どうも、邪神です

満月丸

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創世編

たまには神界に赴きましょう

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 還元する前に男の魂を調べたんだけどさ、なんか微かに虚無の根に侵されてた。なんてこった。今度はステルス性に特化した仕様のようでね、見つけるのは至難の業だったぞ。
 ともあれ、この虚無の根は侵食した魂に入り込んで種子を寄生させ、虚無の意思を植え付けるようだね。植え付けられた者は、たぶんだけど破壊衝動や殺傷願望が増加する傾向があるようだ。……じゃ、彼が暴走してたのってこれが原因、か? 過去を見てもいつから侵食されてるかはわかんない。くそっ! 情状酌量の余地ありで還元できねぇじゃん!!
 ……ま、しゃぁないので、この魂は一旦保留にするか。還元はせずに保管しておいて、いつか再利用してみようかね。少なくとも、虚無の種子が浄化されるまでは、このままここで安置。それから再度、試験でもしてから還元するか決めよう。

 そうそう、それならばって思って下界の魂達も調べてみたところ、一部の魂が虚無の種子に支配されているのに気がついた。マジかよ……ゴキ○リみたいにどこからでも入り込んでくるなぁ。とりあえず、これらの魂にマーキングしてから、死後はこっちに安置の方向で。これを癒やすのには数百年ほどかかりそうだなぁ。
 しかし、どっから入り込んだんだ? 私の見てみた限り、入り込めそうな領域はまったくない……と思う。寄生されているのは人種性別性格もまったくバラバラだし、共通点なんてほとんどない。ああ、強いて言えば私の崇拝者が多い。……えぇ、やめてよ。これ以上の風評被害はゴメンだぜ?
 私を崇拝している者は彼ら以外にもたくさんいるのだけれども……主に夜魔族だけどね、彼らに被害は殆ど無い。どういうこっちゃ。
 ま、そっちに関しては保留。時折、目を皿のようにしながら調べて回ってるけど、隙間は無いんだから入ってこれようがないはずなんだが……ううむ。


※※※


 なんかヴァーベルの奴がやってきた。

「すまなかった!!」

 と、めっちゃ頭を下げて謝罪してきたけども、なんだよいったい。
 心底から後悔してそうな様子で頭を下げっぱなしなまま、ヴァーベルは言う。

「……あれから何度も考えたんだ。それで、お前がやったことは許せないが……俺にはそれ以外に取るべき策なんて、なんにも思いつかなかった。それどころか、お前を悪人に仕立て上げることで自分の事を正当化しようとしていた。すまねぇ、本当に……俺は最低なやつなんだ……」

 おいおいなんだよ、脳筋のくせに随分と殊勝な……っていうか、調子狂うからやめてくんね?

「じゃ、ルドラはやっぱり怒ってないんだね ?本当はヴァーベルをずっと前に許してるんでしょ?」

 ティニマや、私は怒ってるなんて一言も口にした覚えは無かったと思うけど?

「ふふふ! やっぱりね~、ルドラって身内には甘いもんね~」

 ははは、そうですね~甘いですよ~? それがなにか?

「ルドラ……改めて、すまなかった。俺の態度のせいで、お前に随分と嫌な気分にさせちまったかもしれねぇ」

 まあ、そうだね。神々の私への当たりが強くなったのは事実だけども。
 ……だが、まあそう頭を下げないでくれよ。私だって悪いとは思ってるんだし。

「悪い? ……そりゃぁ」

 定命の者を殺さねばならない状況だったのは確かだったけど、事を急ぎすぎたのは事実だと思ってるよ。とことん話し合ってから為すべきことではあった。多少の被害は増えてもね? その点においては、私の独断だったのは認めよう。めんご!

「軽っ!?」
「……確かに、そうかもね~。勝手にやったからヴァーベルも頭に来たってのもあるだろうし、そこはルドラも悪かった。つまり、これでおあいこって事だね!」

 そうそう、おあいこ。そういうわけで、この件は水に流そうか。引きずってても良いこと無いし。
 それにね、私の立場に関しては、そう悪いものではないと思ってるよ。少なくとも、この世界で何か不都合な事象が発生した時、少なくとも私一人で汚名を着れば事済むわけだからな。

「けどよっ……!」

 ヴァーベル、人にはそれぞれの役割がある、と私は思う。その点、正しき道を突き進むのがお前の役割だ。神々の手本となり、彼らを良き道へと進ませる役割。太陽のように天から輝いてくれれば、それでいい。
 そして私は夜そのもので、闇の支配者でもある。だから、不誠実なものは全てそこに隠してしまえば、それでいい。綺麗事を掲げるのも神の役目だからさ。
 邪神は邪神らしく、夜に紛れて人を脅かすほうがいいのさ。

「ルドラ……」
「……」
「……くせぇな」
「うん、くさい」

だまらっしゃい!! 人がせっかくいい感じに締めようとしてんのにっ!?


※※※


 ヴァーベルと仲直りしたけども、神々との関係は変わらない。ミシュレイアは私に擦り寄ってくるし、エレゲルはゴミを見るような目をしている。ああ言ったはいいけども、視線がウザいので消し飛ばしたくなる。
 あ、そうだ。グリムちゃんでも神界に連れて行こうか。たまには光と闇の神であると思い出させないと、そのまま忘れ去りそうだし。

 というわけで、グリムちゃんを呼び寄せてから、狂気を和らげて二人に分化させた。
 狂気は封じている泥闇から常に受け取ってしまうんだけども、それでもそれが和らぐ時期ってのがある。長く狂神のままだと分化するのも簡単になり、正気の時間が伸びるんだ。

 で、光と闇の神と一緒に神界を散歩しようか。眷属以外に私の姿は見えないけどね。つまり神格を与えた二人には私の姿が見えてるので、ワイワイしながらお散歩コースを練り歩く。

 グリムアードの本来の姿は、セルシュとヴェルシュという双子だ。
 セルシュは双子の姉で、長い白髪が特徴な妙齢の美人さん。
 ヴェルシュは双子の弟で、刈り上げな黒髪に鼻頭を横断する横一文字の傷が特徴。

 いえね、本当は二人とも黒髪だったんだけど、光の神ってイメージにするためにセルシュの髪を白色にした。意外に似合ってるぜ。当人はやんわり微笑んで頷いてる程度で、どう思ってるのかはわかんない。きっと私が決めたのなら何でも良いって思ってそうだけど。
 ……と、神界の大広間、各仕事場の領域へ向かうための交差路で、緑のアホ毛をぴょこぴょこさせながらティニマがやって来た。後ろにはサレンちゃんが控えてこっちへ頭を下げてる。

「あ、ルドラ~! おひさ~」

 ああ、ティニマ。はいはい、おひさ。
 そう挨拶してれば、同じタイミングで獅子男のヴァーベルが赤髪の美人さん引き連れてやってきた。

「よぉ、ルドラ。元気そうだな」

 お陰様で。かくいう君も相変わらず脳筋だね。

 と、会話をしていれば、通りすがりの神々がざわざわっと水面下で動揺しているのが見て取れる。 
 ま、喧嘩してた二柱の神々が仲良く歓談し始めたんだから、無理もない。しかし、一番動揺しているのはエレゲルか……ミシュレイアはエレゲルを見てニヤリと笑ってる。仲悪そうだな、あんたら。

 ああ、ちなみにミシュレイアは影の神ってことで、女性。烏の濡れ羽色とでも言うべき見事な長い黒髪がワカメのように生えている、露出過剰なボインボイン美女です。肌は浅黒くてとってもエスニック!
 一方、エレゲルは緑髪にアホ毛みたいなとんがりが出てる野郎。執事っぽい? 慇懃無礼な感じで喋る鼻につく野菜野郎ですよ。いつかみじん切りにしてやる。
 ともあれ、光と闇の神は、こいつらの上役でもある。エレゲルは星の神、ミシュレイアは影の神だからね。
 我々が雑談してると、やってきた二柱がセルシュ・ヴェルシュに話しかけてた。

「これはこれは、お姿を拝見するのはお初にお目にかかりますね。わたくしはエレゲル、主神より星空を司る役割を与えられております。どうぞよしなに」
「あらぁ? 今までちっとも姿を見せなかった闇の神が、今頃になって出てくるなんてビックリですねぇ。このまま永遠に冥府から出てこられないかと思ってたのにぃ」

 なに、喧嘩でも売ってんのあんたら?
 と横でイラッとする私とは裏腹に、双子は無の笑みで返答している。

「ご丁寧な挨拶、痛み入りますね、エレゲル神。私はセルシュです。こちらこそ、どうぞよろしく」
「ほう、礼儀の一つもなってないとは、なかなか俺好みの女じゃないか。自己紹介も満足にできんのなら、それは悪かったな。お前には高尚すぎた要望だったかな?」

 ヴェルシュ、めっちゃ煽ってる。ヴェルシュのどストレートな嫌味に、ミシュレイアは高慢な笑みを浮かべている。相性悪そう。
 セルシュは笑顔だけど、エレゲルを見る目は完全にゴミクズを見る目だし、エレゲルもそれがわかってるのか冷たい目で笑い合ってる。
 君達、仲良くする気はないんだね、そうですね。はい、わかりました。
 嫌味の応酬をする4人を眺めつつ、私は呆れ半分でヴァーベルに話しを振る。

 なんであの二柱、ああまで嫌な性格になったん? お前が作ったんだろ?

「さぁ? なんか気がついたらああなってたぜ……誰に似たんだか」

 或いは反面教師って線もあるかもよ。ほら、チャランポランなお前を見て、しっかりしなきゃって思った結果がアレかもよ。

「それは……そうだったら嬉しいぜ!」

 脳筋か。ああ脳筋だったな。

「かくいう、セルシュとヴェルシュだけど、あいつらも随分といい性格してるじゃねえか。お前が作ったんだろ?」

 なんかさ、私を嫌ってるらしきエレゲル達を、あの子らも嫌ってんだよ。基本的に無関心タイプの二人がああまで突っかかるのは珍しいよ。

「親が好きすぎて、親を嫌う輩を敵って見てるわけだな。好かれてんなぁ」

 どうもありがとう。ちょっと嬉しい。

「……お前ってさ、やっぱり親馬鹿タイプなんじゃね?」

 そうかなぁ?
 ……ふと、我が家の棚に並ぶ、献上品の数々を思い出す。

 うん、そうかも。


※※※


 嫌味の応酬が一段落したところで、ヴァーベル達と別れ、双子を連れて六元神に挨拶へ行く。主にティニマが管理する仕事場、大地の間に居る場合が多いのよ。六元神は原初以来、元素から精霊を生み出すお仕事を割り振っといたからね。
 で、大地の間に居たのは、あいにくと水の神と風の神だけだった。案の定、以前紹介した死神くんと天使人形じゃないんで驚かれた。なんで姿違うん?って聞かれたんで、「ああ、イメチェンだよイメチェン」って答えておいた。怪訝な顔されたけど誤魔化せたんでオッケー。
 いやね、グリムちゃんって神々の間ではいい目で見られないから。邪神扱いだし、言動も声質も混沌としてるんでみんな近付こうとしない。その正体がこの二人だって知られたら厄介だから、私はだんまりで行く。知ってるのはヴァーベルとティニマだけね。

「えっと~はじめましてぇ。アタシは風の神ちゃんでーっす!」

 なんだろう、風の神の第一印象と合致しない挨拶が返ってきた。口調が女子高生っぽいというか、なんというか。
 ちなみに、風の神ちゃんはふわっふわな長い緑髪に、踊り子風な露出過剰な布地の、見た目だけは妖艶な子だ。しかし性格はJKであったか。

「へぇ~、おたくらが光ちゃんと闇ちゃんね~。あ! アタシとは以前に会ってるけど覚えてるぅ?……え、覚えてないの!? 超ショック!」
「申し訳ありません、その頃のことは記憶が薄くて」
「いーよいーよ! 許しちゃうっ! そのかわり~、セルちゃんとヴェルちゃんって呼んでもい~い? いいよね!? き~まりっ!」
「随分と強引なお嬢さんだな、おい」

 ヴェルシュや、君よりは年上だよ、その人。

 と、そこで見ていた水の神が遮った。

「フェレシアーヌ。お二方を困らせるな」
「あ~! またマウラっちがいい子ぶりっこしてる! い~じゃん! 本当はマウラっちも二柱と話したいんでしょ~?」
「だとしても、お前のそのテンションは皆がついていけんのだ」

 腕組みしてため息吐いてる水の神。苦労人の気配がする。
 水の神の容貌は、まぁどっかのウンディーネみたいに半透明な青い肌に、白目のない青い瞳。クルンっとした大量の巻き毛は頭頂部に盛りに盛られていて、背に流れている。全身に水のベールを纏う、戦士風な口調だね。で、青い水玉が彼女の周囲に浮いてるのは、水の元素かね。やっぱりどう見てもウンディーネ……。

「それよりさ~! セルちゃんとヴェルちゃんは冥府に缶詰状態なんでしょ? いつもは何してんの? 冥府って何があるの? 暇じゃないの? 友達っている? 好きなものは」
「あの、勢い込んで尋ねられても答えられないのですが……」
「えっマジごめん! アタシっていっつもこうだからさ~! あっははは!」
「……すまぬな、二柱よ。どうにもフェレシアーヌは人の話を聞かぬやつでな」
「え~なぁにその言い方~! 悪い子みたいに言わないでくださ~い!」
「……ふふ、なんだか姉妹みたいですね、お二方は」

 笑うセルシュの言葉に、風と水の神は顔を見合わせてから笑いあった。

「そうそう、そうなのよ~! アタシとマウラっちはね~、ヴァーベルさまとティニマさまが互いに手助けして作ってくれたから、ほとんど姉妹みたいなもんなのよね~!」

 え、マジで。聞いた事なかった。
 まあ……ティニマは意外に不器用なところがあるから、それをヴァーベルが手伝ったんかね。始祖を作った時みたいに。
 しかし、そう言われてみれば、なんとなく似ているような……気も、する……いや、気のせいか?
 同じことを思ったのか、ヴェルシュが呟いてる。

「少なくとも、お前達の性格は似てないな」
「ヴェルシュ、少しは歯に衣を着せなさい。それに、人のことは言えませんよ」
「そりゃあ申し訳ございません、姉上様。似てない弟ですみませんね」
「まったくですよ。貴方が引き起こした騒動で、私がどれほど尻拭いをしたと思っているのですか?」
「20を超えたあたりから数えてませんねぇ」
「ちゃんと数えなさい」

 双子の性格は正反対のようだ。ま、仲よさげだけどさ。
 しかし、無感情タイプの双子だが、互いに接している時は楽しそうだ。身内以外に感情を動かすことは少なそうだけど。ああ、私と一緒か。

「セルちゃんとヴェルちゃんは仲良しなんだね~! あ~なんかいいなぁ~! 君らって双子なのぉ? 髪の色は違うけどちょっと似てるし~」
「ああ、双子だぞ。一応は」
「生まれてから死ぬ時まで一緒でしたね、そういえば」
「死ぬ時まで……?二柱は、その……」
「……ええ、我々はもともと、定命の者でしたから」

 あら、バラしちゃった。
 案の定、驚いた感じの水と風の神は、しかしすぐに頷いてた。

「そっか~! やっぱさ、なんか雰囲気が違うから気になってたんだよね! そっかそっか! 双子の人間だったんだね?」
「なるほど、ルドラ神の目に叶って召し上げられたのか……普通は神界に話しが来るのだが……」
「主上は訳あって、我らの事を話さずにおられたようですね。なにか大きなお考えがあるのでしょう」
「おおっ! なんか秘密事の予感~! ねぇねぇ、定命の者ってどんな感じなの? アタシらって、ほら肉体がないからさ~、食べ物とか食べないし、傷もつかないし、痛いってのもよくわかんないんだよね~!」

 ……ああ、そうか。神って受肉してないから、五感があんまり無いのか。はぁ、なるほど……いや、私も同じなんだけどね。気にしてなかったわ、そういえば。
 ……ん? ひょっとして、私がゲーム的にこの世界を見てるのって、五感の問題なのかな? 現実感が薄いのが問題なら、だったら五感を取り戻せば、もっと現実味を感じられるようになれるんじゃね?

 ……と、そんな事を思いながら、4人の雑談を聞きながらなんとなくアイディアを練ってみる。
 ふむ、試してみようかな?




※※※




 なんか、「世界」の奴に呼ばれた。

 どうやら次の危機が迫っているらしいので、私になんとかしとけよ、っていう警告をしに来たようだ。うわ、面倒くせえ。次々とトラブルが舞い込んできて、なんだかお疲れ気味なんだからな、私は。

 ……う~ん、だがしかし、これは使えるかもな。

 私の悪巧み……否、世界を救うための行動なのだから、文句を言われる筋合いは無いはずだ。
 ……え、暇してるから押し付けられたんだろうって?
 知らんなぁ、私は知らんぞ~。


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