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12.お弁当
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『オカシな国』の第二戦目は、ギリギリだけど何とか勝ってた。
結衣ちゃん曰く、トーナメントじゃなくて全六チームの三セットマッチ総当たり戦で、勝ち数の多い所が優勝なんだって。勝ち数が同じだったら、セット数で。セット数が同じだったら得点数で勝敗が決まるみたい。
次の試合はすぐに組まれていて、拓真くんたちは少しの休憩でもうコートに立ってる。き、きつそう~。
「ほらほら集中ー!! 一本切ってこー!!」
結衣ちゃんが叱咤すると、一人だけ色の違うユニフォームを着た晴臣くんって人が、相手のサーブを綺麗に上げる。それを三島さんのトスで、拓真くんが思いっきり叩く。
決まった、と喜ぼうとしたら、結衣ちゃんが怒り顔で言った。
「線審、今のはギリ入ってたでしょーーーーッ、良く見なさいよっ」
決まったと思ったけど、線審? はアウトの表示をしたみたい。主審もそれを見てアウトと判断して、相手チームに点が入っちゃう。
「でも相手チーム上手いよ。こりゃ負けるかもなぁ」
「リョウ、負けるとか言わない! 全力で応援!!」
「あー悪い。俺そろそろバイトだから抜けるわ。皆に凄かったっつっといて」
「もう、仕方ないなぁ」
「あ、結衣、私も帰るね。飽きてきちゃった」
「ちょっと夏花?!」
「だってこの後もまだ試合あるんでしょ? バレー観戦だけで一日潰されるのはちょっとね。一応応援には来たんだし、義理は果たせたでしょ。んじゃ」
そう言って、リョウくんと夏花ちゃんはあっさり帰って行った。
まぁ私も、拓真くんがいなかったら、そもそも見にすら来てないしね。気持ちは分かっちゃう。結衣ちゃんはすっごく悔しそうな顔してたけど。
「園田さんはまだ居ます?」
「あ、うん。バレーって詳しくないけど、迫力あって面白いかも。もうちょっと観ていこうかな」
「あー良かった! 高校でマネージャーしてた時は、コート前にいたからそんな事も思わなかったんですけど……二階からの応援は、人がいないとやっぱり寂しいです」
うん、なんとなく分かる。隣に人がいてくれるだけで、なんか安心しちゃう。
でも、私達の応援も虚しく、その試合は負けちゃった。相手チームだって練習してるんだし、そう簡単には勝たせてくれないよね。
試合が終わった後は笑顔で相手チームと握手を交わしてるけど、本当は悔しそう。
「あ、お昼休憩に入るかな? 園田さん、一緒に下に行って、皆とご飯食べましょうよ」
「え? でも私、お弁当持ってきてないし……」
「ああ、大丈夫! 私持ってきてるし、どうせあいつらも作って来てると思うんで。皆のお弁当、摘んじゃいましょ!」
「えええ?!」
結衣ちゃんに手を引っ張られて、断る暇もなく連れてかれてしまった。
三島さん、どうか私に気付きませんようにーーーーッ
「お疲れ様ー! さっきの試合、惜しかったねー」
結衣ちゃんが明るくチームに話しかけてる。拓真くんは息を切らせて、ちょっと疲れた様子で笑ってるだけだった。やっぱり結構、悔しいのかな。
「とりあえず、今からお昼でしょ。私達も一緒していい?」
結衣ちゃんの言葉に、スパイカーの一ノ瀬くんが私に目を向ける。
「良いけど、その人誰? リョウとナツは?」
「二人は帰っちゃったよ。で、この人は園田さん。オカシな国を応援してくれてたから、誘っちゃった」
紹介を受けて、ドキドキしながらペコっとお辞儀をする。顔を上げると、拓真くんが嬉しそうに笑ってた。それだけで、私も嬉しい。
「あ、話してるとこごめん。俺ら、ちょっとそこのコンビニで弁当買ってくるから」
そう言ったのは、三島さんと平さんと緑川さんの社会人三人組だ。
「雄大さん、大和さん、鉄平さん。俺、山ほど弁当作って来たんで、食べていっすよ」
リベロの晴臣くんが、なんと五段のお重箱を取り出した。ど、どんだけ食べる気!?
「おー、俺も俺も!」
それを皮切りに、拓真くんとヒロヤくんと一ノ瀬くんが、自作であろうお弁当箱をドドンと出してくる。
「私も作って来たんで……良かったら食べてください。勿論、園田さんも!」
「おおおー、すげーーーー」
出揃ったお弁当は圧巻だった。三島さんたちだけじゃなく、私も目を丸めてしまう。
だって……だって、どのお弁当もきらびやか!!
彩りが良くて、綺麗に敷き詰められたお弁当は、その辺の主婦なんかよりもはるかに出来が良いんだもん!!
三島さんは結衣ちゃんに渡された割り箸を手にとって、目をキラキラさせている。
「すごいな、お前ら。製菓専門なのに、料理も出来るのか?」
「製菓専門学校とはいうけど、普通の調理師免許を取るための授業もあるし。料理が嫌いな奴は、そもそもこんな学校には入んねーだろうしなー」
し、知らなかった……拓真くん、料理もこんなに出来たんだ。
お菓子も作れるし料理もできるって、私なんかよりよっぽど女子力高いよぉぉ! 私なんか、ほとんど毎日コンビニ弁当だもん!!
「園田さん、はい割り箸。どれを食べても良いですからね!」
結衣ちゃんにそう言ってもらえて、私は皆のお弁当を順に摘ませてもらった。
どれを食べても、美味しい。飾り付けも完璧。
こんなにいっぱいのお弁当、絶対に残るだろうと思ってたけど、男性陣の食べる勢いが半端じゃなかった!! 気持ちいいくらいに食べる食べる!!
「そんなに食べたら、午後の試合に影響するよ!」
「食わなきゃ持たねーから良いんだよ!」
結衣ちゃんの言葉にヒロヤくんが反論すると、皆はそうだそうだと頷いている。
あれだけあったお弁当が、瞬く間になくなっちゃった……。
恐るべし、スポーツ男子の食欲。
結衣ちゃん曰く、トーナメントじゃなくて全六チームの三セットマッチ総当たり戦で、勝ち数の多い所が優勝なんだって。勝ち数が同じだったら、セット数で。セット数が同じだったら得点数で勝敗が決まるみたい。
次の試合はすぐに組まれていて、拓真くんたちは少しの休憩でもうコートに立ってる。き、きつそう~。
「ほらほら集中ー!! 一本切ってこー!!」
結衣ちゃんが叱咤すると、一人だけ色の違うユニフォームを着た晴臣くんって人が、相手のサーブを綺麗に上げる。それを三島さんのトスで、拓真くんが思いっきり叩く。
決まった、と喜ぼうとしたら、結衣ちゃんが怒り顔で言った。
「線審、今のはギリ入ってたでしょーーーーッ、良く見なさいよっ」
決まったと思ったけど、線審? はアウトの表示をしたみたい。主審もそれを見てアウトと判断して、相手チームに点が入っちゃう。
「でも相手チーム上手いよ。こりゃ負けるかもなぁ」
「リョウ、負けるとか言わない! 全力で応援!!」
「あー悪い。俺そろそろバイトだから抜けるわ。皆に凄かったっつっといて」
「もう、仕方ないなぁ」
「あ、結衣、私も帰るね。飽きてきちゃった」
「ちょっと夏花?!」
「だってこの後もまだ試合あるんでしょ? バレー観戦だけで一日潰されるのはちょっとね。一応応援には来たんだし、義理は果たせたでしょ。んじゃ」
そう言って、リョウくんと夏花ちゃんはあっさり帰って行った。
まぁ私も、拓真くんがいなかったら、そもそも見にすら来てないしね。気持ちは分かっちゃう。結衣ちゃんはすっごく悔しそうな顔してたけど。
「園田さんはまだ居ます?」
「あ、うん。バレーって詳しくないけど、迫力あって面白いかも。もうちょっと観ていこうかな」
「あー良かった! 高校でマネージャーしてた時は、コート前にいたからそんな事も思わなかったんですけど……二階からの応援は、人がいないとやっぱり寂しいです」
うん、なんとなく分かる。隣に人がいてくれるだけで、なんか安心しちゃう。
でも、私達の応援も虚しく、その試合は負けちゃった。相手チームだって練習してるんだし、そう簡単には勝たせてくれないよね。
試合が終わった後は笑顔で相手チームと握手を交わしてるけど、本当は悔しそう。
「あ、お昼休憩に入るかな? 園田さん、一緒に下に行って、皆とご飯食べましょうよ」
「え? でも私、お弁当持ってきてないし……」
「ああ、大丈夫! 私持ってきてるし、どうせあいつらも作って来てると思うんで。皆のお弁当、摘んじゃいましょ!」
「えええ?!」
結衣ちゃんに手を引っ張られて、断る暇もなく連れてかれてしまった。
三島さん、どうか私に気付きませんようにーーーーッ
「お疲れ様ー! さっきの試合、惜しかったねー」
結衣ちゃんが明るくチームに話しかけてる。拓真くんは息を切らせて、ちょっと疲れた様子で笑ってるだけだった。やっぱり結構、悔しいのかな。
「とりあえず、今からお昼でしょ。私達も一緒していい?」
結衣ちゃんの言葉に、スパイカーの一ノ瀬くんが私に目を向ける。
「良いけど、その人誰? リョウとナツは?」
「二人は帰っちゃったよ。で、この人は園田さん。オカシな国を応援してくれてたから、誘っちゃった」
紹介を受けて、ドキドキしながらペコっとお辞儀をする。顔を上げると、拓真くんが嬉しそうに笑ってた。それだけで、私も嬉しい。
「あ、話してるとこごめん。俺ら、ちょっとそこのコンビニで弁当買ってくるから」
そう言ったのは、三島さんと平さんと緑川さんの社会人三人組だ。
「雄大さん、大和さん、鉄平さん。俺、山ほど弁当作って来たんで、食べていっすよ」
リベロの晴臣くんが、なんと五段のお重箱を取り出した。ど、どんだけ食べる気!?
「おー、俺も俺も!」
それを皮切りに、拓真くんとヒロヤくんと一ノ瀬くんが、自作であろうお弁当箱をドドンと出してくる。
「私も作って来たんで……良かったら食べてください。勿論、園田さんも!」
「おおおー、すげーーーー」
出揃ったお弁当は圧巻だった。三島さんたちだけじゃなく、私も目を丸めてしまう。
だって……だって、どのお弁当もきらびやか!!
彩りが良くて、綺麗に敷き詰められたお弁当は、その辺の主婦なんかよりもはるかに出来が良いんだもん!!
三島さんは結衣ちゃんに渡された割り箸を手にとって、目をキラキラさせている。
「すごいな、お前ら。製菓専門なのに、料理も出来るのか?」
「製菓専門学校とはいうけど、普通の調理師免許を取るための授業もあるし。料理が嫌いな奴は、そもそもこんな学校には入んねーだろうしなー」
し、知らなかった……拓真くん、料理もこんなに出来たんだ。
お菓子も作れるし料理もできるって、私なんかよりよっぽど女子力高いよぉぉ! 私なんか、ほとんど毎日コンビニ弁当だもん!!
「園田さん、はい割り箸。どれを食べても良いですからね!」
結衣ちゃんにそう言ってもらえて、私は皆のお弁当を順に摘ませてもらった。
どれを食べても、美味しい。飾り付けも完璧。
こんなにいっぱいのお弁当、絶対に残るだろうと思ってたけど、男性陣の食べる勢いが半端じゃなかった!! 気持ちいいくらいに食べる食べる!!
「そんなに食べたら、午後の試合に影響するよ!」
「食わなきゃ持たねーから良いんだよ!」
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