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高潔に、魔女は自分の在り方を貫く②
しおりを挟む「『炎……」
合図と同時に彩香は魔法を構築する。『炎弾』、術式の構成にそれほどの時間を取らないために彩香でも簡単に使うことが出来る初歩的な魔術だ。
構築は一瞬。いざ放とうとしたところで、彩香の魔法は手に伝わる痺れと共に打ち消された。
「っ!あなた達……!」
「ハッ!今更気づいたところでもう遅え、よっ!」
何が起こったのか、明確に理解した彩香は、ここまで卑怯な手を使うのかと激昂する。
そんな反応が面白いのか、醜悪に嗤いながら言葉と同時に彩香に炎の槍が放たれた。
回避するために、彩香はその場を彩香はその場を飛び退こうとして……泥の足場に踏鞴を踏んだ。
「くっ、『盾』っ!」
完全に態勢を崩された。そのことを理解し、回避を諦めた彩香は半透明の魔力で構築された盾を現出させる。
そして、激突。当然のように衝撃を抑えられず、彼女の体は吹き飛ばされた。
「おら!さっさと立てや!」
『くっそ!おい、アヤカ!どうなってんだよこれ⁉』
「……多分、あいつらが使ってるのは『術式阻害』と『土壌変換』。こっちの魔法は打ち消される上に、泥の足場に足を取られてるってわけね!……まったくか弱い乙女相手にそこまでしなくてもいいのに!」
地面を転がり、泥だらけの彼女に追撃の魔法が殺到する。幸い彩香にダメージはほとんどない。泥の足場に注意して、彼女は魔法を掻い潜る。
目まぐるしく動く視界に、吐き気を感じつつも、奏良は声をかける。彩香の言葉から出た魔法の名前は奏良も何度か耳にしたものだった。そして、今の状況が奴らの初手でほとんど“詰み”に近いところまで追い込まれていることを同時に理解した。
『……っ!おい!早く俺を使えよ!ここで出し渋ってどうするんだ!』
たまらず、奏良は声を荒げた。
『然るべきところで、有効に使う』などと言って、彼女がこの二週間、道具として迎え入れたはずの自分を使うことはほんの一度も無かった。そして今、この期に及んでも彼女はまだ自分を使おうとしない。
「……」
『ああ、くそっ!このわからず屋め!』
何を意地になっているんだ!と奏良が叫ぶが、迫る魔法を紙一重のところで避け続ける彩香は聞く耳を持たない。
彼女の態度に悪態をつきながらも、奏良は何か助けになれることはないかと敵の様子を注視する。
二人がそれぞれ異なる攻撃魔法を行使し、一人はその場でニヤニヤとした薄ら笑いを浮かべてこちらを眺めている。彩香がギリギリで無様にしのぎ続けている、攻撃を加えている側としてはその様子が愉快で仕方ないのだろう。そして、恐らくコイツが攻撃に参加しないのは『術式阻害』のタイミングを逃さないようにだ。
攻撃の手が一つ減るかわりに彩香の魔法はほぼ封殺されているというわけだ。魔法なしで攻撃をしのぎ続けることは至難の技だ。今は何とかなっているが、そのうち体力が尽きて、嬲られることは目に見えている。……いや、今、ギリギリで逃げられているのは単にあいつらがワザと手を抜いているからだ。じゃなければとっくにやられている。
あいつらはまさか自分が負けるなどとは微塵も思っていない。こちらにとっては決闘でも、あいつらにとってはただのゲームだ。愚かにも自分に逆らった女子を大義名分のもとに痛めつけることが出来る。さぞ、愉快だろう。あいつらの腐った性根からしてこんなゲームをすぐに終わらせる訳がない。
……だが、この状況をひっくり返す手段が一つだけある。簡単な話だ。彩香が俺を使えばいい。
一見、魔法使い相手には絶大な効果を発揮すると思われる『術式阻害』の魔法だが、この魔法はそんなに便利なものじゃない。
まず、発動の後、3秒ほどのスキが出来るために連続して魔法を行使できない。1対1では確実に自分が負ける魔法だ。
そして、一番の問題は、この魔法は格下相手にしか発動しないのだ。正確に言えば、自分の『術式阻害』の魔法より精巧に構築されるか、込められた魔力が多い魔法は打ち消せない。
彩香はお世辞にも実技の成績がいいとは言えない。だけど、それは周りが杖を使っていての話だ。むしろ、杖を使わずにある程度の魔法の行使が出来ていることから彼女にはかなりの才があると言える。彼女が俺を使いさえすれば、あいつらの『術式阻害』を打ち破って、吠え面をかかせられる可能性が高い。
『……アンタもわかってんだろ。このままじゃ嬲られて無様に這いつくばるだけだぞ。俺を使うだけで戦況が変わることはアンタも承知のはずだ!』
「……それでも、私はソラを使わないわ。愚かかもしれないけど、これは私が決めた、絶対破っちゃいけないルールだから」
そして、魔法に関して素人同然の奏良が行き着いた答えに彩香が気づいていない訳がなかった。
彩香にもう一度自分を使うように懇願する奏良だったが、当然のように彼女はそれを拒絶する。
『……っ!バッカじゃねえの!バッカじゃねえの⁉アンタあんだけ大見得切っておきながら、このまま負けるのかよ!ルールが何だ!自分の正しさを貫けないほうがよっぽど馬鹿だろ‼どうしても俺を使わないのなら、何でアンタは飛び込めた⁉こうなることは目に見えていただろうが!』
遂に奏良は、心に押しとどめていた言葉を口にした。激昂した心のままに言葉を吐き散らす。魔法使いの諍いなど全く関係がないはずの自分が何に怒っているかも、分からないままに。
一瞬、ポカンとした表情を浮かべた彼女はクスリと笑い、穏やかにこう言った。
「……理由なんて簡単よ。私がソラに相応しいマスターでいるため。私に力が無いことなんて分かってる。―――けれど、それで見て見ぬふりをしていたら、ソラに嫌われちゃうわ」
彼女は自分の行動を無謀だと理解していたのだ。けれど、気丈に振る舞う彼女の姿を笑う気にはなれなかった。―――間違っているなどとは口が裂けても言えなかった。
馬鹿で愚かな選択だ。だけど―――彼女のあり方は誰の目から見ても正しいものだった。
頭がすうっと冷えていく。彼女にこんな苦難を歩ませているのは、自分の存在があったからだ。お前のせいだと意味を取れなくもない言葉だ。だけども、そんな邪推など出来る訳がない。何が彼女をそうさせているのかは分からないままだ。それでも今、分かった。
―――彩香は、取るに足らない道具である俺に認めてほしいのだ、と。
(ならば、俺に出来ることは……)
冷静になったからだろう。奏良は気づいた。先ほどまでよりも彩香を襲う魔法が少なくなっていることに。魔法を放っているのが一人だけに減っていることに。杖となってから感じられるようになった大気中の魔力。―――それを掻き分け、醜悪な悪意と共に風を切る不可視の弾丸に。
『……っ!アヤカ、右だあああっ‼』
「ヤバッ……!」
奏良の言葉に咄嗟に反応するがもう遅い。放たれた魔法は風の上級魔法―――『幻影風矢』。風を凝縮して放つ不可視の弾丸。僅かに空間が歪むために完全な不可視とは言いがたいが、それも注視して見なければ分からないほどの誤差程度だ。今みたいに死角から放たれると着弾するまで被害者はその魔法に気づくことは無い。
自らに放たれた魔法をほんの数瞬で理解した彩香に―――それを防ぐ方法は無かった。
苦し紛れに『盾』の魔法を発動させようとする。手に痺れが走り、術式が霧散する。抜け目なく行使された『術式阻害』によって、苦し紛れの一手すら打ち消され、本当に打つ手が無くなった彩香は衝撃に備え目を瞑る。
恐らく、彩香に重大な損傷を与えるだろうその一撃。不良たちはニタニタと嗤い、彼女が地に倒れる様を幻視する。事実、彩香にはもう手は残されていなかった。……彩香には。
『やらっ、せるかああああ‼‼‼』
不可視の弾丸が着弾する。その一歩手前で、静かに空間が爆ぜた。
「……え?」
少しだけ、衝撃で吹き飛ばされたが、思っていた痛みが来ないことに動揺して、彩香が疑問の声を漏らす。
「……あ?どうなってんだ。おい、まさかお前、術式を解除したんじゃねーだろーなぁ?」
「はあ!んなことするかよ!俺は何にもやってねーしっ!」
「だったら、魔法が当たってない説明をしてみろや、コラァ‼」
それは、不良達も同じだった。目の前で術式が霧散したように見えた彼らは、魔法を行使していた仲間に詰め寄っていた。
『……やっぱり、成功とはいい難いか。まあ、なんであれ、止められたならそれでいい』
「……ソラが、何かしたの?……っ!体は!体は大丈夫なの!」
『お、おう。どうしたんだよ、急に』
不良達が動揺しているのを見て、警戒を解いた奏良は彩香に話しかける。呆然としていた彩香だったが、奏良の一言でハッと正気に戻る。自分が何もしてない以上、奏良が何かをしたのだろうということは直ぐに分かった。
急に慌てだした彩香を見て、いきなりどうしたんだと若干、引き気味ながらも奏良は自分の決断のままに動く。
『……時間がない。聞いてくれ。さっきはなんとか形にはなったけど成功率は1割程度だ。次はないぞ』
「さっきのって……もしかして魔法⁉」
『まだ真似事だ。完全じゃない』
「ダ、ダメッ!そんなの使っちゃダメだよっ!」
『へえ……随分、慌てるんだな。これはこっちから攻めた方がいいか』
「なにを……?」
二週間、必死に学んだお陰で何とか形にはできた魔法もどき。今まで見せていなかったから彼女の方は凄く驚いているはずだ。口調を乱し、普段の調子を完全に失ってオロオロとする彼女に、顔があったならいい笑顔でいただろう奏良が畳みかける。
『もし、アヤカがこのまんま無様に負けるようなら絶対にマスターなんて認めてやんねー』
「……っ!」
『絶対に命令なんて聞いてやんねーし、お前の授業や睡眠を大声出して妨害してやる。せっかく魔法も覚えたんだし、好き勝手にぶっ放すのもいいかもなあ』
「そ、そんなことしたら、したら……えっと……怒っちゃうよ!」
『締まらねえなあ……。とにかくだ。俺を畜生にしたくないんだったら、……勝ってくれよ』
「ふえっ?」
『最近、悩んでいたんだ。何で俺を使わないのか。アヤカは本当に間違っているのか。アヤカが間違ってないのなら、俺が間違っているのか、ってな。だけどそんなことはどうでもいい。……少なくとも今だけは、俺は間違っていないし、アヤカも間違っていない。それだけでいいんだ』
「……ソラは、間違ってないよ?」
『ああ。知ってる。そして、アヤカも間違っちゃいない。他の誰が笑おうと、アヤカの従者として、―――アンタの正しさは俺が証明してみせる』
「ソラ……」
……まだ全てが吹っ切れた訳じゃない。ただ、高潔に、自分の正しさを貫いた彼女には何か一つ褒美があってもいいのではないかと、思っただけだ。
正直、俺は心のどこかで彼女が自ら俺を使うことを待っていたのかもしれない。彼女が自ら選んだのならその選択は覆すことはできなくて、何も考えずに済んだのだから。……今、考えると、浅ましいにも程がある。彼女が自分を曲げることを密かに望んでいたというのだから。……俺に出来る詫びなどもうこれくらいしかない。
『さあ!俺を手に取れ!マスター!あんたの正しさを、あいつらに勝つことで証明してみせろ!』
彼女を、この一時だけでもマスターとして認める。それが自分に出来る唯一の詫びだった。
「……ちっ、もういい。四條をぶっ潰してからゆっくり話は聞いてやるよ。とりあえず……死んどけやぁ‼」
話していても仕方がないと思ったのか、不良の一人が魔法を行使する。訳の分からない減少にイラついたからだろうか。先ほどまでとは規模がまったく違う本気の魔法だ。
十数の魔法陣が中空に現れ、様々な魔法が彩香目掛けて放たれた。
迷っている暇など無かった。少し躊躇いがちに奏良を背から引き抜いた彩香は、彼の言葉の通り、自分の正しさを証明するために、―――彼の意思を無駄にしないために魔法を行使する!
「……どうなっても、知らないからね―――!」
そんな言葉と共に彩香は杖を振るう。ただ魔力を現出させ、刃のように振るう魔法とも言えないような稚拙な技。
―――しかし、誰にも負けないほどの意思が込められた刃は、寸分違わずただの一振りで迫る全ての魔法を切り裂いた。
「……は?」
「……え?」
その光景を見た不良は一体、何の冗談だと自分の目を疑った。今の一撃は間違いなく自分の本気だった。それが魔法とも言えないような一撃で霧散したのだから。
そして、それを放った本人である彩香が一番驚いていた。
いつもならすぐに崩れていく魔法が、何の滞りもなく行使できた。それどころか、何かに後押しされるように魔力が増幅されていくのだ。今ならどんな魔法でも行使できるような、そんな気さえする。
「これが、杖の、力……?」
自らの手に携える杖を見て、思わずそんな言葉を漏らす。
そこで、思い出した。いつもなら小言を言うはずの杖が沈黙していることに。
「……あ!ソラ、だ、大丈夫⁉どこも痛いところとか無い⁉」
『……お前は俺の母親か何かかよ』
「マスターですっ!……じゃなくて!その、体は大丈夫、なの?」
『ああ。全然平気だ。ちょっとむず痒い感じはするけど……うん、悪くない』
「そうなんだ!良かったよ~……」
おずおずと心配そうにこちらを見る彩香に苦笑を漏らしそうになるも、グッとこらえ、無事であることを報告する。
他の杖の様子を見て、多少の痛みは覚悟していた奏良だったのだが、魔法の行使の際、彼は爽快感に似たような心地よさを感じていた。しばらく、沈黙していたのは思っていた感覚と真逆のものを感じたことで動揺していただけだ。
とはいえ、こんなことはわざわざ伝える必要はない。
『何、気を抜いているんだよ。まだ終わってないぜ、マスター』
「……え?」
「……何でだ?何で、お前が魔法を使える?まさか『術式阻害』が破れたのか?いや、そんなことありえねえ。ありえちゃいけねえ!お前は!地面に這いつくばってなきゃいけないんだよ!四條ォ!」
心底、気の抜けた様子の彩香に言葉をかける。顔を上げると我を忘れた様子で激昂する不良の姿が見えた。
『あちらさんは随分とお怒りのようだ』
「う、うん。……でも、何だか、今はそんなに怖くないや」
『当然だ。マスターは狩られるだけの獲物から、あいつらを倒す敵対者になったんだからな』
「……そういうのじゃなくて。今はソラが手を貸してくれているから、かな!」
にっこりとした笑顔で、恐らく本心からの彩香の言葉を聞いて、思わず照れ隠しに言葉を零す。
『……やっぱ、アンタ魔女だわ。あざといにも程がある』
「あざとくなんてないよう!」
『はいはい、そうですな。そうですな。その話はあとで聞いてやるよ』
「ぐすん。あざとくなんて、ないのに……」
奏良の言葉にがっくりと項垂れる彩香。どこか余裕のあるその振る舞いはもうもはや、自分達が負けるなどとは微塵も考えていない。それどころかこれから行うことが戦いですらないと思わせるほどのものだった。
「舐め、やがって……てめえらやっちまえ!」
『ほら、敵さんがわざわざ負けフラグを立てやがったぞ。これは全身全霊で答えないとな。さあ、マスター!華々しく、ど派手に決めてやろうじゃないか!』
「うん!今なら何だって、出来る!」
五十近くまで膨れ上がった弾幕を見て、不敵に呟く奏良に答えるように彩香は魔法を行使する。
瞬間、彩香の姿が掻き消えた。今に及んで、あっさりやられたなどとは不良達も考えない。消えた彩香の姿を探し、辺りを見渡し、その姿を見つけた。
遥か空中。訓練場の天井ギリギリの所で、背から魔力によって構成された翼を現出させ、―――一万を優に超える魔法陣と共にこちらを見下ろす彼女の姿を。
見る人が見れば、天使か何かかと見まがうほどの光景かもしれないが、相対する不良達にとっては悪魔かそれとも、もっと高次のなにかにすら思えた。
「最初の、お返しっ!『炎弾』!」
かくして放たれたそれは、炎の弾丸などという生易しいものではなく、炎の雨とでも表現すべきものだ。
不良達はそれぞれ、全力で防御のために全魔力を回す。本能的な、恐怖からの行動だった。
だが、そんな彼らの心内を嘲笑うかのように、炎の雨は全てを洗い流した。……ただ一人を残して。
「……耐えた。耐えたぞっ!は、はは。これだけの魔法を使った以上、四條の魔力も空っぽのはずっ!俺も深手を負ったがまだっ……!」
そいつは不良達のまとめ役とも言える、彩香に決闘するように仕向けた人物だった。他の2人はあっさりと燃やし尽くされ、結界の効果で外に強制退出させられたのだが、彼だけは左腕を犠牲にしながらも何とか踏みとどまったのだ。それは一重に執念によるものだった。
あれだけの大魔法だ。あいつらは相当の魔力を消費したはず。魔法なしなら女には負けない!と。
自然と魔法の技術で負けていることを認めていたその不良は、自分の魔法の腕を信じ込んでいたがために―――まさか、彩香の今の攻撃がウォーミングアップだとは思いもしなかった。
『さあ、本番だ。今のお前の全力であいつらを叩き潰せ!』
「うん!ソラ、私に力を貸してっ!」
ガクガクと震える足を抑え、彼らの姿を見上げて、空に浮かぶ巨大な魔法陣を見たときにその不良は自分の勘違いに気づいた。眩き紅の光。あれこそが彼女の全力なのだ、と。
魔法陣は収縮し、彼女の持つ杖に集約される。まるで一振りの剣のように見える紅の極光を両手に携え、彩香は高らかに、力を貸してくれた少年の望むまま、自分の正しさを証明するためにその一撃を放つ。
「『炎皇全断』‼」
自分に迫る、紅の斬撃を目に写し、彼の意識はそこで途絶えた。
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