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ホカホカのご飯

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お風呂から出たら、食事を用意してくれていた。
産まれてこの方、冷たくて固いパンくらいしか食べたことが無い。
目の前にある野菜がゴロゴロ入ったシチューや、柔らかなパンを見て涎が止まらない。

「ナックルさんこれ、僕が食べていいんですか?」
「なんだ、いらなかったか?」
「いえ!食べます!」

白湯は口にしたことがあるけど、あったかい食べ物は初めてだ…
他の家族がシチューという物を食べている所はよく見ていた。
スプーンで掬って口に運んだ。

「んーー!!」
「うまいか?」
「うまい!」

なんだこれ…美味しい…
こんなに美味しい物だったのか。
他の食べ物もよく知らないからうまく表現出来ないけど、トロッとしてて甘くて少し塩気もあって、凄く凄く美味しい。
野菜も、これはニンジンっていう物だったっけ。
柔らかくて何とも言えない旨味が口に広がる。
それに、かじりつかなくてもパンがちぎれる。

「うまそうに食う奴だな。」
「お腹減ってて…ナックルさん、本当にありがとう。」
「いいって。連れ込んだ俺の、せめてもの詫びだ。」
「ぅ…」

思い出しちゃった。
ここであんな事やこんな事しちゃったんだった。
今度から、太陽の下に出た後は人前に出ないようにしよう。

「お前、名前は?」
「ニーニャです。」

本当はラニーニという名前だった。
でも、今日からその名前は捨てた。
ニーニャという言葉はこの国では、幸福に恵まれるという意味だ。

「そうか。ニーニャ、宿を探してるって事だったが、もしかして住むところが無いのか?…その言いにくいが、身なりも、どうにも旅人にも見えんしな。」

僕の身なりは、みすぼらしい。
とても普通の生活をしているようには見えないだろう。

「えっと詳しいことは言えないんだけど、僕、家が無いんてす。だから明日色々物件を見にギルドに行こうかなって思ってて…」
「そうか。それならコレを持っていけ。この先色々役に立つだろう。今後何かあったら、いつでも俺を頼ると良い。」

渡されたのは、金色のバッチ。

「それ見せたら俺の知り合いって分かって、色々と話がスムーズに進むから。遠慮なく使え。」
「うわあ!ありがとうナックルさん!さすがギルド長!偉い人!」

やっぱり、生まれ変わった僕は運が良い。
良い人に恵まれてる。

「じゃあな、俺は隣の部屋のソファーで寝てるから。おやすみ。」
「あ、ありがとう。おやすみなさい。」

ベッド、僕が使っていいのか。
いそいそとフカフカのベッドとフワフワの毛布の間に潜り込む。
こんなに気持ち良い寝床がこの世にあるなんて。

絶対、フカフカのベッドも買うぞ。
明日の予定や、これからの事を考えていたら、いつの間にか寝ていた。




そして次の日。
気持ち良いベッドで寝過ぎたみたい。
外はもう明るかった。

ナックルさんは、もう既にギルドに仕事にいっているようだった。

『おはよう。俺は先に出る。鍵は次会ったとき返してくれれば良い。色々気を付けろよ。』

と置き手紙と部屋の鍵がある。
窓から外を見ると、もう街は賑わっていた。


「よし!出掛けよう!!」

僕の人生を始めよう。
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