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片思いは寂しい。でも好きな子がいるってだけで人生バラ色になる。
寝ても覚めてもあの子の事ばかり考えてる。今だって目を閉じれば、思い浮かぶのはあの子のえが、、
「おい!アレックス寝ぼけてんじゃねえぞ!」
肩に当たった模擬剣がドサリと音を立てる。
「いきなり何すんだよ!」俺は怒鳴った。
「練習中に呆けた顔してる方が悪いんだよ。お前、気を抜きすぎ。どうせまた愛しのエレンちゃんの事でも考えてたんだろうけどよ」
悪友であり親友であり同期のジョージはそう言って笑うと、ほれ、と新しいタオルを投げてよこした。
俺はこの国の軍隊、正確に言うと陸軍中部マーロン部隊に所属している、まだまだペーペーの19歳だ。
去年の秋の入隊試験に合格して、この勤務地には半年前に配属された。
家族は帝都に住んでいて、あまり関係ないが父親は伯爵位を持っていていわゆるお貴族様だったりする。
しかし軍隊では爵位は意味をなさない、実力でのし上がっていく世界だ。
跡継ぎの兄がいるから家の事は心配ないし、貴族的なあれこれには一切興味などなく剣術と喧嘩が趣味の俺を持て余した父が、陸軍へ入るよう勧めた。
その結果ここにいる。
ここは軍の部隊の他には何もないも静かな町だが、ひとつだけ素晴らしいところがある。
それは隊員たちの憩いの場、食事処『青空亭』だ。何を食べても美味い。地元の野菜と牛の煮込み料理は絶品だ。デザートだって何だっておかわりしたくなるくらいに美味い。
そしてそこには俺の天使がいる。
配属されてすぐに先輩に連れられてきたのが青空亭だった。酔客に絡まれていた給仕のエレンを助けて、震える声で礼を述べ彼女が顔を上げた時に、天使に出会ったんだ。
エレンは小柄で華奢な身体をしていて、淡い金髪は普段は紐で結えて仕事中は三角巾で押さえているけど、紐を外すとふわふわの巻毛だってことを俺は知ってる。
翡翠色をした大きな瞳、すべすべした白い肌にほんのり朱をさしたような頬、ピンク色をした柔らかそうな唇だって知っている。エレンが18歳で身寄りがないことも、時々遠い目をして窓の外を眺めていることも、俺は知ってる。
それからは休みのたびに俺は青空亭に通った。
エレンは挨拶をしてくれるし、話しかければ答えくれるし俺に笑いかけてくれる。ジョージは、「そんなのお前の気のせいだ。仕事柄みんなに優しいんだよっ!」と相手にしてくれないが、わかってるさ。エレンの寂しげな笑顔の裏に何か秘密があることくらい。だからこそ、自分の手で彼女を幸せにしたいんだ。
今年の聖パトリック祭でエレンに告白する、そう決めていた。
…………
昼食時の混雑が終わり、エレンは小さく息を吐くと賄いを食べるために厨房に入った。
「お疲れ様だったね」ご主人は3人分の賄いを用意していた。
「今日はいつも以上にお客が多かったね。聖パトリック祭が近いからだろうかねぇ」
おかみさんはそういうと、甘辛く味付けして焼いた鶏肉を野菜と一緒にパンに挟んだものを頬張ると、エレンにも皿を手渡してくれた。
この国の守り神でもある聖パトリックの誕生日にお祭りをするのは年末の伝統行事である。
教会への参道には食べ物や雑貨の露店が立ち並び、道には色とりどりの花が撒かれる。夜になるとたくさんの打ち上げ花火が上がって、大人も子どもも伝統的な衣装を着て輪になって踊って聖パトリックへ感謝する、賑やかで楽しいお祭りだ。
そしてこの日に身につけるものを交換しあった恋人たちは、必ず結ばれるという言い伝えがある。
「マーロン隊のアレックスは今日もエレンと話せて嬉しそうな顔をしていたけど、エレンにはその気はないようだね。しつこくするようなら、この店には出入り禁止にするから、我慢せずに言うんだよ」
「アレックスさんは、、、わたしみたいな女にそんなお気持ちを持ってるはずがないです。それに聖パトリック祭が終わったらここを出て行く身ですから」
「ああ、そうだった。祖父母さんの家に行くんだったね。
ねえ、エレン考え直さないかい?いつまでもうちにいてくれてもいいんだよ。むしろ行かないで欲しいよ。いっその事うちの子になってくれたらよかったのに」
ありがたい言葉にエレンは泣きそうになった。
エレンは、優しくしてくれる青空亭の主人とおかみさんに感謝の言葉しかない。
そして真っ直ぐな好意で恥ずかしそうに自分を見つめるアレックスの顔や、助けてくれた時に匿われた彼の背中の広さ、繋いだ手のぬくもりを思い浮かべ胸が苦しくなった。
寝ても覚めてもあの子の事ばかり考えてる。今だって目を閉じれば、思い浮かぶのはあの子のえが、、
「おい!アレックス寝ぼけてんじゃねえぞ!」
肩に当たった模擬剣がドサリと音を立てる。
「いきなり何すんだよ!」俺は怒鳴った。
「練習中に呆けた顔してる方が悪いんだよ。お前、気を抜きすぎ。どうせまた愛しのエレンちゃんの事でも考えてたんだろうけどよ」
悪友であり親友であり同期のジョージはそう言って笑うと、ほれ、と新しいタオルを投げてよこした。
俺はこの国の軍隊、正確に言うと陸軍中部マーロン部隊に所属している、まだまだペーペーの19歳だ。
去年の秋の入隊試験に合格して、この勤務地には半年前に配属された。
家族は帝都に住んでいて、あまり関係ないが父親は伯爵位を持っていていわゆるお貴族様だったりする。
しかし軍隊では爵位は意味をなさない、実力でのし上がっていく世界だ。
跡継ぎの兄がいるから家の事は心配ないし、貴族的なあれこれには一切興味などなく剣術と喧嘩が趣味の俺を持て余した父が、陸軍へ入るよう勧めた。
その結果ここにいる。
ここは軍の部隊の他には何もないも静かな町だが、ひとつだけ素晴らしいところがある。
それは隊員たちの憩いの場、食事処『青空亭』だ。何を食べても美味い。地元の野菜と牛の煮込み料理は絶品だ。デザートだって何だっておかわりしたくなるくらいに美味い。
そしてそこには俺の天使がいる。
配属されてすぐに先輩に連れられてきたのが青空亭だった。酔客に絡まれていた給仕のエレンを助けて、震える声で礼を述べ彼女が顔を上げた時に、天使に出会ったんだ。
エレンは小柄で華奢な身体をしていて、淡い金髪は普段は紐で結えて仕事中は三角巾で押さえているけど、紐を外すとふわふわの巻毛だってことを俺は知ってる。
翡翠色をした大きな瞳、すべすべした白い肌にほんのり朱をさしたような頬、ピンク色をした柔らかそうな唇だって知っている。エレンが18歳で身寄りがないことも、時々遠い目をして窓の外を眺めていることも、俺は知ってる。
それからは休みのたびに俺は青空亭に通った。
エレンは挨拶をしてくれるし、話しかければ答えくれるし俺に笑いかけてくれる。ジョージは、「そんなのお前の気のせいだ。仕事柄みんなに優しいんだよっ!」と相手にしてくれないが、わかってるさ。エレンの寂しげな笑顔の裏に何か秘密があることくらい。だからこそ、自分の手で彼女を幸せにしたいんだ。
今年の聖パトリック祭でエレンに告白する、そう決めていた。
…………
昼食時の混雑が終わり、エレンは小さく息を吐くと賄いを食べるために厨房に入った。
「お疲れ様だったね」ご主人は3人分の賄いを用意していた。
「今日はいつも以上にお客が多かったね。聖パトリック祭が近いからだろうかねぇ」
おかみさんはそういうと、甘辛く味付けして焼いた鶏肉を野菜と一緒にパンに挟んだものを頬張ると、エレンにも皿を手渡してくれた。
この国の守り神でもある聖パトリックの誕生日にお祭りをするのは年末の伝統行事である。
教会への参道には食べ物や雑貨の露店が立ち並び、道には色とりどりの花が撒かれる。夜になるとたくさんの打ち上げ花火が上がって、大人も子どもも伝統的な衣装を着て輪になって踊って聖パトリックへ感謝する、賑やかで楽しいお祭りだ。
そしてこの日に身につけるものを交換しあった恋人たちは、必ず結ばれるという言い伝えがある。
「マーロン隊のアレックスは今日もエレンと話せて嬉しそうな顔をしていたけど、エレンにはその気はないようだね。しつこくするようなら、この店には出入り禁止にするから、我慢せずに言うんだよ」
「アレックスさんは、、、わたしみたいな女にそんなお気持ちを持ってるはずがないです。それに聖パトリック祭が終わったらここを出て行く身ですから」
「ああ、そうだった。祖父母さんの家に行くんだったね。
ねえ、エレン考え直さないかい?いつまでもうちにいてくれてもいいんだよ。むしろ行かないで欲しいよ。いっその事うちの子になってくれたらよかったのに」
ありがたい言葉にエレンは泣きそうになった。
エレンは、優しくしてくれる青空亭の主人とおかみさんに感謝の言葉しかない。
そして真っ直ぐな好意で恥ずかしそうに自分を見つめるアレックスの顔や、助けてくれた時に匿われた彼の背中の広さ、繋いだ手のぬくもりを思い浮かべ胸が苦しくなった。
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