ヒトカラとギャルJK〜ヒトカラしてたら美少女ギャルが部屋を間違えて入ってきた。仲良くなった〜

福寿草真@異世界エステ1巻12/25発売

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ヒトカラとギャルJK

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 人との出会いには様々あるが、運命の出会いというやつは得てして偶発的なものなのかもしれない。

「謎々だらけのだらけたこの日々で──」

「……ごめーん、おそくなっ──あ……」

 毎週土曜日に行うヒトカラ。僕の数少ない至福の時間。
 ここには自分だけだからと、いつものように大好きなボカロ曲を熱唱していると、唐突にガチャリと、開くはずのない部屋の扉が開き──1人のギャルが姿を現した。

 マイクを手に大口を開ける僕と、ゆるくウェーブがかった金髪を靡かせ顔を上げた美少女の目が合う。

 まるで時が止まったかのように無言で見つめ合うこと数秒、ここで少女はやらかしたことに気がついたのか「すみません、部屋間違えました」と言いながら小さく頭を下げる。

 そしてなぜかチラとモニター、僕の順で視線をやった後、すぐさま部屋を出て行った。

 ゆっくりと扉が閉まっていき、ガチャリという音がやけに大きく耳に届く。
 たった数十秒の出来事ながら、これまで経験したことのないそれに僕はマイクを手に固まる。

 そして絶えず音楽が流れる中で、先程のモニターと僕を見た彼女の行動を思い出し──もしかしてオタクだとキモがられたか!? と1人悶えた。

 ◇

 至極当然ではあるが、その後は特に部屋を間違えて入ってくる人などいなかったため、僕はいつも通りにヒトカラを楽しんだ。

 そしてあの気まずい瞬間から1時間ほど経過したところで、僕は飲み物が空であることに気づいた。

「あーどうしよ」

 僕の行きつけであるこのカラオケ店ではドリンクバー制を採用している。
 つまり空になったのなら補充すればいいのだが、部屋の残り時間が30分程度しかないため、追加するか否か悩んでしまったのである。

 しかし考えること数秒。
 30分とはいえこれからラストスパートで高めの曲を連続して歌うだろうと考えた僕は、結局飲み物を補充することに決めた。

 という訳で僕はコップを手に取ると、席を立ち部屋の入り口へと向かう。
 そしてガチャリとドアを開けようとし──ここで先程の美少女ギャルの姿が頭に浮かんだ。

 ……もしこの先でたまたま遭遇したらどうしよう。

 いや、そんなの適当に会釈なりしてやり過ごせばいいじゃないかと誰しもが思うかもしれない。
 しかし悲しいかなこちらは普段クラスの隅で1人本を読んでいるまごう事なき陰キャである。
 相手が僕の対極に位置するような存在であるからこそ、その無難にやり過ごすことすらできず、結果テンパってキモがられる未来がどうしても思い浮かんでしまうのだ。

 ……と、そんなことを考えながらドアノブに手をかけたまま静止すること数秒。結局「いや、そもそも遭遇して何らかの反応があると思うのが自意識過剰か」という結論に至った僕は、一応周囲を確認しながらも部屋を出ると、その足でドリンクコーナーへと向かった。

 ……よかった、あの子はいない。

 結果的にドリンクコーナーには誰の姿もなかった。僕はほうっと安堵の息を吐く。

 そして落ちついた心のまま、いつも通り炭酸水をコップへと汲んでいると──ここで後方の扉がガチャリと開いた。

 途端に漏れ出てくる今どきの流行曲を歌う若い女声。その音にまさかと思うのと同時に、僕の背に「あっ、きみは」という聞き覚えのある少女の声が聞こえてくる。

 僕はギギギと壊れたロボットのように後方へと視線をやると、そこにはあっと呆けた表情を浮かべる先程の美少女ギャルの姿があった。

 ……あぁ、この世に神様はいないんですね。

 最も避けたかった状況に遭遇したことから僕が自身の運の無さを心の中で嘆いていると、少女は気まずそうな笑みを浮かべながらこちらへと近付いてきた。

「あの、さっきはごめんね」

「あっ、いえ。お気になさらず」

 僕はどもりながらも何とか返事をする。
 そしてさすがにこれ以上対面するのはしんどかったため「えっと、失礼します」と口にしながら早足で部屋へと戻ろうとしたところで──

「あ、まって!」

 とどういう訳か少女に呼び止められた。

 僕はその行動の意図がわからず脳内をハテナで埋め尽くす。しかし流石に無視はできなかったため、顔だけ振り返った。

「えっと、なにか」

 僕の声に、少女は少しだけ緊張を覗かせながら、こちらを窺うように口を開く。

「さっき歌ってたのって、もしかしてぽてとさんの『なんてね』?」

「……!? は、はい。そうですけど」

「やっぱり!? えっ、じゃあさ! もしかしてボカロすき?」

「はい、大好きですが……」

「まじ!? 実はあたしもなんだよね!」

 言って少女は晴れやかな笑みを浮かべる。

 実際彼女の好きは本当なのだろう。
 なぜならぽてとさんの『なんてね』は名曲でありながら、決して知名度が高い曲ではない。
 さらに言えば、ぽてとさん自体誰もが知ってるようなボカロPではなく、いわゆる知る人ぞ知るボカロPである。

 つまりそれだけで彼女がニワカではないことがわかる。

 僕はぽてとさんの曲を知っているレベルのボカロ好きと初めて出会った感動を覚えながらも、しかし目前の美少女が醸し出すなんとも言えない圧に押されていると、ここで別のお客さんが少女が立っていることでドリンクバーを利用できず困っていることに気がつく。

「あ、あの。邪魔に……」

「あっ、すみません!」

 少女はハッとしてそのお客さんへ謝った後、変わらず晴れやかながら、美人故の威圧感のある表情で僕の目の前へと近付いてくる。そして先程の勢いのままに再び口を開こうとし──ここで何かに気がついたのか、少女はスクールシャツの胸ポケットからスマホを取り出した。

「ねぇ、ラインやってる?」

「えっ? あ、はい。アカウントはありますけど……」

「じゃあ交換しない?」

「えぇ!?」

「……ダメ?」

「……いや、いいですけど」

「マジ? やった!」

 目の前で心の底から嬉しそうな表情を浮かべるギャル。
 僕はこれまでの流れがあまりにも非現実的過ぎたため、半ば呆然としたまま、流されるように『友達追加』をする。

 瞬間、僕のスマホに表示されるデフォルメされたボカロキャラ──水色が主体となっている──のアイコンと彼女の名前。
 僕は非現実的な現状を確認するかのように、思わずその名をポツリと口にする。

「めい……さん?」

「そ、北山芽依きたやまめい。夢女の1年。きみは……夕真くん?」

 ……夢女。女子校なのか。

 内心そんなことを思いながら、僕は相手が同じボカロ好きだと知ったことで少しだけ落ち着いた状態で言葉を返す。

「あ、はい。小町夕真こまちゆうまです。藤高の同じく1年です」

「藤高って藤倉高校!?」

「はい、そうです」

「マジ!? 頭よ! えってか、めっちゃ近いじゃん!」

 夢女。正式には夢ヶ崎女学院高等学校だったか。その位置を正確には把握していないが、実際割と近く、確か両学校の距離は3キロほどだったはずだ。

「確かに結構近いですね」

「ね!」

 北山さんは言って頷くと、何か思いついたとばかりに目を輝かせ──

「あ、じゃあさ──」

「めい~? どこ~?」

 ──しかしここで唐突に彼女の名を呼ぶ女声が聞こえてくる。彼女の友人たちであろう。
 どうやら僕たちがちょうど角を曲がった所 にいたため、彼女らに僕たちの姿は見えていないようだ。

「あっ、やば。時間みたい」

 北山さんはその声にハッとしたような表情を浮かべた後、道の角からヒョコリと顔を出し「まって、今行く!」と伝えた。
 そして続けて僕へと視線を戻すと、先程までとは違い小さく声を上げる。

「んじゃね。またラインするから!」

「あ、はい。また」

 僕がそう言葉を返すと、北山さんはニコリと微笑んだ後、早足で僕から離れていき、キラキラとした少女たちの輪に加わった。

「ねぇ、あんなとこでなにしてたの?」

「いーや、別になんにも」

「ほんと~?」

「ほんとだって!」

 そしてそんなやりとりをしながら会計へと向かう北山さん。

 その姿を陰から見つめながら、明らかに住む世界が違う少女とラインを交換したという想像だにしなかった現状に、僕は1人混乱するのであった。

 ◇

 その日から僕の日常は大きく変化した。

 とは言っても高校生活に関しては表向きはいつも通りであり、クラスメイトとは必要最低限の会話を行うのみで、基本教室の隅で1人イヤホンをしてボカロ曲を聴きながら過ごしている。

 変わったことといえば、いつもは曲を聴きながら本を読んでいたのに対し、今はスマホで他人とラインをしていることか。

 相手はあの日なぜかラインを交換することになった美少女ギャル、北山さんである。

 内容は他愛もないもので、おすすめのボカロ曲を紹介し合ったり、投稿された新曲について語り合ったりとボカロに関するものが主となっている。

 ある意味思春期の男女が行うにしては色気もクソもない内容ではあるが、それでも今までボカロについて語れる相手がいなかったこともあり、彼女と交わすやりとりは僕の中で確かな彩りであった。

 そんな時折彼女とラインをしながら、土曜日には変わらずヒトカラを行う日々を数週間ほど過ごしたところで、北山さんからまさかのトークが送られてきた。

『ねぇ! 今度一緒にカラオケいかない?』

「……いや、えっ!?」

 思わず声を上げ、クラス中の視線がこちらに向く。

「あっ、なんでもないです……」

 僕は小さく周囲にそう言った後、改めてスマホの画面に目をやる。

 ……うん、間違いなくカラオケに誘われてるな。

 一字一句目で追いそう結論付けるも、やはり信じられず文字を送る。

『送る人間違えてませんか?』

『間違えてないよ!笑笑』

 どうやら北山さんは本当に僕をカラオケに誘っているらしい。

「……どうしよ」

 僕は小さくそう声を漏らす。

 彼女に誘われたのは正直嬉しい。それは間違いない。

 ……だって彼女は美人だし、そもそも女の子だし。それに彼女とはボカロという共通の趣味がある。

 そんな子とカラオケなんて機会、陰キャである僕には今後一生起こり得ないと断言できる。それほどまでに、今回の誘いは幸運な出来事である。

 しかしその誘いに、僕は中々行こうとコメントを返せないでいた。

 たしかにラインでは頻繁にやりとりしてるし、それを通してある程度仲良くなれたという実感もある。
 けれど、それはあくまで文面上の話であり、実際偶然出会ったあの日以来、彼女と直接対面したことは一度もない。

 つまり実際に顔を合わせたら、ラインのようにスムーズに話せない可能性が高い。いや、間違いなく挙動不審になる!

 ……あ、ちなみに彼女が僕を騙しているんじゃないか、今回の誘いはいわゆる友達と一緒に僕を笑うために仕組んだものではないかという考えもゼロではない。

 いくらたまたま趣味が合ったとはいえ、結局はほんの一瞬顔を合わせただけの他校の人間であることに変わりはないのだから。

 もちろんそんなことはないと信じたいところであるが、やはり彼女が陰キャである僕とは対極の存在であるため、どうしてもその不安が頭をよぎってしまうのだ。

「まじでどうしよ」

 そういくつかの感情が渦巻く中で、1人うーんと頭を悩ませていると、ここで追撃するように彼女からトークが送られてきた。

『あ、もしかしてあたしの友達呼ぶと思ってる??』

 それに返信しようとしていると、すぐさまもう一つメッセージが届く。

『呼ばないから大丈夫!』

「なにも大丈夫じゃないんだよなぁ」

 友達を呼ぶつもりがないとわかったのはいいが、裏を返せば彼女は僕と2人きりでカラオケに行くつもりということになる。

 彼女が男子と2人きりで遊びに行った経験があるかどうかはわからないが、少なくとも僕からすればこれはあまりにもハードルが高い。

 ……でもまぁ。

 彼女から送られてくるラインに目を通しながら、僕は何度目か頭を悩ませる。

 ……元々偶発的な出会いだからなぁ。ここで行くという選択肢を取って、挙動不審な姿を見せて嫌われたり、彼女に騙されていたという結果になろうとも、結局無かったものだと考えればどれも同じ。その時は今までの自分に戻るだけということで。

 僕は内心でそう結論付けると、すぐさま指を動かし返信をした。

 ◇

 彼女から誘いの連絡があってから数日後の土曜日。

 僕は緊張やら不安やら楽しみやらとにかく様々な気持ちを内在しながら行きつけのカラオケ店に向かっていた。

 もちろん目的はカラオケ。しかしいつものようにヒトカラをする訳ではない。

「まじでどうなることかねぇ」

 そんなことを呟きながら歩みを進めること数分。僕は予定よりも10分ほど早く目的地へと到着した。同時に辺りを見回すも、北山さんの姿は見当たらない。

 さすがに早過ぎたかななんてことを思いながらチラとスマホへと目をやると、ほんの数分前に彼女から『ついた!』という至極シンプルなメッセージが届いていた。

「えっ!?」

 慌ててキョロキョロと再度辺りを見回すと、自動ドアの先、カラオケ店の中でソファに腰掛けるスラリとしたモデルのような体躯の美少女を発見した。
 ロゴTとワイドデニムという比較的カジュアルな服装に身を包み、長い金色の髪を有するその少女は、ふと顔を上げると、その美しい容貌をこちらへと向け、パァッと表情を明るくした。

 私服は初めてながら間違いなく彼女が北山さんであることを確認した僕は、歩みを進め自動ドアを通る。

「やっほー!」

「こんにちは、北山さん。すみません遅くなって」

「いやいやあたしが早く着き過ぎただけだから!」

 言葉の後、僕へとずいっと一歩近づく。

「ってかなんかいつもより固くない?」

「そんなことないですよ。いつもこんな感じです」

「んーそうだっけ? まぁいいや。とにかく行こっか!」

「あ、ちょっ……」

 言葉の後、北山さんは躊躇いもなく僕の手を掴むと、そのままずんずんと受付へと進んでいく。
 そんな彼女の行動にギャルってすごい、ってか手柔らか! それにめっちゃいい匂いするんだけど! と内心様々なことを思いながらも、僕は特に抵抗することなく彼女の後をついて行った。

 ◇

 部屋に到着した後、僕たちは各々飲み物を準備した。そしてマイクを取り、リモコンで自身のアカウントにログインする。

 こうして準備が整ったところで、横に腰掛けている北山さんが「ね! 最初なに歌う!?」と言いながら、こちらへとずいっと近づいてきた。

 ……いや近い近い近いから!

 普段からこうもパーソナルスペースが狭いのか、とにかく彼女が体温を感じられる程に近づいてきたことで、元々あった緊張が増す。

 しかし北山さん自身は特に気にしてないようなので、僕は緊張をあまり表に出さないように意識しながら、リモコンを操作した。

「北山さんは普段どうしてますか?」

「あたし? あたしはねー色々だよ。でもだいたい友達に合わせてるかな~」

 言って北山さんは苦笑いを浮かべる。

 その表情とこの前の友人の姿を見るに、おそらくではあるが、彼女の友達はボカロについてそこまで詳しくはないのだろう。
 そしてこれも想像でしかないが、友達に合わせているということは、きっと普段本当に好きな曲を歌えてはいないのかもしれない。

 だからこそ、ほとんど初対面同然の僕相手にこうもキラキラとした視線を向けてくれるのだろう。
 もしかしたら僕と一瞬なら、好きな曲を好きなだけ歌えるかもしれないというそんな期待を抱いて。

 ……はたしてそれが真実かはわからないけど、なら僕がここで選択すべき行動は──

「初手で歌いたい曲とかあります?」

「えっ、歌いたい曲?」

「はい。ピヨさんの『転生檸檬』でも、noseさんの『ハリネズミ』でも、所沢さんPの『ピタンガ』でもいいですし、なんなら『ワーワールド』のようなデュエットでも。……デュエットは少し恥ずかしくはありますけど、まぁなんでも付き合いますよ」

 言葉の後、僕は照れやら「早口でキモ過ぎたか!?」という感情やらを押し殺し、小さく笑みを浮かべた。

 僕の言葉を受け、北山さんはその美しい容貌にキョトンとした表情を浮かべた後、少ししてそれを満面の笑みへと変えた。

「マジでなんでもいいの!? なら最初は──」

 こうして陰キャオタクである僕と、対極に位置しながらも同様の趣味を有する美少女ギャル北山さんという、本来交わらなかったはずの2人の奇妙な一日が始まった。

 初めはあまりにも突拍子もない出会いで、その後の過程も僕からすればめちゃくちゃで。

 でも一つ言えることがあるとすれば──

 週に一度の楽しみ。それが1人から2人になったことで、間違いなく僕の人生に彩りが生まれたということである。


================================

リハビリがてら書きました。プロットもなにもなく、勢いで書いたものになりますのでクオリティが低いのは悪しからず。

ちなみに登場したボカロP名と曲には元ネタがあります。どれも素晴らしい楽曲ですので、是非探して聞いてみてください!

もしそれなりに反響があれば長編化するかもしれません。その際はよろしくお願いします。
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