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第42話 うわ……お酒って、こんな味なんですね
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デニスの家へ近づいていると思うと、やたらと緊張してきた。
やはり手土産は買ってくるべきだった。何も持ってこずに夕飯をご馳走になるなど、失礼ではないだろうか。彼の家族に嫌われたりしないだろうか。
そして歩みを止めた目の前に現れたのは、意外なほど立派な家だった。サビーナは眩暈をしそうになる。
「おい、どうした?」
「だって……凄く大きな家で……」
「人数多いんだから、このくらいねーと人口密度がすげー事になんだよ。おら、入るぜ」
「うひー」
変な声を上げてしまいながら、手を引っ張られる。心の準備というものをもうちょっとさせて欲しい。
別に恋人の家族というわけではないが、それでも緊張するものは緊張する。
「ただいま」
「あ! にいちゃん、おかえりー!」
真っ先に迎えてくれたのは、あの轢かれそうになっていたラルフだった。ラルフは嬉しそうにデニスに飛びついている。
「おかえり、デニス」
「ただいま、母ちゃん。今朝言ってた女の子連れてきたぜ」
次に迎えてくれたのは、デニスの母親らしい。おそらく四十代後半だろうが、肌のツヤがとんでもなく輝いていた。顔の造作は間違いなくデニスと同じだ。キッと上がった目尻に通った鼻筋、薄い唇。美形の母親は、やはりとんでもない美形であった。美女、というより美形なのだ。
「いらっしゃい。あなたがサビーナね」
「は、はい、初めまして! オーケルフェルト家でメイドをしております、サビーナと申します」
「あら、そんなに固くならないでいいのよ。私はデニスの母のシーラ。デニスが女の子を連れて来るなんて久しぶりよ。我が家は騒がしいけど、ゆっくりして行ってね」
「あ、ありがとうございます!」
そう言って笑うシーラの顔は悪戯っ子のようで、やはりデニスそっくりだ。遺伝というのはすごい。
彼女に連れられて中に目を向けると壮絶だった。十八の瞳が一斉にサビーナに向けられている。
下は三歳から、上は九十歳くらいまで。しかも全員が美形なのだ。たじろがない方がおかしいだろう。
「あ、あの……はじめむ、初めますて、オーケルりゅフェりゅトでテニスさんと一緒にはたりゃいております、サビーナと申ししゃす」
「おい、言えてねーぞサビーナ」
「うちの孫は、テニスという名前だったかねぇ」
「デニス、幼気なお嬢さんに偽名など使ってはいかんぞ」
「お兄ちゃんひどーい」
「使ってねーよっ」
こんなに噛みまくってしまったのは生まれて初めてかもしれない。サビーナは慣れていないので、こんなに大勢の美形に注目されると緊張して仕方がない。
そんなサビーナに、デニスは気にした様子もなく皆の方に目を向けた。
「ざっと紹介するから聞き流してくれ。父ちゃんのランス、弟のキース、妹のシェリー、末っ子のラルフ、キースの嫁のアネルー、その子供のココル、じいちゃんのカイセリス、ばあちゃんのドロシア、それとひいばあちゃんのスフィだ」
全員を紹介して貰うも、全く頭に入って来なかった。デニスも聞き流せと言っていたし、徐々に覚えていくしかないだろう。
「本日はおめねき……おまにゃき……おまぬ……おま、うま」
おまうま言っていると、これまた有り得ないほど顔の整った少女がこちらを見上げている。
「お兄ちゃん、この人大丈夫?」
「あー、さぁなぁ……」
「兄貴、とりあえず座ってもらえよ」
デニスの妹と弟がそう言い、サビーナは促されるまま席に着いた。
確か妹はシェリーだったか。十二歳くらいの、将来は美人を約束された女の子だ。こちらはどうやら父親似のようで、パチクリとした優しい目尻である。
弟のキースも、父親似のようだった。現在二十二歳、三歳児の父親と聞いた事がある。一緒に住んでいるとは知らなかったので驚いた。
ちなみに末っ子のラルフは五歳。なんと長男のデニスとは、十九もの年の差がある。
「デニス、キース、シェリー、お料理運ぶの手伝って頂戴!」
キッチンからシーラの呼ぶ声が聞こえる。キースのお嫁もいつの間にかあっちに行っているようだった。
三人は母親の呼び声に、当然のように席を外して行ってしまう。
残ったのは、三歳児の女の子とラルフ、それにデニスの父親と老人勢だけだ。
「サビーナちゃんだったね。よく来てくれた。まぁ一杯飲んでくれ」
「あ、いえ、私はまだ十六歳なので」
「飲めるじゃないか。これだけ二十歳を過ぎた人間が山のようにいるのだから、構わないだろう」
アンゼルード帝国では、二十歳以上の同伴者がいれば、十六歳でもお酒が飲めるようになっている。勧められて断るのは失礼に当たるのかもしれない。
「じゃ、じゃあ少しだけ頂きます」
「そうこなくちゃな!」
デニスの父親に酒を注がれ、そっと口に含む。甘くてシュワシュワとしていて、でも喉がカッと焼けるような感じだ。一口だけで頭の中がグラリと燃えるように熱くなる。
「うわ……お酒って、こんな味なんですね。初めて飲みました」
もう一口ゴクリと流す。やはり喉がカーッとなって、今度は頭がふわっとする。その感覚が不思議で、サビーナはどんどんと飲み進めた。
「ほほう、いける口だな。もう一杯くらいなら飲んでもいいぞ」
「あ、はい。頂きます」
もう一度注がれたお酒をゴックゴックと飲み干すと、パァーッっとお花畑が咲き誇ったような爽快感がある。何故だかよく分からないが、笑いたい気分だ。
「ふ……ふふ。あは、美味しーい!」
そこへ両手に料理の皿を持ったデニスが戻ってきた。彼はサビーナの姿を見てギョッとしている。その顔が面白くて、サビーナはケラケラ笑った。
「あんた、何飲んで……」
「あは、あは……れニスさんの顔、面白ぉい」
「げっ! これキッツイ酒じゃねーかよ! おい、父ちゃん!!」
「いやー、サビーナちゃんは飲みっぷりがいいねぇ」
「未成年に飲ませんな、馬鹿ッ」
「違法じゃないだろう、これだけ大人がついてるんだから」
「抑止する人間が勧めてちゃー、意味ねーんだよ!」
「まったく、騎士はお堅いなぁ」
「おい、サビーナ! 大丈夫か?」
耳元で聞こえるはずの声が、頭の奥から反響して聞こえてくる。
ふと見ると、目の前に美味しそうな唐揚げが置いてあった。サビーナはそれを手で掴むと口の中に放り込む。
美味しい。スパイスが絶妙で、中から肉汁がジュワっと溢れてくる。これは鳥の唐揚げだ。他にも海老や魚の唐揚げや、カボチャやアボカドの唐揚げなど、たくさんの種類がお皿に乗っている。
サビーナは両手でそれらを掴み取ると、次々にそれを口の中へと押し込んだ。
「はふぅ……おいひい……」
「おい、サビーナ? 食うのは構わねぇけど、ほどほどにしとけよ?」
そうして食べ続ける事、恐らく五分。サビーナは唐突に気分が悪くなってきた。
手に持っていた唐揚げを手放し、机に突っ伏す。
「どうした、眠ぃか?」
「う……きぼぢわるい……」
「マジか! 吐くか? トイレ行っか?」
その問いに、サビーナは首を左右に振った。頭がボーッとして気分も最高に悪かったが、人の家で吐く事だけは避けたいという理性が、まだほんの少しだけ残っていた。
「いいから吐いちまえって! 出せば楽になっから!」
「いえ……私……帰り、ま……」
椅子を立とうとした瞬間、ドデーンと派手にずっこけた。痛みは感じなかったが、羞恥だけは酔った脳でも搭載されているらしい。立ち上がろうとしても上手く足に力が入らない。
周りからやんやいう男の声や、女性の悲鳴のような叫び声も聞こえてくるが、頭で処理しきれず言葉が理解出来ない。
もうどうでもいいやと目を瞑ると、ふわりと体が浮いた。そしてどこかへと連れて行かれ、柔らかな敷物の上へと下される。きっとソファではなく、ベッドだ。
上向きに寝かせられると、胃が圧迫されるようで余計に気分が悪くなる。
「うーー」
「吐いっちまえ! ここにバケツあっから!」
目の前でバケツを見せられると更に気分が悪くなり、慌ててそれを引っ掴んだ。バケツの中に顔を突っ込んだ瞬間、たった今胃に入れたばかりの物を、そちらに移動させる。
ようやくそれが収まると、バケツをデニスに引き渡してベッドに倒れ込む。吐き気はなくなったが気分は悪い。まだふわふわした感覚は治らない。
サビーナは、デニスにお礼も謝罪も言わぬまま、意識を失うように眠りに落ちた。
やはり手土産は買ってくるべきだった。何も持ってこずに夕飯をご馳走になるなど、失礼ではないだろうか。彼の家族に嫌われたりしないだろうか。
そして歩みを止めた目の前に現れたのは、意外なほど立派な家だった。サビーナは眩暈をしそうになる。
「おい、どうした?」
「だって……凄く大きな家で……」
「人数多いんだから、このくらいねーと人口密度がすげー事になんだよ。おら、入るぜ」
「うひー」
変な声を上げてしまいながら、手を引っ張られる。心の準備というものをもうちょっとさせて欲しい。
別に恋人の家族というわけではないが、それでも緊張するものは緊張する。
「ただいま」
「あ! にいちゃん、おかえりー!」
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「おかえり、デニス」
「ただいま、母ちゃん。今朝言ってた女の子連れてきたぜ」
次に迎えてくれたのは、デニスの母親らしい。おそらく四十代後半だろうが、肌のツヤがとんでもなく輝いていた。顔の造作は間違いなくデニスと同じだ。キッと上がった目尻に通った鼻筋、薄い唇。美形の母親は、やはりとんでもない美形であった。美女、というより美形なのだ。
「いらっしゃい。あなたがサビーナね」
「は、はい、初めまして! オーケルフェルト家でメイドをしております、サビーナと申します」
「あら、そんなに固くならないでいいのよ。私はデニスの母のシーラ。デニスが女の子を連れて来るなんて久しぶりよ。我が家は騒がしいけど、ゆっくりして行ってね」
「あ、ありがとうございます!」
そう言って笑うシーラの顔は悪戯っ子のようで、やはりデニスそっくりだ。遺伝というのはすごい。
彼女に連れられて中に目を向けると壮絶だった。十八の瞳が一斉にサビーナに向けられている。
下は三歳から、上は九十歳くらいまで。しかも全員が美形なのだ。たじろがない方がおかしいだろう。
「あ、あの……はじめむ、初めますて、オーケルりゅフェりゅトでテニスさんと一緒にはたりゃいております、サビーナと申ししゃす」
「おい、言えてねーぞサビーナ」
「うちの孫は、テニスという名前だったかねぇ」
「デニス、幼気なお嬢さんに偽名など使ってはいかんぞ」
「お兄ちゃんひどーい」
「使ってねーよっ」
こんなに噛みまくってしまったのは生まれて初めてかもしれない。サビーナは慣れていないので、こんなに大勢の美形に注目されると緊張して仕方がない。
そんなサビーナに、デニスは気にした様子もなく皆の方に目を向けた。
「ざっと紹介するから聞き流してくれ。父ちゃんのランス、弟のキース、妹のシェリー、末っ子のラルフ、キースの嫁のアネルー、その子供のココル、じいちゃんのカイセリス、ばあちゃんのドロシア、それとひいばあちゃんのスフィだ」
全員を紹介して貰うも、全く頭に入って来なかった。デニスも聞き流せと言っていたし、徐々に覚えていくしかないだろう。
「本日はおめねき……おまにゃき……おまぬ……おま、うま」
おまうま言っていると、これまた有り得ないほど顔の整った少女がこちらを見上げている。
「お兄ちゃん、この人大丈夫?」
「あー、さぁなぁ……」
「兄貴、とりあえず座ってもらえよ」
デニスの妹と弟がそう言い、サビーナは促されるまま席に着いた。
確か妹はシェリーだったか。十二歳くらいの、将来は美人を約束された女の子だ。こちらはどうやら父親似のようで、パチクリとした優しい目尻である。
弟のキースも、父親似のようだった。現在二十二歳、三歳児の父親と聞いた事がある。一緒に住んでいるとは知らなかったので驚いた。
ちなみに末っ子のラルフは五歳。なんと長男のデニスとは、十九もの年の差がある。
「デニス、キース、シェリー、お料理運ぶの手伝って頂戴!」
キッチンからシーラの呼ぶ声が聞こえる。キースのお嫁もいつの間にかあっちに行っているようだった。
三人は母親の呼び声に、当然のように席を外して行ってしまう。
残ったのは、三歳児の女の子とラルフ、それにデニスの父親と老人勢だけだ。
「サビーナちゃんだったね。よく来てくれた。まぁ一杯飲んでくれ」
「あ、いえ、私はまだ十六歳なので」
「飲めるじゃないか。これだけ二十歳を過ぎた人間が山のようにいるのだから、構わないだろう」
アンゼルード帝国では、二十歳以上の同伴者がいれば、十六歳でもお酒が飲めるようになっている。勧められて断るのは失礼に当たるのかもしれない。
「じゃ、じゃあ少しだけ頂きます」
「そうこなくちゃな!」
デニスの父親に酒を注がれ、そっと口に含む。甘くてシュワシュワとしていて、でも喉がカッと焼けるような感じだ。一口だけで頭の中がグラリと燃えるように熱くなる。
「うわ……お酒って、こんな味なんですね。初めて飲みました」
もう一口ゴクリと流す。やはり喉がカーッとなって、今度は頭がふわっとする。その感覚が不思議で、サビーナはどんどんと飲み進めた。
「ほほう、いける口だな。もう一杯くらいなら飲んでもいいぞ」
「あ、はい。頂きます」
もう一度注がれたお酒をゴックゴックと飲み干すと、パァーッっとお花畑が咲き誇ったような爽快感がある。何故だかよく分からないが、笑いたい気分だ。
「ふ……ふふ。あは、美味しーい!」
そこへ両手に料理の皿を持ったデニスが戻ってきた。彼はサビーナの姿を見てギョッとしている。その顔が面白くて、サビーナはケラケラ笑った。
「あんた、何飲んで……」
「あは、あは……れニスさんの顔、面白ぉい」
「げっ! これキッツイ酒じゃねーかよ! おい、父ちゃん!!」
「いやー、サビーナちゃんは飲みっぷりがいいねぇ」
「未成年に飲ませんな、馬鹿ッ」
「違法じゃないだろう、これだけ大人がついてるんだから」
「抑止する人間が勧めてちゃー、意味ねーんだよ!」
「まったく、騎士はお堅いなぁ」
「おい、サビーナ! 大丈夫か?」
耳元で聞こえるはずの声が、頭の奥から反響して聞こえてくる。
ふと見ると、目の前に美味しそうな唐揚げが置いてあった。サビーナはそれを手で掴むと口の中に放り込む。
美味しい。スパイスが絶妙で、中から肉汁がジュワっと溢れてくる。これは鳥の唐揚げだ。他にも海老や魚の唐揚げや、カボチャやアボカドの唐揚げなど、たくさんの種類がお皿に乗っている。
サビーナは両手でそれらを掴み取ると、次々にそれを口の中へと押し込んだ。
「はふぅ……おいひい……」
「おい、サビーナ? 食うのは構わねぇけど、ほどほどにしとけよ?」
そうして食べ続ける事、恐らく五分。サビーナは唐突に気分が悪くなってきた。
手に持っていた唐揚げを手放し、机に突っ伏す。
「どうした、眠ぃか?」
「う……きぼぢわるい……」
「マジか! 吐くか? トイレ行っか?」
その問いに、サビーナは首を左右に振った。頭がボーッとして気分も最高に悪かったが、人の家で吐く事だけは避けたいという理性が、まだほんの少しだけ残っていた。
「いいから吐いちまえって! 出せば楽になっから!」
「いえ……私……帰り、ま……」
椅子を立とうとした瞬間、ドデーンと派手にずっこけた。痛みは感じなかったが、羞恥だけは酔った脳でも搭載されているらしい。立ち上がろうとしても上手く足に力が入らない。
周りからやんやいう男の声や、女性の悲鳴のような叫び声も聞こえてくるが、頭で処理しきれず言葉が理解出来ない。
もうどうでもいいやと目を瞑ると、ふわりと体が浮いた。そしてどこかへと連れて行かれ、柔らかな敷物の上へと下される。きっとソファではなく、ベッドだ。
上向きに寝かせられると、胃が圧迫されるようで余計に気分が悪くなる。
「うーー」
「吐いっちまえ! ここにバケツあっから!」
目の前でバケツを見せられると更に気分が悪くなり、慌ててそれを引っ掴んだ。バケツの中に顔を突っ込んだ瞬間、たった今胃に入れたばかりの物を、そちらに移動させる。
ようやくそれが収まると、バケツをデニスに引き渡してベッドに倒れ込む。吐き気はなくなったが気分は悪い。まだふわふわした感覚は治らない。
サビーナは、デニスにお礼も謝罪も言わぬまま、意識を失うように眠りに落ちた。
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