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雷神編
19.嬉しいんだろう
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アリシアとの関係が深まって数ヶ月。雷神は遺跡に行くことが少なくなった。近辺の遺跡は調べ尽くしてしまったのだ。なので近頃は孤児院に顔を出して、ジャンを相手に遊んでいる。
ジャンの短剣の腕前はめきめきと上がっていて、雷神を相手に稽古している間は生き生きとしていた。稽古が終わった途端にそっけなくなるのだが。
「はぁ、はぁ……」
「よし、今日はここまでだ。また明日だな」
「明日も来るんだ……」
「嬉しいんだろう」
「別に。ロクロウって暇人だな」
ジャンは口が悪いというかなんというか、的を得ているだけに反論できない。まだ九歳の少年に口で負かされ、雷神は苦笑いした。
「遺跡には行かないの」
「ああ、近くの遺跡は調べ尽くしたからな」
「遠出すればいいんじゃない」
またも正論を言われ、雷神は押し黙る。しかし遠出をすれば、アリシアが帰ってくる時間には間に合わないだろう。懊悩する雷神を見て、ジャンはどこか冷めた目で言う。
「昨日、アリシアさん来てた」
「そうか、入れ違いに来たんだな」
「あんまり心配かけない方がいいんじゃないの」
ジャンの言葉に雷神は目を広げる。そしてどういう意味かわからずに尋ねた。
「アリシアは、なんて言ってたんだ?」
「別に」
「別にじゃわからんだろう。ちゃんと言え」
ギロリと凄んでやると、面倒そうに見上げられる。
「最近、ロクロウが元気ないって。理由を知らないかって聞かれた」
ジャンの言葉に、雷神は首を傾げる。元気がないつもりは、まったくない。アリシアのようなテンションを保てと言われれば、絶対に無理だが。それでも自分なりに元気でいるつもりだ。
「で、お前はなんて答えたんだ、ジャン」
「暇だからじゃないって言っといた」
「お前から見て俺は、元気がないように見えるか?」
「別に……興味ない」
「あ、そ……」
ジャンは本当に興味なさそうに院に戻っていき、雷神は夕食の買い物をするために市場に向かった。
今日はなにを作ろうかと、雷神は頭を悩ませる。毎日毎日毎日毎日、料理を作らなければならないというのは結構大変だ。
(世の中の主婦を尊敬するな……)
雷神はターシャの姿を思い出す。彼女はいつも楽しそうに料理を作っていた。そんなターシャを心から尊敬する。
アリシアが喜んでくれるので作りがいはあるのだが、やはりどうしても面倒臭さが先立つ。主夫という職業が、雷神には向いていないのだろう。炊事掃除洗濯で金が湧いてくるわけでも、知識が増えるわけでも、謎が解けるわけでもない。
毎日同じ事の繰り返し。報酬がアリシアの笑顔、というのは悪くない。けど、それだけではなにか満たされない。
雷神は溜め息を吐きそうになり、慌てて顔を繕う。そして新鮮な卵と鶏肉を手に入れ、家に帰った。
その日の夜、雷神の作ったオムライスをアリシアは大きな口で頬張った。そして相変わらず幸せそうな顔で口を動かしている。
「あー美味しい!! 卵がふわっふわのとろっとろね! ロクロウの料理は最高よっ」
「大袈裟だな。まぁ褒められて悪い気はしないが」
「あら、ロクロウも随分と素直になったわね! この際だから、言っちゃいなさいな!」
「…………なにをだ?」
アリシアが言わそうとしていることの見当がまったくつかず、雷神は首を捻らせる。そんな雷神の姿を見て、アリシアは勝ち誇ったように言った。
「遺跡に行きたいんでしょう? 毎日ご飯を作ってくれなくったって、大丈夫なのよ?」
アリシアの言葉に、雷神は押し黙った。遺跡、という言葉を出されるとウズウズする。まだ見ぬ遺跡に行きたい。コムリコッツ文字を解読したい。秘術を知りたい。
雷神の心の中の欲求が、アリシアの一言で渦巻き始めた。
ジャンの短剣の腕前はめきめきと上がっていて、雷神を相手に稽古している間は生き生きとしていた。稽古が終わった途端にそっけなくなるのだが。
「はぁ、はぁ……」
「よし、今日はここまでだ。また明日だな」
「明日も来るんだ……」
「嬉しいんだろう」
「別に。ロクロウって暇人だな」
ジャンは口が悪いというかなんというか、的を得ているだけに反論できない。まだ九歳の少年に口で負かされ、雷神は苦笑いした。
「遺跡には行かないの」
「ああ、近くの遺跡は調べ尽くしたからな」
「遠出すればいいんじゃない」
またも正論を言われ、雷神は押し黙る。しかし遠出をすれば、アリシアが帰ってくる時間には間に合わないだろう。懊悩する雷神を見て、ジャンはどこか冷めた目で言う。
「昨日、アリシアさん来てた」
「そうか、入れ違いに来たんだな」
「あんまり心配かけない方がいいんじゃないの」
ジャンの言葉に雷神は目を広げる。そしてどういう意味かわからずに尋ねた。
「アリシアは、なんて言ってたんだ?」
「別に」
「別にじゃわからんだろう。ちゃんと言え」
ギロリと凄んでやると、面倒そうに見上げられる。
「最近、ロクロウが元気ないって。理由を知らないかって聞かれた」
ジャンの言葉に、雷神は首を傾げる。元気がないつもりは、まったくない。アリシアのようなテンションを保てと言われれば、絶対に無理だが。それでも自分なりに元気でいるつもりだ。
「で、お前はなんて答えたんだ、ジャン」
「暇だからじゃないって言っといた」
「お前から見て俺は、元気がないように見えるか?」
「別に……興味ない」
「あ、そ……」
ジャンは本当に興味なさそうに院に戻っていき、雷神は夕食の買い物をするために市場に向かった。
今日はなにを作ろうかと、雷神は頭を悩ませる。毎日毎日毎日毎日、料理を作らなければならないというのは結構大変だ。
(世の中の主婦を尊敬するな……)
雷神はターシャの姿を思い出す。彼女はいつも楽しそうに料理を作っていた。そんなターシャを心から尊敬する。
アリシアが喜んでくれるので作りがいはあるのだが、やはりどうしても面倒臭さが先立つ。主夫という職業が、雷神には向いていないのだろう。炊事掃除洗濯で金が湧いてくるわけでも、知識が増えるわけでも、謎が解けるわけでもない。
毎日同じ事の繰り返し。報酬がアリシアの笑顔、というのは悪くない。けど、それだけではなにか満たされない。
雷神は溜め息を吐きそうになり、慌てて顔を繕う。そして新鮮な卵と鶏肉を手に入れ、家に帰った。
その日の夜、雷神の作ったオムライスをアリシアは大きな口で頬張った。そして相変わらず幸せそうな顔で口を動かしている。
「あー美味しい!! 卵がふわっふわのとろっとろね! ロクロウの料理は最高よっ」
「大袈裟だな。まぁ褒められて悪い気はしないが」
「あら、ロクロウも随分と素直になったわね! この際だから、言っちゃいなさいな!」
「…………なにをだ?」
アリシアが言わそうとしていることの見当がまったくつかず、雷神は首を捻らせる。そんな雷神の姿を見て、アリシアは勝ち誇ったように言った。
「遺跡に行きたいんでしょう? 毎日ご飯を作ってくれなくったって、大丈夫なのよ?」
アリシアの言葉に、雷神は押し黙った。遺跡、という言葉を出されるとウズウズする。まだ見ぬ遺跡に行きたい。コムリコッツ文字を解読したい。秘術を知りたい。
雷神の心の中の欲求が、アリシアの一言で渦巻き始めた。
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