もしも悪役令嬢が○○だったら

満月丸

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もしも天を衝くほどに高慢な令嬢だったら

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「カタリーナ嬢! 君との婚約は破棄させてもらう!」

 学園主催の披露宴でのそれに、場に集まる人々はざわめきの声を上げた。
 そんな中、王子は最愛の令嬢を抱くようにして、相手を睨め付けている。

「今まで彼女へ行ったその狼藉、すでに調べはついている! これ以上、無様な姿を晒すのならば……」

「お~ほっほっほ! 殊勝な心がけですわね王子殿下ぁ!!」

 どどん! と存在感を放つ悪役令嬢。しもべ達に扇子を仰がせつつ、ワインを一口。
 婚約を破棄されたはずの彼女は、むしろ満足げに宣った。

「この世界一美しいワタクシと自身が不釣り合いと察して身を引くその心意気、実にあっぱれですわ! まさにこの国の王子としてふさわしい行いと言えますわね!」
「……いや、だから君が彼女へ嫌がらせを」
「そう! ワタクシはすぐにピンときましたわ! 王子がそこの娘を心の底から愛そうとしていたのを! ならば、ワタクシは貴方たちが真にふさわしいカップルになれるのか、その試練を課していたのですわぁ!」
「し、試練だって? 水をかぶせたり舞踏会でドレスをズタズタにするのが試練だっていうのかい!?」
「けれども事実、貴方たちはそれらを跳ね除けていきましたわ。びしょ濡れになった彼女を貴方が介抱し、ドレスは貴方が急ごしらえで新調し……そして! 貴方たちはいっそう強い結びつきによって惹かれていったのです! ああ! なんて素晴らしいお話なのかしらぁ!」

 すさまじく迷惑な話である。
 カタリーナは、よよよ、と涙を拭ってから、ドン引きしている令嬢へ指を突きつける。

「よって! ワタクシは貴方ならばこの国の国母にふさわしいと判断しました!! 今までの行いは水に流して、ワタクシは貴方達の幸せを願うことにしましょう!!」
「は、はぁ……そ、それじゃカタリーナ様は、婚約破棄を……?」
「認めましょう!!」

 ドドン! と宣言したそれに、皆がざわめく。
 どこの世界に婚約破棄される側なのに上から目線で認める令嬢が居るというのか。

「そしてワタクシは世界で一番に美しい淑女。このワタクシにふさわしい御仁はきっと貴方ではない……そういうわけで、まことに申し訳ないのですけど王子様、このお話は無かったことに」
「いやなんで君から振った感じになってるんだ……?」
「故に! ワタクシは世界一の淑女たるワタクシに相応しい殿方を探すことにいたしましょう!! お父様ぁ!!」
「あぁ~!! 我が愛しいカタリーナァ! 婚約破棄だなんて可哀想なことにぃ~!」

 よよよ、と泣き崩れながら太った貴族がカタリーナを抱きしめようとする。
 が、それをカタリーナは華麗に躱し、お付きの者を引き連れながら天を仰いだ。

「ああ! ワタクシの運命の王子様! そんな素敵な方がこの世界のどこかに居るのです! ですのでお父様! ワタクシは今から旅に出ますわ!」
「た、旅に、ってカタリーナ! 貴族のお前は旅なんてしたことないだろうに!?」
「バッチ問題ナッシングの鯖の頭ですわ! そんな問題、愛の前ではネズミの前の猫ほどの障害にもなりませんわよ!」
「それは普通に致命傷じゃ……」
「というわけでお父様! さっさと旅の手配をしてくださいませ。すべては! 世界一の娘たるワタクシの幸せのために!!」
「うう~カタリーナ~! お願いだから家に居てくれ~、あの馬鹿王子との結婚など取りやめるから~カタリーナァ~!!」

 おーほっほっほ! と高笑いしつつ、ご令嬢は父を引き連れて堂々と出て行った。
 残されたのは、嵐が去って唖然とする聴衆と、

「…………」

 椅子に座る王様。
 王はソーセージを食べながら、頷いた。

「アレが娘にならんで良かったわ、マジで」

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