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働こう。

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ナックルさんに焼肉のお礼を言って、家に帰ってきた。
今日の事を忘れないように日記に書く。
初級を卒業した事、焼肉を初めて食べたこと、勉強した事を使って勝てた事。
ナックルさんもハムライさんも、わざわざ粉塵爆発なんて起こさなくても簡単に勝てるはずなのに。
僕の事を考えて、面倒な方法を取ってくれたんだろうなあ。
二人の気遣いが嬉しくて、ますます勉強を頑張れる気がした。
来週から中級の魔法教室が始まる予定だ。


ペラペラと授業料などが記載された中級教室の冊子をめくる。


「高い…。」


授業料も馬鹿にならないなあ。
また気を引き締めて節約しながら暮らさないと。


「…働けばいいんじゃないか。」


日記を書いていて、ふと思いついた。
お金が必要なら働かないと。
それに僕は世間を知らな過ぎるから社会勉強にもなるだろうし。
初級魔法教室を卒業した事を証明するバッチもある。
これなら働き口が見つかるかもしれない。






次の日ギルドに職探しに来てみた。
求人のリストには様々な仕事が載ってて面白い。
一日だけ農場を手伝う依頼や、一般宅の家政婦さんの募集や、劇場の手品師の募集まである。
求人窓口のお姉さんと相談しながら仕事を探す。


「これはどうですか?条件はとても良いと思いますよ。初級魔法を使える人は優遇してもらえるようですし。」


見せてくれたのは食堂の店員さん募集中と書かれた物だった。
初級魔法で釜戸に火を着けることが出来る人は優遇してもらえるみたいだ。
うーん…確かに条件はいいんだけど…


「僕、中級魔法教室に通いながら出来る仕事がしたいので…朝昼夜で週五勤務はちょっと厳しいです。」
「ああ、そうなんですね。」


あ、ちょっと面倒臭いみたいな顔されちゃった。
確かに働いたこともない若造が何贅沢言ってんだって感じだよね。
でも魔法教室に通う事は、どうしても譲れない。


「では、こちらはどうですか。」


道路整備の仕事だ。
確かに週3だから教室には通えそうだけど…凄く太陽を浴びてしまいそうだなあ。
フェロモン制御は出来るようになったけど、疲れた時とか制御が疎かになるかもしれないし…
うーんと悩んでいると、ちょっと怒られた。


「土木仕事でキツそうだから嫌なんでしょう?貴方の経歴じゃ、そんなに選り好みは出来ませんよ。」


キツいから嫌がっているのでは無いんだけどな。
なるだけ身の危険を避けたいだけだ。
なんと説明したらいいかな…
フェロモンが出ちゃうんです!とも言えないし。

どうしよう。
…ん?

パラパラとリストの束を捲っていると、下の方にあった仕事に気が付いた。
これ凄く良いじゃないか。


「この求人凄く良いですね。僕これにします。」
「あ、これは…」


見つけたのは薬屋の助手募集といった求人。
週5日の勤務だけど夕方からの勤務だから魔法教室にも通える。
それに魔法を使える人歓迎って書いてある。
お給料も悪くない。
凄く良い条件だ。


「これは駄目です。」
「え、でも…」
「受かる人自体少ないですし、受かったとしても皆さん試用期間で辞めてしまいます。とても厳しいお店だと聞いています。なので貴方には無理です。もっと現実を見てください。」


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