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冒険者編
意外と真面目です
しおりを挟むその後も、捜索は続けて行われた。探索中に罠が発動するというハプニングがあったが、幸いなことに数名の魔法士が大怪我を負う程度で済んだ。死者が出なかったのはまさしく僥倖であろうか。
一同は細心の注意を払いながら、カルヴァン中に仕掛けられていた魔法陣の羊皮紙を集めた。しかし、羊皮紙にはフェイクの魔法陣と、トラップの魔法陣しか仕掛けられておらず、儀式の横入りを可能とするような何かは見つからなかったのだ。
…そして、夕刻。
メルを始めとした主要な者達は議事堂に集まり、現況を報告し合っていた。
ラーツェルは報告を元に、大机の上の地図に☓印を刻み、羽ペンを置いた。
「…魔法陣が隠されていた場所は以上となります、姫」
「…なるほど、巧妙ですわね」
カルヴァンの地図に記されたバツ印を見て、一同はそれに首を傾げた。
どだい、規則性のある印だとは思わなかったからだ。
「各地区に点在してますが、法則性は見受けられませんね」
「むむむ、殺人鬼は適当に配置したんじゃないかね?これじゃ陣とも言えない配置じゃないか」
「コルショー教授、ではこれほどまでの事態にしておきながら、これが本命ではないと?」
「じゃないのかね?私には人殺しの考えなんてわからんよ!」
投げっぱなしなコルショーとは裏腹に、メルはじっと地図を見つめている。
「…皆様、回収した魔法陣が張られていた場所に、何かありませんでした?」
「何か?何かと言われても…」
顔を見合わせる一行の中で、ラーツェルがそういえば、と顔を上げる。
「そういえば、紙は血で貼り付けられていましたね」
「な、なに?血で?そ、そんな不気味な物があったのかね?!」
「そう言えば、剥がす時に軽い手応えじゃったが…パリッとした感触だったのぅ」
魔法士達も口々に言い出し、メルが集められた羊皮紙の裏を捲って見れば、確かに黒いシミが出来ていた。誰かの血によって付けられたそれに、一同は形容し難い気味の悪さを感じ取っていた。
「な、なんとも気持ち悪い…!件の虚無教ってのはイカれてるんじゃないかね!?」
「狂気的行動なのは確かですわね。…しかし、血、ですのね」
「メルさん、何か心当たりが?」
「そうですわね、明日の血盟決議もありますし、導士クレイビーは血について執着しているようですわね」
「血に…」
残されていた魔法陣と、付けられた血。
ケルトはひょっとして、と声を上げる。
「まさかとは思いますが、敵の本命は魔法陣ではなく、血を残すことですか?」
「な、なに、血が!?」
コルショーからの問いに、ケルトは頷く。
「血には「道」と「繋がり」があるのは、皆さんご存知ですね?それは魔術の流れ、つまりヴァルの道にも成りうる。クレイビーは血の点と点を繋げて、何か別の魔法儀式を作り上げようとしているのではないでしょうか?」
「ふ、ふん!落ちこぼれの君が何を言い出すかと思えば…!」
「ええ、アタクシもそう思っていましたわ」
「メル教授!?」
カーマスを無視しながら、メルは地図をなぞりつつ目を細めて呟く。
「クレイビーは魔物に近しい存在ですわ。心身を傷つけようと、気にせず再生するそうです。血に関してもそれは同じこと。あの老人にとって、血は最も簡単に手に入る魔法触媒なのですわ。そして血を拭っても、繋がりはしばらくその場に残り続ける。そして血で魔法陣を記せば…既に見えない陣を作り上げている可能性は高い」
「ならば、この張り紙があった場所は、魔法陣の点に位置すると?」
「かもしれませんわ」
二人の会話に、魔法士たちはあーでもないこーでもないと顔を合わせて議論を始める。
「血の位置を繋げれば魔法陣となる…ならば、これらの頂点から、魔法陣はいったいどんな形か想像できれば、相手の狙いも見えるんじゃ…」
「だが、これだけでは…我らやカルヴァンの知る魔法陣とは合致しないようだが…」
「しかし何もしないよりはマシじゃろう。とにかく、似たような魔法陣を書庫から見つけ出してこようぞ」
「あと、血がこれだけとは限らないのではないかね?まだ隠された血の陣が残っている可能性も」
「それを探るにしても、カルヴァンはあまりにも広大ですぞ?どれだけかかるか…明日までには絶対に終わりませんな」
「…難解ですね」
講師たちの議論を耳に、ケルトはため息を吐く。
と、そこで真横のカーマスが腕組みしながら、含み笑いを始めた。
「ふっふっふ!やはり君はまだまだのようだね!この程度の事もわからないなんて、程度が知れると言うもんだよ!」
「はぁ、そうですか。それではその高尚なご意見をお伺いしたいものですがね」
流れるように右から左へ流すケルトへ、カーマスはムッとしたように地図を指さす。
「いいかい!?この血の位置には、規則性があるんだ!」
「規則性?」
「そうだとも!」
そう言うなり、カーマスは地図上に次々と印を入れ始めた。
皆が何事かと注目する場は、カーマスが刻んでいくそれに、徐々に驚愕に包まれていく。
最後に、カーマスは出来上がった印を線として繋げて、顔を上げた。
「ほら、出来た!」
「これは…なんてこと!錬金陣ですわ!?」
「………カーマス殿、これは」
「ふふん!僕くらいになれば、これくらいすぐにわかるってものさ!いいかい?今回の騒動よりずっと前から敵は動いていたに違いないよ。だって一年前からずっとこれを書き続けてきたんだろうからね!」
「一年前?!」
「どういうことですの?カーマス様」
メルにも驚いた顔をされて、カーマスは鼻高々に胸を張った。
「僕はここ一年間、このカルヴァンで起きた重犯罪事件を調べてきたんだよ!」
「重犯罪事件?なぜそんなことを…いえ、なるほど。カーマス家は魔法騎士の家系として、帝都に籍を置いている。ならば、カーマス殿がこれらを探っていたのは」
「そうだとも!以前、帝都で起きていた断ち切り男事件、犯行には魔法道具が使用されていたのさ。ならば、その横流し品はカルヴァンからではないか、とね。姉上の依頼で、僕は密かにカルヴァン中で起こっていた傷害事件をまとめていたのだよ!だって犯人がカルヴァン在住ならば、帝都で使う前にカルヴァンでも試験的に使用していた可能性が高いからね!」
「な、なに!?帝国はわ、私達の中に、凶器を横領した者がいると思っているのかね!?」
「え、ええ!そうですともコルショー教授!」
胸張ってどーんと言ってしまってから、カーマスは内心で「あれ、これ言ってよかったんだっけ?」と冷や汗を流していたりする。
一方、冷や汗まみれなコルショーとは対象的に、シオルは至って普通に述べる。
「妥当な懸念でしょうな。この帝国でもっとも魔法道具に近しいのは、我々カルヴァンの魔法士なのですから」
「ぬ、ぐぐぐ…!こ、これ以上の信用の失墜はなんとしても防がねば…!」
「それで、カーマス君。このバツ印がここ一年で重犯罪事件が起こった場所だと?」
「も、もちろん!殺人とは行かずとも、強盗や傷害事件は細々と起こっているからね!まとめる際に地図に位置を書き起こしてたんだけど、城壁を魔法円として見立てれば、なんとなくゆるーく魔法陣のようにも見えるなーとか思ってたのさ!」
「…素晴らしいですわ!カーマス様!」
「わ、め、メル教授!?」
メルは両手を合わせてカーマスへ微笑みを向けた。
そんな勇者の眼差しに、若きカーマスは真っ赤になってドキドキしていた。
「貴方の情報で進展がありそうですわ!本当に、よく気づいてくださいましたわね!」
「え、い、いやぁ、そんな大したことじゃ…」
「いえ、これらの情報を見逃さずに覚えていられたのは、素晴らしいです、カーマス殿。それにしっかりと記憶していたということは、ちゃんと独自で捜査されていたということ。見事な見識です」
「な、き、君に言われずともわかっているさ!」
ケルトの称賛には、ぷいっとそっぽを向くのだが、満更でも無さそうである。
口端がニヤけて鼻高々なカーマスは置いといて、メルは再び地図に向き直る。
「…ともあれ、これではっきりしましたわね。導士クレイビーは一年前から、カルヴァン各地で密かに流血事件を起こし、それに乗じて自らの血をバラ撒いていた。きっとアタクシ達が来ることを予見して…ひょっとしたら、城壁にも血の痕跡があるかもしれませんわね。明日のためだけに、こんなまだるっこしい策を弄して、何かを起こそうとしている…一年も前から」
「気の遠くなるような話しだねぇ…」
「この錬金陣は、いったい何の効果なのでしょうか?」
「…アタクシの錬金術とは、全く違う形態の錬金陣です。けれども、ある程度はわかります」
メルは鋭い瞳で錬金陣を見渡し、そこに隠された呪文式を読み解いていく。
「おそらく…血で道を作り、指定の場所にある「何か」へ、魔法を付与する術…とても威力のある、攻撃性の高い魔法を付与するつもりですわね。けれども、これだけ巨大な陣を行使するための、ヴァルタイトがありませんわ」
錬金術を行使するには、術者と魔法陣、そしてエネルギータンクとなるヴァルタイトが必要となる。つまり、今のままではこの陣は発動しない。
ケルトは考え込みながら、思ったことを尋ねる。
「虚無魔法で補うつもりでしょうか?」
「おじい様曰く、あれはそうポンポンと放てるものではないそうですわ。だとすれば、自然と巨大な魔力タンクを用いる必要があるのですが…」
「なんだね!つまりこれは不完全な魔法ということではないのかい?!」
コルショーの言葉に、メルは怪訝な様子で顎に手をやった。
「見た感じは不完全ですわ。でも、それだけとも思えません。…まだ何かを用意している可能性もありますけど」
「あの兵器のヴァルタイトでは…いえ、あまりに規格が違い過ぎますね。容量が全然足らない」
脳裏に過ぎった大砲だが、この巨大過ぎる錬金術を行使するには、特大の…それこそ、小屋レベルの大きさのヴァルタイトが必要になるだろう。小さなヴァルタイトを山ほど集める、という手もあるが、それはそれで小屋以上の量が必要になる。
クレイビーはこれを解決する手段を、既に用意しているのだろうか?
「………ともあれ、気にはなりますが保留にするしかありませんわ。解呪の印は…解読まで時間がかかりすぎて、明日まで間に合いませんもの。念の為、都市を防衛する結界法陣を張り巡らせ、この魔法陣の効果の横入りを行うことで不発を狙いますわ。そしてアタクシ達が出来るのは、明日、議事堂に姿を現すクレイビーを捕らえる事ですわね」
メルの言う通り、この血の錬金陣に関しては保留となった。現状、これらを解体するには数日では足らない。
意外なお手柄を得たカーマスが適当に称賛されるのを横目で見つつ、ケルトは地図を眺めた。
「…血の錬金陣に血盟決議…血の魔法、ですか」
そう呟き、一人ひっそりと思索に耽っていた。
※※※
…夜。
カルヴァンでも夜通し、明日の儀式の準備を行う者が多い中、次期議長になると目されている二人の候補もまた、休むこと無くこの危難を避けようと奔走していた。
「あぁ、厄介事が増えて頭が痛いねえ。これ以上、帝都との信頼を失うのだけは避けたいんだがねぇ…まったく、誰の陰謀だか」
書類片手にボヤくコルショーへ、助手の魔法士は書類を積み上げながら言う。
「ですが、コルショー教授にとってはチャンスですよね?これで議長の座が近くなったのも事実ですし」
「こらこら、大層なことを言うもんじゃないよ。私だってね、好き好んで人殺しを起こしてまで得たいなんて思っちゃいないんだよ。だいたい、議長の座だって厄介ごとの塊だよ?なんといっても、皇帝陛下はせっかちでおられるし……戦争も近いしねぇ」
「戦争になれば、我々もヴェシレアへ向かうことになるんでしょうか?」
「なるだろうねぇ。カルヴァンは魔法都市として自治権を与えられたんだけど、実際の運営は他の貴族が行っていて、私たち魔法士は子供たちの教育を中心に行ってる。独立してるのも、カルヴァンが何か厄介な実験をしても、帝都のお偉いさん達に火の粉が降りかからないようにっていう配慮みたいなもんだし」
実際、カルヴァンの戦力は一目、置かれている。現在、帝都に常駐する魔法騎士の大半はカルヴァン一期生であるし、魔法における戦時での有益性も認められつつある。今まで運用されてこなかったのは、魔法士達が独自のネットワークを共有し、一つのところに集まらなかったからだ。
しかしカルヴァンの設立によって、たくさんの技師や研究者、そして魔法士が集うようになり、それに伴って新参の魔法士見習いも増えてきた。
「戦時に運用されるってわかってても、ここでの境遇は魅力的だしねぇ。魔法はいろいろと入り用になることが多いからね」
ヴァルタイトだけでなく、独自の触媒を使用することで魔法を安定化させる事もできるため、通常の魔法士は術を安定させるまでは何かと金がかかるのだ。
そんな、ため息混じりのコルショーに労いをかけつつ、助手は苦笑しつつ部屋を出ていった。
一人になったコルショーは、冷めきったお茶を啜りながら書類を眺める。
…ふと、ドアがノックされた。
「はいはい、どうぞ」
見もせずに返事をすれば、入ってきたのは予想外の人物で、コルショーは思わず書類から顔を上げた。
「…おやぁ?君はたしかメル教授と一緒に居た」
「どうも、ケルティオと申します、コルショー教授」
一礼して入ってきたケルトは、手土産代わりのクロネパンを片手に、首を傾げた。
「お時間がよろしければ、少しお話を伺っても良いでしょうか」
・・・・
休憩も兼ねて了承したコルショーは、来客にお茶を振る舞うことにする。貴族とは言え、ここでの生活はそれとは縁遠いもので、自然と雑用も苦もなく行ってしまう。
暖炉の傍で煮える鍋から鉄製の柄杓で湯を掬い、銀製ポットにそれを注ぐ。中に入った茶っ葉が仄かな風味をもたらすが、それを嗅ぐこともなく蓋をして閉じ込める。
ケルトが持ってきたクロネパンを適当に切り分け、机の真ん中に置きながら、ポットの中身をゆっくりとティーカップに注ぐ。湯気とスッキリした匂いにケルトが目を瞬かせている間に、コルショーはソファに座って話を促した。
「で、私に聞きたいこととはなんだね?」
「…卑賤ながら魔法士ですので、後学のために皆さんからお聞きしているのですが。コルショー教授、貴方にとって魔法士とは、どのような存在なのでしょうか?」
「ふぅん?ずいぶんとまぁ…曖昧な問いかけだねぇ」
カップを優雅な所作で持ち上げ、風味を楽しんでから一口。
その仕草はケルトよりもずっと貴族らしかった。
「まあそうだねぇ、……私は、魔法士というのは世界を導く存在だと思っているよ」
「世界を導く…王侯貴族のように、ですか?」
「違う違う。我々魔法士の仕事というのが、いうなれば世界の調和を保つことだと古来から言われているのは、知っているね?」
それはよく耳にした言葉だったので、ケルトは頷く。
「精霊とヴァルには、密接な関係があるとされている。そしてその調和が崩れれば、災害が発生するとも。ならば、それらと共にある我々魔法士は精霊をあるべき場所へ戻し、ヴァルの調律を整えることこそを生業としている。それが本来の役目だ」
「…そのとおりです」
「だがね、人の世となれば話は別だ。人は欲を掻いて森を切り倒し、湖を干上がらせ、山を削る。それによって精霊は移動を余儀なくされ、ヴァルの調和が崩され、災害が起きやすくなる。それが人の世の業なのだよ」
一口カップに口をつけてから、コルショーは続ける。
「只人はヴァルを感じられず、精霊を知覚できない。どれほど自然を崩そうとも、自らの利益にならなければ構わないとすら思っている。だから、我々の言葉に素直に頷くことはないだろうね。…例えば、ネーンパルラだけど、あそこはかつてエルフの集落が点在していたんだが、人が良質の木材を求めて切り倒すうちに森は開かれ、精霊が去り、エルフもそれに伴って消えていった。そのせいか、ネーンパルラの一部では時折、竜巻のような突風がよく吹くようになったんだ」
木々が消えていく内に領域が狭まり、風の精霊が密集し始めたのだろう。だから竜巻が発生する。このまま森が消えれば、精霊も去って落ち着くだろうが…同じく、植物も消えて荒野と化す。
エルフはそんな森を守り、精霊との調和を保つ種族なのだが、人との争いに嫌気が差したのか奥深くへ引っ込んでいった為、結果としてその弊害が出始めているのだ。
その例を持ち出しながら、コルショーは持論を展開した。
「だから私は、魔法士とは世界を調律する存在であり、人の世で精霊のあり方を唱えるべき存在であるべきだ、と思っているよ。そのためにも帝都…我々を保護する後ろ盾を獲得し、連携を深めて発言権を得ていかなければならない。聞く耳も持たれない魔法士は、あまりにも無力だからね」
「…つまり、教授にとって魔法士とは、人と精霊と共にある存在、だと?」
「私はそう思っているよ」
とは言ったものの、一部では建前なのだが。
資金繰りをしなくても良いのは嬉しいことだし、バックボーンを得ることで自由に動けるようになり、ついでに魔法士という事で奇異の目で見られなくなったという利点も大きい。
カルヴァンが出来てまだ15年程度、魔法士の社会的地位は高いとは言えない。それにヴェシレアが戦争を仕掛けて帝国とやりあった際に、貴族であった若き日のコルショーもそれに参加させられたのだが、そこでの魔法士の扱いはとにかく便利屋であった。傷を治せ、防壁を作れ、結界を貼れ、空を飛んで偵察をしてこい、最前線に送られることはなかったが、その扱いはまさに使い捨ての道具に等しかった。
「魔法士同士で魔法を統一し、ちゃんとした命令機関を設けるつもりだから、次の戦争では私たち魔法士の扱いも全く変わるだろうねぇ。ラドリオンの侯爵閣下は独自の魔法騎士団を創設してるけど、帝都では魔法騎士の認知度はまだまだ低いから」
「…コルショー教授は、魔法士の為にも行動を起こされているのですね」
「まあ、こっ恥ずかしいし言いたくないんだけどねぇ。ああ、でも君が明日までに広めてくれるのなら、良いかもね」
悪戯げに笑うそれは、どこか子供のようだった。
しかし一転して、コルショーは過去を思い出すように渋い顔をした。
「…戦争は嫌なもんだよ。後方に居た私でさえそう思う。若い子が死んでしまうのを見るのは流石に応えるから、できるだけ被害を少なくしたいんだよ」
「そのために、帝都と交渉を?」
「そう。…まあ、それもうまくいくかどうかは、わからないけどね。皇帝陛下は元老院とベッタリだし、元老院内でも戦争への機運が高まってるそうじゃないか。いい噂をあまり聞かないから、出来るだけ早く交渉すべきだって議長にも言ってたんだけどねぇ」
もっとも、優柔不断な議長は消極的なようだったが。
コルショーの話しを聞いたケルトは、何かを考えるように俯きながら、カップをゆっくりと持ち上げる。
「…調和と未来の為」
噛みしめるように呟き、ゆっくりと中身を飲み干した…。
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