5 / 8
⑤
しおりを挟む「はあ~、美味しかった…ご馳走様でした。」
最後は肝吸いを飲み干して、全部平らげた。
満腹だ。
いつぶりだろう、こんなに満腹になったのは。
胃袋が温かいもので満たされている。
久しぶりの感覚に思わず胃を摩って、ふう~と息を吐いた。
「平山さん、ありがとうございます。美味し過ぎて思わず泣いちゃいました。」
「お口に合ったようで良かったです。僕も楽しく食べれました。1人じゃない食事は久しぶりで、とても楽しかったです。」
「ああ、だから私を食事に誘ってくれたんですねぇ。」
「まあ…それもあります。」
それも?まだ他に理由があるみたいだけど、わからない。
まあ、いいや。
お上の考える事なんて下々の人間には分からないだろうし。
「本当に、ご馳走様でした。これで10日間くらいは何も食べずとも生きていけそうです。」
10日間というのは流石に冗談だけれど、本当に食べ物に困っていたから助かってしまった。
「実は親が作った借金を返してるんですが、生活がキツくて。特に今月は光熱費とか水道代とか、値上げの波が直撃しちゃって、もう食費を削るしかなくて。今日は本当に助かりました。」
「今月だけじゃ無いんじゃないですか?値上げしたのなら、きっと来月も再来月も大変でしょう。」
「そうなんですよねぇ…だから日中の仕事終わった後に日雇いバイトしたりして…長くても3時ぐらいには終わるので朝は間に合うし。でも、流石に眠くて。今日も帰る時に歩きながら寝ちゃいそうだったので、公園で目を覚まそうと思って滑り台に…」
朝は7時に起きて自然解凍しておいたパンをかじる。
飲み物はお湯を沸かすとガス代や電気代がかかるため水で我慢する。
顔を洗うのだって水だ。
お湯が出てくるまでの時間も水量も勿体無い。
化粧品は、ずっと前に貰ったサンプルのファンデーションと100円均一で購入したアイシャドウとアイライナーだけ。
口紅は贅沢だからしない。
服はリサイクルショップで買った物が3着あるから、それを着まわしている。
TVは無い。
エアコンも無い。
この時期は常に寒い。
なので寒くて耐えられないため出勤時間には早過ぎるが朝7時半に家を出て、職場に暖を取りに行く。
昼休みは、これまた持参した自然解凍したパンを齧りながらスマホでポイ活に勤しむ。
退勤したら、一旦帰宅してシャワーを浴びて着替えて日雇いバイトに向かう。
この時のシャワーだけはお湯をだす。
だけど、最短で無駄無く終わるように髪はショートに。ロングだと余計な水量も必要になるし、シャンプーやコンディショナーの量も多くなってしまう。
なので髪が伸びたらセルフで切ってしまうのが習慣になっている。
生まれてから美容室に行った事がない。
今日は19:00から26:00まで居酒屋でホールの仕事。賄いなどは無く腹ペコで働いた。
だから鰻が本当に本当に有り難かったのだ。
最近の日々の生活の話をしてるうちに、何だか、悲しくなってきた。
「本当は、朝は暖房を入れて、お湯で顔を洗って、TVでニュース見ながら熱いスープ飲んでトーストしたパンを食べたい…好きな化粧品だって使いたいし口紅だって塗りたい…昼休みだって皆んなみたいにランチ行きたいし、仕事終わったら家でゆっくりしたい。思う存分お湯出してシャワー浴びたいし、髪もロングにしてみたいし、あったかい布団で寝たい…」
思わず愚痴と涙がポロポロと出る。
こんな事を、この人に零しても迷惑なだけなのに。
「ご、ごめんなさ、…こんな…愚痴を。」
「いいえ、貴方の願いは至極真っ当な当たり前の願いです。頑張っているんですね。」
頑張ってる?
脳みそを拳銃でぶち抜かれたような衝撃だった。
……そうだよ、私、頑張ってるんだよ。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる