思い出の夏祭り 〜君が私の気持ちに気づくまで〜

長岡更紗

文字の大きさ
7 / 79

07.初メール

しおりを挟む
 大晦日から元旦に掛けての夜勤がようやく終わった。
 私は家に帰って、拓真くんの携帯番号の入ったスマホを覗く。
 今から、『明けましておめでとう』メールを送るつもりなんだ。颯斗くんに絶対に送るように言われちゃったから。
 メールアドレスは知らないから、ショートメールサービスで……ああ、緊張する!

『明けましておめでとう、拓真くん。今年もよろしくね。良いお正月を』

 ふぁあああ、送っちゃったーーーーッ
 へ、変じゃなかったよね? 大丈夫だよね!?
 送った後で悶えてたら、すぐに拓真くんからショートメールが返ってきた。

『明けましておめでとうございます!!』

 ……え? これだけ?
 まぁ、明けましておめでとうだけじゃ、会話はそう広げられないけど……もう少し、なんかあっても良かったんじゃないかなぁ……。
 がっくり項垂れていると、もう一通、ショートメールが届いた。
 通話無料のメッセージアプリの招待だ。URLとQRコードが載ってある!
 私は急いで拓真くんを登録して、『招待ありがとう』のメッセージと、ナースがお辞儀しているスタンプを送る。
 すぐに既読のマークが付いて返事が来た。

『今年もよろしくお願いします!! 今、家族で餅食ってます!』

 次に送られて来たのは、リナちゃんと池畑さん夫妻がお餅を頬張っている写真。
 わぁ。皆、楽しそう! でも出来れば拓真くんの写真が欲しかったー!!

『いいね! 拓真くんも食べてる?』

 そんなの食べてるに決まってる。家族で食べてるって最初に書いてたんだから。でも送信っと。
 そうしたら、やっぱりすぐに送って来てくれた。私の口から「ぐふふ」っていう怪しい笑みが漏れちゃう。
 多分、リナちゃんに撮って貰ったんだろうな。餅を咥えてビヨンと伸ばして、カメラに向かってピースしてる写真。
 やーーんもう、可愛すぎる!!
 最高、幸せ!!
 私はすぐにそれをプリントアウトして、ボードに飾った。
 これだけでもう、今年一年頑張れちゃうよー!!

 メッセージに送られて来た『美味!!』のスタンプ。私は『Good』スタンプを返して、それで終わりになるかと思ってた。

 それから少しして、キラキランとメッセージの入る音がする。誰かなと思って見てみると、拓真くんだった。

『リナが園田さんと話したいらしいんですが、電話して良いですか?』

 はわわっ、電話!?
 緊張しながらも、OKのスタンプを送信する。既読マークがつくと、すぐに電話が掛かってきた。き、緊張するっ。

「も、もしもしっ」
『あ、そのださーん!』

 あ、リナちゃんの声だ。最初は拓真くんが出るかと思ってたけど。

「リナちゃん、久しぶり! 風邪なんか引いてない?」
『うん、大丈夫だよー!』

 リナちゃんの明るい声にホッとする。Uターン入院なんかになっちゃ、可哀想だからね。

「お正月はどこも人混みだから、気をつけてね。インフルエンザなんかになっちゃ、大変だよ!」
『分かってるよー。でもリナ、春になったらそっちに遊びに行っちゃうからね!』
「そっちって……鳥白市?」
『うん!』
「ああ、通院で来るって事でしょ?」
『違うよー、お兄ちゃんが春から鳥白市で一人暮らしするから、お兄ちゃんの所へ遊びに行くの!』
「え……ええ!?」

 い、今何て言った!?
 拓真くんが……海近市地元を出て、鳥白市こっちに来るって事!?
 製菓学校に行くって言ってたけど、まさか鳥白市のトキ製菓専門学校の事だったの!?
 きゃーーーーうそーーーー!!
 って、落ち着かなきゃ……っ! 怪しまれちゃう!!

「そ、そうなんだ。じゃあリナちゃん、寂しくなっちゃうね」
『うん、でも遊びに行くから良いんだー』
「そっか。じゃあこっちに来た時には声掛けてね。仕事が休みだったら、元気になったリナちゃんの顔を見に行くよ!」

 とか言ってごめんね、それは口実で拓真くんに会いたいからだったりする。もちろん、リナちゃんにも会いたいんだけど。

『やったー! じゃあリナがそっちに行った時には、色々案内してね! リナ、ずっと病院にいたから、八ヶ月も鳥白市にいたのに、なーんにも知らないんだもん』
「そうだよね。任せて! 私、鳥白が地元だから、詳しいよ! 色んな所に連れて行ってあげる!」
『ほんとーー!? ありがとーー!! おにいちゃん、園田さんが色んな所に連れて行ってくれるってー!』

 リナちゃんの言葉に、少し遠くの方で『マジ?』という声が聞こえた。その直後、『貸して』という声がして、一気に私の心拍が跳ね上がる。

『もしもし』

 あああ、拓真くんだー!!
 声を聞くだけで、心臓が張り裂けそうになっちゃうっ。

「あ、拓真くん?」

 出来るだけ、普通の声を出してみせる。内心はドキドキしていても、平然とした態度を取れるのは、看護師として身についた特性。

『色んな所に連れて行ってくれるって聞いたんだけど』
「あ、うん」

 もしかして、ダメだったかな……病気の妹を連れまわすなとか?
 拓真くん、妹思いだし、あり得るかもー! しまった、やっちゃったー!!

「で、でも、無理に連れまわすつもりじゃ……」
『園田さん、俺、四月からそっちで暮らすんで、家を決めなきゃいけないんだけど、どの辺が良いのか今度教えてもらっても良いですか?』
「……へ?」

 予想外……。
 本当に予想外の提案が!! 拓真くんの口から!!

『やっぱ、忙しいかな』
「だ、大丈夫! 休みの日ならいつでも付き合えるし、車も出すよ! 拓真くんはいつが良いのかな?」
『できれば早い方が。冬休み中がありがたいかな』
「えーと……私、次の休みが八日なんだけど、まだ学校始まってないよね? 大丈夫?」
『大丈夫! ありがとう園田さん! お願いします!』

 ど、どうしよう、全身が熱い。これ、夢じゃないよね!?
 絶対今、血圧がヤバいことになってるよ!!

「じゃあ、何時頃にこっちに着くか分かったら、またメッセージ入れといてくれる?」
『はい! 電車の時間確認したら送っときます! 失礼します!』

 ハキハキとした心地良い拓真くんの声。もう私、倒れるかもしれない。

「じゃあ、八日にね」

 それだけを何とか言って、電話を切った。
 切った瞬間から、急いで酸素を何度も取り込む。

 もう、もう……嬉しすぎて死ぬかもーーーーッ

 夜勤明けの体で悶え過ぎて、本当に息が出来なくて死ぬかと思った!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

処理中です...