追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu

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第13話 罪を着せられた少女を救う

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北の死霊山脈へと続く街道は、黒い霧と魔力が漂う不気味な地帯だった。  
神々が干渉した跡が各所に残り、大地は焼け焦げ、天空には紫に染まった亀裂が走っている。  

「ここが……“竜王の地”に向かう道?」  
セリスが不安そうに問いかける。  
「正確には“封じられた地”だ。竜王が眠るというより、その力を誰かが抑え込んでいる」  
リオの声は低く落ち着いていた。  

リリアーナが周囲を見渡す。  
「街道の向こうに村の灯が見える。ここにもまだ人が住んでいるのね」  
エリスが小さくうなずいた。  
「この地域には“祈りの村”と呼ばれる集落がいくつかあります。神々の侵略に呑まれなかった稀少な場所です」  

やがて彼らがたどり着いたのは、小さな石壁に囲まれた村だった。  
村の中央には鐘楼が立ち、夜風に揺れる灯火がほそぼそと光っている。  

だが、村の空気は異常に張り詰めていた。  

「止まれ!」  
警戒の声が飛んだ。十数名の村人が囲むように槍を構えている。顔には恐怖と疑心が滲んでいた。  

リオは一歩前へ出て、手を挙げた。  
「俺たちは旅人だ。争う気はない」  
「旅人だと? なら証を見せろ! “赤き印”を持たぬ者は、神敵かもしれん!」  

リリアーナが眉をひそめた。  
「赤き印?」  

村の年長者が前に出て、険しい目で答える。  
「神の審判のあと、人が生き残るために刻まされた刻印だ。我らが祈りの証。持たぬ者は“災厄の徒”と呼ばれ、捕らえる決まりだ」  

エリスが悲痛な表情で首を振る。  
「まさか……神々がこんな偽りを強制して……!」  
「まあ待て」  

リオは冷静に前へ進み、年長者に静かに告げた。  
「俺たちはお前たちを害する者じゃない。だが――その印は呪いだ」  

「な、何を言う!」  
「それは神々が“監視”のために刻んだ封印。持つ者ほど魂が濁り、いずれ操り人形になる」  

村の人々がざわつく。  
老種の村長が怒りを込めて吠えた。  
「馬鹿なことを! この印こそが我らを守っているのだ!」  

その言葉を遮るように、遠くの鐘が鳴った。  
人々が顔を上げる。  
村の中央の広場――火刑台の上に、一人の少女が縛られていた。  

「なんだ……あれは?」  
セリスが息を呑む。  

少女はまだ十代前半。  
白い髪と澄んだ青の瞳。そして、額には印を上書きされたような黒い刻印。  
その背後では、祈祷師らしき男が声を張り上げていた。  

「この者は神の印を拒み、祈りを穢した罪人! 今宵、浄火により赦しを得させる!」  

リオは歩みを止め、静かに問いを投げた。  
「その罪……誰が裁いた?」  

祈祷師が睨み返す。  
「神の名において、我らが裁く!」  

燃え盛る火を見つめる少女の瞳には恐れも涙もなかった。  
ただ、どこか遠い空を見ているようだった。  
その姿を見た瞬間、リオの胸に微かな痛みが走った。  

「リオ?」  
リリアーナが声をかけるが、彼は前に出た。  

「やめろ。その火を消せ」  
「何を言うか! 神敵は救いようのない穢れだ!」  
「その印は彼女を呪縛する鎖にすぎない。お前たちは神の道具にされているだけだ」  

「ふざけるな! 我らの信仰を侮辱するか!」  
祈祷師が怒鳴り、杖を振り上げた。  
だが――炎が止まった。  

まるで時間が凍ったかのように、火の粉が空中で静止している。  
人々が息を呑んだ。  

「火の“定義”を一時的に削除した。動かしたければ、もう少し力の意味を知れ」  

リオは淡々とそう告げ、縛られた少女のもとに歩み寄った。  
縄が音もなくほどけ、彼女の手が自由になる。  

「お前を解放する」  
「……どうして?」少女がか細く問う。  
「望まない苦しみを見過ごす趣味はないんでね」  

少女の目がわずかに揺れる。  
「ありがとう……でも、私は……」  
「何だ?」  
「誰も信じてくれない。“竜の憑代”だって言われてる……」  

その言葉に、エリスが表情を変えた。  
「竜の憑代……? まさか、竜王の魂が宿る御子……!」  

人々が再び騒然となる。  
リオは微かに視線を落とす。  
少女の背中から感じ取れる力は確かに異質だった。だが、邪悪ではない。  
むしろ、それは“懐かしさ”に近い波動だった。  

「おい、小娘を渡せ!」  
祈祷師が怒号をあげる。だが次の瞬間、足元を黄金の紋章が覆った。  

「……それ以上近づくな」  
低い声と共に、リオの周囲が光る。  
祈祷師が一歩踏み出すたび、足元の影が裂け、まるで世界そのものに拒まれているかのように進めない。  

「な、何だと……これは、禁呪――」  
「違う。“創世”だ」  

リオは少女を抱き上げ、背を向けた。  
「ここに残るといずれ全員が神々の囚われになる。  
だが、俺に刃向かうなら今ここで止める」  

村人たちは言葉を失った。  
誰も、彼が放つ光を直視できない。  
まるで自然そのものが神聖化したような圧倒的な存在感。  

リリアーナがその横に並び、短く言う。  
「行こう、リオ。もうここに留まっても無意味よ」  

エリスが静かに祈りを唱え、結界の隙間に風が流れる。  
セリスが後方を見張りながら走り、彼らは村を抜けた。  

* * *  

夜の森に入り、静寂が戻った。焚き火の火が柔らかく揺れる。  
少女は毛布に包まれ、微かに目を開けた。  
「……助けてくれて、ありがとう」  
「名前は?」  
「リュミエル……村では忌み名として呼ばれてたけど、本当の名はそれ」  

エリスがそっと手を取る。  
「あなたの中に感じる力は、竜でも悪でもない。  
それは〝世界の心臓〟の鼓動よ。  
おそらく、竜王が眠る封印と繋がる“継承者”だわ」  

「……だから、狙われたのか」リオが呟く。  
「神々は竜王の覚醒を恐れ、この地を封じて監視していた。  
その鍵が彼女。神々にとって邪魔な存在ってことだ」  

リリアーナが眉をひそめる。  
「じゃあ、この子を守ることが神々との次の戦いになるのね」  
「そうなる」  

リオは焚き火の明かりを見つめ、ぼそりと付け加えた。  
「――あの村にも、“審判の印”が広まっていた。  
神々がもう一度世界を支配しようとしている。俺たちが北へ進めば、もっと激しくなるだろう」  

リュミエルが小さく体を起こす。  
「……怖くないの?」  
「怖いさ」リオは微笑した。  
「だけど、もう見て見ぬふりはできない」  

沈黙のあと、少女が囁く。  
「あなたは、本当に創世の人なの?」  
「たぶんそうらしい。けど、今の俺はただの旅人だ」  

少女は一瞬だけ迷いのない瞳で彼を見た。  
「じゃあ旅の間……私も一緒に行っていい?」  

リオは短く考え、うなずいた。  
「その力を抱えて一人では、狙われるだけだ。共に行こう。」  
「ありがとう……リオ」  

リリアーナが柔らかく笑う。  
「また仲間が増えたわね」  
セリスが肩をすくめる。  
「にぎやかになるのはいいことです」  

エリスは火を見つめ、静かに言った。  
「神々が恐れた竜王の継承者と、創世者の再来……  
世界が、再び動き出しましたね」  

風が吹き、焚き火の火花が夜空に舞う。  
その先には、まだ見ぬ“竜王封印の地”が待っていた。  

リオは立ち上がり、空を仰いだ。  
「リュミエル、お前を守る。  
そして――神々の嘘を、すべて暴いてやる」  

夜空に浮かぶ星がひとつ、強く輝いた。  
その光はまるで、新たな運命が動き出す合図のようだった。
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