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2話 引っ越し当日
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引っ越し当日。約束の時間よりも少し早く家の外に出ると、少しして俺の前に明らかな高級車が止まる。
まさかこれか? と思っていると、後部座席側の窓が下り、相変わらず人形のように整った容貌をしたリーリェが小さく手を振ってきた。
「雄馬様、おはようございます」
「おはようリーリェ」
彼女と挨拶を交わしていると、後部座席が自動で開いたため、俺は車へと乗り込む。
するとすぐさま車が発進。少しして、隣に座るリーリェが声をかけてくる。
「いよいよ引っ越し当日ですが、お加減はいかがですか」
「ん? 大丈夫……ってかむしろ普段より体調が良いくらいだな」
実はリーリェと初めて会ったあの日から出社していない。どうやらあらゆる手続きを勝手に進めてくれていたようで、残りの出社日が全て有休扱いになったためだ。
おかげで久しぶりに休みを満喫することができ、結果的に体調が万全になったというわけだ。
「それはよかったです」
「まぁ、緊張はしてるけどな」
「仕方ありませんよ。急な引っ越しですから」
言ってリーリェは微笑む。
その後も時折会話をしながら車に揺られていると、道中でリーリェがこちらにじわじわと手を伸ばしては引っ込めるを繰り返していることに気がつく。
いったいどうしたのかと彼女へと視線を向けると、リーリェはすっと目を逸らす。
しかしそれでも変わらず手はジリジリと近づいてくる。
ここでようやく彼女の意図がわかった。
俺は恥ずかしさを覚えながらも、自身の手を置く位置を変えた。
するとこちらに近づいていた彼女の手が俺の手に触れ、形を確かめるように指を滑らせ始めた。
俺もそれを合わせるように指先を彼女の手にチョンと触れさせ──こうして互いに無意識に指を絡め、気がつけば恋人繋ぎをしていた。
おそらく彼女は恋愛というより好奇心からこうしているのだろう。
しかし初めて繋ぐ女性の手の柔らかさと滑らかさ、そして力を入れたら壊れそうな繊細さに俺の心はドキドキしっぱなしだった。
そんなプチイベントもありつつ移動すること数時間。俺たちを乗せた車はいかにも高級そうなマンションの前で停車した。
「こ、ここが……」
「では行きましょうか」
「お、おう」
リーリェは繋いでいた手をゆっくりと離すと、車の外へ出る。俺は目前の建物の迫力に若干気圧されながらも、彼女の後に続いた。
だだっ広いエレベーターに乗った後、少し歩き、とある部屋の前で彼女は歩みを止める。
そして俺の方へと向き直ると、彼女は案内するように扉へと手を向けながら口を開いた。
「今日からこちらが雄馬様と私のお家になります」
「……ん?」
「どうしました?」
「今なんと?」
「ここが雄馬様と私のお家です」
「えっ、一緒に住むの?」
「はい。なるべく仲良くなれるようにと、共同生活をすることになっておりますので。あ、もちろん2人きりではなく、護衛の2人を合わせた4人での生活ですよ」
「護衛の子たちも一緒と」
「えっと、護衛の側で生活していただくとお伝えしたつもりでしたが……」
「いや、てっきり隣の部屋とかそのレベルかと……」
「なるほど……説明が足らず申し訳ございませんでした」
「いや、いいよ。ちなみにその護衛って──」
「私のパーティーメンバーで、数年前から共に生活をしている子たちになります」
「元々共同生活してたところに俺が入ると?」
「はい、そうなります」
「えっ、それ他の2人は納得してる?」
「困惑はしてますが、事情を話したら割と楽しみにしているようでしたよ」
「ならいいんだが」
「さて、ではそろそろ初対面といきましょうか」
「お、おう」
いったいどんな子だろうか。
ドキドキしながら俺はガチャリとドアを開けた。──瞬間、何かが腹部へとぶつかり、俺はたまらず尻餅をついた。
「……つっ。な、なんだいきなり」
何やら身体に重みがと思いながら目を開けると、目の前に小学生か中学生くらいに見えるミディアムショートの黒髪をした美少女の姿があった。
彼女は眠そうなジト目でこちらを見つめながら、何やらモグモグとリスのように口を動かしている。
「ちょっと、ニア! お行儀悪いわよ!」
それから少し遅れて、そんな勝気な声と共に、菜箸を持った赤髪ハーフツインの美少女がプンスカと怒りながらやってくる。
「ん? もしかしてあなたが……」
赤髪の少女はそう言うと、燃えるような瞳をこちらへと向けてきた。
俺はこの2人が護衛の少女であることを理解しつつ、はたして大丈夫なのかと内心今後に不安を覚えるのであった。
まさかこれか? と思っていると、後部座席側の窓が下り、相変わらず人形のように整った容貌をしたリーリェが小さく手を振ってきた。
「雄馬様、おはようございます」
「おはようリーリェ」
彼女と挨拶を交わしていると、後部座席が自動で開いたため、俺は車へと乗り込む。
するとすぐさま車が発進。少しして、隣に座るリーリェが声をかけてくる。
「いよいよ引っ越し当日ですが、お加減はいかがですか」
「ん? 大丈夫……ってかむしろ普段より体調が良いくらいだな」
実はリーリェと初めて会ったあの日から出社していない。どうやらあらゆる手続きを勝手に進めてくれていたようで、残りの出社日が全て有休扱いになったためだ。
おかげで久しぶりに休みを満喫することができ、結果的に体調が万全になったというわけだ。
「それはよかったです」
「まぁ、緊張はしてるけどな」
「仕方ありませんよ。急な引っ越しですから」
言ってリーリェは微笑む。
その後も時折会話をしながら車に揺られていると、道中でリーリェがこちらにじわじわと手を伸ばしては引っ込めるを繰り返していることに気がつく。
いったいどうしたのかと彼女へと視線を向けると、リーリェはすっと目を逸らす。
しかしそれでも変わらず手はジリジリと近づいてくる。
ここでようやく彼女の意図がわかった。
俺は恥ずかしさを覚えながらも、自身の手を置く位置を変えた。
するとこちらに近づいていた彼女の手が俺の手に触れ、形を確かめるように指を滑らせ始めた。
俺もそれを合わせるように指先を彼女の手にチョンと触れさせ──こうして互いに無意識に指を絡め、気がつけば恋人繋ぎをしていた。
おそらく彼女は恋愛というより好奇心からこうしているのだろう。
しかし初めて繋ぐ女性の手の柔らかさと滑らかさ、そして力を入れたら壊れそうな繊細さに俺の心はドキドキしっぱなしだった。
そんなプチイベントもありつつ移動すること数時間。俺たちを乗せた車はいかにも高級そうなマンションの前で停車した。
「こ、ここが……」
「では行きましょうか」
「お、おう」
リーリェは繋いでいた手をゆっくりと離すと、車の外へ出る。俺は目前の建物の迫力に若干気圧されながらも、彼女の後に続いた。
だだっ広いエレベーターに乗った後、少し歩き、とある部屋の前で彼女は歩みを止める。
そして俺の方へと向き直ると、彼女は案内するように扉へと手を向けながら口を開いた。
「今日からこちらが雄馬様と私のお家になります」
「……ん?」
「どうしました?」
「今なんと?」
「ここが雄馬様と私のお家です」
「えっ、一緒に住むの?」
「はい。なるべく仲良くなれるようにと、共同生活をすることになっておりますので。あ、もちろん2人きりではなく、護衛の2人を合わせた4人での生活ですよ」
「護衛の子たちも一緒と」
「えっと、護衛の側で生活していただくとお伝えしたつもりでしたが……」
「いや、てっきり隣の部屋とかそのレベルかと……」
「なるほど……説明が足らず申し訳ございませんでした」
「いや、いいよ。ちなみにその護衛って──」
「私のパーティーメンバーで、数年前から共に生活をしている子たちになります」
「元々共同生活してたところに俺が入ると?」
「はい、そうなります」
「えっ、それ他の2人は納得してる?」
「困惑はしてますが、事情を話したら割と楽しみにしているようでしたよ」
「ならいいんだが」
「さて、ではそろそろ初対面といきましょうか」
「お、おう」
いったいどんな子だろうか。
ドキドキしながら俺はガチャリとドアを開けた。──瞬間、何かが腹部へとぶつかり、俺はたまらず尻餅をついた。
「……つっ。な、なんだいきなり」
何やら身体に重みがと思いながら目を開けると、目の前に小学生か中学生くらいに見えるミディアムショートの黒髪をした美少女の姿があった。
彼女は眠そうなジト目でこちらを見つめながら、何やらモグモグとリスのように口を動かしている。
「ちょっと、ニア! お行儀悪いわよ!」
それから少し遅れて、そんな勝気な声と共に、菜箸を持った赤髪ハーフツインの美少女がプンスカと怒りながらやってくる。
「ん? もしかしてあなたが……」
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