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恩人
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ナックルさんの話によると。
路地に居た子供たちは主に孤児なのだそうだ。
数年前に起こった国へのクーデターの結果だという。
王の独裁政治が酷く、貧富の差が広がるような政策ばかりがまかり通っていたため、その不満が爆発した。
「とにかく国の制裁が酷かった。当時の王は強力な魔術師を使役する非道な男だった。クーデターを企てている奴らを皆殺しにするつもりだったらしい。大勢が死んだ。」
噛み締めるように話すナックルさんの表情は、どこか悲しそうだ。
クーデターは達成されたけれど、それまでには多くの人が制裁を受け殺害された。
王は変わったけれど、貧富の差が直ぐに埋まるはずも無く、国の建て直しに手一杯なのが現状の今は孤児への保障まで対応が行き届いていない。
子供たちは未だに貧困にあえぎ苦しい生活を強いられている。
個人的に孤児院を作って保護する人もいるそうだけど、善意の寄付で成り立っている経営は基本的に厳しい。
だから孤児院の数も少なくて、保護してもらえない子供も多い。
路上生活者、特に若い人や子供は人身売買などに利用されたり、格安賃金での労働を強いられたり、生活のために自ら犯罪に手を染めたりと、ますます荒れていく。
「ギルドとしても何とかしたいんだがな。今は、食料の炊き出しを定期的にやったり、路地の見回りを強化したり、数は足りないが路上生活者用の臨時テントを用意したりする事で精一杯だ…情けないが。」
「そうなんだ…。」
全く知らなかった。
世間知らず過ぎる。
僕が屋敷に閉じ籠っていた時に、国ではそんな事があっていたなんて。
あの女の子は、孤児院にさえ保護してもらえない路上生活の子なんだろう。
ふかふかのベッドや、温かいお風呂、美味しいご飯、そんな物とは縁遠いんだろうな。
僕とは違うけど、僕と一緒だな…
誰か助けてくれないのかな。
僕がナックルさんに助けて貰えたように、誰か。
…誰かって誰だろう。
「ナックルさん、僕ね。」
水面をパチャパチャ遊びながら昔話をする。
「ナックルさんに会うまで硬いパンしか食べた事が無かったんだ。温かいお風呂にも入ったこと無かったし、床みたいな所で寝てた。」
「え?」
「両親も兄弟も一緒に住んでて別に家が貧しいわけじゃなかったんだけど、訳あって、そういう生活を強いられてた。物心ついた時から。」
「そうだったのか。」
「うん。」
ナックルさんは、真剣に聞いてくれてる。
「ナックルさんの家に泊めて貰った時に、シチュー食べさせてくれたり、色々お世話してくれたでしょ?僕、それが本当に夢のようで。お風呂で号泣しちゃったくらい嬉しかったんだ。」
あの時の事は鮮明に覚えてる。
きっかけは少し強引でスケベだったけど、寝る場所があるだけで凄く有り難かった。
優しい人も居るんだって知った。
「ナックルさんみたいに、誰かを助ける事が出来るようになりたいな…。」
「俺は、そんな立派じゃねぇけどな。」
「立派だよ。僕の恩人だよ。…魔法を覚えて、世の中の事をもっと勉強して、仕事して稼いで。そしたら、僕にも何か出来るかな。」
「どうだろうなあ…俺は上手くいってねぇからなあ…。正直出来るとは言い切れんな。でも、何もしねぇよりはマシだ。」
「うん。何かしようと思う。」
自分の人生を楽しむだけじゃなくて、同時に誰かの人生を楽しい物にする手助けが出来れば、最高じゃないか。
そう思った。
「まさかっ…そんな境遇だったなんて…」
突然近くで涙声がする。
路地に居た子供たちは主に孤児なのだそうだ。
数年前に起こった国へのクーデターの結果だという。
王の独裁政治が酷く、貧富の差が広がるような政策ばかりがまかり通っていたため、その不満が爆発した。
「とにかく国の制裁が酷かった。当時の王は強力な魔術師を使役する非道な男だった。クーデターを企てている奴らを皆殺しにするつもりだったらしい。大勢が死んだ。」
噛み締めるように話すナックルさんの表情は、どこか悲しそうだ。
クーデターは達成されたけれど、それまでには多くの人が制裁を受け殺害された。
王は変わったけれど、貧富の差が直ぐに埋まるはずも無く、国の建て直しに手一杯なのが現状の今は孤児への保障まで対応が行き届いていない。
子供たちは未だに貧困にあえぎ苦しい生活を強いられている。
個人的に孤児院を作って保護する人もいるそうだけど、善意の寄付で成り立っている経営は基本的に厳しい。
だから孤児院の数も少なくて、保護してもらえない子供も多い。
路上生活者、特に若い人や子供は人身売買などに利用されたり、格安賃金での労働を強いられたり、生活のために自ら犯罪に手を染めたりと、ますます荒れていく。
「ギルドとしても何とかしたいんだがな。今は、食料の炊き出しを定期的にやったり、路地の見回りを強化したり、数は足りないが路上生活者用の臨時テントを用意したりする事で精一杯だ…情けないが。」
「そうなんだ…。」
全く知らなかった。
世間知らず過ぎる。
僕が屋敷に閉じ籠っていた時に、国ではそんな事があっていたなんて。
あの女の子は、孤児院にさえ保護してもらえない路上生活の子なんだろう。
ふかふかのベッドや、温かいお風呂、美味しいご飯、そんな物とは縁遠いんだろうな。
僕とは違うけど、僕と一緒だな…
誰か助けてくれないのかな。
僕がナックルさんに助けて貰えたように、誰か。
…誰かって誰だろう。
「ナックルさん、僕ね。」
水面をパチャパチャ遊びながら昔話をする。
「ナックルさんに会うまで硬いパンしか食べた事が無かったんだ。温かいお風呂にも入ったこと無かったし、床みたいな所で寝てた。」
「え?」
「両親も兄弟も一緒に住んでて別に家が貧しいわけじゃなかったんだけど、訳あって、そういう生活を強いられてた。物心ついた時から。」
「そうだったのか。」
「うん。」
ナックルさんは、真剣に聞いてくれてる。
「ナックルさんの家に泊めて貰った時に、シチュー食べさせてくれたり、色々お世話してくれたでしょ?僕、それが本当に夢のようで。お風呂で号泣しちゃったくらい嬉しかったんだ。」
あの時の事は鮮明に覚えてる。
きっかけは少し強引でスケベだったけど、寝る場所があるだけで凄く有り難かった。
優しい人も居るんだって知った。
「ナックルさんみたいに、誰かを助ける事が出来るようになりたいな…。」
「俺は、そんな立派じゃねぇけどな。」
「立派だよ。僕の恩人だよ。…魔法を覚えて、世の中の事をもっと勉強して、仕事して稼いで。そしたら、僕にも何か出来るかな。」
「どうだろうなあ…俺は上手くいってねぇからなあ…。正直出来るとは言い切れんな。でも、何もしねぇよりはマシだ。」
「うん。何かしようと思う。」
自分の人生を楽しむだけじゃなくて、同時に誰かの人生を楽しい物にする手助けが出来れば、最高じゃないか。
そう思った。
「まさかっ…そんな境遇だったなんて…」
突然近くで涙声がする。
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