2 / 33
第一章 ボーイ・ミーツ・スライム
第2話 追放
「レイ・パラッシュ。本日付けで、君をこのギルドから追放する」
ギルド長室に呼び出された俺は、ギルド長のゲラシウスにいきなりクビを言い渡された。
「一体どういう事ですか!?」
「うちのエース三人をすぐに治療せず、しかも手柄を横取りしようとしたらしいじゃないか」
焔の魔女エクレア、氷の貴公子ディリオン、雷神ヴァルフレードが蔑んだ目で俺を見る。
「彼等には何度も説明しましたが、それは誤解です! 先にドラゴンを倒さないと、焼き殺されていました!」
「君がドラゴンを倒したんだって? わはは、まったくもって信じられないね。そこまでして、ディリオン君の功績を奪いたいのかい?」
「俺は本当に<魔力の盾>を使ってドラゴンを投げ落としましたが、それを手柄だとは思ってません!」
「いい加減にしろおおおおおお!」
ゲラシウスはドンッ! と机を叩いた。
何を言っても信じてもらえそうにない。俺は押し黙るしかなかった。
そんな俺の姿を見て、三人がニヤニヤと笑っている。
「――はっきり言おう。<魔力付与>と<魔力の盾>しか使えない魔術師など、うちにはいらんのだ。君の存在は、我が【高潔なる導き手】の恥さらしでしかない」
「そんな! 俺は確かにその二つしか使えませんが、それを上手く使ってギルドに貢献しています! そこをちゃんと評価してくださいよ!」
四人は大笑いする。
「なによ貢献って!? アンタがなにやってるっていうのよ!? アタシの手を握ってるだけでしょ!? この変態!」
「盗人猛々しいとは、まさにこの事だね。本当、平民というのは下劣な生物だ」
「お前は俺等の足を引っ張ってるだけだ! 昨日だってお前がいなけりゃ、無傷で勝てたっつーの!」
「お前……! いい加減にしろよ!」
さすがの俺も頭にきて、ヴァルフレードにつかみかかる。
「うわああああ!」
ヴァルフレードがわざとらしく倒れ込んだ。
「レイ・パラッシュ! よくもうちのエースを傷つけてくれたな! 衛兵を呼ぶぞ!」
「クソ! どう見ても、わざとじゃないですか! それにこいつだって、昨日俺を殴ってます!」
「はぁ……また、嘘をつくのかい?」
「本当どうしようもないクズだぜ!」
「おい、お前ら! 卑怯だぞ!」
「――という訳だ、レイ。私が通報する前に、さっさと出て行きたまえ」
「すみません! 暴力を振るった事については、きちんと謝罪します! ですが、クビは勘弁してください! ギルドにとっても、俺のMP付与と運搬能力は立派な戦力になっているはずです!」
四人は大笑いする。
「わはは! そんなもの、マジックポーションと運搬人を使えば済む事なのだよ! わざわざ高い金を払う価値はない!」
「高い金って……! 俺はたいした魔法が使えないからって、わずかな報酬しかもらってないですよ!? それも休みなしで!」
かれこれ丸二年は休んでいない。おかげで俺の顔は死人のようになっている。
「働かせてもらっただけでもありがたく思え! このゴミめ! 今すぐ出ていけ!」
「待ってくだ――」
「<突風>」
「うあっ!」
俺は風圧で部屋の外まで吹き飛ばされた。
ギルド長室のドアがバタンと閉まる。
ドアの向こうから大きな笑い声が聞こえてきた。
俺の努力はすべて無駄だった。何一つ評価してもらえていなかったのだ。
「お世話になりました……」
俺はのそりと起き上がると、周囲の者にクスクスと笑われながら、この街の最高ランク魔術師ギルド【高潔なる導き手】を後にした。
* * *
俺は新しい職場を探すため、他の魔術師ギルドに面接を申し込むも、すべて断られた。
「面接すらしてもらえないなんて……まさか、ゲラシウスが裏で手を回したのか……?」
だとすれば、この街で魔術師としてやっていくのは無理だ。他の仕事を探すしかないだろう。
だが、俺は底辺ではあるが、四年間魔術師としてやってきた。それを手放すなど、簡単にできる事ではない。
「変なプライドを持ってしまったな……」
俺は皮肉めいた笑みを浮かべる。
たいした能力もないくせに、他の仕事には就きたくないなどと考えてしまっているのだ。
こんなつまらないプライド、さっさと捨ててしまった方が楽になるはず。
頭では分かっているのだが、俺にはどうしてもできなかった。
結局俺は仕事を探すこともせず、わずかな貯金を切り崩しながら、家で酒を浴びるように飲む毎日。
疲労と睡眠不足でクマだらけだった顔色はさらにひどくなり、最近は鏡も見ていない。なんとなく見るのが怖いのだ。
そんな時、ドアのポスト口から一冊の雑誌が放り込まれた。
「――ん? 何だ?」
俺はふらふらとした足取りでドアに向かい、雑誌を手に取った。
「魔術師ギルド四季報か……もう俺には関係ないな……」
魔術師ギルド四季報は、スカンラーラ王国内の、全魔術師ギルドのランクと業績が書いてある冊子だ。これは三か月に一度、全魔術師に無料で配布される。
「この街の魔術師ギルドは全部回ったつもりだけど、漏れがないか一応見てみるか……」
俺はデポルカの街のギルドを一つ一つ丁寧に確認していく。
「――ん? 【深淵をのぞく者】? こんなギルドあったか?」
経歴を見ると、別の街から引っ越してきたばかりのようだ。
どうりで知らないわけである。
「よし、試しに明日行ってみるか……」
どうせ断られるだろうから、酒を買いに行くついでといった感じだ。
俺は四季報を放り投げるとベッドに横になった。
ギルド長室に呼び出された俺は、ギルド長のゲラシウスにいきなりクビを言い渡された。
「一体どういう事ですか!?」
「うちのエース三人をすぐに治療せず、しかも手柄を横取りしようとしたらしいじゃないか」
焔の魔女エクレア、氷の貴公子ディリオン、雷神ヴァルフレードが蔑んだ目で俺を見る。
「彼等には何度も説明しましたが、それは誤解です! 先にドラゴンを倒さないと、焼き殺されていました!」
「君がドラゴンを倒したんだって? わはは、まったくもって信じられないね。そこまでして、ディリオン君の功績を奪いたいのかい?」
「俺は本当に<魔力の盾>を使ってドラゴンを投げ落としましたが、それを手柄だとは思ってません!」
「いい加減にしろおおおおおお!」
ゲラシウスはドンッ! と机を叩いた。
何を言っても信じてもらえそうにない。俺は押し黙るしかなかった。
そんな俺の姿を見て、三人がニヤニヤと笑っている。
「――はっきり言おう。<魔力付与>と<魔力の盾>しか使えない魔術師など、うちにはいらんのだ。君の存在は、我が【高潔なる導き手】の恥さらしでしかない」
「そんな! 俺は確かにその二つしか使えませんが、それを上手く使ってギルドに貢献しています! そこをちゃんと評価してくださいよ!」
四人は大笑いする。
「なによ貢献って!? アンタがなにやってるっていうのよ!? アタシの手を握ってるだけでしょ!? この変態!」
「盗人猛々しいとは、まさにこの事だね。本当、平民というのは下劣な生物だ」
「お前は俺等の足を引っ張ってるだけだ! 昨日だってお前がいなけりゃ、無傷で勝てたっつーの!」
「お前……! いい加減にしろよ!」
さすがの俺も頭にきて、ヴァルフレードにつかみかかる。
「うわああああ!」
ヴァルフレードがわざとらしく倒れ込んだ。
「レイ・パラッシュ! よくもうちのエースを傷つけてくれたな! 衛兵を呼ぶぞ!」
「クソ! どう見ても、わざとじゃないですか! それにこいつだって、昨日俺を殴ってます!」
「はぁ……また、嘘をつくのかい?」
「本当どうしようもないクズだぜ!」
「おい、お前ら! 卑怯だぞ!」
「――という訳だ、レイ。私が通報する前に、さっさと出て行きたまえ」
「すみません! 暴力を振るった事については、きちんと謝罪します! ですが、クビは勘弁してください! ギルドにとっても、俺のMP付与と運搬能力は立派な戦力になっているはずです!」
四人は大笑いする。
「わはは! そんなもの、マジックポーションと運搬人を使えば済む事なのだよ! わざわざ高い金を払う価値はない!」
「高い金って……! 俺はたいした魔法が使えないからって、わずかな報酬しかもらってないですよ!? それも休みなしで!」
かれこれ丸二年は休んでいない。おかげで俺の顔は死人のようになっている。
「働かせてもらっただけでもありがたく思え! このゴミめ! 今すぐ出ていけ!」
「待ってくだ――」
「<突風>」
「うあっ!」
俺は風圧で部屋の外まで吹き飛ばされた。
ギルド長室のドアがバタンと閉まる。
ドアの向こうから大きな笑い声が聞こえてきた。
俺の努力はすべて無駄だった。何一つ評価してもらえていなかったのだ。
「お世話になりました……」
俺はのそりと起き上がると、周囲の者にクスクスと笑われながら、この街の最高ランク魔術師ギルド【高潔なる導き手】を後にした。
* * *
俺は新しい職場を探すため、他の魔術師ギルドに面接を申し込むも、すべて断られた。
「面接すらしてもらえないなんて……まさか、ゲラシウスが裏で手を回したのか……?」
だとすれば、この街で魔術師としてやっていくのは無理だ。他の仕事を探すしかないだろう。
だが、俺は底辺ではあるが、四年間魔術師としてやってきた。それを手放すなど、簡単にできる事ではない。
「変なプライドを持ってしまったな……」
俺は皮肉めいた笑みを浮かべる。
たいした能力もないくせに、他の仕事には就きたくないなどと考えてしまっているのだ。
こんなつまらないプライド、さっさと捨ててしまった方が楽になるはず。
頭では分かっているのだが、俺にはどうしてもできなかった。
結局俺は仕事を探すこともせず、わずかな貯金を切り崩しながら、家で酒を浴びるように飲む毎日。
疲労と睡眠不足でクマだらけだった顔色はさらにひどくなり、最近は鏡も見ていない。なんとなく見るのが怖いのだ。
そんな時、ドアのポスト口から一冊の雑誌が放り込まれた。
「――ん? 何だ?」
俺はふらふらとした足取りでドアに向かい、雑誌を手に取った。
「魔術師ギルド四季報か……もう俺には関係ないな……」
魔術師ギルド四季報は、スカンラーラ王国内の、全魔術師ギルドのランクと業績が書いてある冊子だ。これは三か月に一度、全魔術師に無料で配布される。
「この街の魔術師ギルドは全部回ったつもりだけど、漏れがないか一応見てみるか……」
俺はデポルカの街のギルドを一つ一つ丁寧に確認していく。
「――ん? 【深淵をのぞく者】? こんなギルドあったか?」
経歴を見ると、別の街から引っ越してきたばかりのようだ。
どうりで知らないわけである。
「よし、試しに明日行ってみるか……」
どうせ断られるだろうから、酒を買いに行くついでといった感じだ。
俺は四季報を放り投げるとベッドに横になった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。