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パーティーというものには、シラハもたまに出席する事があった。もちろん広報室の仕事でだ。
管理機関プロメテウスの『表向きの顔』とも言える、広報室・室長スメラギ・トーノには、パーティーの招待状が時々届く。
スメラギの補佐官という事で、そういった場にスメラギが参加する時に、シラハも同行することがあるのだ。
シラハもパーティー自体は嫌いではない。
華やかに着飾った女性を見るのは目の保養になるし、美味しい料理も頂ける。それにこういう場では色々と情報も飛び交う。
だから仕事の一環でなら行くのは悪くない場所だと思っている。
なのだが。今回は珍しく、シラハにも招待状が届いた。エイカ・アサクラからだ。
白色のカードにラベンダーホワイトで縁が描かれている。先日訪れた『アトリエ・エイカ』の建物に描かれていた模様と同じだ。加えて、カードからはほのかにリンゴの香りが漂ってくる。
手が込んでいるなとシラハは思いながら、空を見上げた。
時間は二十一時少し手前。夜空に丸い月が浮かんでいる。
シラハが今いるのはアイゼンゴッドの西区にある、とある高級ホテルの前だ。
そこでエイカ・アサクラの新作ジュエリーのお披露目パーティーが行われるのである。
パーティーに出席するにあたって、シラハの装いもそれらしいものに変わっている。
スメラギとメノウが用意した淡い紫色のカクテルドレスだ。手袋とはいかなかったので、一応ストールを羽織り、足に関してはストッキング程度だが、まぁ、注意していれば素肌同士が接触する事はほぼないだろう。
「シラハ君、お待たせ~」
少し待っていると、駐車場に車を停めたスメラギが、軽く手を振って戻って来た。
彼もまたパーティー用にきちっとしたスーツを身に着けていた。普段着崩し気味に衣装を着用しているスメラギだが、こういう格好をしていると室長という言葉が似合う。
「いえ。乗せて頂いてありがとうございます」
「いやいや」
スメラギはニッと笑うと「それじゃ行こうか」と歩き出した。
シラハは「承知しました」と頷き、その後に続く。
パーティー会場はこのホテルの五階で行われるらしい。
エレベーターに乗って向かえば、すでに大勢の者達で賑わっていた。
受付を済ませて中へ入ると、美しいシャンデリアが会場を照らしているのが見える。
「うわ、見てよシラハ君、ウノハナ・インダストリーズの社長がいる。確かここのホテル、あそこの系列だったかな。あっちはインテリアデザイナーのシイナ氏だね」
スメラギが小声でシラハに言う。
見れば確かに、テレビや雑誌に載るような人物達が、あちこちで談笑をしていた。
さすがにこれは場違い感がすごいなとシラハは思った。
「現実感が薄いので、端の方で食事をして眺めていたい気分です」
「映画的な?」
「ええ」
「あっはっは! ま、それは僕も心惹かれるけどねぇ」
シラハの言葉にスメラギが笑う。そうしていると途中で「あ」と呟いた。
スメラギの視線の先を見れば、件の大御所達と話をするエイカ・アサクラがいて、こちらに気づいた様子だった。
彼は一緒にいた人達に断りをいれるような動作をした後、こちらへとやって来た。
「こんばんは、スメラギさん、シラハさん。ようこそ、来て頂けて嬉しいです」
「こちらこそ、ご招待頂いてありがとうございます。いやあ、有名人ばかりで緊張しますねぇ」
「フフ。いえいえ、御謙遜を。あなただって十分有名ですよ。プロメテウスの広報室室長さん?」
「いやいや」
「またまた」
スメラギとエイカはそんな会話をしている。
若干、白々しいというか、何と言うか。お互い露骨にお世辞を言い合っているのが伝わってくる。
最初に会った時からシラハは思っていたが、あまり相性がよくないのだろうか。
そんな事を考えていると、エイカがシラハの方を見た。
「ああ、シラハさんも、本日の御召し物、とても似合ってらっしゃいます。お美しくて、思わず見惚れてしまいました」
「御冗談を。どこにでもいるような顔の人間ですので。スメラギ室長達に選んで頂いた服のおかげですよ」
「こちらをスメラギさんが?」
すると話を聞いたエイカが目を丸くする。それから腕を組み、右手を顎の下に当てて、何か考えるような顔になり「なるほど、趣味が良い。あとアクセサリーを足せば完璧か……」なんて呟く。
それから彼はにこりと微笑むと、
「シラハさん。もしよろしければ、私の新作のジュエリーのお披露目に、ご協力願えませんか?」
なんて言い出した。
「いえ、申し訳ありませんが、遠慮します。そういう場はあまり得意ではありませんので」
しかしシラハはすっぱりと断った。得意ではないのは事実だが、目立ちたくなかったし、アクセサリーを着用する際に肌に触れる事があれば、吸血鬼を焼く可能性があるからだ。
協力を、という言葉だったが、断られるとは思わなかったのだろう。エイカが目を瞬いている。
そんな彼を見てスメラギが「ぶはっ」と噴き出した。
「あっはっは。ぶれないねぇシラハ君は! さすがは僕の補佐官だ!」
「スメラギ様の補佐官である事は特に関係がないと思いますが」
「フフ。というわけで、申し訳ないねエイカさん!」
スメラギの言葉に、エイカは笑って首を横に振る。
「いえいえ。御無理を言って申し訳ありません。……フフ、しかし。ああ、面白い。やはり噂通りの方々だ。俄然興味が湧いてきましたよ!」
そして急に元気になった。テンション高くそう言うと、彼は目を輝かせてスメラギとシラハを見る。
「お二人とも! 今度ぜひ、私のジュエリーのモチーフに……」
「あ、いたいた! エイカさん、お時間ですよ!」
ずいっ近づいて言いかけた時、会場のスタッフがエイカを読んだ。
水を差された様子のエイカは残念そうにため息を吐くと「この間からタイミングが実に悪い……。この話は、また後で」と言って、そちらの方へ歩いて行った。
「ねぇシラハ君。エイカさん、情緒どうなってるの?」
「スメラギ様に言われたくはないと思いますよ」
そんな話をしていると、エイカの新作ジュエリーのお披露目が始まった。
管理機関プロメテウスの『表向きの顔』とも言える、広報室・室長スメラギ・トーノには、パーティーの招待状が時々届く。
スメラギの補佐官という事で、そういった場にスメラギが参加する時に、シラハも同行することがあるのだ。
シラハもパーティー自体は嫌いではない。
華やかに着飾った女性を見るのは目の保養になるし、美味しい料理も頂ける。それにこういう場では色々と情報も飛び交う。
だから仕事の一環でなら行くのは悪くない場所だと思っている。
なのだが。今回は珍しく、シラハにも招待状が届いた。エイカ・アサクラからだ。
白色のカードにラベンダーホワイトで縁が描かれている。先日訪れた『アトリエ・エイカ』の建物に描かれていた模様と同じだ。加えて、カードからはほのかにリンゴの香りが漂ってくる。
手が込んでいるなとシラハは思いながら、空を見上げた。
時間は二十一時少し手前。夜空に丸い月が浮かんでいる。
シラハが今いるのはアイゼンゴッドの西区にある、とある高級ホテルの前だ。
そこでエイカ・アサクラの新作ジュエリーのお披露目パーティーが行われるのである。
パーティーに出席するにあたって、シラハの装いもそれらしいものに変わっている。
スメラギとメノウが用意した淡い紫色のカクテルドレスだ。手袋とはいかなかったので、一応ストールを羽織り、足に関してはストッキング程度だが、まぁ、注意していれば素肌同士が接触する事はほぼないだろう。
「シラハ君、お待たせ~」
少し待っていると、駐車場に車を停めたスメラギが、軽く手を振って戻って来た。
彼もまたパーティー用にきちっとしたスーツを身に着けていた。普段着崩し気味に衣装を着用しているスメラギだが、こういう格好をしていると室長という言葉が似合う。
「いえ。乗せて頂いてありがとうございます」
「いやいや」
スメラギはニッと笑うと「それじゃ行こうか」と歩き出した。
シラハは「承知しました」と頷き、その後に続く。
パーティー会場はこのホテルの五階で行われるらしい。
エレベーターに乗って向かえば、すでに大勢の者達で賑わっていた。
受付を済ませて中へ入ると、美しいシャンデリアが会場を照らしているのが見える。
「うわ、見てよシラハ君、ウノハナ・インダストリーズの社長がいる。確かここのホテル、あそこの系列だったかな。あっちはインテリアデザイナーのシイナ氏だね」
スメラギが小声でシラハに言う。
見れば確かに、テレビや雑誌に載るような人物達が、あちこちで談笑をしていた。
さすがにこれは場違い感がすごいなとシラハは思った。
「現実感が薄いので、端の方で食事をして眺めていたい気分です」
「映画的な?」
「ええ」
「あっはっは! ま、それは僕も心惹かれるけどねぇ」
シラハの言葉にスメラギが笑う。そうしていると途中で「あ」と呟いた。
スメラギの視線の先を見れば、件の大御所達と話をするエイカ・アサクラがいて、こちらに気づいた様子だった。
彼は一緒にいた人達に断りをいれるような動作をした後、こちらへとやって来た。
「こんばんは、スメラギさん、シラハさん。ようこそ、来て頂けて嬉しいです」
「こちらこそ、ご招待頂いてありがとうございます。いやあ、有名人ばかりで緊張しますねぇ」
「フフ。いえいえ、御謙遜を。あなただって十分有名ですよ。プロメテウスの広報室室長さん?」
「いやいや」
「またまた」
スメラギとエイカはそんな会話をしている。
若干、白々しいというか、何と言うか。お互い露骨にお世辞を言い合っているのが伝わってくる。
最初に会った時からシラハは思っていたが、あまり相性がよくないのだろうか。
そんな事を考えていると、エイカがシラハの方を見た。
「ああ、シラハさんも、本日の御召し物、とても似合ってらっしゃいます。お美しくて、思わず見惚れてしまいました」
「御冗談を。どこにでもいるような顔の人間ですので。スメラギ室長達に選んで頂いた服のおかげですよ」
「こちらをスメラギさんが?」
すると話を聞いたエイカが目を丸くする。それから腕を組み、右手を顎の下に当てて、何か考えるような顔になり「なるほど、趣味が良い。あとアクセサリーを足せば完璧か……」なんて呟く。
それから彼はにこりと微笑むと、
「シラハさん。もしよろしければ、私の新作のジュエリーのお披露目に、ご協力願えませんか?」
なんて言い出した。
「いえ、申し訳ありませんが、遠慮します。そういう場はあまり得意ではありませんので」
しかしシラハはすっぱりと断った。得意ではないのは事実だが、目立ちたくなかったし、アクセサリーを着用する際に肌に触れる事があれば、吸血鬼を焼く可能性があるからだ。
協力を、という言葉だったが、断られるとは思わなかったのだろう。エイカが目を瞬いている。
そんな彼を見てスメラギが「ぶはっ」と噴き出した。
「あっはっは。ぶれないねぇシラハ君は! さすがは僕の補佐官だ!」
「スメラギ様の補佐官である事は特に関係がないと思いますが」
「フフ。というわけで、申し訳ないねエイカさん!」
スメラギの言葉に、エイカは笑って首を横に振る。
「いえいえ。御無理を言って申し訳ありません。……フフ、しかし。ああ、面白い。やはり噂通りの方々だ。俄然興味が湧いてきましたよ!」
そして急に元気になった。テンション高くそう言うと、彼は目を輝かせてスメラギとシラハを見る。
「お二人とも! 今度ぜひ、私のジュエリーのモチーフに……」
「あ、いたいた! エイカさん、お時間ですよ!」
ずいっ近づいて言いかけた時、会場のスタッフがエイカを読んだ。
水を差された様子のエイカは残念そうにため息を吐くと「この間からタイミングが実に悪い……。この話は、また後で」と言って、そちらの方へ歩いて行った。
「ねぇシラハ君。エイカさん、情緒どうなってるの?」
「スメラギ様に言われたくはないと思いますよ」
そんな話をしていると、エイカの新作ジュエリーのお披露目が始まった。
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