追放された無能と言われた俺、実は古代最強魔法の継承者でした〜気づいたら女神たちに囲まれて世界最強になってた件〜

fuwamofu

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第2話 辺境の森で出会った白銀の少女

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朝霧が森を包んでいた。  
昨夜の残り火がまだわずかに煙を上げている。レオンは倒木に腰を下ろし、濡れた上着を乾かしながらぼんやりと夜明けの空を見上げていた。

あの夢のような出来事が幻じゃなかった証拠は、今も手の甲に刻まれた黄金の紋章だった。  
光にかざすと、それは淡く輝き、鼓動に合わせて脈打っている。

「黎明の権能、か……」

意味なんて全然わからない。けれど、昨日あの女神が言っていたことすべてをはっきり覚えている。  
千年前の英雄の継承者。神の呪い。封印の力。  
普通なら信じられない話だ。だが、あの光の槍を無意識に防いだことを思い出すたび、胸の奥がざわつく。

「……あんな力、俺に扱えるのか?」

自嘲するように呟き、立ち上がった。食料ももう少ない。森を抜けて次の集落を探さないと。  
手元の小袋には、王都で残ったわずかな銀貨が三枚。あと数日は持つだろう。

森は重苦しいほど静寂だった。鳥の声も、風の音すらしない。  
乾いた枝を踏む音だけがレオンの耳に響く。  
しばらく進んだそのときだった。遠くから悲鳴が聞こえた。

「――やめてっ!!誰か、助けて!!」

女の声だ。しかも近い。  
レオンは条件反射で駆け出していた。木々をかき分け、声の方向へ。  
そこにあったのは、異形の魔獣に追われる一人の少女の姿だった。

純白の髪、透き通るような肌。薄布のローブをまとった小柄な身体が泥だらけになっている。  
その背後からは、巨大な狼のような魔物が牙を剥いて迫っていた。

「間に合えッ!」

レオンは咄嗟に拾っていた枝を投げる。  
枝は狼の頭をかすめ、わずかに軌道を逸らした。その隙に少女が倒れ込むように避ける。  
レオンは飛び出して少女の前に立ちはだかった。

「動くな。すぐ終わらせる。」

「だ、ダメです!そいつは上級魔獣、あなたじゃ――!」

少女の制止を聞く間もなく、狼が牙を剥き飛びかかった。  
レオンの手が勝手に動いた。右手の紋章が光り、炎の環がまるで意思を持ったかのように広がる。

「燃えろ――」

言葉にした瞬間、空気が爆ぜた。  
音もなく炎が奔り、狼の身体ごと森を照らす。閃光。  
一瞬で魔獣は灰になり、風に散った。

嗅ぐような焦げ臭さだけが残る。  
少女は呆然と立ち尽くしたままレオンを見上げていた。

「……あ、あなた……魔導士、ですか……?」

「いや、違う。俺は……たぶん、無職だ。」

肩を竦めながら笑うと、少女はぽかんと口を開けた。  
その表情がどこか愛らしい。近くで見ると、彼女の瞳は深い紫色をしていた。

「ごめん、助けるのが遅れた。怪我は?」

「い、いえ……本当に、ありがとうございます。」

少女は何度も頭を下げた。  
震える声、汚れたローブの隙間から覗く白い手。  
彼女の身には魔力の装飾具が付いていない。つまり、冒険者でも貴族でもない。

「どうしてこんなところに?」

レオンが尋ねると、少女は一瞬言葉を濁し、それから小さく答えた。

「……私、村を追われたんです。」

「追われた?なぜ?」

少女は視線を逸らし、草を握りしめた。  
「私は……魔人の血を引いているって。皆、そう言いました。髪も目も、この森も全部私の呪いだって……」

その言葉に、レオンはしばし沈黙した。  
どこかで聞いた構図だ、と思った。  
「無能」だからと追われた自分と、似ている。

「……酷いな。」

「え?」

「理由も知らないくせに、人を呪い呼ばわりするやつらがいる。そんな連中から逃げて正解だ。」

少女の瞳が揺れた。  
「……あなた、怒らないんですか?私が魔人かもしれないのに。」

レオンは苦笑した。  
「その“かもしれない”で誰かを責めるほど、暇じゃないよ。」

少女の肩の力がふっと抜けた。  
そして、気づけば涙をこぼしていた。レオンは慌てて手を差し出す。

「泣くなよ。とりあえず安全なところを探そう。腹減ってるだろ?」

少女は小さく頷き、レオンの手を握った。その手は冷たくて、弱々しい。  
握り返すと、なぜか胸の奥が熱くなった。

* * *

森の奥にある小さな洞窟を見つけ、二人はそこで休むことにした。  
レオンは簡単な焚き火を作り、持っていた干し肉を焼いて二人で分けた。  
火の灯りに照らされた少女は、どこか幻想的な雰囲気を纏っていた。

「そういえば、名前を聞いてなかった。」

「……あっ、すみません。私、シルフィといいます。」

「シルフィ、か。いい名前だ。」

「あなたは?」

「レオン。元冒険者。」

その言葉に、シルフィが興味深そうに目を輝かせた。  
「冒険者さんなんですね!やっぱり、強い方なんだ。」

「いや、弱い方だ。昨日追放されたばっかりでな。」

「つ、追放……?」

レオンは笑いながら、自分の事情を簡単に話した。無能と呼ばれ、仲間に見捨てられたこと。  
シルフィは悲しそうに眉を下げた。

「それって……全然無能なんかじゃありません。あんな魔獣、一瞬で倒したじゃないですか。」

「俺にもよくわからないんだ。気づいたら勝手に力が出てて……」

そう言いながら、レオンは手の紋章を見せた。  
シルフィは息を呑み、焚き火の向こうで一歩後ずさる。

「そ、それ……!古代の印……!」

「古代の印?」

「はい。伝承で読んだことがあります。千年前、“黎明の王”と呼ばれた英雄の証。封印の女神から授けられたと……」

レオンの胸がどくりと鳴った。  
女神ルミナの言葉を思い出す。「黎明の継承者」……やっぱり偶然じゃない?

シルフィは震える声で続けた。  
「もしそれが本物なら……あなたは、神々の血脈に選ばれし者……」

「待て、そんな大層なもんじゃ――」

レオンが笑って否定しかけたとき、洞窟の外から重い音が響いた。  
地鳴り。  
空気が押しつぶされるような低音が辺りを揺らす。

「なに……?」

シルフィの顔が蒼白になる。  
「まさか、さっきの魔獣の親……!」

外でものすごい咆哮が鳴り、岩壁が揺れる。  
レオンは即座に立ち上がり、洞窟の外へ出た。  
見上げると、森の木々の向こうに、異様な巨体が立っていた。

黒い鱗に覆われた狼。いや、もはや狼ではない。背には蝙蝠のような翼があり、赤黒い魔力が立ち昇っている。  
明らかに上級どころか、災厄級の魔獣だ。

「……こんな近くに、災厄種が?」

シルフィが震えながら後ろに下がる。

「レオンさん、逃げて!あれは討伐隊でも全滅するような――!」

レオンは静かに息を吐いた。  
手の紋章が再び熱を帯びる。

「逃げるのは嫌いなんだ。誰かを助けて逃げたら、きっとまた後悔する。」

彼は剣を抜いた。月光を受けて鈍く光る古びた刃。  
決して名剣ではないが、手にした瞬間、何かが共鳴した。

「来いよ。俺が“無能”かどうか、試してみろ。」

魔獣が咆哮し、赤黒い光を吐き出した。  
地面が爆ぜ、空気が焦げる。レオンは結界を展開。透明な光の膜が瞬時に現れ、すべてを弾いた。

「な……!?」

自分の想像を超える力。結界の中でさえ、衝撃は届かない。まるで天地を支配するような感覚が体を包む。  
心の奥底で、何かがささやく。

――黎明の王よ、その力を恐れるな。

レオンの瞳が光を帯びた。  
左手を上げると雷鳴が森を駆け抜け、彼の周囲を光の輪が巡る。  
魔獣が再び突進した瞬間、雷が落ちた。

一瞬の閃光。そして沈黙。

地面に巨大な痕跡を残して、災厄級の魔獣は跡形もなく消えた。  
ただ夜風に乗って、静かに灰が舞う。

膝が少し震えた。力を使いすぎたせいだろうか。  
それでも、胸の奥は不思議と澄んでいた。恐怖も後悔もない。ただ、一つの確信だけがある。

「……これが、俺の力。」

洞窟から駆け寄ってきたシルフィが彼の腕を掴んだ。  
「レオンさん……すごい……!」

その瞳は涙で光っていた。レオンは照れくさそうに頭を掻く。  
「ただの火遊びだよ。偶然さ。」

そう言ったが、シルフィは首を横に振る。  
「違います。あなたは、本当に……黎明の継承者です。」

焚き火の小さな炎が、二人の影を静かに揺らした。  
夜の終わりが近い。新しい出会いと、新しい運命の幕開けを告げるように、東の空がうっすらと白んでいた。

続く
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