記憶の欠片と異世界の。

むー太郎

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北の森

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 威勢だけは良い俺達は、連携についてはまだまだ拙い。
 たまにぶつかったりとか、刃を当ててしまいそうになったりとか。危うい場面が度々あった。
 北の森を攻略し始めて、三人一組のゴブリンのチームと遭遇した。片手剣持ちと斧持ち。それと想定外だったのがボウガンを使ってきた所だろう。突っ込んだシュウは足に喰らって、そこから陣形が崩れた。それからはもうめちゃくちゃで最終的に撤退を余儀なくされた。
 経験不足もそうだけど、当然の帰結だと思う。離れ離れで修行をしてきて、いざパーティを組んで綺麗に連携がとれる...それは天才集団だろう。俺達はもっと意見をぶつけ合って、一緒に考えて、悩んで、同じ方向を向く事が重要なんじゃないか。ユウリに【回復ヒール】をかけて貰っている最中にそう俺は思案する。

「ありがとうユウリ。」
「...【光の加護プロテクション】を極めれば剣の一太刀や二太刀防げるってあの人が言ってた。私も未熟。」

 陣形が崩れて周りに気を配っている時に、俺も隙を突かれて手をざっくり斬られた。それ以外にも肩や足なんかも薄く切り傷が浮かんでいる。
 プロテクションをかけて貰ってその状態、つまりユウリが居なければ最悪戦闘不能になっていたかもしれないのだ。手の平を五セルチも斬られたのにも関わらず、今はうっすら痕が残っているまでに手が修復される。不思議な感じだ。

「いやいや、それって一流の神官しか出来ないんじゃないの?まだ俺達って駆け出しだし、気に病む事無いんじゃないかな。...しかも、不甲斐ない事に回復役にまで前衛の手伝いをさせているんだ。...ごめんユウリ」

「そんな事無きにしも非ず。」
「あはは...どっちだよ...」

 ユウリに治して貰い、次の患者が運ばれてくる。シュウだ。出血を抑える為に矢は刺さったままにしていた。

「おい!ユウリ!シュウの足に刺さッてる矢じり取り出すからコッチ来てくれ!」
「うぐっ...いっ痛!!...ハッハッ...っう...」

 矢じりが刺さったままヒールは出来ない。傷口と矢が癒着して取り出す事が困難になるからだ。その他にも化膿したり、菌が内部に入ってしまうなどの原因もある。しっかりと異物は取り除かなければならない。

「クソ...がついてやがんな。おい、シュウ!ちょっと痛ェかもしんねーけど一気に行くぞ!ユウリ!ヒールの準備しとけ!」
「分かった。『光の加護よ、彼の——』」
「ちょまッ」

 カイトが、シュウの太腿に刺さった矢を引き抜く。返しが肉が引っ掛かりブチブチと音が鳴り、とても痛々しい。

「...ェッ...ァッ......あ゛あ゛ァ゛ァアアア!!!!...ィッッ痛ッ...ハァッハァッ...ッ゛ッ゛」
「『——者を癒せ、【回復ヒール】』」

 ユウリがそう唱えると、血と少し肉の出た傷口が塞がっていき、あっという間に元通りになった。

「ァッ...はぁっはぁっ.........フーーーっ......コホッ...あ、あり...がとう...」

「だ、大丈夫...か?」

「はぁっ...大丈夫...な...わけ無いよ。ぼ...我痛みで死ぬかと思った」

「悪ィ...」

「...はぁっ...いや、...はぁッ...良いんだ。我の為に...やったんだろ...なら、良い」

 服には血が滲んでいるが、怪我は無くなっていた。シュウは肩で息をしてやっと落ち着く。

「これで何とか立て直せたけど...ボウガンか......。予想もしてなかったな...。確実に集落...何かしらのサイクルが出来上がっていると見て良いのかな。」
「ああ、そうかもな。それとあのボウガン...お手製だぜ、ありゃ。あんな型、街で見た事ねェ。商人が北の森を通るなんて話も聞いた事無いしな。頭の良いヤツがいるのか...拾った骨董品でも再現したのか?」
「フー...っ...。どうだろうな...全てはあくまで憶測でしかない。それで、これからどうするのだ...?」
「攻めるべき。肉の為にも。」
「あんなエグい傷さっき見た後に良くそんな食欲湧くな...。まぁ、俺もユウリと同意見だ。俺は攻めたい。しっかり陣形を組み直して...カイトとシュウがしっかり組めば、装備的にも差して問題無いだろうし...。【影衝】を使えば矢の飛んでくる方向も分かるしな。それと魔法はあと何回分ある?」

「十回分位。」

 敵の位置=矢が飛んでくる方向。というのはのは餓鬼でも分かる。しかもボウガン。五十メートル先から狙われても、多分届く事は無いだろう。

 それに、今回は敵の位置が掴めている。なら【影衝】を使わない状態で完全な奇襲が可能だ。シュウは盾持ちだし、カイトはフルメイル。対処のしようはいくらでもある。それと魔法十回分、ヒールとプロテクトの回数的にもあと一戦は出来るだけの体制は整っている。


「オウ、俺もそのつもりだ。やられっぱなしはごめんだしなァ、一発ぶちかまして仕留めてやんぜ。」
「わっ、我もだ!...遅れを取るつもりなど毛頭ない!」
「うん、それじゃー行こう。」





 ◆


 北の森の中を道のり沿って進んで、大体四キロ程進んだ辺りに、大きな岩が森の中に参列している。大体高さ十メートルは巨岩だ。それが五つ程ある。その先にゴブリン共の拠点があると俺達は考えている。
 俺達が最初に遭遇したのは巨岩を越えようとした時、二匹で岩陰から襲われた。勿論分かっていた為対処出来た。出来たのだが、もう一匹が岩の上に潜んでいて不意を突かれたのだ。気付いたらシュウの足に矢が生えていた。
 どうやらあの巨岩が奴等のテリトリーの仕切り、そして見張り場所なのだろう。だとすれば【影衝】無しで回り込んで無警戒な奴等を殺れば良い。

「俺が潜行する。連中の数と位置を掴んで戻って来るよ。一匹以上に気付かれたら思いっきりこの棒で音を鳴らす。十分経って音が鳴らなかったら突入してくれ、陣形は「Y」の字だ。」
「...分かッてる、気ィつけろよ。」
「ああ、【音無】と迷彩服使えば...まぁ、ギリギリまでは気付かれないと思うよ。」
「う、うん...我も応援している!...無茶はするなよ!」
「おっけ」
「『——【光の加護プロテクション】』...頼んだ。肉の為に。三人分重ねがけしたから...多分...大丈夫...?」
「ありがとうユウリ。行ってくる。」


 巨岩まで二百メートル。俺は接近を開始する。他のみんなはジリジリ移動し、五十メートル手前で止まる手筈だ。【音無】で音を抑えつつ、低い姿勢で顔を極力出さずに迷彩服を出来る限り活用する。
 直前百メートルで大きく迂回して疾駆する。
 呼吸が荒くなっていく。
 腰も痛くなってきた。

「...っ...っ...っ!」

 露骨な呼吸音を立てることは許されない。
 静かに、迅速に移動する。

 そしてようやく五つの巨岩の真横から五十メートル程手前に辿り着く。腰のポーチから望遠鏡を取り出し、覗く。
 左から二番目の岩陰と、三番目。丁度中央部の岩陰に二匹潜んでいる。

 ボウガン持ちは...

「いた...っ」

 岩の後ろ、そこには窪みでもあるのだろうか。頭と手だけを出して、多分、岩と岩の間からボウガンを構えている。向こう側からでは近付かないと視認出来ないだろう位置だ。

「さて...どうするか.....」


「ギギ」

 突然、背後から人では無い声が聞こえた。気付かなかった。やっぱり【影衝】を使っておけばよかった?俺は咄嗟に振り向く。

「やばっ」

 振り向いた時には、鋭利な鋭利な斧が。目の前に迫ってきていた。





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