最強お嬢様の重課金ガトリング砲無双記

かるみあ

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【第一章】大規模お掃除を開始いたしますわ!

資源制限? 買えばよろしいのでは?

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 二次予選の海域を、一発一万ゴールドの弾丸で「大掃除」しながら突き進んだ『ロイヤル・セシリア号』。

 結局、一晩中船の上で優雅に過ごしたセシリアは、ようやく重い腰を上げ、島に用意された既存の港を見下ろした。

​「……アイザック。わたくし、一晩待てば鉄ぐらいにはなるかと期待しておりましたが、やはり無理でしたわね。あの不潔な木の停泊所に、わたくしの『ロイヤル・セシリア号』を触れさせるなんて、やはり考えられませんわ」
​「お嬢様、昨晩からずっと言ってますよぉ! あそこはこの島で唯一の公式な港なんですぅ! みんなそこで我慢して荷下ろししてるんですから、お嬢様もサッと降りてくださいぃ!」

​ モカが必死に説得するが、セシリアは扇子をパサリと閉じ、慈悲深い瞳で島を見つめた。

「あら、モカさん。わたくしは自分のことだけを言っているのではありませんのよ? あのような脆くて汚れた木材では、皆様が荷物を運ぶ際にも不便でしょう。……ええ、決めましたわ。では、港を整備いたしましょう!」

 セシリアが指をパチンと鳴らすと同時に、船底から巨大な魔導重機が次々と射出され、既存の桟橋を凄まじい音と共に粉砕し始めた。

​「こ、コラァ! 君たち! 何を勝手に港を壊しているんだ!」

​ 鼻息を荒くして駆け寄ってきたのは、大会運営のバッジを胸に付けた試験官だった。後ろには島の役人たちも引き連れている。

​「ここは大会運営の管理下にある公共施設だぞ! 器物損壊で即座に失格処分に――」
​「あら、アイザック。この方は何を仰っているの? わたくしはただ、わたくしの土地を綺麗にしようとしているだけですわ」

​【了解しました。……試験官殿、確認を。三分前、この港湾地区の所有権および管理権は、ローゼンブルク家による『一括決済』で譲渡されました。これが電子契約書と、島への寄付金三兆ゴールドの振込証明書です】

​「さ……三兆……!? この島の予算の、百年分……だと……!?」

​ 書類を提示された試験官は、その桁外れの数字に目を見開き、そのまま白目を剥いて桟橋(の残骸)の上に崩れ落ちた。

​「さあ、お掃除の続きをなさい。役人の方々、お礼は結構ですわよ? これからはここを『セシリア・ゴールデン・ポート』と呼びなさいな」

​ 再開発は加速する。粉砕された瓦礫は、瞬く間に黄金の装甲と純白の大理石によって覆い尽くされ、数分後には、迷宮の島に突如として「黄金の宮殿」が突き出したようなプライベート・ポートが完成した。
​ 
​「お、お嬢様……これ、港のスペックがとっくにおかしいですよぉ! この防波堤、中身が全部ミスリル製じゃないですかぁ! どれだけ物理防御高めてるんですぅ!?」
​「あら、波風が強いと船が揺れてしまいますもの。これくらい当然ですわ」
​「あっちの街灯も、魔導石じゃなくて全部一級品のダイヤモンドが埋め込まれてて眩しすぎるですよぉ! それに、あの待合室は何ですかぁ!? なんで港に五ツ星ホテルの最高級ラウンジが併設されてるんですぅ!?」
​「冒険の合間に、ふかふかのソファーでお茶が飲めないなんて、地獄に等しいでしょう?」
​「お嬢様にとってはそうでしょうけどぉ! これもう港じゃなくて、お嬢様専用の要塞都市ですよぉぉ!」

​ モカの絶叫が響く中、セシリアは満足げに黄金の地面を踏みしめた。

​「さあ、これでようやく、わたくしに相応しい一歩が踏み出せますわね」
​​「これもう停泊所じゃないですよぉ! 最前線の要塞基地ですぅ! 隣の冒険者さんたちが怖がって荷物まとめて逃げ出してるんですよぉ!」
​「あら、失礼な。防犯対策は淑女の嗜みですわよ? それからアイザック、空気が少し磯臭いですわね」

​【了解。広域香水散布装置、起動。本日の香りは『一兆ゴールドの残香(ベルガモット仕立て)』です】

​ プシューッ! という景気のいい音と共に、港一帯が最高級ブランドの香水で満たされていく。
 そして極めつけは、港の片隅に建設された謎の重工業施設……。

​「……お嬢様、あの中で火花を散らしてハンマー振ってるの、『鉄と魔力の天秤亭』の店主さんじゃないですかぁ!? なんでこんな島にいるんですぅ!?」
​「あら、契約金を一括決済して、お店ごとこちらに移転していただきましたの。ほら、わたくしのガトリングは少し弾薬消費が激しいでしょう? 現地生産、現地消費……これぞ、わたくし流のエコですわ」
​「お財布には全然優しくないエコですぅ! 店主さんが『もう帰りてぇ』って顔でダイヤモンドの弾丸を削ってるんですってぇ!」
​「お黙りなさいな、モカさん。立派な停泊所になりましたわ。これでようやく、紅茶がいただけますわね」
​「立派すぎて、迷宮の魔物が震えて出てこなくなっちゃうんですよぉ!」


 ◇◆◇


 その頃、島の中心部に設置されたギルドキャンプ。
 数多の修羅場を宴会で乗り越えてきたトップギルド『乾杯同盟』の面々は、焚き火を囲んで真面目に(彼らなりに)攻略会議を開いていた。

 今回の公式イベント『ペア・サバイバル』は、各ギルドから代表二名のみが出場可能な特殊大会だ。
 もちろん、ギルド非所属のプレイヤーも参加できる。
 迷宮内部に入れるのは登録された二名のみ。
 拠点の設置は島外周に限り許可されているものの、内部への直接介入は不可能。それ以外のギルドメンバーは前試験地点で待機し、試験終了後に会場へ転送される。

​『いいか野郎ども! 今回の迷宮は「資源不足」という名の超絶クソゲーだ! 勝っても負けても美味い酒を飲むために、いかに弾薬と食料をやりくりするかが鍵になる!』

​ 団長のバッカスが、レイピアを振り回しながら陽気に叫ぶ。

​『それ、爆発すれば良くない?……って言いたいけど、概念って爆発できるもんじゃないしなぁ。それに、最大効率でドカンといかないと。資源不足で爆薬使えないんじゃ面白くないしさぁ。あー! 派手一発にやりたい!』

​ 爆発大好きイグニスが、愛用の銃火器を撫でながら退屈そうに欠伸をした。

​『これ危険なん?  じゃあ俺、ちょっと魔物の巣に突撃してきてええ?  運が良ければ物資は手に入るやろ!』

 拳を鳴らしながら、今すぐ崖から飛び降りかねない勢いで笑うのは、ラックだ。

​『……だめだぁ、こいつら。誰も計算って言葉を知らないのかよ』

​ 副団長のカインが、スナイパーライフルの手入れをしながら胃を押さえて溜息をつく。だがその時、血相を変えたギルドメンバーが報告に飛び込んできた。

​『ほ、報告します! 港に、とんでもないものが現れました!』
​『なんだぁ? 巨大な海獣か? それとも伝説の酒樽でも流れてきたか!?』

​ バッカスが身を乗り出すが、報告の内容は彼の予想の斜め上……いや、成層圏の彼方を行くものだった。

​『……セシリア・フォン・ローゼンブルク、通称「噂のお嬢様」が、港を勝手に黄金へ改造! さらに、停泊所に「全自動砲撃塔」を乱立させています!』
​『……は? 砲撃塔? 三次試験に固定砲台を持ち込むって!?』

​ カインが思わず素っ頓狂な声を上げる。だが、報告はまだ終わらない。

​『それだけじゃありません! 停泊所内に軍事基地並みの弾薬工場を建設! 二十四時間体制で、一発一万ゴールドの魔導弾を現地生産し始めました!』
​『……は?』
​『さらに、港一帯に高級香水を散布! 魔物の死臭をバラの香りで上書きしながら、お嬢様は優雅にティータイムを楽しんでいる模様です!』

​ キャンプに、死のような(あるいは爆発の後のような)静寂が流れた。
 自分たちが「いかに弾丸一発、パン一切れを節約するか」を真剣に議論している横で、相手は港を要塞化し、弾丸を現地で札束に変えているのだ。

​『……おい。迷宮攻略って、なんだっけか?』

​ カインが虚空を見つめて呟く。一方で、バッカスとイグニスの瞳には、見たこともないような「面白いものを見つけた」輝きが宿っていた。

​『勝ったら乾杯、負けても乾杯……だが、あのお嬢様は勝つために港ごと買うのかよ! 最高じゃねぇか!』
​『あはは! 弾丸を自給自足? 爆発させ放題じゃん! あの子、めちゃくちゃ面白そう!』
​『あの子危険なん? じゃああそこ黄金の港に突撃してきてええ!?』
​​『……あー、収集がつかない。あのお嬢様どうなってんのさぁ……?』


​ カインの胃がかつてない悲鳴を上げる中、島中に「バラの香り」と「ガトリングの試射音」が、不敵に響き渡るのであった。
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