アサルト女神の一撃!〜不遇な前世を乗り越えて異世界でスローライフのはずが、魔王すら一撃の脳筋女神のせいで上手くいかない

ヒロ

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俺が望んだ異世界

世知辛い世の中の一撃!

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 冒険者ギルドに着いた。

 ここにいるのは職なしの荒くれ者ども。用心して掛からなければ、一瞬にして俺なんて塵芥だ。

「ふぅ……」

 この扉を開けばヤクザ並に恐ろしい男どもがいる。まずい、決心がつかない。

「ふむ……」

 格好つけてみたけどダメだ。
 よ、よし、もう少しだけ街を探索しよう!
 ここは俺にはまだ早かったようだ。

と、思ったのだが、

「ねぇ何してるの? 早く行きましょう! その扉を開ければそこは更なるファンタジーよ!」

「おい、馬鹿!」

 止めるが遅い。
 このアホ女神はド派手に、盛大な音を立てて扉を開け放った。

「っ! おお! まさにギルドって感じだな!」

「でしょ! すごいでしょ!」

 ビビってたのを思わず忘れるほど、感動的な光景だ。
 何故フォスが自身ありげなのかは知らないが、怖そうな奴もいけるけど酒を飲んでて絡んでこなさそうだ。
 いわゆるテンプレは俺にはなくていいから!
 チートはあっても俺の体はそのままだしな!

 なので、この女神がいつまでもいるのはいただけない。何をしでかすかわかったもんじゃない。
 どうせ役に立ってないしここでご退場願おう。

「よし! 行くわよ!」

「いや、もういいから」

「え……」

「そもそもお前なんの役にも立ってないしな。むしろ邪魔だ。帰ってくれ」

「ま、待ってよ、ユウキさん! 私これでもかなーり強いの! ユウキのこと守ってあげられるわ! 今ここで私を返したらきっとあなたは後悔する! 早まっちゃダメよ!」

「いいや! お前が俺にかける迷惑の方がデカい! いいか、俺はここでスローライフを送るんだよ! チートで自堕落生活を送るの!わかったらとっとと帰れ! 早く!」

「あ、あのー、そのー、ね、お、怒らないで欲しいんだけど……」

 妙に言いづらそうに、モジモジし出したフォス。
 な、何だ、まだこいつ爆弾を持ってやがったのか⁉︎

「言いたいことがあるなら––––」

「あのーここで騒がれるのはちょっと……」

 問い詰めようとしたら、ちょうど受付のお姉さんに怒られた。

 素直に謝ろう。こいつにも謝らせる。頭を鷲掴みにして強引に下げる。

「す、すみませんでした……」

 厳つい男どもに結果的にめっちゃ見られたので、正直ちびりそうでした。

「冒険者登録ですか?」

「あ、はい」

「こちらです」

おっぱいが大きいお姉さんに連れられて受付前に着いた。
 ふむ、他のお姉さんもおっぱいの大小はあるけど美人だな。
 それはいいとして、流れでフォスを連れてきてしまった。
 はぁ、まぁいい。あとで何処かに埋めてやる。何か持ち出す前に証拠隠滅だ。俺は関係ない。

「あの、大丈夫ですか?」

「あ、はい! 大丈夫ですよ! いやー思わずおねえさんに見惚れちゃいましたよー」

「あらお上手! お世辞でも嬉しいです」

華麗に流された。
別に悔しくなんかない。異世界ではモテるんじゃないかと、確証もなしに思っていた自分が恥ずかしいだけだ。

「それでは登録費用に千エメル頂きます」

「はいはい、千エメル……」

 ……って俺金持ってないんだけど。
 こういうのって初期装備でもらえるんじゃないの?
いや、こういう時のための案内係だ。

「金って持ってる?」

「? 持ってるわけないでしょ?」

 さも当然のように、まるで俺が悪いかのような顔をするフォス。

こ、こいつ使えねぇ……今までで役に立ったことあったか?
 い、いやそれよりも今はお姉さんから突き刺さる居た堪れない視線をどうにかしなければ。
 取り敢えず、この場を去ろう!

「す、すみませぇん、ちょっとトイレに……」

「そっちじゃありませんけど」

「あ、あはは! ですよねぇ!」

 余計に居た堪れない!

******************


「ねぇどうするの?」

「……」

取り敢えず端の方の席に逃げるように座った俺たち。
 さっきからこの駄女神はアホづらでこればっかりだ。 

「お前少しは自分で考えろよ。案内役なんだろ? だったらとっととその役目を果たせ」

「……そうは言っても何も思いつかないのよ」

「それはお前が何も考えてないからだ。これだから脳筋は」

「言ってはならないことを言ったわね! いいわよ! その減らず口を塞いであげるわ! 何でもやってやろうじゃないの!」

「ほう……」

 言ったなこいつ。だが、今までのフォスはさっぱり役に立っていない。頭で考えるのは無理だ。
だから俺のとっておきをそのままやらせよう。

「お前、ちょっとその体売ってこい。いくらかマシな金になるだろうよ」

「な⁉︎  今とんでもないことを言ったわね⁉︎  麗しくも気高いこの私に、汚らわしい男共の下の処理をしろと⁉︎」

「お前は見てくれはいいんだから一言も喋らなければいい値段つくだろうよ! 案内役なら少しでも俺のスローライフの役に立て!」

「ぬわぁんですって! 女神たるこの私を買えるお金なんて世界中からかき集めても足りないわよ! 貴方こそそこらへんで肉体労働でもしてくればいいじゃない! 一日働けば一万エメルくらいにはなるわよ!」

「嫌だね! 俺はこの世界で一秒たりとも働かないって決めてるんだよ! それにお前が一時間相手するだけで五千は堅い! 少しも役に立ってない穀潰しなんだからとっととその体売り飛ばせ!」

「うぅわぁぁぁああん! そんなひどいこと言わないでよ! 私だって頑張ってるじゃない! 体は売りたくないの!」

 泣き喚き出すフォスに流石に罪悪感。別に本気で言ってたわけじゃないし。ほんとだぞ?

 はぁ……しょうがない。フォスは体を売らなさそうだしな。これだけはやりたくなかったが。



 二十分後、俺達は二千エメルを手に再びお姉さんの前にいた。
 お姉さんから突き刺さる疑心の目が怖い!

 大丈夫! あとでちゃんと返すから! 元はと言えばボコボコにして気絶させたフォスが悪い!

 うん! 

 というわけで、登録お願いします! 
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