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13.八日目。マットを欲しがる王子様
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イライジャ様は昨晩、小さな明かりを灯して、ずっと日記を読んでらしたようだった。
時折、鼻をすするような音も聞こえてきて、心を痛めていらっしゃることがわかる。
我が王子は、どれだけお優しい方なのだろう。
イライジャ様が王位を継がれた暁には、この国はきっと豊かになるに違いない。
私は、ベッドを背もたれにしたまま眠っているイライジャ様のお顔を覗いた。
つるつるのお肌。さらっさらで目の覚めるようなお髪。すっと通った鼻筋に、つやつやのくちびる。
イライジャ様が王になる瞬間を、この目で見てみたかった。
きっと歴代の誰よりも、民衆を虜にするのでしょうから。
私は指先を、ほんの少しだけ金色の髪に触れる。
……なんという不敬なことをしているのか。こんなことがバレてしまえば──
「ん……クラリス?」
なんということでしょう! 目を! 覚まされてしまいました!!
「ああ、起こしてしまい大変申し訳ございません……!」
「いや、もう朝だろう。というか今、俺に触れたか?」
バ レ て い ま し た 。
王子を騙すようなことをしてはなりませんね……。
「はい、つい魔が差しまして……申し訳──」
「良い。そなたになら、いくら触れられようとも」
そんなわけには……と言う前に、私の手はイライジャ様に取られた。そのまま私の手は、我が王子の頬にピタリとくっついていく。
お肌が若い……! 吸い付くようです!! いや、そうではなくて!!
「いけません、イライジャ様!」
「俺が良いというのだから良いのだ」
ちゅっと音が鳴った。
なぜ私の指先にキスしているのですかね? 理解できませんけれども!
だけど振り解くこともできないまま、そのままキスを続けられる。
音が、音が卑猥ですけれども!?
「ちゅ、ちゅ……」
多いです、回数が!
今までならせいぜい一、二回のものだったというのに……。
やめる気配がないのですけれども……!
「王子……」
「なんだ? ちゅっ」
「さ、さすがにやりすぎでございます!」
「そなたが俺のものになると言ったのであろう?」
そう言って、今度は手のひらにキスをされる。
指先へのキスは感謝、手のひらへのキスは懇願。
……懇願!!!?
私は! 今! 懇願されているのですか??!
「顔が赤いぞ、クラリス」
「それは……イライジャ様がそんなことをなさるからです……っ」
「その体を自由にしていいと言ったのは、そなただ」
確かにそう言ってしまった気はしますが。熱があったから、うろ覚えだけれど。
どうして私はそんなことを言ってしまったというのか!
「今さら取り消すのはなしだ」
取り消しは却下されてしまいました!
どどど、どうすれば……!?
「いやか?」
いやかと申されましても……私では身分が……王子がお遊び程度で抱くにもつまらない女ですし……そもそも許可した時のことをよく覚えておりませ……
って色々考えていたら、手を頭に回されましたけれども?!
「クラリス……」
そんな蜂蜜よりも甘いお顔をなされては、抵抗できないではありませんか……!
「イ、イライジャ様……」
「俺はそなたをずっと──」
ゆっくりと近づいてくるイライジャ様のお顔……くちびる……
このままでは、私は……
「うぐっ!」
目の前で急に崩れて落ちるイライジャ様!
「どうされました?!」
くちびるが私に触れる寸前でした! 惜しかっ……危なかった!
「っく……変な格好で眠ってしまったせいで、く、首が……っ」
あああ、美男子が首を痛める仕草、素敵でございます!
ではなくっ!
「大丈夫でございますか!」
昨日は座ったまま眠られていたから、こんなことになってもおかしくはありません。なんとおいたわしい。
「ああ、大丈夫だ。だが風邪が治ったら、明日にでもマットを買ってこよう……」
「そうでございますね」
私は大きく頷いて見せた。
このベッドは狭いし硬いし、今まで大きく柔らかいベッドで寝ていたイライジャ様にはそろそろ限界だろう。
「やはり柔らかなマットがないと、そなたに負担をかけてしまうからな」
「負担?」
いえ、もちろん私も体が軋んでおりますが。イライジャ様がゆっくり寝られるのなら、私は床だろうと土の上だろうと構わないのです。
「そんな、私のことなどはお気になさらず」
「俺が嫌なのだ。初めてはやはり優しくしたい」
「初め……? っは!」
今! 私の顔は! どっかんと火山のように噴火してしまいました!!
そんな私を見て、イライジャ様は楽しそうに笑っていらっしゃいますが!?
「ははは! では明日は、柔らかなマットを買いに行こう!」
「は、はい!」
っは、つい返事を!
「楽しみだ」
あああ、首痛めポーズのまま、ちょっと悪どい顔で微笑まれるイライジャ様も素敵でございます!
というか、マットを買った後、私は一体どうなってしまうのでしょうか!
マット、欲しいけれど欲しくありません……!!
私はどうすればいいというのか!!
時折、鼻をすするような音も聞こえてきて、心を痛めていらっしゃることがわかる。
我が王子は、どれだけお優しい方なのだろう。
イライジャ様が王位を継がれた暁には、この国はきっと豊かになるに違いない。
私は、ベッドを背もたれにしたまま眠っているイライジャ様のお顔を覗いた。
つるつるのお肌。さらっさらで目の覚めるようなお髪。すっと通った鼻筋に、つやつやのくちびる。
イライジャ様が王になる瞬間を、この目で見てみたかった。
きっと歴代の誰よりも、民衆を虜にするのでしょうから。
私は指先を、ほんの少しだけ金色の髪に触れる。
……なんという不敬なことをしているのか。こんなことがバレてしまえば──
「ん……クラリス?」
なんということでしょう! 目を! 覚まされてしまいました!!
「ああ、起こしてしまい大変申し訳ございません……!」
「いや、もう朝だろう。というか今、俺に触れたか?」
バ レ て い ま し た 。
王子を騙すようなことをしてはなりませんね……。
「はい、つい魔が差しまして……申し訳──」
「良い。そなたになら、いくら触れられようとも」
そんなわけには……と言う前に、私の手はイライジャ様に取られた。そのまま私の手は、我が王子の頬にピタリとくっついていく。
お肌が若い……! 吸い付くようです!! いや、そうではなくて!!
「いけません、イライジャ様!」
「俺が良いというのだから良いのだ」
ちゅっと音が鳴った。
なぜ私の指先にキスしているのですかね? 理解できませんけれども!
だけど振り解くこともできないまま、そのままキスを続けられる。
音が、音が卑猥ですけれども!?
「ちゅ、ちゅ……」
多いです、回数が!
今までならせいぜい一、二回のものだったというのに……。
やめる気配がないのですけれども……!
「王子……」
「なんだ? ちゅっ」
「さ、さすがにやりすぎでございます!」
「そなたが俺のものになると言ったのであろう?」
そう言って、今度は手のひらにキスをされる。
指先へのキスは感謝、手のひらへのキスは懇願。
……懇願!!!?
私は! 今! 懇願されているのですか??!
「顔が赤いぞ、クラリス」
「それは……イライジャ様がそんなことをなさるからです……っ」
「その体を自由にしていいと言ったのは、そなただ」
確かにそう言ってしまった気はしますが。熱があったから、うろ覚えだけれど。
どうして私はそんなことを言ってしまったというのか!
「今さら取り消すのはなしだ」
取り消しは却下されてしまいました!
どどど、どうすれば……!?
「いやか?」
いやかと申されましても……私では身分が……王子がお遊び程度で抱くにもつまらない女ですし……そもそも許可した時のことをよく覚えておりませ……
って色々考えていたら、手を頭に回されましたけれども?!
「クラリス……」
そんな蜂蜜よりも甘いお顔をなされては、抵抗できないではありませんか……!
「イ、イライジャ様……」
「俺はそなたをずっと──」
ゆっくりと近づいてくるイライジャ様のお顔……くちびる……
このままでは、私は……
「うぐっ!」
目の前で急に崩れて落ちるイライジャ様!
「どうされました?!」
くちびるが私に触れる寸前でした! 惜しかっ……危なかった!
「っく……変な格好で眠ってしまったせいで、く、首が……っ」
あああ、美男子が首を痛める仕草、素敵でございます!
ではなくっ!
「大丈夫でございますか!」
昨日は座ったまま眠られていたから、こんなことになってもおかしくはありません。なんとおいたわしい。
「ああ、大丈夫だ。だが風邪が治ったら、明日にでもマットを買ってこよう……」
「そうでございますね」
私は大きく頷いて見せた。
このベッドは狭いし硬いし、今まで大きく柔らかいベッドで寝ていたイライジャ様にはそろそろ限界だろう。
「やはり柔らかなマットがないと、そなたに負担をかけてしまうからな」
「負担?」
いえ、もちろん私も体が軋んでおりますが。イライジャ様がゆっくり寝られるのなら、私は床だろうと土の上だろうと構わないのです。
「そんな、私のことなどはお気になさらず」
「俺が嫌なのだ。初めてはやはり優しくしたい」
「初め……? っは!」
今! 私の顔は! どっかんと火山のように噴火してしまいました!!
そんな私を見て、イライジャ様は楽しそうに笑っていらっしゃいますが!?
「ははは! では明日は、柔らかなマットを買いに行こう!」
「は、はい!」
っは、つい返事を!
「楽しみだ」
あああ、首痛めポーズのまま、ちょっと悪どい顔で微笑まれるイライジャ様も素敵でございます!
というか、マットを買った後、私は一体どうなってしまうのでしょうか!
マット、欲しいけれど欲しくありません……!!
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