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雷神編
20.復帰できないか?
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「いや……だが……」
「別にしばらく留守にしたって、平気よ? 来週からは私も遠征が入って帰って来られないし、行ってくればいいわ!」
「…………いいのか?」
「もちろんよ!」
遺跡に行ける。新しい遺跡に。
そう思うだけで、雷神は己の瞳がギラリと輝くのを感じた。雷神の顔を見ていたアリシアは、嬉しそうに頷いている。
「お土産話、たくさん聞かせてね!」
「ああ、わかった!」
雷神は己の作ったオムライスをすべて平らげ、ニコリと笑った。
そんな提案をもらった後、雷神は拠点を移すことに決めた。
故郷からノートをすべて送ってもらい、自分の部屋に置くことにしたのだ。しかし量が多くて入りきらず、アリシアに相談してフェルナンドとターシャの部屋に置かせてもらった。
膨大な資料を読み返したいと思っていたところだったし、まだしばらくはアリシアのそばにいてやらなければという思いがあったからだ。
雷神はその日から、遺跡探査の範囲を広げることとなる。家に一週間帰らない時もあれば、三ヶ月も留守にすることもあった。しかし帰れば当然のようにアリシアがいて、二人で食事をとる。
いつの間にか将に昇進していたアリシアは、王宮に一室が与えられる予定だったらしい。しかしそれを蹴って、毎日家に帰ってきているようだった。
アリシアとのそんな生活が続いて二年と少し。
雷神にひとつの思いが過る。
(このまま、アリシアと結婚してもいいな……)
ここに来た当初は、考えもしていなかったことだ。けど、今は。
この家の居心地がよすぎて、アリシアと共に暮らせるのが嬉しくて、雷神の頭に結婚の二文字が浮かぶ。
その夜、アリシアとベッドの上で戯れた後、彼女は少し眉を寄せていた。
「ロクロウ……今日は私、危険日だったのよ?」
「そう言ってたな。覚えてる」
「だったら、どうして……」
「もう将という地位は確立したんだ。子どもを産んだ後でも復帰できるだろう」
雷神がそう言うと、アリシアは大きな目をさらに大きくさせた。そしてガバッと起き上がったかと思うと、寝転がっている雷神の肩はがっしりと彼女の両手でロックされる。雷神の目の前で、アリシアの胸が揺れた。
「どういうこと!?」
「復帰できないか?」
「できるわ!!」
「子どもはいらないか?」
「いるわ!!」
「じゃ、そういうことだ」
アリシアの口がニマ~~ッと裂けたかと思うと、今度はプシュ~~~~ッと蒸気して、そのまま雷神の胸へと倒れ込んだ。
「おい……おい、アリシア!? 大丈夫か!?」
「はぁ……も、だめ……」
「アリシア、しっかりしろ!!」
「顔が、ニヤけちゃって……」
そう言ってアリシアは顔を上げる。笑顔なんて生やさしい言葉じゃ表現できないほど、その顔は崩れていた。
「もっと普通の顔はできんのか」
「あー、嬉しくて死にそうだわ!! この子の名前はなんにしようかしら!?」
妊娠したと決まったわけでもないのに、アリシアはそんなことを言い出した。しかし雷神も付き合って、その名前を考えてやる。
「そう……だな。アンナ、なんてどうだ?」
「アンナね! ステキ!! 立派な男の子になりそうだわ!!」
「いや、今のはどう聞いても女の名前だと思うんだが……」
キャッキャと子どものようにはしゃぐアリシアを見て、雷神もまた微笑む。
幸せだった。こうして家族を持てることになるのだと思うと。
アリシアも、いつか生まれるであろう子どもも。
自分が幸せにしてあげよう──そう、思っていた。
「別にしばらく留守にしたって、平気よ? 来週からは私も遠征が入って帰って来られないし、行ってくればいいわ!」
「…………いいのか?」
「もちろんよ!」
遺跡に行ける。新しい遺跡に。
そう思うだけで、雷神は己の瞳がギラリと輝くのを感じた。雷神の顔を見ていたアリシアは、嬉しそうに頷いている。
「お土産話、たくさん聞かせてね!」
「ああ、わかった!」
雷神は己の作ったオムライスをすべて平らげ、ニコリと笑った。
そんな提案をもらった後、雷神は拠点を移すことに決めた。
故郷からノートをすべて送ってもらい、自分の部屋に置くことにしたのだ。しかし量が多くて入りきらず、アリシアに相談してフェルナンドとターシャの部屋に置かせてもらった。
膨大な資料を読み返したいと思っていたところだったし、まだしばらくはアリシアのそばにいてやらなければという思いがあったからだ。
雷神はその日から、遺跡探査の範囲を広げることとなる。家に一週間帰らない時もあれば、三ヶ月も留守にすることもあった。しかし帰れば当然のようにアリシアがいて、二人で食事をとる。
いつの間にか将に昇進していたアリシアは、王宮に一室が与えられる予定だったらしい。しかしそれを蹴って、毎日家に帰ってきているようだった。
アリシアとのそんな生活が続いて二年と少し。
雷神にひとつの思いが過る。
(このまま、アリシアと結婚してもいいな……)
ここに来た当初は、考えもしていなかったことだ。けど、今は。
この家の居心地がよすぎて、アリシアと共に暮らせるのが嬉しくて、雷神の頭に結婚の二文字が浮かぶ。
その夜、アリシアとベッドの上で戯れた後、彼女は少し眉を寄せていた。
「ロクロウ……今日は私、危険日だったのよ?」
「そう言ってたな。覚えてる」
「だったら、どうして……」
「もう将という地位は確立したんだ。子どもを産んだ後でも復帰できるだろう」
雷神がそう言うと、アリシアは大きな目をさらに大きくさせた。そしてガバッと起き上がったかと思うと、寝転がっている雷神の肩はがっしりと彼女の両手でロックされる。雷神の目の前で、アリシアの胸が揺れた。
「どういうこと!?」
「復帰できないか?」
「できるわ!!」
「子どもはいらないか?」
「いるわ!!」
「じゃ、そういうことだ」
アリシアの口がニマ~~ッと裂けたかと思うと、今度はプシュ~~~~ッと蒸気して、そのまま雷神の胸へと倒れ込んだ。
「おい……おい、アリシア!? 大丈夫か!?」
「はぁ……も、だめ……」
「アリシア、しっかりしろ!!」
「顔が、ニヤけちゃって……」
そう言ってアリシアは顔を上げる。笑顔なんて生やさしい言葉じゃ表現できないほど、その顔は崩れていた。
「もっと普通の顔はできんのか」
「あー、嬉しくて死にそうだわ!! この子の名前はなんにしようかしら!?」
妊娠したと決まったわけでもないのに、アリシアはそんなことを言い出した。しかし雷神も付き合って、その名前を考えてやる。
「そう……だな。アンナ、なんてどうだ?」
「アンナね! ステキ!! 立派な男の子になりそうだわ!!」
「いや、今のはどう聞いても女の名前だと思うんだが……」
キャッキャと子どものようにはしゃぐアリシアを見て、雷神もまた微笑む。
幸せだった。こうして家族を持てることになるのだと思うと。
アリシアも、いつか生まれるであろう子どもも。
自分が幸せにしてあげよう──そう、思っていた。
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