10 / 20
第10話 続・脱処女
しおりを挟む
勢いよく飛び出したは良いものの、どこでそれをすればいいのだろうかと考える。
あちこちウロウロと回って、誰かが声をかけてくれると良いのだが、のんびり待っている暇はない。やはりカールの言う通り、紙に目的を書いた方が良さそうだ。
ケイティは紙とペンを借りる為、一軒の店に入ろうとすると、中から従業員らしい女性が出てきた。ケイティはその人物を図書館で何度も見かけた事がある。名前は確かコリーンだったか。
以前は片言の言葉しか話せていなかったように思うが、今はどうだろうか。
「あ、すみません。もう閉店なんです」
「ごめんなさい、買い物に来たんじゃないの。紙とペンを貸して頂けるかしら」
「いいですよ。少々お待ち下さい」
コリーンは店に戻ると、紙とペンを持って来て渡してくれた。
ケイティはその紙に『私の処女を貰って下さい』と走り書く。それを見ていたコリーンが怪訝そうに眉を寄せていた。確かにこんな事を書いている人がいれば、ケイティだって眉を寄せるに違いない。
「ペンありがとう」
「…………いいえ」
明らかに蔑まれていて、ケイティは苦笑した。それでもこれはスティーグの為だと言い聞かせて、その紙を持って歩く。
一言で言うと、その行為は恥ずかしくて死にそうだった。
クスクスと笑う者、顔をしかめる者、茶化すだけ茶化して貰ってくれない者。
すぐに誰かが貰ってくれると思っていたが、中々現れない。四十歳手前の女など、誰も興味はないのかもしれないと思うと、絶望した。
紙をぎゅっと掴んだまま塞いでいると、カツンと音がして、目の前に影が現れる。顔を上げると、そこには……
「おや、ケイティ嬢でしたか」
騎士隊長の一人、ロレンツォだった。
「ロレンツォ様! 良かった、探してたのよ!」
「俺も探していました。売春をしている者がいるという通報がありましたので」
そこでケイティは初めて気付く。自分のやっていた行為は犯罪だったという事に。
「ち、ちが……っ、私、お金を取るつもりはなくて、その……っ!!」
ケイティは青ざめて言い訳る。クーオールの家に泥を塗るなんてものじゃない。教員免許の剥奪、懲役刑、スティーグとは勿論、他の貴族とも結婚も出来なくなってしまうだろう。人生お先真っ暗だ。
そんなケイティの胸中を知ってか知らずか、ロレンツォはケイティの手を取った。
「とりあえず、騎士団本署までご同行願いますよ。話はそこで聞きましょう」
ケイティはカール恨んだが、こうなってはもうどうしようもない。ケイティはトボトボとロレンツォの後ろを付いて歩く。
騎士団本署が見えてくるとより一層気が重くなった。今から聴き取りが始まるのだろう。
「さて、どうしてこんな事をされたのか、理由をお聞かせ頂けますかな」
しかし連れて来られた所は聴取部屋ではなさそうだ。初めて入ったが、おそらくロレンツォの執務室で相違ない。
ロレンツォは身に付けていた騎士服を脱ぎ始めている。
「レディの前で失礼。俺も仕事が終われば早く帰りたい性分でして」
彼は苦笑しながらも脱ぎ進めていて、ケイティはくるりと回れ右をした。
「あの、ロレンツォ様、聴取は……」
「街の者の手前、ああは言いましたがね。ここから先はプライベートなので、純粋な好奇心から聞きますよ。とりあえずはうちにおいで下さい。その服を着替えた方が良さそうです」
「服が何か?」
「何だかミルク臭いですよ。それじゃあ男も寄り付かなかったでしょう。不幸中の幸いでしたな」
ケイティの顔がカアっと赤くなる。「カールめ……」と呟くと、着替えを終えたロレンツォが耳元で囁いた。
「カール殿が如何されましたかな?」
ロレンツォの息が耳に当たり、思わず逆側に身を倒す。
「カ、カールが、私に牛乳を噴きかけて来たのよ!」
「……牛乳を?」
プハっとロレンツォは吹き出し、その後口元を押さえてクッククックと笑いを堪えている。
「それは面白い話が聞けそうだ。では、行きましょう」
ケイティはロレンツォにエスコートされる形で外に出た。向かう先はイーストドールストリート方面ではなく、ノースアイズストリートに通じる道だ。
「あら? ロレンツォ様の家は、イーストドールじゃなかったの?」
「ああ、あそこは騎士隊長になってから、面子を保つために仕方なく借りた家です。滅多に帰りませんよ」
「ロレンツォ様は女の家を渡り歩いてるから、家なんて必要無いって事かしら」
「別にそう思って頂いても構いません。出来れば今から行く家は、誰にも言わないで頂けると有難いのですが」
「分かったわ。女の子が大勢押しかける様な事があったら、大変だものね」
「ご理解頂けて助かります」
ロレンツォはノースアイズストリートから中道に入り、小さなアパートへと入って行った。とても騎士隊長が住んでいるとは思えぬ家で、恐る恐るロレンツォに付いて行く。
「こちらですよ」
ロレンツォが鍵も使わずドアノブを回す。扉は拒絶する事なく、家の主を迎えた。
「どうぞ」
ロレンツォに促され、ケイティは足を踏み入れた。中からパタパタと小走りに駆け寄ってくる音がし、その人物を見てケイティは目を広げる。
「おかえり、ロレンツォ」
「ただいま、コリーン」
そしてコリーンもまた、ケイティを見て驚いた様に目を広げた。
「お客様……?」
「そうだ。紅茶を淹れてくれ。一番いいやつだ」
コリーンはコクリと頷いて奥へと引っ込んで行く。
「中へどうぞ」
再びエスコートされ、そのまま歩を進める。部屋は二つあるようだったが、片方はどう見ても物置くらいのスペースしかなさそうだ。それにダイニングキッチンも、小さなテーブルしか入らない特小サイズの部屋と言っていいだろう。貴族であるケイティでなくたって、狭いという印象を受けるに違いない。
ケイティが物珍しくて辺りを見回していたら、ロレンツォに声を掛けられた。
「で、どうして売春を?」
「違うのよ……」
ダイニングテーブルに備え付けられた椅子に腰を下ろすと、ロレンツォはまるで『困った子だ』と言わんばかりの顔で尋ねてくる。
「スティーグ殿の為に、ファーストキスも処女も取って置いているのではなかったのですか?」
「そうなんだけど、そんな事を言ってはいられなくなってしまって」
「どうしたのです? 俺で良ければ力になりますよ」
「助かるわ」
そこでコリーンが紅茶を出してくれた。少し落ち着くために、それを一口飲む。
「コリーン、お前の服でケイティ嬢に合うものを貸してやってくれ」
「うん、分かった」
コリーンは二つある部屋のうちの一つに入って行く。服を探してくれるのだろう。
「ロレンツォ様、あの子は……」
「俺の親戚のコリーンですよ。彼女の事はお気になさらず」
「親戚? でもファレンテイン人じゃないでしょう?」
「何故そう思われるんです?コリーンは歴としたファレンテイン人ですが」
「彼女、よく図書館に来てたわ。最初の頃は、あまり言葉を話せている様子がなかったものだから」
ロレンツォの顔から一瞬笑顔が消えた。しかしすぐに微笑みを取り戻す。
「彼女は病気で、まともな教育を受けられなかった事もありまして、言語が劣っていたのですよ。今はもう克服していますが」
「そうなの。ここで一緒に暮らしているの?」
「ええ、まぁ。親戚ですから」
取って付けた様な言い訳に、ケイティは色々と聞きたくなったが止めておいた。あまり突っ込みすぎては、こちらも突かれそうだ。
「失礼します。こちらでよろしいですか?」
コリーンが部屋から出て来て、着替えを渡してくれた。彼女が今着ている服とは段違いのいい服だ。それでもケイティにとっては普段着と言える程度の物だったが。
コリーンはケイティの身なりを見て、一番良い服を貸してくれたのだろうという事が推察されて、礼を述べる。
「ありがとう、ごめんなさいね。必ず返すわ」
「…………いいえ、お気になさらず」
「コリーン、下がってくれ」
コリーンは首肯し、再び部屋へと戻って行った。
「して、ケイティ嬢は何故、カール殿に牛乳を噴きかけられたのですかな?」
期待の眼差しで問われ、ケイティは仕方無く答える。
「カールに、私を非処女にしてくれって頼んだら、噴かれたわ」
「っぷ! はははははははっ!」
思いっきり笑われてしまい、ケイティは羞恥と怒りが入り混じる。睨むようにロレンツォを見ると、未だ笑いを堪えられない彼は、クックックと目の端に涙を溜めていた。
「非処女、ですか。それはいい。それで、カール殿に断られてあんな行為をしていたのですな」
「ええ、カールに言われたのよ。処女を貰って下さいって紙を持っていれば捨てられるって。それが犯罪なんて、考えもしなかったわ。私の人生、もう終わっちゃったわね……」
「そこまでして、何故捨てようとしたのです?」
「スティーグが、私が処女じゃなければ抱いてたって言ってくれたからよ」
「なるほど。では、俺が貰って差し上げましょうか」
ロレンツォは、冗談とも本気とも取れぬ笑顔でそう言って来た。思わず喜んだものの、ケイティは首を傾げる。
「いいの? 犯罪の片棒を担ぐ様な真似をしても……」
「片棒を担げば、貴女の罪は見逃さざるを得なくなりますな。ケイティ嬢にはその方が都合がいいのでは?」
「そりゃ、勿論!」
処女を貰ってくれる上に、売春の罪科無しとくれば、ケイティとしては何の不服も無い。
「では、風呂に入って来て頂けますか。出来れば髪も洗った方が良い。ミルクの匂いより、俺は石鹸の香りの方が好きですから」
「そ、そうよね。分かったわ」
ケイティはロレンツォに案内されるまま、風呂場に向かった。
あちこちウロウロと回って、誰かが声をかけてくれると良いのだが、のんびり待っている暇はない。やはりカールの言う通り、紙に目的を書いた方が良さそうだ。
ケイティは紙とペンを借りる為、一軒の店に入ろうとすると、中から従業員らしい女性が出てきた。ケイティはその人物を図書館で何度も見かけた事がある。名前は確かコリーンだったか。
以前は片言の言葉しか話せていなかったように思うが、今はどうだろうか。
「あ、すみません。もう閉店なんです」
「ごめんなさい、買い物に来たんじゃないの。紙とペンを貸して頂けるかしら」
「いいですよ。少々お待ち下さい」
コリーンは店に戻ると、紙とペンを持って来て渡してくれた。
ケイティはその紙に『私の処女を貰って下さい』と走り書く。それを見ていたコリーンが怪訝そうに眉を寄せていた。確かにこんな事を書いている人がいれば、ケイティだって眉を寄せるに違いない。
「ペンありがとう」
「…………いいえ」
明らかに蔑まれていて、ケイティは苦笑した。それでもこれはスティーグの為だと言い聞かせて、その紙を持って歩く。
一言で言うと、その行為は恥ずかしくて死にそうだった。
クスクスと笑う者、顔をしかめる者、茶化すだけ茶化して貰ってくれない者。
すぐに誰かが貰ってくれると思っていたが、中々現れない。四十歳手前の女など、誰も興味はないのかもしれないと思うと、絶望した。
紙をぎゅっと掴んだまま塞いでいると、カツンと音がして、目の前に影が現れる。顔を上げると、そこには……
「おや、ケイティ嬢でしたか」
騎士隊長の一人、ロレンツォだった。
「ロレンツォ様! 良かった、探してたのよ!」
「俺も探していました。売春をしている者がいるという通報がありましたので」
そこでケイティは初めて気付く。自分のやっていた行為は犯罪だったという事に。
「ち、ちが……っ、私、お金を取るつもりはなくて、その……っ!!」
ケイティは青ざめて言い訳る。クーオールの家に泥を塗るなんてものじゃない。教員免許の剥奪、懲役刑、スティーグとは勿論、他の貴族とも結婚も出来なくなってしまうだろう。人生お先真っ暗だ。
そんなケイティの胸中を知ってか知らずか、ロレンツォはケイティの手を取った。
「とりあえず、騎士団本署までご同行願いますよ。話はそこで聞きましょう」
ケイティはカール恨んだが、こうなってはもうどうしようもない。ケイティはトボトボとロレンツォの後ろを付いて歩く。
騎士団本署が見えてくるとより一層気が重くなった。今から聴き取りが始まるのだろう。
「さて、どうしてこんな事をされたのか、理由をお聞かせ頂けますかな」
しかし連れて来られた所は聴取部屋ではなさそうだ。初めて入ったが、おそらくロレンツォの執務室で相違ない。
ロレンツォは身に付けていた騎士服を脱ぎ始めている。
「レディの前で失礼。俺も仕事が終われば早く帰りたい性分でして」
彼は苦笑しながらも脱ぎ進めていて、ケイティはくるりと回れ右をした。
「あの、ロレンツォ様、聴取は……」
「街の者の手前、ああは言いましたがね。ここから先はプライベートなので、純粋な好奇心から聞きますよ。とりあえずはうちにおいで下さい。その服を着替えた方が良さそうです」
「服が何か?」
「何だかミルク臭いですよ。それじゃあ男も寄り付かなかったでしょう。不幸中の幸いでしたな」
ケイティの顔がカアっと赤くなる。「カールめ……」と呟くと、着替えを終えたロレンツォが耳元で囁いた。
「カール殿が如何されましたかな?」
ロレンツォの息が耳に当たり、思わず逆側に身を倒す。
「カ、カールが、私に牛乳を噴きかけて来たのよ!」
「……牛乳を?」
プハっとロレンツォは吹き出し、その後口元を押さえてクッククックと笑いを堪えている。
「それは面白い話が聞けそうだ。では、行きましょう」
ケイティはロレンツォにエスコートされる形で外に出た。向かう先はイーストドールストリート方面ではなく、ノースアイズストリートに通じる道だ。
「あら? ロレンツォ様の家は、イーストドールじゃなかったの?」
「ああ、あそこは騎士隊長になってから、面子を保つために仕方なく借りた家です。滅多に帰りませんよ」
「ロレンツォ様は女の家を渡り歩いてるから、家なんて必要無いって事かしら」
「別にそう思って頂いても構いません。出来れば今から行く家は、誰にも言わないで頂けると有難いのですが」
「分かったわ。女の子が大勢押しかける様な事があったら、大変だものね」
「ご理解頂けて助かります」
ロレンツォはノースアイズストリートから中道に入り、小さなアパートへと入って行った。とても騎士隊長が住んでいるとは思えぬ家で、恐る恐るロレンツォに付いて行く。
「こちらですよ」
ロレンツォが鍵も使わずドアノブを回す。扉は拒絶する事なく、家の主を迎えた。
「どうぞ」
ロレンツォに促され、ケイティは足を踏み入れた。中からパタパタと小走りに駆け寄ってくる音がし、その人物を見てケイティは目を広げる。
「おかえり、ロレンツォ」
「ただいま、コリーン」
そしてコリーンもまた、ケイティを見て驚いた様に目を広げた。
「お客様……?」
「そうだ。紅茶を淹れてくれ。一番いいやつだ」
コリーンはコクリと頷いて奥へと引っ込んで行く。
「中へどうぞ」
再びエスコートされ、そのまま歩を進める。部屋は二つあるようだったが、片方はどう見ても物置くらいのスペースしかなさそうだ。それにダイニングキッチンも、小さなテーブルしか入らない特小サイズの部屋と言っていいだろう。貴族であるケイティでなくたって、狭いという印象を受けるに違いない。
ケイティが物珍しくて辺りを見回していたら、ロレンツォに声を掛けられた。
「で、どうして売春を?」
「違うのよ……」
ダイニングテーブルに備え付けられた椅子に腰を下ろすと、ロレンツォはまるで『困った子だ』と言わんばかりの顔で尋ねてくる。
「スティーグ殿の為に、ファーストキスも処女も取って置いているのではなかったのですか?」
「そうなんだけど、そんな事を言ってはいられなくなってしまって」
「どうしたのです? 俺で良ければ力になりますよ」
「助かるわ」
そこでコリーンが紅茶を出してくれた。少し落ち着くために、それを一口飲む。
「コリーン、お前の服でケイティ嬢に合うものを貸してやってくれ」
「うん、分かった」
コリーンは二つある部屋のうちの一つに入って行く。服を探してくれるのだろう。
「ロレンツォ様、あの子は……」
「俺の親戚のコリーンですよ。彼女の事はお気になさらず」
「親戚? でもファレンテイン人じゃないでしょう?」
「何故そう思われるんです?コリーンは歴としたファレンテイン人ですが」
「彼女、よく図書館に来てたわ。最初の頃は、あまり言葉を話せている様子がなかったものだから」
ロレンツォの顔から一瞬笑顔が消えた。しかしすぐに微笑みを取り戻す。
「彼女は病気で、まともな教育を受けられなかった事もありまして、言語が劣っていたのですよ。今はもう克服していますが」
「そうなの。ここで一緒に暮らしているの?」
「ええ、まぁ。親戚ですから」
取って付けた様な言い訳に、ケイティは色々と聞きたくなったが止めておいた。あまり突っ込みすぎては、こちらも突かれそうだ。
「失礼します。こちらでよろしいですか?」
コリーンが部屋から出て来て、着替えを渡してくれた。彼女が今着ている服とは段違いのいい服だ。それでもケイティにとっては普段着と言える程度の物だったが。
コリーンはケイティの身なりを見て、一番良い服を貸してくれたのだろうという事が推察されて、礼を述べる。
「ありがとう、ごめんなさいね。必ず返すわ」
「…………いいえ、お気になさらず」
「コリーン、下がってくれ」
コリーンは首肯し、再び部屋へと戻って行った。
「して、ケイティ嬢は何故、カール殿に牛乳を噴きかけられたのですかな?」
期待の眼差しで問われ、ケイティは仕方無く答える。
「カールに、私を非処女にしてくれって頼んだら、噴かれたわ」
「っぷ! はははははははっ!」
思いっきり笑われてしまい、ケイティは羞恥と怒りが入り混じる。睨むようにロレンツォを見ると、未だ笑いを堪えられない彼は、クックックと目の端に涙を溜めていた。
「非処女、ですか。それはいい。それで、カール殿に断られてあんな行為をしていたのですな」
「ええ、カールに言われたのよ。処女を貰って下さいって紙を持っていれば捨てられるって。それが犯罪なんて、考えもしなかったわ。私の人生、もう終わっちゃったわね……」
「そこまでして、何故捨てようとしたのです?」
「スティーグが、私が処女じゃなければ抱いてたって言ってくれたからよ」
「なるほど。では、俺が貰って差し上げましょうか」
ロレンツォは、冗談とも本気とも取れぬ笑顔でそう言って来た。思わず喜んだものの、ケイティは首を傾げる。
「いいの? 犯罪の片棒を担ぐ様な真似をしても……」
「片棒を担げば、貴女の罪は見逃さざるを得なくなりますな。ケイティ嬢にはその方が都合がいいのでは?」
「そりゃ、勿論!」
処女を貰ってくれる上に、売春の罪科無しとくれば、ケイティとしては何の不服も無い。
「では、風呂に入って来て頂けますか。出来れば髪も洗った方が良い。ミルクの匂いより、俺は石鹸の香りの方が好きですから」
「そ、そうよね。分かったわ」
ケイティはロレンツォに案内されるまま、風呂場に向かった。
0
あなたにおすすめの小説
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる