追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu

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第16話 勇者たちの断末魔 ― 裏切りの報い

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光の回廊が閉じ、リオたちは天界から戻った。  
場所は王都からさらに北、かつて勇者パーティが拠点としていた「光翼の館」の廃墟跡。  
だが、そこにあったのはただの瓦礫ではなかった。  

「……これは」  
エリスが息を呑む。  
地面から黒い根が伸び、建物の骨を包み込むように蠢いている。  
根の中心には、倒れ伏した兵士たちの姿があった。生気は失われ、まるで命を吸い取られたようだ。  

「まさか、もう始まってる……」  
リリアーナの声は震えていた。  

リオは足元に漂う魔力を感じ取る。  
「これは神の力じゃない。もっと粗雑で、欲望に染まった人間の魔力だ」  
「なら、誰が……?」  
セリスの問いに、リオは静かに名を口にした。  
「勇者パーティの残党だ。アルトの敗北後、神々の影に引きずられた連中がいた」  

エリスが頷いた。  
「ええ。神々が完全に滅びなければ、人の中の“信仰の残骸”が暴走します。  
あの連中は、おそらく……自らを神の代行だと思い込んでいるわ」  

その時、瓦礫の中から声が響いた。  
「代行? 違う……俺たちは神だ!」  

闇を裂くように姿を現したのは、かつての仲間ガルドだった。  
筋肉に走る黒い紋様、焦げた瞳。その体からは異様な魔力が噴き出している。  

「ガルド……お前まで」  
「リオ、お前がすべて悪いんだ……! お前が現れてから、勇者様も、神殿も、崩れた!」  
「それはお前たちが“神に縋った”からだろう」  
「黙れぇぇぇぇッ!!!」  

ガルドが怒りのまま拳を振り下ろした。  
衝撃で大地が砕け、瓦礫が宙を舞う。  
しかしリオはそれを片手で受け止め、そのまま静かに突き放した。  

「神の力を真似たところで、それはただの模倣だ」  
「うるさい……うるさいうるさいッ!」  
ガルドの目が光り、背後からさらに二つの影が現れる。  
ユミナ、そして僧侶エイダ。かつての仲間たち。彼らの顔は絶望と怨嗟に染まっていた。  

「リオ……お前だけが愛されて、私たちは棄てられた!」ユミナの叫びが夜に響く。  
「人を救う力を神に返すはずだったのに、あんたが壊した!」エイダが泣きながら杖を構える。  

リオはその言葉に静かに首を振った。  
「違う。壊したのはお前たち自身だ。  
力は信じる者を救うためにある――誰かを支配するためじゃない」  

叫び声とともに、三人が一斉に襲いかかった。  
ガルドの拳が大地を砕き、ユミナの短剣が風に溶け、エイダの奇跡が光の槍となって降り注ぐ。  
リリアーナとセリスが間に入り、魔法陣を展開した。  

「リオ、無理はしないで!」  
「こいつらの相手は俺の役目だ」  

リオの声が静まり返る空気を裂く。  
手を広げると、空間が震えた。  
世界そのものがその瞬間、彼の命令を待つ。  

「創世遮断式……再現」  

その言葉とともに、全ての攻撃が霧散した。  
拳も刃も、神の奇跡すらも、触れる前に意味を失う。  

「な、なんだこれは……俺の体が、動かねぇ」  
「リオ、やめて!」  
叫ぶユミナの声も届かない。リオの周囲に光の円環が浮かび、三人を包んだ。  

「本来の世界の秩序にお前たちを戻す。ただ、それだけだ」  
光が強まり、三人の体が透けていく。  
恐怖の声を上げ、彼らの瞳が最後にリオを映した瞬間――  

彼らは消えた。  

残ったのは静かな風だけ。  
誰一人、血も涙も残していない。ただ、空気だけが軽くなったようだった。  

エリスが膝をつく。  
「……終わったのね」  
「いや」リオは首を振る。  
「終わってはいない。あいつらの命は奪っていない。時間の外に避難させた。  
神々の干渉が完全に断たれない限り、彼らは戻れないが――まだ生きてる」  

リリアーナが息をついた。  
「優しすぎるわね、リオ」  
「そう言われ慣れてる。でも、誰だってどこかで間違う。  
罰は要らない。必要なのは、気づくことだ」  

風が木々を鳴らす。夜明け前の空が白み始めた。  
セリスが遠くを見上げる。  
「リオ、あれを」  

天を裂くように、巨大な円環が浮かんでいた。  
その内側から、一筋の光柱が伸びる。  

「来るぞ……また神々の使いか?」  
「そうじゃない」リオは言った。  
「これは――“召喚”だ。あの三人を媒介にして、神々が直接地上に降りようとしている」  

エリスが顔を青くした。  
「まさか、“天の審域”を発動させる気ですか!? あれが起これば大陸が沈む!」  

「止めるしかない」  

リオは両手を広げた。  
掌の紋章が灼けるように輝き、天地を貫くような力が発動する。  
それと同時に、空の光輪が激しく脈打った。  

「汝、法に背きし者。創世の力、再行使を禁ずる!」  
神々の声が地を震わせる。  
「禁じる? 今さら何を」リオは冷たく笑う。  

空を見上げ、片腕を掲げる。  
「創世式、臨界解放」  

世界が裏返った。  
光と闇が入れ替わり、時間が逆流する。  
神々の光輪は揺らぎ、やがて崩れ去った。  

「……これが、リオの力」  
リリアーナが呆然と呟く。  
リオは振り返り、微かに微笑んだ。  
「これでもまだ、一部だけだ。本当の“創世”は、まだ眠ってる」  

空が晴れ、朝日が昇る。  
その光が瓦礫を照らし、すべてを覆っていた闇を消し去っていく。  
風の中で、リオは静かに呟いた。  

「神々も、人も……全部この世界に生まれたものだ。なら、俺が裁く必要はない。  
俺のやるべきことは――この世界を、やり直せるようにすることだけだ」  

エリスが微笑む。  
「その優しさが、あなたを神よりも人に近づけるのよ」  
リオは肩をすくめた。  
「そうかもしれないな」  

彼が再び空を見上げた時、天の残骸の向こうで何かが蠢いているのが見えた。  
それはまるで、“神の屍”のように光を放ちながら形を変え、ひとつの姿を取ろうとしていた。  

「……あれが、“始まりの神”か」  
リオは息を整える。  
「これでようやく、終わりが見えてきた」  

風が吹く。朝の光に包まれたリオの瞳は、かつてないほど静かで力強かった。  
そして、その背後で仲間たちが彼の名を呼んだ。  

「リオ、もう一度、私たちを導いて」  
「……もちろんだ」  

神々との最終決戦――そして創世の物語の真実を明かす時が、近づいていた。
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