最弱だと追放された俺、実は神々の加護持ちでした 〜知らぬ間に世界最強になってた俺を今さら呼び戻そうとしてももう遅い〜

fuwamofu

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第2話 最弱の称号と不可視の加護

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森を吹き抜ける風が、倒れた木々の間をすり抜けていく。数刻前まで盗賊団がいた場所には、静寂だけが残っていた。焦げ跡ひとつない――それが逆に異様だった。爆発が起きたというのに、破壊の跡も火の粉もない。ただ生命の気配だけが、あたたかく辺りに満ちている。  

レインは剣を下ろしたまま立ち尽くしていた。手が震えていた。恐怖ではない。理解の及ばない出来事に対する混乱だった。  

「……今、俺がやったのか?」  
自分の声が、森の奥で小さく返ってくる。  

すぐそばでは、少女が座り込んでいた。金色の髪が月光を受けてゆらゆらと光る。淡い青の瞳には、驚きと安堵、それから畏怖が混じっていた。  

彼女は体を起こして、深く頭を下げた。  
「……助けてくださって、本当にありがとうございます。」  

「あ、ああ。いや、助け……っていうか、気づいたら勝手に……」  
レインは頭を掻きながら、曖昧に笑った。  

少女は困ったように微笑む。「自覚がないのですね。けれど、あの力……ただ者ではありません。」  

「そんなわけないだろ。俺は“最弱”だって言われて、パーティーから追い出されたばかりなんだ。」  

その言葉に、少女は小さく眉をひそめた。「最弱? そんな冗談を言うには、あなたの周囲の魔力が強すぎます。」  

「魔力が……? いやいや、それは何かの間違いだよ。」  

少女はふと、胸元の飾りを取り出した。それは水晶のように透き通った石で、内部に淡い光がゆらめいていた。  
「これは真実を映す“識晶”。魔力や加護を正確に測ることができます。」  

レインが首をかしげる間に、少女はその石を彼の前に掲げた。瞬間、水晶が白く輝き、眩い光が辺りを包む。  

「うわっ……!」  

光が収まると、石の中には複数の文字が浮かんでいた。  

『加護:創世神ルヴァナの祝福 効果:不明 階位:測定不能』  

少女が小さく息を呑んだ。  
「……ルヴァナ神の加護……? そんなもの、神話の時代で途絶えたはず……!」  

レインはぽかんとしたままだった。  
「な、なんだそれ? あんまりピンとこないんだけど。」  

「ルヴァナ神は、かつて七柱の創世神の一柱。失われた世界を再構築した存在です。その加護を持つ人間など、本来この時代には存在しません。」  

「…………」  

しばらく言葉を失っていたレインは、ようやく苦笑した。  
「つまり俺、伝説の生き残りみたいな扱い?」  

少女は真剣な顔でうなずいた。「ええ。あなたは、この地に再び神々の力を宿した“鍵”になるのかもしれません。」  

そんな大げさな話は信じられなかった。だが、盗賊団が一瞬で消し飛んだ現実が、それを否定できなかった。  

ふと、少女が自分の胸に手を当てて名乗った。  
「私はリア・エルミス。この国――アルミリア王国の第二王女です。」  

「……王女……!?」  

呆然とするレインを見て、リアは少し微笑んだ。「あなたが命を救ってくださったおかげで、私は彼らの手から逃れられました。本来なら護衛もいたのですが、待ち伏せに遭って……」  

なるほど、そういうことだったのか。彼女が助けを求めていた理由がようやく理解できた。  

「それなら、王都まで送るよ。森はまだ危ないし、俺もこのままじゃ行き場がない。」  

リアはうれしそうに目を輝かせた。「それなら、ぜひお願いしたいです。……レイン様。」  

「いや、“様”はやめてくれ。普通にレインでいい。」  

そのやりとりの後、二人は夜の森を抜け、近くの廃小屋で一夜を過ごすことにした。  

*  

朽ちかけた屋根の下、焚き火が小さく揺れている。木の枝に吊るした鉄鍋でスープが煮え立つ音がした。レインが小さな匙で味を確かめると、意外と悪くない。  

「こんな場所でも料理できるんですね。」リアが感心したように言った。  

「昔から旅ばっかりしてたからな。これくらいは慣れてるさ。」  

静かな時間が流れる。焚き火の明かりがリアの顔を照らし、その影が微かに揺れた。淡い金髪が光を受け、星のように輝いている。  

「ねえ、リア。さっき言ってた“加護”って、そんなに特別なの?」  

「ええ。普通の人は、せいぜい小さな加護――“火耐性”や“治癒力上昇”程度です。でも創世神の加護は、人の枠を超える。世界の理そのものを変えてしまうと言われています。」  

レインは焚き火を見つめながら、小さく息を吐いた。  
「……そんな力、俺はいらないな。」  

「どうして?」  

「だって、力を持っても結局、人はそのせいで失うものも多いだろ? 俺はもう、“仲間”を失うのは御免だ。」  

リアはレインを見つめ、少しだけ悲しげに微笑んだ。  
「優しいのですね、レインは。」  

「そうでもないよ。ただの臆病者さ。」  

そう言って笑う彼の横顔を見ながら、リアは心の中で思う。――この人は、気づいていないだけで、本当に強い。  

*  

翌朝、森を出るために歩いていると、レインは奇妙な気配に気づいた。地面がかすかに震えている。  

「……また盗賊か?」と身構えたその時、茂みの中からぬるりとした影が現れた。  

「スライム……?」  

どこにでもいる最弱の魔物のはずだった。だがその体は透き通った蒼い光を放っている。普通のスライムではない。  

リアが小さく息を呑んだ。「聖属性を帯びている……! あのスライム、ただの魔物ではありません!」  

スライムはレインの足元に寄り、ころん、と小さく跳ねた。まるでじゃれているようだった。  

「お、おい。なんだこれ……ついてくる気か?」  

リアが観察するように言う。「どうやら、あなたに懐いているようです。」  

レインが膝をついて手を伸ばすと、スライムはうれしそうに腕に乗り、その中に淡い紋様を浮かべた。  

瞬間、レインの視界にシステムウィンドウのような光が浮かぶ。  

『契約完了。神獣ルミナ、主を得る。』  

「……神獣?」  

リアが驚愕の声をあげた。「ルミナ……まさか、“光の守護者”!?」  

スライム――いや、神獣ルミナは、ぷるんと形を変え、宝玉のような半透明の姿になった。その中には、光の紋章が輝いていた。  

「ちょ、ちょっと待って。俺、本当にどうなってるんだ……?」  

レインは額を押さえた。昨日の爆発に続き、今日は伝説級の存在と契約。どう考えても現実味がない。  

リアは静かに言った。「やはりあなたは、“選ばれし者”なのです。神の加護と神獣の契約者など、歴史上に存在しません。」  

困惑するレインを見て、リアは少しだけ笑った。  
「でも、安心してください。私はその力を恐れません。むしろ誇らしい。あなたが私を救ってくれたことを、私は忘れませんから。」  

レインは肩をすくめて笑い、ルミナを頭の上に乗せた。  
「……なんか、賑やかになってきたな。」  

森の出口の先には、朝の光を浴びる山道が続いている。その先に王都がある。だが、そこにはまだ知らぬ陰謀と、かつての仲間たちの動きが待っていた。  

無自覚のまま、レインの運命は静かに世界の中心へと転がり始める。  

(続く)
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