32 / 74
コリーン編
第1話 奇跡の様な邂逅に
しおりを挟む
コリーンは、とある国の小さな村で生まれた。
その国は戦争をしていたが、コリーンの住む村ではあまり関係なく、穏やかに暮らしていた……はずだった。
コリーンが九歳になった時。
村がいきなり襲われた。
何故襲われたかなど、コリーンには分からない。ただ、両親が不当に殺され、村が燃えるのを呆然と見ていた。
村にいた多くの大人は殺された。
国の役人が来て、遺体の処理に当たっている。
コリーンは両親の形見にと、腕輪をその腕から抜き取った。対になった腕輪は、結婚の証だ。細かな装飾のなされたそれは、かなり高価な物だと聞かされていた。
コリーンはそれを握りしめて、三日三晩泣いた。
涙も枯れた頃、目の前に男が現れた。
彼は何語か分からぬ言葉で、コリーンに話し掛けてくる。コリーンが首を傾げて見せると、男は自分を指差して「ロレンツォ」と言い、しきりにコリーンを指差して何かを尋ねてくる。
「コリーン」
コリーンは、自分の名を言ってみた。ロレンツォと名乗る男は、何事か喋り、何やら黒い物体を差し出してきた。
コリーンがそれを受け取ると、男は食べる仕草をしてくる。食べろ、と促しているらしい。
これ、毒なんだろうな。
コリーンはそう思った。男は敵か味方か分からない。敵ならば殺す為に。味方ならば、両親を殺され生きる術もない少女に、死というプレゼントをしてくれようとしているのだと。
コリーンはそれを何の躊躇もせず、口に入れた。
その途端、涙が溢れそうになる。
その味は、とても、パラアンだった。
コリーンが人攫いに遭ったのは、その一年後の事だ。
子供達だけで畑仕事をし、政府からのわずかな支援金で何とか生活を送っていた時。いきなり攫われ、そして言葉も通じぬ国に連れて行かれた。
身に付けていた両親の形見の腕輪は抜き取られ、抵抗すると蹴られた。長い間、そうして馬車に揺られていた。
やがてどこかに着いた頃、コリーンは隙をついて、いかつい男二人組から逃げ出す事に成功した。しかしその先は絶望だった。形見の腕輪はなくなり、言葉も通じぬ場所で、誰も知る人のいない場所で。たった、一人。
いつ、さっきの二人組がコリーンを追ってくるか分からない。
コリーンは路地裏の目立たぬ所で震えた。震えたまま、朝を迎えた。
そんなコリーンの目の前に現れたのが、ロレンツォだった。恐らく、物凄い確率の奇跡的な邂逅だろう。
コリーンは一年前を思い出した。あの甘くて美味しい食べ物をくれた人なら、必ず助けてくれる。そう信じた。
「ロレンツォ、ロレンツォ、ロレンツォ!」
コリーンはその名を叫び続けた。知り合いだという事を、強調する為に。助けて欲しいという言葉の代わりに。
思った通り、ロレンツォはコリーンを保護してくれた。食事を用意して、寝床を用意してくれた。
こうしてコリーンとロレンツォとの共同生活は始まったのだった。
その国は戦争をしていたが、コリーンの住む村ではあまり関係なく、穏やかに暮らしていた……はずだった。
コリーンが九歳になった時。
村がいきなり襲われた。
何故襲われたかなど、コリーンには分からない。ただ、両親が不当に殺され、村が燃えるのを呆然と見ていた。
村にいた多くの大人は殺された。
国の役人が来て、遺体の処理に当たっている。
コリーンは両親の形見にと、腕輪をその腕から抜き取った。対になった腕輪は、結婚の証だ。細かな装飾のなされたそれは、かなり高価な物だと聞かされていた。
コリーンはそれを握りしめて、三日三晩泣いた。
涙も枯れた頃、目の前に男が現れた。
彼は何語か分からぬ言葉で、コリーンに話し掛けてくる。コリーンが首を傾げて見せると、男は自分を指差して「ロレンツォ」と言い、しきりにコリーンを指差して何かを尋ねてくる。
「コリーン」
コリーンは、自分の名を言ってみた。ロレンツォと名乗る男は、何事か喋り、何やら黒い物体を差し出してきた。
コリーンがそれを受け取ると、男は食べる仕草をしてくる。食べろ、と促しているらしい。
これ、毒なんだろうな。
コリーンはそう思った。男は敵か味方か分からない。敵ならば殺す為に。味方ならば、両親を殺され生きる術もない少女に、死というプレゼントをしてくれようとしているのだと。
コリーンはそれを何の躊躇もせず、口に入れた。
その途端、涙が溢れそうになる。
その味は、とても、パラアンだった。
コリーンが人攫いに遭ったのは、その一年後の事だ。
子供達だけで畑仕事をし、政府からのわずかな支援金で何とか生活を送っていた時。いきなり攫われ、そして言葉も通じぬ国に連れて行かれた。
身に付けていた両親の形見の腕輪は抜き取られ、抵抗すると蹴られた。長い間、そうして馬車に揺られていた。
やがてどこかに着いた頃、コリーンは隙をついて、いかつい男二人組から逃げ出す事に成功した。しかしその先は絶望だった。形見の腕輪はなくなり、言葉も通じぬ場所で、誰も知る人のいない場所で。たった、一人。
いつ、さっきの二人組がコリーンを追ってくるか分からない。
コリーンは路地裏の目立たぬ所で震えた。震えたまま、朝を迎えた。
そんなコリーンの目の前に現れたのが、ロレンツォだった。恐らく、物凄い確率の奇跡的な邂逅だろう。
コリーンは一年前を思い出した。あの甘くて美味しい食べ物をくれた人なら、必ず助けてくれる。そう信じた。
「ロレンツォ、ロレンツォ、ロレンツォ!」
コリーンはその名を叫び続けた。知り合いだという事を、強調する為に。助けて欲しいという言葉の代わりに。
思った通り、ロレンツォはコリーンを保護してくれた。食事を用意して、寝床を用意してくれた。
こうしてコリーンとロレンツォとの共同生活は始まったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる