不穏な影が忍び寄っていた。  
女神アリアが還り、勇者リアンの光が大地を包んだことで、平和は訪れたかに見えた。  
だが、女神が失った存在――神格の一部が欠けたことで、世界の均衡が微かに崩れ始めたのだ。  

空の裂け目からゆっくりと姿を現す黒き異形の大陸。  
その上空に漂うのは、かつての闇の王アーゼルの残滓が融合し誕生した、“虚無の主オルファス”。  
その存在は人の理を超え、ただ存在するだけで大地を侵蝕していく。  

「また……この世界が試されるというの?」  
ミリアは崩れゆく聖都を見下ろしながら、祈りの杖を握りしめた。  
ルシェリアは長い髪を風になびかせ、静かに頷く。  
「オルファス……あれは神の残骸。アリアが最後に残した“存在の空洞”。それが世界の裏側に歪みを作っていたの」  
「つまり、アリア様の犠牲が……新たな災厄を生んだということ?」  
「……皮肉なものね。けれど、この世界を護るためなら、私たちが決着をつけるしかない」  

ルシェリアの中では竜の血が燃えていた。  
竜王ヴァルスの魂が今も彼女を見守っている。その声が確かに胸の奥で響く。  
“竜族もまた、試されの民だ。お前の選択が、世界の明日を決める”  

ミリアが神殿跡に膝をつき、両手を合わせて女神へ祈る。  
「アリア……お願い、もう一度力を貸して。あなたが遺した光が、きっと私たちを導けるはず」  

その瞬間、吹雪が静まり、空に一つの光が生まれた。  
「これは……」  
ルシェリアが息をのむ。  
そこに現れたのは、金と紅の二色で揺らめく光の柱。  
そして、その中から浮かび上がった姿――。  

「……嘘……」  
ミリアは涙をこぼした。光の中から降り立ったのは、あの勇者リアンだった。  
いや、確かにリアンの姿をしていたが、その背からは白と黒の羽が広がり、瞳には深淵の輝きがあった。  

「みんな……生きてたか」  
その声はあの頃のままだった。だが、どこか遠くを見ているような響きを含んでいた。  
「リアン! あなた、どうして……!」  
「この世界がまだ苦しんでいる。アリアの残した空白が虚無を呼び、オルファスという存在を生んだ。だから戻ってきたんだ」  
ルシェリアが一歩、彼に近づく。  
「戻ってきたのは、あなたの意思なのね?」  
リアンは微笑み、頷く。  
「アリアが俺に最後の力を託した。彼女の半身であるオルファスを止められるのは、俺だけだ」  

空に響く轟音。  
黒雲の裂け目から無数の光輪が降り注ぎ、巨大な翼を持つオルファスの影が姿を現した。  
数百メートルを超える体躯。目は赤黒く輝き、声一つで地形そのものを変える。  
「勇者よ……貴様は輪廻を拒んだ存在。均衡を壊した“原罪”だ」  
その咆哮だけで、空が割れた。  

「皆、後ろに!」リアンは聖剣を抜いた。  
アルディスが眩く光を放ち、大地の砕けた破片を押し返す。  
「ルシェリア、ミリア! 二人は聖都の民を守ってくれ!」  
「嫌よ!」ルシェリアが叫ぶ。「あなた一人で行かせられるわけないでしょ!」  
「私も同じ気持ちよ!」ミリアが涙を流しながら続く。「もう、ひとりで戦わせない!」  
リアンは苦笑する。  
「相変わらず、聞かない二人だな……」  

三人が手を重ねた瞬間、聖剣が反応し、三人の身体を包むように光が広がった。  
「今度は三人で挑もう。勇者団として!」  

空中戦が始まる。  
リアンが前衛に立ち、オルファスの巨腕を聖剣で受け止める。  
ルシェリアの竜術が竜の炎となって黒翼を攻撃し、ミリアの祈りの盾が味方を包み込む。  
「行くわよ、リアン!」  
「合わせろ、ルシェリア!」  
炎の尾を引く竜の槍が放たれ、リアンの聖剣の刃がその軌跡をなぞる。衝撃波がオルファスの胸を貫いた。  

しかし、虚無の主は笑う。  
「哀れな勇者たちの共鳴よ。だが、私を滅ぼすには至らん」  
黒い霧が爆発し、地上に衝撃が走る。大地が二つに裂け、海が沸き立った。  

「これじゃ、世界がもたない!」ミリアが叫ぶ。  
リアンは歯をくいしばりながら答えた。  
「それでもやるしかない。オルファスはアリアの一部、つまり彼女を完全に救えるのは俺たちだけだ!」  

戦闘は激しさを増した。  
ルシェリアの竜鱗が砕け、血を流す。ミリアの祈りの光は弱まり、杖がひび割れた。  
リアンもまた限界に近づいていた。身体中を走る光と闇の力が暴走を始めている。  

その時、耳の奥で女神の声が微かに響いた。  
――“勇者よ、あなたは世界そのもの。彼らを信じるのです。あなた一人ではないと。 ”  
リアンの瞳が再び光を取り戻す。  
「分かってるよ、アリア……! 俺は、もう一人じゃない!」  

リアンが剣を掲げると、空に再び女神紋が広がった。  
ミリアが祈りを続け、ルシェリアが歌うように竜神語を紡いでいく。  
三人の力が一つになり、無数の光の粒が空を舞った。  
オルファスが驚愕の声を上げる。  
「この光……まさか、世界の力を……!」  
「その通りだ。お前の虚無は、もうここにはない!」  

リアンが叫び、三人の力を束ねて、聖剣を高く振り下ろした。  
金紅の閃光がオルファスの胸を貫き、世界全体がひとつの音を立てた。  

轟音と共に、オルファスの身体が崩壊する。  
黒い霧が消え、代わりに無数の光が雪のように降り注いだ。  
その光は大地を包み、荒廃していた街々を再び花咲く緑へと戻していく。  

「……終わった?」ミリアが息を呑む。  
ルシェリアが頷き、空を見上げた。  
「ええ。きっと、彼も安らかに眠っているわ」  

リアンの手から聖剣が静かに光を消す。  
「みんな、ありがとう。これでようやく、世界はひとつに戻った」  
笑みを浮かべた彼の姿を、残る光が包み込む。  
「まさか……また消えるの?」ミリアが声を震わせる。  
リアンは首を振った。  
「いや、こんどは違う。俺はこの世界に溶けるんじゃなくて、世界と共に生きる」  
ルシェリアが涙を拭って笑う。  
「なら安心ね。あなたがこの空のどこかで見守ってくれるなら」  

リアンは頷き、二人の頭を優しく撫でる。  
「本当にありがとう。俺はこれからも、お前たちの道を照らす光でいるよ」  

風が吹き、光が空へ舞い上がった。  
再び、太陽のような輝きが夜を照らし、世界に平穏が戻っていく。  

彼らの戦いは、後に神話として語られることになる――  
“決戦、世界を懸けた最終戦争”。  
そしてその物語は、勇者リアンと仲間たちの絆を永遠に刻む伝説となって、時代を越えて光り続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...