もしも悪役令嬢が○○だったら

満月丸

文字の大きさ
4 / 4

もしも令嬢が○○○だったら

しおりを挟む

「もう君との婚約は破棄させてもらう!」

 学園主催の披露宴でのそれに、場に集まる人々はざわめきの声を上げた。
 そんな中、王子はなんかもう目線が泳ぎまくりながらも、賢明に相手を睨め付けている。

「今まで君が行った……あ~その、その狼藉、すでに調べはついている! ……えっと、その……これ以上、無様な姿を晒すのならば……」

 王子は汗だらだらで、眼前の令嬢へ指を突きつけた。突きつけたが、令嬢は気もせずにご飯を食べていた。手づかみでわっしゃわっしゃ掻き込む姿は、まさに大食漢。
 もはや野性に返っているそれに、王子は涙目で王様へ泣きついた。

「父上!! アレをどうにかしてくださいっ!!」
「……あ~そうじゃのぅ」

 ふんふんっ、とダンベルで筋肉強化に励んでいた筋骨隆々な王様は、白い歯を見せて親指立てた。

「ま、頑張れ」
「いやいや! 頑張れじゃなくって!!」
「なんじゃ、その娘の何が不満じゃ?」
「全てですよ全部!! 存在そのものが何もかも不満!!」
「わがままじゃの~」
「わがままとかそういう次元を超えてますって!! だいたい……」

 王子はもう我慢が出来ない様子で叫んだ。

「ゴリラじゃないですかっ!!!」

「うほっ?」

 名前を呼ばれて振り向いた、それはゴリラであった。
 ちゃんとドレスは着ているし可愛いおさげもある。だがゴリラであった。
 うっほうっほしながら飯をかっ食らうその様は、実にワイルドなゴリラであった。
 それへ指さし、王子は言いつのる。

「なんでゴリラ!? よりにもよってゴリラ!? もうちょっと人選をしっかしてくださいよ!! 僕だってね! 普通の人間がいいんですよ人間!!!」
「仕方なかろうに。だいたい、ええじゃないかゴリラ。強いぞゴリラ。リンゴぱーんって出来るし」
「うっほ」

 ゴリラは持っていたリンゴをパーンッした。
 言外に「これが数秒後のお前の姿だ」と言ったのだろうか、王子は死の恐怖に震えた。

「由緒正しきゴララーヌ国のウホウホホーヌ姫じゃぞ、何が不満なんじゃ」
「全てが不満だって言ってんだろ糞親父ぃ!? せめてこう~……母上みたいなね! ギリギリ人間と言えるくらいの女性が好みの最低ラインなんですよ!! ゴリラじゃ無くて!!」
「それ王妃の前で言うなよ、頭がぱーんってなるから」
「父上はいいですよね! 母上で!! 僕だって代われる物なら代わりたいですよ父上と!!」
「これこれ、そういう事ばっかり言ってるから王妃の筋トレに付き合わされるんじゃろうに。なあウホウホホーヌ姫?」
「うほっ」

 ゴリラは王子へ「食うか?」とバナナを差し出した。
 これは言外に「バナナの皮に滑って頭を強打して死ね」と言われているのだろうか、王子は死の恐怖に絶望した。

 あまりに震える婚約者が哀れになったのか、ウホウホホーヌ姫は王子を抱え上げた。
 あわや想像が現実になる5秒前かと王子が恐怖の悲鳴を上げた時、ウホウホホーヌ姫は、

「うほっ」
「あっ……///」

 優しく王子の頭を撫で、

「うっほ」

 そのまま流れるようにリンゴをパーンッした。

 途端、蒼白になる王子。

「いやだあぁぁぁ~~~!! ゴリラの餌になって死ぬのはいやぁぁぁ~~~!!」
「頑張れ王子ー! 国のためだ~!」
「お似合いですよ王子~!!」
「いいいやぁだああぁぁぁ~~~!!!!」

 王子の悲鳴が響く披露宴。

 王様はダンベル片手に頷いた。

「うむ! 一件落着!!」
「何も解決してねぇよっ!?」

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約破棄? あら、それって何時からでしたっけ

松本雀
恋愛
――午前十時、王都某所。 エマ=ベルフィールド嬢は、目覚めと共に察した。 「…………やらかしましたわね?」 ◆ 婚約破棄お披露目パーティーを寝過ごした令嬢がいた。 目を覚ましたときには王子が困惑し、貴族たちは騒然、そしてエマ嬢の口から放たれたのは伝説の一言―― 「婚約破棄されに来ましたわ!」 この事件を皮切りに、彼女は悪役令嬢の星として注目され、次々と舞い込む求婚と、空回る王子の再アタックに悩まされることになる。 これは、とある寝坊令嬢の名言と昼寝と誤解に満ちた優雅なる騒動録である。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

逆ハーエンドということは。

竹 美津
恋愛
乙女ゲームの逆ハーレムエンドの、真のエンディングはこれだ!と思いました。 攻略対象者の家族が黙ってないよね、って。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...