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晴臣くんと別れた後、家に帰ってバレーに行く準備をする。
そしていつもの六時になると、拓真くんの家に入った。
「ごめん、ミジュ。ちょっと忙しくて、もうちょいかかりそう」
「うん、ゆっくりしてて。洗濯物とお風呂掃除やっちゃうね」
私がここにご飯を食べに来る時は、必ずする仕事。
拓真くんは、パンツだけは畳まれるのに抵抗があるのか、それだけ先に自分で片付けてるみたいだったけど。残りの洗濯物は全部私に任せてくれてる。
でも、これだけで満足してちゃいけないのかもしれない。お料理も……手伝ってみようかなぁ。頑張ってるアピールに、なる……かも?
大失敗して呆れられる可能性の方が高いような気もするけど。
でも、もう『特に』なんて言わせたくない。
私っていう存在を、拓真くんの中へ植え付けたい!
洗濯物だけ片付けて、狭い台所に向かう。
「拓真くん、私も何か料理手伝うよ」
そう言うと、拓真くんの顔が喫驚した。
「えっ?! どうしたんだよミジュ……頭でも打ったか? 雪でも降るんじゃないだろうな」
「も、もう! 私だって、ちょっとは料理……出来ないけど、手伝いたいんだから!」
「偉い偉い。まぁもう終わりだから、また今度な」
うーん、やっぱり拓真くんに妹扱いされてる? これを脱却しない事には、彼女になんかなれないよね。どうしたらいいんだろう。
今日も美味しそうな食事が並べられて、一緒にご飯を食べる。
この生活は、一体いつまで続けられるんだろう。出来れば一生、こうして一緒にご飯を食べたいけど、今のままだと確実に終わりが来る。それを考えると……ちょっと、胸が苦しい。
私はご飯を口に運んでいる拓真くんを見た。今日は何となく口数の少ない拓真くん。きっと、結衣ちゃんの事を考えてるからだろうけど。
すると拓真くんもこっちを見て、私と目が合った。けど、どこか言いにくそうに少し視線を泳がせてる。
「あー……なぁ、ミジュ」
「ん? なぁに?」
「ミジュはその……やっぱ好きな男とかいるのか?」
え?! 何いきなりその質問?! 結衣ちゃんに告白された所為??
もし、正直に答えたらどうなるんだろう……好きな相手が拓真くんだってバレちゃったら、今の状態じゃ百パーセント振られちゃう。
なんとか誤魔化さなきゃ。
「そういう拓真くんはどうなの?」
よし、ナイス切り返し、私! ちょっとお姉さんっぽさも演出出来たんじゃない? 目指せ、脱・妹!
「え、俺? あー……まぁ、どうだろうな……」
な、何その微妙な反応は……でもきっぱり居るって言われなくて良かった。いるって言われたら、私以外の女の人が好きって事だもんね。
まぁ今の返事じゃ、いるのかいないのか、はっきりしないけど。
「どうしていきなりそんな事を言い出したの?」
「んー、ちょっと気になって」
……それは、私の事を気にしてるって意味? それとも一般的な女性がどんなものなのか気になるって事なのか……今の発言だけじゃ、なんとも言えないなぁ。
「俺らの年だったら、好きなやついるのが当然なのかな」
「それは……色々じゃない? 好きな人がいる人もいれば、いない人もいるだろうし。別にどっちが良いとか悪いとかもないと思うけど」
「そうかな。で、ミジュは好きな奴いんの?」
うぐ、話が戻っちゃった! 上手く躱したと思ったのにー!
「私……私は、まぁ、それなりに……」
そ、それなりにって何よ私?! まるで複数人が好きみたいなニュアンスになっちゃった!
違うよ、拓真くん一筋だよー!
「へー、いるんだ」
純粋に驚いている顔の拓真くんを見ると、何だか悔しくて心が痛い。
「病院の人?」
「ど、どうかな。ヒミツ!」
「別に、誰にも言わねーのに」
「そういう問題じゃないの!」
言えるわけないでしょー! 目の前にいるあなただなんて!!
「大学病院の医者とか、稼いでそうだもんなー」
「お金を持ってるからって好きになるわけじゃないでしょ! ま、まぁ世の中にはそういう女の人もいるかもしれないけど」
「じゃあ、バレーの仲間? 鉄平さんとか?」
「緑川さんだけは、絶対にない!!」
「そんじゃあ一ノ瀬……」
「ちょっと待って?! それ一人ずつ言ってっちゃ、バレちゃうじゃない!」
「……ふーん」
あ。しまった。これじゃあ、バレーの仲間の中に好きな人がいるって言ってるのも同然だった!
私のバカー!!!!
泣きそうになりながら拓真くんを確認すると、何故か複雑そうな顔で笑ってる。
「そんな顔すんなって! 誰にも言わねーから。な?」
お箸を置いて、私の頭をグシャグシャと撫でてくる拓真くん。
それだけで身体中が熱くなって、もう胸が痛いくらいに苦しい。
「はは、ミジュ、また耳まで真っ赤……」
頭に置かれていた手が、私の耳に移動して。拓真くんは、言葉を止めた。
「まさか……俺?」
バクンッ
バクンッ、バクンッ!
心臓が飛び出しそうなほどに鳴る。
まだダメ。バレちゃダメ。
今バレちゃったら、絶対『ごめん』って言葉が返ってきちゃう!
「ま、まさか! 違うよ!」
バクン、バクン、バクン。
静まれ、心臓ーー!
もっともっと拓真くんと仲良くなって、良い女になって、それからちゃんと告白するんだから!
今、断られるわけにいかないんだから!
「あー、はは……そうだよな」
複雑そうに笑ってる拓真くん。
もう、心臓がはち切れそう。
ほんのちょっとだけでも残念って思ってくれてたら、嬉しいんだけどな……。拓真くんの表情は、よく分からない。
私達は、微妙な雰囲気の中で食事を終わらせた。
そしていつもの六時になると、拓真くんの家に入った。
「ごめん、ミジュ。ちょっと忙しくて、もうちょいかかりそう」
「うん、ゆっくりしてて。洗濯物とお風呂掃除やっちゃうね」
私がここにご飯を食べに来る時は、必ずする仕事。
拓真くんは、パンツだけは畳まれるのに抵抗があるのか、それだけ先に自分で片付けてるみたいだったけど。残りの洗濯物は全部私に任せてくれてる。
でも、これだけで満足してちゃいけないのかもしれない。お料理も……手伝ってみようかなぁ。頑張ってるアピールに、なる……かも?
大失敗して呆れられる可能性の方が高いような気もするけど。
でも、もう『特に』なんて言わせたくない。
私っていう存在を、拓真くんの中へ植え付けたい!
洗濯物だけ片付けて、狭い台所に向かう。
「拓真くん、私も何か料理手伝うよ」
そう言うと、拓真くんの顔が喫驚した。
「えっ?! どうしたんだよミジュ……頭でも打ったか? 雪でも降るんじゃないだろうな」
「も、もう! 私だって、ちょっとは料理……出来ないけど、手伝いたいんだから!」
「偉い偉い。まぁもう終わりだから、また今度な」
うーん、やっぱり拓真くんに妹扱いされてる? これを脱却しない事には、彼女になんかなれないよね。どうしたらいいんだろう。
今日も美味しそうな食事が並べられて、一緒にご飯を食べる。
この生活は、一体いつまで続けられるんだろう。出来れば一生、こうして一緒にご飯を食べたいけど、今のままだと確実に終わりが来る。それを考えると……ちょっと、胸が苦しい。
私はご飯を口に運んでいる拓真くんを見た。今日は何となく口数の少ない拓真くん。きっと、結衣ちゃんの事を考えてるからだろうけど。
すると拓真くんもこっちを見て、私と目が合った。けど、どこか言いにくそうに少し視線を泳がせてる。
「あー……なぁ、ミジュ」
「ん? なぁに?」
「ミジュはその……やっぱ好きな男とかいるのか?」
え?! 何いきなりその質問?! 結衣ちゃんに告白された所為??
もし、正直に答えたらどうなるんだろう……好きな相手が拓真くんだってバレちゃったら、今の状態じゃ百パーセント振られちゃう。
なんとか誤魔化さなきゃ。
「そういう拓真くんはどうなの?」
よし、ナイス切り返し、私! ちょっとお姉さんっぽさも演出出来たんじゃない? 目指せ、脱・妹!
「え、俺? あー……まぁ、どうだろうな……」
な、何その微妙な反応は……でもきっぱり居るって言われなくて良かった。いるって言われたら、私以外の女の人が好きって事だもんね。
まぁ今の返事じゃ、いるのかいないのか、はっきりしないけど。
「どうしていきなりそんな事を言い出したの?」
「んー、ちょっと気になって」
……それは、私の事を気にしてるって意味? それとも一般的な女性がどんなものなのか気になるって事なのか……今の発言だけじゃ、なんとも言えないなぁ。
「俺らの年だったら、好きなやついるのが当然なのかな」
「それは……色々じゃない? 好きな人がいる人もいれば、いない人もいるだろうし。別にどっちが良いとか悪いとかもないと思うけど」
「そうかな。で、ミジュは好きな奴いんの?」
うぐ、話が戻っちゃった! 上手く躱したと思ったのにー!
「私……私は、まぁ、それなりに……」
そ、それなりにって何よ私?! まるで複数人が好きみたいなニュアンスになっちゃった!
違うよ、拓真くん一筋だよー!
「へー、いるんだ」
純粋に驚いている顔の拓真くんを見ると、何だか悔しくて心が痛い。
「病院の人?」
「ど、どうかな。ヒミツ!」
「別に、誰にも言わねーのに」
「そういう問題じゃないの!」
言えるわけないでしょー! 目の前にいるあなただなんて!!
「大学病院の医者とか、稼いでそうだもんなー」
「お金を持ってるからって好きになるわけじゃないでしょ! ま、まぁ世の中にはそういう女の人もいるかもしれないけど」
「じゃあ、バレーの仲間? 鉄平さんとか?」
「緑川さんだけは、絶対にない!!」
「そんじゃあ一ノ瀬……」
「ちょっと待って?! それ一人ずつ言ってっちゃ、バレちゃうじゃない!」
「……ふーん」
あ。しまった。これじゃあ、バレーの仲間の中に好きな人がいるって言ってるのも同然だった!
私のバカー!!!!
泣きそうになりながら拓真くんを確認すると、何故か複雑そうな顔で笑ってる。
「そんな顔すんなって! 誰にも言わねーから。な?」
お箸を置いて、私の頭をグシャグシャと撫でてくる拓真くん。
それだけで身体中が熱くなって、もう胸が痛いくらいに苦しい。
「はは、ミジュ、また耳まで真っ赤……」
頭に置かれていた手が、私の耳に移動して。拓真くんは、言葉を止めた。
「まさか……俺?」
バクンッ
バクンッ、バクンッ!
心臓が飛び出しそうなほどに鳴る。
まだダメ。バレちゃダメ。
今バレちゃったら、絶対『ごめん』って言葉が返ってきちゃう!
「ま、まさか! 違うよ!」
バクン、バクン、バクン。
静まれ、心臓ーー!
もっともっと拓真くんと仲良くなって、良い女になって、それからちゃんと告白するんだから!
今、断られるわけにいかないんだから!
「あー、はは……そうだよな」
複雑そうに笑ってる拓真くん。
もう、心臓がはち切れそう。
ほんのちょっとだけでも残念って思ってくれてたら、嬉しいんだけどな……。拓真くんの表情は、よく分からない。
私達は、微妙な雰囲気の中で食事を終わらせた。
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