異世界は無駄だらけ?!古代魔法 原価計算で無双する!〜初心者魔法使いのお得な冒険〜

わとし

文字の大きさ
1 / 1
異世界での出会いと原価計算の魔法?!

出会い

しおりを挟む
「ふぁ~、また一日終わったぁ。」そう呟いて、アキヒトは疲れ切った身体をベッドに投げ出した。

最近、会社で原価計算の業務が増えて、毎日が忙しい。しかし、その原価計算には魔法のような楽しさがあることに気づき始めていた。

…夢の中で気品漂う女性の声がする。


魔王君臨シ、魔人闊歩スル世界
異世界ノ魔法使イガ光トナラン


突如、アキヒトは異世界に召喚された。目の前に現れたのは、美しいエルフの女性と屈強だが優しそうな獣人の男性。

エルフ「はじめまして、アキヒト。あなたは、私たちの世界を救う魔法使いよ。よく来てくれたわね。」

アキヒト「???」

エルフ「私の名前はリーシャ。こっちの獣人はガルム。分からないと思うけど、聞いて。古代魔法【並行宇宙召喚】で別宇宙のあなたを召喚させて貰ったわ」

ガルムと説明された獣人が元気、かつ、高速にお辞儀をする。

アキヒト「召喚?」

リーシャ「そう、召喚。聞きたいことはだいたい分かるわ。あなたにとってこれは夢の世界と同じ。だから…その…リアル過ぎる夢って感じよね?」

アキヒト「というか、夢だと思ってる。」

リーシャ「OK。夢だけど夢じゃないってのが正解よ。あなたの意識は、この宇宙、この星、この世界【コストーン】にあります。そして、その肉体は、この宇宙に存在するアキヒトの肉体なの。」

ガルム「アキヒトの宇宙の他にもいっぱい宇宙はあって。その宇宙1つ1つにアキヒトがいるんだ実は!」

アキヒト「え、この肉体の…アキヒトはどうなったの?」

リーシャ「ちゃんと並行宇宙召喚をする先なことは了承済で、名誉なことだと喜んでいたわ。コストーンのアキヒトは眠ってる感じよ。」

ガルム「コストーンのアキヒトの体に日本のアキヒトの意識ってことだ!もし、死んでも日本のアキヒトは日本の体に戻るだけ!」

リーシャ「ちなみに日本時間の1分がコストーンの1年に匹敵する時間消費よ!アキヒトにリスクなんてほぼ無いわ!世界を救うのなんて朝飯前!」

アキヒト「あ、うん。でも、よく分かんないけど、リーシャさんたちはリスクあるんでしょ?」

リーシャ「…」

ガルム「アキヒトが死んだら、コストーンのアキヒトは死ぬ!並行宇宙召喚の解除は、普通にやれば問題無いが、死んで強制解除されると術者の命も道連れになるから我らも死ぬ!」

アキヒト「他人の命が乗っかってるパターン!」

ガルム「さすが理解が早い!3人分の命懸けだぞアキヒト!」

とまぁ、俺にはほぼノーリスクだった。しかし、人道的プレッシャーに人は弱い。選ばれたなら全力で頑張ろうと心に決めた。

その後も話を聞くとリーシャたちの世界では、様々なモンスターと戦う冒険者たちが、大変な資金難で効率的な冒険を求めていたのだ。

世界の流通を牛耳っているのは悪魔族と人間族のハーフ「魔人族」。冒険者のアイテムの売却は、魔人に買い叩かれる。そして、購入するアイテムはどれも高値だ。

冒険者は疲弊し、お約束に存在している魔王討伐なんて夢物語な惨状。

現状打破のためには、魔人に売却するアイテムの正確な原価計算が何よりも重要だった。

そこでアキヒトは、失われた魔法である古代魔法【原価計算】を使える魔法使いとして冒険者たちをサポートして欲しいということだ。

リーシャ「言い伝え通りなら、魔王が君臨して、魔人が闊歩する世界に異世界の魔法使いが希望になるの。」

ガルム「魔人を全滅させたところで、根本的な問題は解決せん。魔人とは上手く共存するべきというのがエルフと獣人の意見だ!」

リーシャ「いろんな種族が並行宇宙召喚をしているんだけどね、魔人殲滅を掲げているヤツらもいるのよ。私たちは原価計算の魔法使いこそが世界を救うと信じているわ。」

ガルム「色んな文献を読んで、原価計算の魔法使いに辿り着いたんだ!まさか銀河系の地球の日本に古代魔法が形を変えて存在してるとはな!」

リーシャ「日本はコストーンといろんな単位が同じだからホント助かったわぁ。」

アキヒト「なんとなく分かった。分かったけど、原価計算が無い世界なんてあるんだな。原価計算って意味自体は分かってるのか?」

リーシャ「価値の算術」

ガルム「創造の魔法?」

アキヒト「アイテムを売るとき値決めはどうやってるんだ?」

リーシャ・ガルム「感覚よ(だ)」

アキヒト「俺が知ってる、原価計算について説明しようか。これは、アイテムの生産にかかるコストを把握することで、適切な価格を決定するための計算方法だ。」

リーシャ:「うーん、なるほどね。コスト計算、ね。」

獣人「え? そんなの、どうやって計算するんだ?」

アキヒト「まず、原材料や労働費、経費などのコストを把握する。そして、それらを合計して、アイテムの原価を計算する。把握と計算だ。」

リーシャ「あ、そうなの。わかったわ。へぇ~」

ガルム「でも、それってどうやって把握して計算するんだい?うーん、難しいぞ!」

アキヒト「もっとわかりやすく説明しようか。例えば、カレーを作るときの原価計算を考えてみよう。ところでカレーってある?」

リーシャ:「カレー?あるわよ。奇跡的に日本とレシピは同じだわ。面白い例えね。さて、どんな説明になるのかしら。」

アキヒト「まず、カレーを作るためには、野菜や肉、スパイス、そして時間と手間がかかるだろ?これらが、カレーの原価になる。野菜や肉の値段を足して、スパイスや時間と手間のコストも考慮して、カレー1皿の原価を計算する。」

ガルム「なるほど!それで、そのカレー1皿の原価を知れば、適切な価格を決められるってことか!」

アキヒト「そうだよガルム。そして、適切な価格を決めることで、利益を上げることができる。魔人族から無闇に買い叩かれることもなくなるだろう。手元には根拠があるからね。」

リーシャ「ふむふむ、カレーの例で説明されると、すごく分かりやすいわね。」

ガルム「じゃあ玉ねぎはさ、ほとんど皮だから半分捨てるんだけど、そのときは原価も半分にして良いのか?」

アキヒト「何言ってんだ?カレー作るためにかかったコストは全部足すんだよ。」

リーシャ「そんなことしたらカレーなんて凄く高くなるわよ!」

アキヒト「100円で買って来て20%しか使わず80%捨てたら、まさか20円で計算してんのか?」

ガルム「そうだぞ?!感覚的にそうなるだろ!」

アキヒト「おーぅ。並行宇宙召喚なんて凄いことをした2人は賢いほうなのか?」

リーシャ「エルフの里では大賢者と呼ばれてるわよ。ガルムなんて獣人初の賢者だし。」

ガルム「種族でいえば魔神族の次に賢いのがエルフで獣人はもっと下だが、我だけは飛び抜けておる!」

アキヒト「つまりは、リーシャが魔人族を除いたらトップってこと?!」

リーシャ「ま、まぁ、そうなるわね」

アキヒト「色々と分かった。この世界、救える気がする。」

ガルム「うぉおおおおおおお!!!アキヒト期待してるぞ!」

リーシャ「私の目に狂いは無かったようね。皆が原価計算の大切さを理解できれば、この世界を救うことができるはずなのよ!さあ、原価計算の魔法で冒険者たちをサポートしましょう!」

こうして、アキヒトはエルフのリーシャや獣人のガルムと共に、原価計算の魔法で世界を救うことになった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

処理中です...