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冒険者編
悩めよ若人
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「…ふむ、封印は上手くいっているようだ。では、最終調整はサーテュ教授と合わせて来週に行うこととしよう。皆、ご苦労だった」
魔導砲の前で調整を行っていたシオルの言葉で、大勢の研究生達は労いの言葉を掛け合いながら、おもむろに解散していく。
明日に行われる血盟決議の行方はともかく、何かが起こることはわかりきっていたため、シオルは兵器が敵に奪われないようにいろいろと封印を施していたのだ。これでシオル以外の者では、扱うことが難しくなった。
もっとも、メルの言う通り、その件のクレイビーという導士が熟達した魔法士ならば、これでも安全とは言い難いが。
「しかし、虚無教か…」
シオルは一人、兵器の前で佇みながら思案する。
虚無教という邪教に関しては噂では聞いていたが、所詮は狂人の所業であるとさして興味を示さないでいた。しかし、今回の騒動で敵が行った魔法の罠に関して、シオルはかなりの驚愕と同時に、評価を改めていたのだ。
「血の錬金陣…勇者でもわからない魔法形態を新たに作り出すその頭脳、我が学園に居れば、大きく評価されていただろうに」
それくらい、シオルにとってクレイビーの頭脳は素晴らしいものがあった。少しだけ相手の手腕を見た程度でそう思うのだ。実際に会って話をしてみたいものだ、とシオルは密かに思っていた。
とはいえ、相手は勇者の敵。
世界すべてを敵に回すにはリスクが大きすぎる、と思い直し、シオルは明日の血盟決議に向けての準備に移ることにした。
「…シオル教授」
と、そこで声をかけられ、シオルは振り向く。
そこには、メルサディールの付き人…と思われている、ケルトが佇んでいたのだ。
シオルは無表情の相貌に、少しだけ余所行きの色を乗せて、ケルトを見た。
「ああ、ごきげんよう…メルサディール様から何か?」
「いえ、少しお話をしたいと思いまして」
ケルトの言葉に少しだけ意外そうにしながら、シオルはとりあえず頷いた。
「よかろう、ひと仕事終えたところだ…話なら自室で聞こうか」
・・・・・・・・・・
シオルの研究室に招かれ、ケルトは応接用ソファに座って相手を見ている。シオルは指を振って魔法を唱え、部屋の明かりと暖炉に火を点けながら、改めて椅子に座った。
「それで、話とは何だね」
「後学のために、皆さんからお話を伺っています。貴方にとって魔法士とはいったいなんなのか、と」
「ふむ…」
シオルは眼鏡の奥で目を細めてから、弦を少しだけ上げた。
「話の中で相手が本当に本人かどうか、様子を探っている、というところかね?」
「………」
「当たらずとも遠からず、か」
探りに来たらしいケルトへ、シオルはしかし気分を害した様子もなく、淡々と答える。
「まあ、よかろう…そうだな、君の尋ねた魔法士とは何か、か」
講義をする時のように神経質そうに指先をこすり合わせつつ、シオルは天井を見上げて答えた。
「魔法とは世界を支配する法則だ。魔法士はその法則を解き明かし、より良い技術を編み出すことを目標としている。現状、カルヴァンは人々の文明を発展させることに注力している、と言ってもよかろう」
「人間の文明の発展、ですか」
「左様。我ら人間は、太古より未知の領域を解き明かし、新たなる知識や技術、文明を作りあげてきた。人跡未踏の地に赴き、開拓し、都市を作り上げていくように、魔法もまたそのように開拓されていくジャンルの一つだろう」
カルヴァンで魔法を広めているのもその一つだ、とシオルは言う。
「いうなれば、私は人間のために魔法を研究している」
「なるほど、人間のために…」
「コルショー教授は、世界の調和のために魔法士は存在する、という立ち位置だ。既に聞いているかもしれないが」
「シオル教授は否定的なのですか?」
「それもまた一つの姿だ。魔法士が世界の調和を保てば、それだけ人死にも減る。…だが、私は精霊や世界のため、という考えには否定的なのだ」
少し眉を上げたケルトへ、シオルは淡々と答える。
「目に見えない存在が本当に意志を持っていると、どうして説明できようか」
「…しかし、精霊は語りかければ応えてくれます。これは意志があることの証左では?」
「それが本当に自己決定による行動なのか、我らにはわからない。ただ精霊呪文という強制力に従っているだけの現象かもしれない」
「………まあ、そうですね…」
そもそも、なぜ呪文を唱えれば精霊が応えるのかという問いに、人は答える事ができない。なぜか呪文に従う習性がある、ということしかわかっていないからだ(…神がそう定めたからという、それが理由のすべてなのだが、あえてケルトは黙っていた)。
確かに、精霊が見えないし会話ができない人々から見れば、それだけで彼らが意志を持つかは、わかるまい。
「私は、精霊や神という目に見えない存在を、あまり信じてはいないのだ。見えない存在よりも、目に見える近しい人々に意識を向けるほうがよほど健全だ。…神や精霊の名の元に横暴がまかり通るのも、何度も見てきた。神という大義名分で道理を捻じ曲げる今の国のあり方は、どこか歪にも思える」
「始祖への信仰にも、似たような部分がありますね」
聖人とか神さま扱いされている始祖ヴァルスへの信仰は現在でも盛んで、街道を歩けば必ず彼の神像を目にすることが出来る。ただし、デグゼラスで当人が祀られているのは、天光神の神殿なのだが。帝国が戦争を起こそうとしている大義名分も、始祖ヴァルスのご意思である、と標榜している。当人にとっては、たまったものではないだろう。
「そもそも、世界を維持するのは神々の仕事であり、我らがそれを肩代わりするなど傲慢なのではないか、とも思う。私ら魔法士も、所詮はただの人間でしか無いというのに」
「教授は、世界は神の手によって統治されるべきだ、とお思いなんですね」
「我々人間では、どうしても大局的な見方ができない。神の視点を持っていないのだから当然だ。それに、私はどちらかというと利己的でね。綺麗事よりも自分の利益を追求したいのだよ」
シオルは怜悧な瞳でケルトを見た。
「兵器開発もその一環だ。錬金術を用いた技術がどれほどの威力を持つのか、魔法士がそれほど有益なのかを、人々に広めたいのだ。ただ呪いを扱えるだけの存在ではなく、人々にとってどれだけ有益かを知らしめたい」
「そのために戦争で利用されるとしても?」
「魔法が戦争で用いられるのは当然だ。この技術を利用し、優位に立ちたいという思惑があるからこそカルヴァンは設立されたのだ。遅かれ早かれ、魔法兵器は作り出されていただろう。そもそも、カルヴァンは戦争を見据えて作られた。今更な問いだよ、それは」
カルヴァンがあってもなくても、さしたる差異はなかっただろう、とシオルは見解を示す。
それに対して、ケルトは複雑ながらも確かに、と心中では頷いていた。
「魔法は技術だ。神秘の最奥を覗き込むための鍵の一つであり、世界を解明するという我々魔法士の、永遠の課題を解き明かす手段。その過程で作られたものをどうやって役に立てるかは、時代と時の統治者次第。私はそれを利用して、魔法士にとっての良き地位を確立するだけ…それだけだ」
コルショーとは大きく違えど、シオルもまた魔法士の立場に関して、思うところはあるらしい。
「…見えなければわからない、ですか」
ケルトは呟き、思案するように目を伏せた。
※※※
一人、暗い廊下を歩いているケルトは、ひっそりとため息を吐く。
「精霊、人間、魔法…今更、こんなことで思い悩むなんて、思いもしませんでしたね」
どこか消沈したそれは、宵闇に紛れて消えていく。それを聞いているのは、おそらく夜に舞い飛ぶ小さな闇精達だけだろうか。
自身に纏わりついてくる、黒紫の輝き達を目にしながら、ケルトは呟く。
「…精霊みたい、か」
昼に言われた、何気ない一言を思い出す。
風の精霊ファルテリアもまた、ケルトのことを精霊のようだ、と言っていた。
その指摘に、ケルトはどこか落ち着かない様子で歩き出す。どうにも、自分が人間では無いと突きつけられる度に、何故か不安感を抱くのだ。
人として生まれ、人の社会に生き、人間としてのアイデンティティを持っているケルトにとって、それを否定されるのはやはり苦痛なのだ。まるで、自分が化け物になってしまったかのように、何処か心細い思いが溢れて止まない。
黒い輝きが舞う世界の中、ケルトは窓の外を見上げて、再び大きなため息を吐いた。
「………おや」
不意の声に驚いて振り向けば、通り過ぎた柱の合間、窓が見える吹き抜けの場所に、長髪の男性がひっそりと佇んでこちらを見ていたのだ。
気づかなかったそれに、ケルトは慌てて居住まいを正した。
「これは、失礼。気づきませんでした」
「………いえ」
無表情の無口な男性…サーテュの言葉に、ケルトは顔を上げて相手を見た。
そういえば、眼前の男性も教授であったな、と。
なので、彼は思わず口を開いていた。
「あの、サーテュ教授。ご質問をしてもよろしいでしょうか?」
答える代わりに首を傾げる相手へ、了承の意を受け取って、ケルトは尋ねてみた。
「急な質問で恐縮ですが…貴方にとって、魔法士とはどういう存在なのですか?」
その問いを耳にして、サーテュは表情の読めない鉄面皮のまま、顔を天に向けた。
「………魔法士、ですか」
しばしの間。
ゆっくりと顔を戻した彼は、静かな口調で、口を開く。
「君は、初めて魔法を成功させた日のことを、覚えていますか?」
「え?」
無口な男の急な台詞に驚くが、サーテュは気にした風もなく、カツカツと歩き回る。まるで講義をするかのように。
「…私は、初めて魔法を成功させた日のことを、まだ覚えています。私の両親は商人で、そこそこに裕福でした。いろいろと問題児だった私に、さまざまな事を施してくれたのです」
「問題児、ですか…」
普段、物静かなサーテュはそう見えないが、子供時分でも石のように無口だったのならば問題児扱いされるだろうか。
そんな事を思うケルトへ、サーテュは色の見えない目を向ける。
「………何もない、灰色の生の中で、初めて手に入れたのは、それでした。魔法士に魔法の教えを請い、それが成功した日、母はとても喜んでくれました」
「…」
「つまり、そういうことです」
簡潔ながら理解しづらい言葉だ。
…初めて魔法を成功させた日。
そう言われ、ケルトは思わず顔を顰めてしまった。
どうにも、彼にはそれが思い出せないのだ。
「魔法を成功させた日、ですか。…私は、どんな事を思ったのかすら、覚えていません」
「………ほう」
「私の家では、魔法は扱えて当然の技術でした。私は同年齢の魔法士の子供より覚えが遅く、失敗ばかり繰り返していましたから…初めて成功させたとしても、きっと誰も褒めてはくれなかったでしょうね」
むしろ、出来て当然のことをようやく出来たということで、さっさと次のステップへ向かえと家庭教師にせっつかれただけだろう。落ちこぼれ魔法士は、人一倍努力しろとだけ言われて育ったのだ。
だから、彼は死物狂いで努力して…そして今、ここに居る。
「他者に認められるということ。それが、サーテュ教授にとっての、魔法士としてのあり方なのですか?」
「………認められ、自分のやりたいことを、見つけたのです」
「やりたいこと?」
「私には、魔法しかありませんでした。それ以外の何もかもは、何も感じない、消えてしまう無価値な代物でした。だから、認められた魔法を極めてみよう。不自由な生の中で、初めて見つけた、目標です」
「目標…」
サーテュの話に、ケルトは暗い顔で俯く。
「…目標。私も、わからなくなりました。自分が何なのかと考える程に、自分はどんな存在になればいいのかと、想像できなくなったのです」
ケルトは人間だ。
しかし、魂は精霊でもある。
何度も言われたそれに、ケルトは次第にわからなくなっていった。
「…魔法士とは、いったいどういう存在なのでしょうか。私は生まれた時から魔法士になるよう育てられました。だから、どうして魔法を使うのか、その目的、信念がわからないのです」
「………だから、こうして尋ねている?」
「…ええ」
それだけではない。ケルトは前世の精霊としての記憶を思い返すうちに、今の自分はこのままで良いのかという疑問に、ぶち当たってもいた。精霊を軽んじる魔法士、魔法を面白半分で使用する者たち。精霊という視点から見れば、それはとても醜悪に映る。
ならば、自分はその同類で居ていいのだろうか。
精霊を、道具のように使う魔法士の仲間で、居るべきなのだろうか。
ケルトは、自分が精霊の価値観を持つ人間として、どう在るべきなのかを見失っていたのだ。
そんな思い悩むケルトを、どこまで理解できたのか。
サーテュはふと天を仰いで、ケルトへ言った。
「………きっと、明日は晴れでしょう」
「え?」
「晴れた日は気持ちがいい。風が凪ぎ、草花を揺らし、土の匂いの中で薬草を模写する思い出は、いつだって尊い。そう思うことに、精霊も人間も化物も関係がありません」
「え、ええと…?」
「君は、人間と精霊の違いを知っていますか?」
コロコロと会話を変える相手に目を白黒させれば、サーテュは立ち止まってぼんやりと続けている。
「本来は違いなどないのです。どちらも同じ、原初神が生み出した存在、いわば兄弟といっても差し支えない。だから、精霊は人にも成れる」
「っ!?」
「違うのは、君の中の認識、価値観。君は人と精霊の狭間に立つ故に、どちらになるべきか悩んでいる若人だ。されど、どちらにならなくても良いのです。晴れた日を喜ぶ、その気持ちがこそが大切なのです。どちらでもないからといって、君が傷つく必要はない。なぜなら、君は、君という唯一無二の存在なのだから」
「…サーテュ教授、貴方は…」
ふっ、とサーテュは唐突に顔を下ろし、無表情のままに肩を竦める。
「喋りすぎました。それでは、おやすみ」
そうして、コツコツと廊下の向こうへと去っていってしまうのである。
一方、取り残されたケルトは、ぽかんとした様子で先程の言葉を反芻していた。
「…精霊…私が転生体だと、気づいていたのですか?」
疑念と同時に、困惑が広がる。
どうしてあんな事を言ったのだろう、と思いながらも、最後の言葉をもう一度、口の中で転がす。
「…私は、私。精霊であり、魔法士でもある…」
その言葉は、今在るケルトを肯定する言葉でもあった。
―――無理に変化せずとも良い、今のままで、君が成りたい何かを探しなさい。
そう、言われたような気がした。
ふぅ、と息を吐きながら窓の外を見上げ、ケルトは一人、そこで遅くまで佇み続けた…。
※※※
「まさかこんな時間まで駆けずり回ることになるなんて…美容にはよろしくありませんわ!本当に忌々しいですわね虚無教!」
「姫、化けの皮が剥がれかかっていますぞ」
私のツッコミに、キッと姫は睨みつけるも、勇者の視線など私には屁でもない。そもそも、そんな睨みは旅の間に腐るほど向けられたのだから、今更だ。
涼しい顔のこちらへ、姫は舌打ちでもしそうな様子。とはいえ、不機嫌なのは私が原因ではない。
明日に向けての防犯対策やらをするため都市中を駆けずり周り、姫もクタクタなのだろう。私は警護も兼ねて居るのだが、こちらは体力自慢なだけあってピンピンしている。鍛え方が違うのは当然、というか、違わなかったら騎士団長などこなせない。
そんなことを思って見ていれば、姫は苛立たしげに髪をかき上げている。
「だいたい、この都市の衛兵はどうしてああまで指示待ちが多いのかしら?もうちょっと自分たちで考えてくださればよろしいのに…」
「魔法士が実権を持つ都市ですからな。非魔法士である彼らは、どちらかと言えば軍隊ではなく、警備兵と言ったほうが正しいでしょう。それに、カルヴァン自体が出来て間もない都市ですので、人材が足りないのでしょうな」
「つまり、衛兵の取りまとめ役が不在なのですね。頭の痛い問題ですわ」
姫も長いことこの都市に在籍していた様子が、衛兵のお世話になるような事は少なかったのだろう。
しかし有事の際にアレコレ「何をすれば良いのですか勇者様!」「どうすれば良いのですか勇者様!」「ご指示をください勇者様!」を連呼されれば、姫でなくとも辟易する。私の部下であったのならば落第点も良いところだ。
「…ともあれ、準備はそこそこですわ。最善とは言い難いですけど、ある程度、敵の攻撃を受け流すことはできるでしょう」
「しかし、敵は何が目的なのでしょうか。皆目、見当がつきません」
疲れた様子で椅子に座る姫へ、火にかけていたポットを手に取り、カップへ飲み物を注いでそれを渡す。中身はここの備品として置かれていたハーブティーと蜂蜜。待遇としてはVIPレベルな持て成しだろう。
それを受け取って口をつけてから、姫は思案するように顎に手を当てる。
「クレイビーは、まさに子供のような男でしたわ。狂信者と言うよりは、魔法に強いプライドを抱く偏屈老人。アーメリーンのように異形の技能を扱うでもなく、ただ魔法に固執している様子からして、クレイビーは遊んでいるのでしょう」
「遊び、ですか」
命をかけた遊び、それが姫から見た敵の行動原理だそうだ。
しかし、命をかけた勝負を遊びとは。私には理解できそうもない相手だ。する気もないが。
「そうですわね、例えるならば…剣の道に人生をかけた御仁が、死に場所を求めて人斬りを繰り返す、みたいな感じかしら」
「では、その老人は死に場所を求めている、と?」
「死にたいのかどうかまではわかりませんけど…でも、そうですわね。どこか、自暴自棄に見えますわ。件のアーメリーンという眷属もね」
思わず眉を上げる私へ、姫は手を振って「勘ですわよ」と付け加える。
「試練を課したり、ゲームに興じたり、なんだか虚無らしくありませんもの。魔物は魔王も含めて、普通は生物を殺めることだけを行動原理にしてますのに、あの二人はそれとは違いますから。なんと言いますか…何かを求めているような…」
姫はフッと息をついて、窓の外を見ている。暗い夜空には、何も写してはいない。それとも、勇者の瞳には、何か常人には見えないものが見えているのか。
その横顔はどこまでも憂い顔で、いつものような輝きは見られなかった。
…そこで何を思ったのか、姫はジト目でこちらを見た。
「…ところで、前に淑女のお誘いを断った男が、よくもまぁ堂々と深夜の自室へやってこれますわね。その胆力には感心しますわ」
…ああ、ようやく突っ込まれた。無視されるのは精神的に厳しいのだが、私の立場的には無理のないことではある…のだが、やはりどこか寂しい。
とはいえ、姫の…アレを受け取ることはできない。私と母の事情的にも、そして姫の未来を考えても、だ。
苦渋の滲みきった内心とは裏腹に、いつもの無表情で淡々と述べておく。
「件の話に関しては、以前にもお伝えしましたが、皇家の命令ですので承諾はしかねます」
「あら、でしたら皇女であるアタクシの命令は聞くのかしら?」
「命令は皇帝陛下のお言葉がもっとも優先されます」
「この頑固騎士」
ため息を吐いて姫は睨みつけてくる。そんな顔も美しい方だ。
どこか恨みがましい視線もなんのその、鉄面皮を保つ私は別の話題に逸した。
「しかし、姫の弟子である彼は、なかなか先行きの良い青年のようですね」
「ケルティオのこと?」
「ええ。当初はただの一般的な魔法士のように思えましたが、頭が冴えてそれを実践できる冷静さを持つ。きっと大成すれば強き魔法士になるでしょう」
「あら、それでは最高法士も夢ではないかしら?」
「おそらくは」
私はジョークをあまり言わない、なのでこれは正直な言葉だ。彼はなかなか見どころのある若者だ。彼のような後進が騎士団に居てくれれば、私も安心できるのだが。
そんな返答がお気に召したのか、姫はほほ笑みを浮かべた。
「アタクシの弟子だから、というよりは、あの子の努力の賜物のような気がしますけどね。いろいろと無茶振りされても、挫けることなく続けていられるのは、あの子の精神力の強さの証でしょう」
あの青年を鍛えているのは、姫だけではないらしいな。
他に師事しているのは、件の紫ローブの老人と…リングナーの子供…いや、子供かどうかはわからないが。リングナーは基本、成人と子供の見分けがつかない。しかし、どこかで聞いたような名前のリングナ―だ。
「おじい様やネセレにも師事してますからね。体・技・魔に関して、これだけの面子で鍛えられれば、腕前が上がるのは当然ですけども、それでも超ドギツイそれについていくのは大変ですわ」
超ドギツイのは自覚されているのですね。
正直、姫の教え方は乱暴だと、旅の合間で出会った魔法士との掛け合いで思っていたが、そのとおりのようだ。
「…そもそも、ケルティオ自身あまり気づいていないのですが、彼が挫けないのは、ハディの存在が大きいでしょうね。あんな小さな子どもが、重い過去を背負って邁進しているのに、年上の自分が負けられるものか、というライバル心もあってこその成果なのでしょう。良き好敵手が居るから、互いに切磋琢磨していける。良い関係ですわね」
弟子のことを語るとき、姫は本当に優しげな顔になる。今までは見たことのない顔だ。
それに少しだけ、胸中でモヤが掛かる…が、その感情には蓋をして、別の感想を述べる。
「好敵手、ですか。確かに、少しうらやましい存在です」
「あら、騎士団長様には好敵手がいませんの?」
「ええ、あいにくと。昔から腕っぷしだけは強い子供でしたので。それと利かん気も強いせいで、期待されない勇者殿のお供に選ばれたくらいですから」
「たしか、上司を殴り飛ばしたんでしたわね?」
「不可抗力です」
当時、私がまだ若かった頃の騎士団長は、差別主義者の塊のような男であった。騎士団そのものを私物にしている節があったので、口論の際に物の勢いでぶん殴って顎を砕いて歯を5本くらい駄目にしてやった。まあ、つまり事実上の左遷に等しい状況であり、期待されていない勇者の共に選ばれる時点で、死んでこいと言っているようなものだったのだ。
こちらが帰ってきたときの上官達の顔を思い出せば、自然と口端を釣り上げてしまう。
「それに、お偉方は半獣など目に入れるのも嫌だったのでしょうな。体よく死んでくれるのを願っていたのでしょう」
…そう、私は半獣。正確には半獣と人間のハーフだ。
病弱な母は、さる貴族の当主で、父は半獣。そのハーフということで、私は非常に曖昧かつ、複雑な立場でもあったのだ。幼い頃より半獣とのハーフということで、周囲から隔意を持って接せられてきた。戦争が起きた時には、私がスパイではないかという勘ぐりが止まなかった程。…もっとも、それも戦功を上げていく程に消えていったが、代わりに嫉妬じみた揶揄は増えていった。
現在、私への風当たりも様々である。勇者の旅の仲間であり、昔の戦争で武勲を立てた英雄である。昔に比べれば、悪意の当てこすりが随分と減ったとは思う。
そんな皮肉へ、姫は呆れたように笑い飛ばした。
「外見は人間と変わらないのですから、半獣も何も無いと思いますけどね」
「ほとんどの人間は、そう思いません。大衆は私が半獣の血を引いていると知るだけで眉を顰めます。あの英雄が半獣風情の…とね」
「…等しく始祖の血を引いているのは同じですのに、どうしてそんな格差が出来てしまったのかしら」
「そう先人達が教え込んできた結果でしょう。この国では数が少ない半獣よりも、大衆こそが正義ですから」
「あら?でしたら、たった一人の勇者は悪なのかしら?」
「まさか、勇者は特別です」
特別、という言葉に、姫はやはりアンニュイなため息を吐いた。
「特別…特別ねぇ。それって腫れ物として扱うのと、どう違うのかしら」
天才と狂人は紙一重という。
才能の方向性が自分達に向いているかどうか、それが称号の差なのだ。
ならば、勇者と魔王も紙一重なのではないか、と姫は呟く。
「…旅を終えて、世界中をまた巡りましたけど、行くところ行くところ、皆がアタクシを勇者と褒め称えますわ。リオ族の皆さまも、地族の皆様も…まるで人が変わったみたいに」
勇者の旅の途中では、身分を隠していたおかげか人々は自然体に接してくれていたが、勇者とバレてからは手のひらを返したように対応が変わったのを何度も見た。気のいい獣人の親父も、気取った天族の貴族も、皆がへりくだって姫を見る。その視線は、彼女自身を見ている物ではなかっただろう。
ワインを飲み干して、姫は疲れたように机へ伏せる。
「誰もアタクシを見ませんわ、カルヴァンだってそう…これなら、勇者の旅をしていた頃のほうがずっとマシ。勇者なんて称号、邪魔でしか無いのですわ…」
「………」
「事が終われば、勇者なんて居ないほうが良い。皆がアタクシを利用するか、腫れ物としか見ていませんもの…………ただ、アタクシは、普通の………普通の人間として、見てほしかったのに…」
そう呟いてから、姫は目を伏せて沈黙した。
静かにそっと覗き込めば、姫は静かな呼吸で寝入っていた。愚痴といい、疲れていたのだろう。
ため息まじりに、そっと壊れ物に触れるように抱き上げて、寝台へと寝かせて毛布を被せる。そんな介護も、かつての旅では何度も行ったことだったが…実に久方ぶりで、そして変わらぬ様子にどこか安堵している自分が居た。
そのまま音もなく寝台から離れ、蝋燭の明かりを消して、窓の外から天を見上げる。
「私は、貴方がどれほど努力していたかを、知っていますよ」
寝る間も惜しんで本を読み、達人に教えを請い、恐ろしい魔物に対峙し、人々に迫害されながらも彼女は進み続けた。それは辛く、長く、険しい道でもあった。
それを共に見続けてきた私は、ひっそりと、誰へともなく、囁く。
「私の心は、いつでも貴方のお傍におります。周囲が認めずとも、私だけは」
一拍置いて、決して告げぬ言葉を、伝えた。
「…愛しき、我が姫君よ」
魔導砲の前で調整を行っていたシオルの言葉で、大勢の研究生達は労いの言葉を掛け合いながら、おもむろに解散していく。
明日に行われる血盟決議の行方はともかく、何かが起こることはわかりきっていたため、シオルは兵器が敵に奪われないようにいろいろと封印を施していたのだ。これでシオル以外の者では、扱うことが難しくなった。
もっとも、メルの言う通り、その件のクレイビーという導士が熟達した魔法士ならば、これでも安全とは言い難いが。
「しかし、虚無教か…」
シオルは一人、兵器の前で佇みながら思案する。
虚無教という邪教に関しては噂では聞いていたが、所詮は狂人の所業であるとさして興味を示さないでいた。しかし、今回の騒動で敵が行った魔法の罠に関して、シオルはかなりの驚愕と同時に、評価を改めていたのだ。
「血の錬金陣…勇者でもわからない魔法形態を新たに作り出すその頭脳、我が学園に居れば、大きく評価されていただろうに」
それくらい、シオルにとってクレイビーの頭脳は素晴らしいものがあった。少しだけ相手の手腕を見た程度でそう思うのだ。実際に会って話をしてみたいものだ、とシオルは密かに思っていた。
とはいえ、相手は勇者の敵。
世界すべてを敵に回すにはリスクが大きすぎる、と思い直し、シオルは明日の血盟決議に向けての準備に移ることにした。
「…シオル教授」
と、そこで声をかけられ、シオルは振り向く。
そこには、メルサディールの付き人…と思われている、ケルトが佇んでいたのだ。
シオルは無表情の相貌に、少しだけ余所行きの色を乗せて、ケルトを見た。
「ああ、ごきげんよう…メルサディール様から何か?」
「いえ、少しお話をしたいと思いまして」
ケルトの言葉に少しだけ意外そうにしながら、シオルはとりあえず頷いた。
「よかろう、ひと仕事終えたところだ…話なら自室で聞こうか」
・・・・・・・・・・
シオルの研究室に招かれ、ケルトは応接用ソファに座って相手を見ている。シオルは指を振って魔法を唱え、部屋の明かりと暖炉に火を点けながら、改めて椅子に座った。
「それで、話とは何だね」
「後学のために、皆さんからお話を伺っています。貴方にとって魔法士とはいったいなんなのか、と」
「ふむ…」
シオルは眼鏡の奥で目を細めてから、弦を少しだけ上げた。
「話の中で相手が本当に本人かどうか、様子を探っている、というところかね?」
「………」
「当たらずとも遠からず、か」
探りに来たらしいケルトへ、シオルはしかし気分を害した様子もなく、淡々と答える。
「まあ、よかろう…そうだな、君の尋ねた魔法士とは何か、か」
講義をする時のように神経質そうに指先をこすり合わせつつ、シオルは天井を見上げて答えた。
「魔法とは世界を支配する法則だ。魔法士はその法則を解き明かし、より良い技術を編み出すことを目標としている。現状、カルヴァンは人々の文明を発展させることに注力している、と言ってもよかろう」
「人間の文明の発展、ですか」
「左様。我ら人間は、太古より未知の領域を解き明かし、新たなる知識や技術、文明を作りあげてきた。人跡未踏の地に赴き、開拓し、都市を作り上げていくように、魔法もまたそのように開拓されていくジャンルの一つだろう」
カルヴァンで魔法を広めているのもその一つだ、とシオルは言う。
「いうなれば、私は人間のために魔法を研究している」
「なるほど、人間のために…」
「コルショー教授は、世界の調和のために魔法士は存在する、という立ち位置だ。既に聞いているかもしれないが」
「シオル教授は否定的なのですか?」
「それもまた一つの姿だ。魔法士が世界の調和を保てば、それだけ人死にも減る。…だが、私は精霊や世界のため、という考えには否定的なのだ」
少し眉を上げたケルトへ、シオルは淡々と答える。
「目に見えない存在が本当に意志を持っていると、どうして説明できようか」
「…しかし、精霊は語りかければ応えてくれます。これは意志があることの証左では?」
「それが本当に自己決定による行動なのか、我らにはわからない。ただ精霊呪文という強制力に従っているだけの現象かもしれない」
「………まあ、そうですね…」
そもそも、なぜ呪文を唱えれば精霊が応えるのかという問いに、人は答える事ができない。なぜか呪文に従う習性がある、ということしかわかっていないからだ(…神がそう定めたからという、それが理由のすべてなのだが、あえてケルトは黙っていた)。
確かに、精霊が見えないし会話ができない人々から見れば、それだけで彼らが意志を持つかは、わかるまい。
「私は、精霊や神という目に見えない存在を、あまり信じてはいないのだ。見えない存在よりも、目に見える近しい人々に意識を向けるほうがよほど健全だ。…神や精霊の名の元に横暴がまかり通るのも、何度も見てきた。神という大義名分で道理を捻じ曲げる今の国のあり方は、どこか歪にも思える」
「始祖への信仰にも、似たような部分がありますね」
聖人とか神さま扱いされている始祖ヴァルスへの信仰は現在でも盛んで、街道を歩けば必ず彼の神像を目にすることが出来る。ただし、デグゼラスで当人が祀られているのは、天光神の神殿なのだが。帝国が戦争を起こそうとしている大義名分も、始祖ヴァルスのご意思である、と標榜している。当人にとっては、たまったものではないだろう。
「そもそも、世界を維持するのは神々の仕事であり、我らがそれを肩代わりするなど傲慢なのではないか、とも思う。私ら魔法士も、所詮はただの人間でしか無いというのに」
「教授は、世界は神の手によって統治されるべきだ、とお思いなんですね」
「我々人間では、どうしても大局的な見方ができない。神の視点を持っていないのだから当然だ。それに、私はどちらかというと利己的でね。綺麗事よりも自分の利益を追求したいのだよ」
シオルは怜悧な瞳でケルトを見た。
「兵器開発もその一環だ。錬金術を用いた技術がどれほどの威力を持つのか、魔法士がそれほど有益なのかを、人々に広めたいのだ。ただ呪いを扱えるだけの存在ではなく、人々にとってどれだけ有益かを知らしめたい」
「そのために戦争で利用されるとしても?」
「魔法が戦争で用いられるのは当然だ。この技術を利用し、優位に立ちたいという思惑があるからこそカルヴァンは設立されたのだ。遅かれ早かれ、魔法兵器は作り出されていただろう。そもそも、カルヴァンは戦争を見据えて作られた。今更な問いだよ、それは」
カルヴァンがあってもなくても、さしたる差異はなかっただろう、とシオルは見解を示す。
それに対して、ケルトは複雑ながらも確かに、と心中では頷いていた。
「魔法は技術だ。神秘の最奥を覗き込むための鍵の一つであり、世界を解明するという我々魔法士の、永遠の課題を解き明かす手段。その過程で作られたものをどうやって役に立てるかは、時代と時の統治者次第。私はそれを利用して、魔法士にとっての良き地位を確立するだけ…それだけだ」
コルショーとは大きく違えど、シオルもまた魔法士の立場に関して、思うところはあるらしい。
「…見えなければわからない、ですか」
ケルトは呟き、思案するように目を伏せた。
※※※
一人、暗い廊下を歩いているケルトは、ひっそりとため息を吐く。
「精霊、人間、魔法…今更、こんなことで思い悩むなんて、思いもしませんでしたね」
どこか消沈したそれは、宵闇に紛れて消えていく。それを聞いているのは、おそらく夜に舞い飛ぶ小さな闇精達だけだろうか。
自身に纏わりついてくる、黒紫の輝き達を目にしながら、ケルトは呟く。
「…精霊みたい、か」
昼に言われた、何気ない一言を思い出す。
風の精霊ファルテリアもまた、ケルトのことを精霊のようだ、と言っていた。
その指摘に、ケルトはどこか落ち着かない様子で歩き出す。どうにも、自分が人間では無いと突きつけられる度に、何故か不安感を抱くのだ。
人として生まれ、人の社会に生き、人間としてのアイデンティティを持っているケルトにとって、それを否定されるのはやはり苦痛なのだ。まるで、自分が化け物になってしまったかのように、何処か心細い思いが溢れて止まない。
黒い輝きが舞う世界の中、ケルトは窓の外を見上げて、再び大きなため息を吐いた。
「………おや」
不意の声に驚いて振り向けば、通り過ぎた柱の合間、窓が見える吹き抜けの場所に、長髪の男性がひっそりと佇んでこちらを見ていたのだ。
気づかなかったそれに、ケルトは慌てて居住まいを正した。
「これは、失礼。気づきませんでした」
「………いえ」
無表情の無口な男性…サーテュの言葉に、ケルトは顔を上げて相手を見た。
そういえば、眼前の男性も教授であったな、と。
なので、彼は思わず口を開いていた。
「あの、サーテュ教授。ご質問をしてもよろしいでしょうか?」
答える代わりに首を傾げる相手へ、了承の意を受け取って、ケルトは尋ねてみた。
「急な質問で恐縮ですが…貴方にとって、魔法士とはどういう存在なのですか?」
その問いを耳にして、サーテュは表情の読めない鉄面皮のまま、顔を天に向けた。
「………魔法士、ですか」
しばしの間。
ゆっくりと顔を戻した彼は、静かな口調で、口を開く。
「君は、初めて魔法を成功させた日のことを、覚えていますか?」
「え?」
無口な男の急な台詞に驚くが、サーテュは気にした風もなく、カツカツと歩き回る。まるで講義をするかのように。
「…私は、初めて魔法を成功させた日のことを、まだ覚えています。私の両親は商人で、そこそこに裕福でした。いろいろと問題児だった私に、さまざまな事を施してくれたのです」
「問題児、ですか…」
普段、物静かなサーテュはそう見えないが、子供時分でも石のように無口だったのならば問題児扱いされるだろうか。
そんな事を思うケルトへ、サーテュは色の見えない目を向ける。
「………何もない、灰色の生の中で、初めて手に入れたのは、それでした。魔法士に魔法の教えを請い、それが成功した日、母はとても喜んでくれました」
「…」
「つまり、そういうことです」
簡潔ながら理解しづらい言葉だ。
…初めて魔法を成功させた日。
そう言われ、ケルトは思わず顔を顰めてしまった。
どうにも、彼にはそれが思い出せないのだ。
「魔法を成功させた日、ですか。…私は、どんな事を思ったのかすら、覚えていません」
「………ほう」
「私の家では、魔法は扱えて当然の技術でした。私は同年齢の魔法士の子供より覚えが遅く、失敗ばかり繰り返していましたから…初めて成功させたとしても、きっと誰も褒めてはくれなかったでしょうね」
むしろ、出来て当然のことをようやく出来たということで、さっさと次のステップへ向かえと家庭教師にせっつかれただけだろう。落ちこぼれ魔法士は、人一倍努力しろとだけ言われて育ったのだ。
だから、彼は死物狂いで努力して…そして今、ここに居る。
「他者に認められるということ。それが、サーテュ教授にとっての、魔法士としてのあり方なのですか?」
「………認められ、自分のやりたいことを、見つけたのです」
「やりたいこと?」
「私には、魔法しかありませんでした。それ以外の何もかもは、何も感じない、消えてしまう無価値な代物でした。だから、認められた魔法を極めてみよう。不自由な生の中で、初めて見つけた、目標です」
「目標…」
サーテュの話に、ケルトは暗い顔で俯く。
「…目標。私も、わからなくなりました。自分が何なのかと考える程に、自分はどんな存在になればいいのかと、想像できなくなったのです」
ケルトは人間だ。
しかし、魂は精霊でもある。
何度も言われたそれに、ケルトは次第にわからなくなっていった。
「…魔法士とは、いったいどういう存在なのでしょうか。私は生まれた時から魔法士になるよう育てられました。だから、どうして魔法を使うのか、その目的、信念がわからないのです」
「………だから、こうして尋ねている?」
「…ええ」
それだけではない。ケルトは前世の精霊としての記憶を思い返すうちに、今の自分はこのままで良いのかという疑問に、ぶち当たってもいた。精霊を軽んじる魔法士、魔法を面白半分で使用する者たち。精霊という視点から見れば、それはとても醜悪に映る。
ならば、自分はその同類で居ていいのだろうか。
精霊を、道具のように使う魔法士の仲間で、居るべきなのだろうか。
ケルトは、自分が精霊の価値観を持つ人間として、どう在るべきなのかを見失っていたのだ。
そんな思い悩むケルトを、どこまで理解できたのか。
サーテュはふと天を仰いで、ケルトへ言った。
「………きっと、明日は晴れでしょう」
「え?」
「晴れた日は気持ちがいい。風が凪ぎ、草花を揺らし、土の匂いの中で薬草を模写する思い出は、いつだって尊い。そう思うことに、精霊も人間も化物も関係がありません」
「え、ええと…?」
「君は、人間と精霊の違いを知っていますか?」
コロコロと会話を変える相手に目を白黒させれば、サーテュは立ち止まってぼんやりと続けている。
「本来は違いなどないのです。どちらも同じ、原初神が生み出した存在、いわば兄弟といっても差し支えない。だから、精霊は人にも成れる」
「っ!?」
「違うのは、君の中の認識、価値観。君は人と精霊の狭間に立つ故に、どちらになるべきか悩んでいる若人だ。されど、どちらにならなくても良いのです。晴れた日を喜ぶ、その気持ちがこそが大切なのです。どちらでもないからといって、君が傷つく必要はない。なぜなら、君は、君という唯一無二の存在なのだから」
「…サーテュ教授、貴方は…」
ふっ、とサーテュは唐突に顔を下ろし、無表情のままに肩を竦める。
「喋りすぎました。それでは、おやすみ」
そうして、コツコツと廊下の向こうへと去っていってしまうのである。
一方、取り残されたケルトは、ぽかんとした様子で先程の言葉を反芻していた。
「…精霊…私が転生体だと、気づいていたのですか?」
疑念と同時に、困惑が広がる。
どうしてあんな事を言ったのだろう、と思いながらも、最後の言葉をもう一度、口の中で転がす。
「…私は、私。精霊であり、魔法士でもある…」
その言葉は、今在るケルトを肯定する言葉でもあった。
―――無理に変化せずとも良い、今のままで、君が成りたい何かを探しなさい。
そう、言われたような気がした。
ふぅ、と息を吐きながら窓の外を見上げ、ケルトは一人、そこで遅くまで佇み続けた…。
※※※
「まさかこんな時間まで駆けずり回ることになるなんて…美容にはよろしくありませんわ!本当に忌々しいですわね虚無教!」
「姫、化けの皮が剥がれかかっていますぞ」
私のツッコミに、キッと姫は睨みつけるも、勇者の視線など私には屁でもない。そもそも、そんな睨みは旅の間に腐るほど向けられたのだから、今更だ。
涼しい顔のこちらへ、姫は舌打ちでもしそうな様子。とはいえ、不機嫌なのは私が原因ではない。
明日に向けての防犯対策やらをするため都市中を駆けずり周り、姫もクタクタなのだろう。私は警護も兼ねて居るのだが、こちらは体力自慢なだけあってピンピンしている。鍛え方が違うのは当然、というか、違わなかったら騎士団長などこなせない。
そんなことを思って見ていれば、姫は苛立たしげに髪をかき上げている。
「だいたい、この都市の衛兵はどうしてああまで指示待ちが多いのかしら?もうちょっと自分たちで考えてくださればよろしいのに…」
「魔法士が実権を持つ都市ですからな。非魔法士である彼らは、どちらかと言えば軍隊ではなく、警備兵と言ったほうが正しいでしょう。それに、カルヴァン自体が出来て間もない都市ですので、人材が足りないのでしょうな」
「つまり、衛兵の取りまとめ役が不在なのですね。頭の痛い問題ですわ」
姫も長いことこの都市に在籍していた様子が、衛兵のお世話になるような事は少なかったのだろう。
しかし有事の際にアレコレ「何をすれば良いのですか勇者様!」「どうすれば良いのですか勇者様!」「ご指示をください勇者様!」を連呼されれば、姫でなくとも辟易する。私の部下であったのならば落第点も良いところだ。
「…ともあれ、準備はそこそこですわ。最善とは言い難いですけど、ある程度、敵の攻撃を受け流すことはできるでしょう」
「しかし、敵は何が目的なのでしょうか。皆目、見当がつきません」
疲れた様子で椅子に座る姫へ、火にかけていたポットを手に取り、カップへ飲み物を注いでそれを渡す。中身はここの備品として置かれていたハーブティーと蜂蜜。待遇としてはVIPレベルな持て成しだろう。
それを受け取って口をつけてから、姫は思案するように顎に手を当てる。
「クレイビーは、まさに子供のような男でしたわ。狂信者と言うよりは、魔法に強いプライドを抱く偏屈老人。アーメリーンのように異形の技能を扱うでもなく、ただ魔法に固執している様子からして、クレイビーは遊んでいるのでしょう」
「遊び、ですか」
命をかけた遊び、それが姫から見た敵の行動原理だそうだ。
しかし、命をかけた勝負を遊びとは。私には理解できそうもない相手だ。する気もないが。
「そうですわね、例えるならば…剣の道に人生をかけた御仁が、死に場所を求めて人斬りを繰り返す、みたいな感じかしら」
「では、その老人は死に場所を求めている、と?」
「死にたいのかどうかまではわかりませんけど…でも、そうですわね。どこか、自暴自棄に見えますわ。件のアーメリーンという眷属もね」
思わず眉を上げる私へ、姫は手を振って「勘ですわよ」と付け加える。
「試練を課したり、ゲームに興じたり、なんだか虚無らしくありませんもの。魔物は魔王も含めて、普通は生物を殺めることだけを行動原理にしてますのに、あの二人はそれとは違いますから。なんと言いますか…何かを求めているような…」
姫はフッと息をついて、窓の外を見ている。暗い夜空には、何も写してはいない。それとも、勇者の瞳には、何か常人には見えないものが見えているのか。
その横顔はどこまでも憂い顔で、いつものような輝きは見られなかった。
…そこで何を思ったのか、姫はジト目でこちらを見た。
「…ところで、前に淑女のお誘いを断った男が、よくもまぁ堂々と深夜の自室へやってこれますわね。その胆力には感心しますわ」
…ああ、ようやく突っ込まれた。無視されるのは精神的に厳しいのだが、私の立場的には無理のないことではある…のだが、やはりどこか寂しい。
とはいえ、姫の…アレを受け取ることはできない。私と母の事情的にも、そして姫の未来を考えても、だ。
苦渋の滲みきった内心とは裏腹に、いつもの無表情で淡々と述べておく。
「件の話に関しては、以前にもお伝えしましたが、皇家の命令ですので承諾はしかねます」
「あら、でしたら皇女であるアタクシの命令は聞くのかしら?」
「命令は皇帝陛下のお言葉がもっとも優先されます」
「この頑固騎士」
ため息を吐いて姫は睨みつけてくる。そんな顔も美しい方だ。
どこか恨みがましい視線もなんのその、鉄面皮を保つ私は別の話題に逸した。
「しかし、姫の弟子である彼は、なかなか先行きの良い青年のようですね」
「ケルティオのこと?」
「ええ。当初はただの一般的な魔法士のように思えましたが、頭が冴えてそれを実践できる冷静さを持つ。きっと大成すれば強き魔法士になるでしょう」
「あら、それでは最高法士も夢ではないかしら?」
「おそらくは」
私はジョークをあまり言わない、なのでこれは正直な言葉だ。彼はなかなか見どころのある若者だ。彼のような後進が騎士団に居てくれれば、私も安心できるのだが。
そんな返答がお気に召したのか、姫はほほ笑みを浮かべた。
「アタクシの弟子だから、というよりは、あの子の努力の賜物のような気がしますけどね。いろいろと無茶振りされても、挫けることなく続けていられるのは、あの子の精神力の強さの証でしょう」
あの青年を鍛えているのは、姫だけではないらしいな。
他に師事しているのは、件の紫ローブの老人と…リングナーの子供…いや、子供かどうかはわからないが。リングナーは基本、成人と子供の見分けがつかない。しかし、どこかで聞いたような名前のリングナ―だ。
「おじい様やネセレにも師事してますからね。体・技・魔に関して、これだけの面子で鍛えられれば、腕前が上がるのは当然ですけども、それでも超ドギツイそれについていくのは大変ですわ」
超ドギツイのは自覚されているのですね。
正直、姫の教え方は乱暴だと、旅の合間で出会った魔法士との掛け合いで思っていたが、そのとおりのようだ。
「…そもそも、ケルティオ自身あまり気づいていないのですが、彼が挫けないのは、ハディの存在が大きいでしょうね。あんな小さな子どもが、重い過去を背負って邁進しているのに、年上の自分が負けられるものか、というライバル心もあってこその成果なのでしょう。良き好敵手が居るから、互いに切磋琢磨していける。良い関係ですわね」
弟子のことを語るとき、姫は本当に優しげな顔になる。今までは見たことのない顔だ。
それに少しだけ、胸中でモヤが掛かる…が、その感情には蓋をして、別の感想を述べる。
「好敵手、ですか。確かに、少しうらやましい存在です」
「あら、騎士団長様には好敵手がいませんの?」
「ええ、あいにくと。昔から腕っぷしだけは強い子供でしたので。それと利かん気も強いせいで、期待されない勇者殿のお供に選ばれたくらいですから」
「たしか、上司を殴り飛ばしたんでしたわね?」
「不可抗力です」
当時、私がまだ若かった頃の騎士団長は、差別主義者の塊のような男であった。騎士団そのものを私物にしている節があったので、口論の際に物の勢いでぶん殴って顎を砕いて歯を5本くらい駄目にしてやった。まあ、つまり事実上の左遷に等しい状況であり、期待されていない勇者の共に選ばれる時点で、死んでこいと言っているようなものだったのだ。
こちらが帰ってきたときの上官達の顔を思い出せば、自然と口端を釣り上げてしまう。
「それに、お偉方は半獣など目に入れるのも嫌だったのでしょうな。体よく死んでくれるのを願っていたのでしょう」
…そう、私は半獣。正確には半獣と人間のハーフだ。
病弱な母は、さる貴族の当主で、父は半獣。そのハーフということで、私は非常に曖昧かつ、複雑な立場でもあったのだ。幼い頃より半獣とのハーフということで、周囲から隔意を持って接せられてきた。戦争が起きた時には、私がスパイではないかという勘ぐりが止まなかった程。…もっとも、それも戦功を上げていく程に消えていったが、代わりに嫉妬じみた揶揄は増えていった。
現在、私への風当たりも様々である。勇者の旅の仲間であり、昔の戦争で武勲を立てた英雄である。昔に比べれば、悪意の当てこすりが随分と減ったとは思う。
そんな皮肉へ、姫は呆れたように笑い飛ばした。
「外見は人間と変わらないのですから、半獣も何も無いと思いますけどね」
「ほとんどの人間は、そう思いません。大衆は私が半獣の血を引いていると知るだけで眉を顰めます。あの英雄が半獣風情の…とね」
「…等しく始祖の血を引いているのは同じですのに、どうしてそんな格差が出来てしまったのかしら」
「そう先人達が教え込んできた結果でしょう。この国では数が少ない半獣よりも、大衆こそが正義ですから」
「あら?でしたら、たった一人の勇者は悪なのかしら?」
「まさか、勇者は特別です」
特別、という言葉に、姫はやはりアンニュイなため息を吐いた。
「特別…特別ねぇ。それって腫れ物として扱うのと、どう違うのかしら」
天才と狂人は紙一重という。
才能の方向性が自分達に向いているかどうか、それが称号の差なのだ。
ならば、勇者と魔王も紙一重なのではないか、と姫は呟く。
「…旅を終えて、世界中をまた巡りましたけど、行くところ行くところ、皆がアタクシを勇者と褒め称えますわ。リオ族の皆さまも、地族の皆様も…まるで人が変わったみたいに」
勇者の旅の途中では、身分を隠していたおかげか人々は自然体に接してくれていたが、勇者とバレてからは手のひらを返したように対応が変わったのを何度も見た。気のいい獣人の親父も、気取った天族の貴族も、皆がへりくだって姫を見る。その視線は、彼女自身を見ている物ではなかっただろう。
ワインを飲み干して、姫は疲れたように机へ伏せる。
「誰もアタクシを見ませんわ、カルヴァンだってそう…これなら、勇者の旅をしていた頃のほうがずっとマシ。勇者なんて称号、邪魔でしか無いのですわ…」
「………」
「事が終われば、勇者なんて居ないほうが良い。皆がアタクシを利用するか、腫れ物としか見ていませんもの…………ただ、アタクシは、普通の………普通の人間として、見てほしかったのに…」
そう呟いてから、姫は目を伏せて沈黙した。
静かにそっと覗き込めば、姫は静かな呼吸で寝入っていた。愚痴といい、疲れていたのだろう。
ため息まじりに、そっと壊れ物に触れるように抱き上げて、寝台へと寝かせて毛布を被せる。そんな介護も、かつての旅では何度も行ったことだったが…実に久方ぶりで、そして変わらぬ様子にどこか安堵している自分が居た。
そのまま音もなく寝台から離れ、蝋燭の明かりを消して、窓の外から天を見上げる。
「私は、貴方がどれほど努力していたかを、知っていますよ」
寝る間も惜しんで本を読み、達人に教えを請い、恐ろしい魔物に対峙し、人々に迫害されながらも彼女は進み続けた。それは辛く、長く、険しい道でもあった。
それを共に見続けてきた私は、ひっそりと、誰へともなく、囁く。
「私の心は、いつでも貴方のお傍におります。周囲が認めずとも、私だけは」
一拍置いて、決して告げぬ言葉を、伝えた。
「…愛しき、我が姫君よ」
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