3歳で捨てられた件

玲羅

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学院高等部 青学年生

冬期休暇

 無事に執行部員のプレ社交会も決まり、大きなトラブルもなく、冬期休暇を迎えた。大きなトラブルはなかったけれど、小さなトラブルはあった。執行部員にパートナーになってほしいと、生徒会執行部室に突撃されたりとか、婚約者がいるのに他の人にパートナーを申し込んで、婚約者と険悪になったとか。ハーレム、逆ハーレム状態を狙った人は居なかったけれど、それなりに対応に追われた。

 冬期休暇になると、サミュエル先生から「プレ社交会のパートナーの了解をもらいに行くからね」といわれて、タウンハウス王都フェルナー邸に一緒に行く事になった。

 本当は行きたくないのよね。カティさんはまだ居るだろうし。それに寒い時期に妊婦を移動させるのは、良くないと思うし。

「その辺の方針も聞いておかないとだね。キャシーちゃんがタウンハウス王都フェルナー邸に帰れなくなるし」

「お子様がお生まれになってからでしょうか?あちらにお移りになられるのは」

「それが妥当だと思うよ」

 一応婚約者なので、同じ馬車に乗っている。馭者のトマスがサミュエル先生を見て、なぜかウンウンと頷いた後ニッコリと丁寧に礼をしていた。

「婚約者同士の会話じゃねぇよな」

「キャスリーン様とサミュエル様は、婚約者というよりは同じこころざしの同志といった感じよね」

 ちなみにレオナルドさんとマリアさんも一緒だ。フェルナー家の馬車はそれなりに広いから、レオナルドさんの体格でも狭くは無いと思う。マリアさんの態度も、ずいぶん軟化してきたし。

 タウンハウス王都フェルナー邸まではあっという間に着く。

「到着しました」

 トマスの声がして馬車の扉が開かれる。最初に降りるのはレオナルドさんとマリアさん。タウンハウス王都フェルナー邸前だから不審者は居ないとは思うけれど、安全確認が済んでから私達が降りる事になる。

「キャシーちゃん」

「ありがとうございます」

 差し出された先生の手を取って、馬車を降りる。

「おかえりなさい、キャシーちゃん。いらっしゃいませ、ブランジット様」

「ただいま帰りました、お義母様」

 こうしてお義母様に出迎えられるのも久しぶりだ。お義母様にハグされるのも。

「お邪魔しますよ、フェルナー夫人」

 いつも通りの笑顔のお義母様だけれど、少しお疲れぎみ?原因は何となく分かる。きっとカティさん関連だろう。

「お義母様、着替えた後で、お話がございます」

「えぇ、旦那様から伺っていますよ。着替えてらっしゃい。ブランジット様は私の方でおもてなししておきますからね」

「はい。お願いいたします」

 自室で着替えていると、賑やかな声が聞こえた。カティさんだ。

「どこかにお出掛けなのかしら?」

「お散歩ですね。奥様がおすすめになられまして。ローレンス様と一緒にタウンハウス王都フェルナー邸周囲を一周する事を日課とされております」

 運動するのは良い事だと思う。体重が増えすぎるとお産が重くなるし。

 でもローレンス様お義兄様と一緒か。2人は夫婦なんだから不思議ではないけれど。

 賑やかな声が聞こえなくなってから、自室を出る。気を使って会わないようにしている訳じゃないけれど、なんとなくカティさんって苦手なのよね。

 お義母様とサミュエル先生がいるサロンに行くと、お義母様がニッコリと自分の座るソファーの空いた部分を勧めてきた。こういう場合ってサミュエル先生の隣が正解じゃ?と思いながら、お義母様の隣に座る。

「お話は伺いましたよ。プレ社交会のパートナーにブランジット様をねぇ。キャシーちゃんが希望したのよね?」

「はい」

「それなら良いのではないかしら?婚約者という立場なのだし」

 お義母様の了解は取れた。後はお義父様かしら?

「旦那様からはキャシーちゃんが希望したのなら、と言葉を預かっているわ。心配しなくて良いわよ」

「ありがとうございます、お義母様」

「……ローレンスに会っていく?」

「まずは遠くから眺めるだけにいたします。それから言葉を交わせれば」

「カティさんに対してなんだか遠慮しちゃっているのよね、あの子ローレンス。うまくいっていない訳じゃないけれど。キャシーちゃんが婚約者だった時を知っているから、もっとベタベタするのかと思っていたら」

 はぁっと大きなため息を吐くお義母様。

「カティさんの様子は?」

「相変わらずよ。男性を側で侍らせたいみたいね。私兵達に交代で警護に当たらせているのだけれど、お気に入りが何人か居るようで、オリバーが悩んでいたわ」

 お気に入り……。たぶんサイモンはその一員よね?

 30分程すると、また賑やかな声が聞こえた。

「帰ってきたようね。呼んでも良いかしら?」

 いきなり会っちゃう事になりそうだ。遠くから見て平気か確かめてって、段階を踏もうと思っていたんだけど。

「いつも呼んでいるのですか?」

「えぇ。様子観察の為にね」

 様子観察……。

 私が頷くと、お義母様が合図を出した。2人がやって来る前に席を移動する。お義母様はひとり掛けのソファーに、私はサミュエル先生の隣に。

「ローレンスです。入ってもよろしいでしょうか」

 ローレンス様お義兄様の声が聞こえた。お義母様が許可をするとローレンス様お義兄様とカティさんが入ってきた。

「あっ、キャシー先生」

「ただいま戻りましたわ。お義兄様もカティさんもお元気そうですわね。安心いたしました」

 2人で並んだ姿を見ても、思っていたほど苦しくならない。胸も痛まない。

「先生、今回はいつまで居られるの?」

「明日には別邸の方に行こうと思っておりましたが」

 少し膨らんだお腹を支えながら、カティさんが座ろうとする。

「カティ、こっちに座りなさい」

「えぇぇ、キャシー先生の隣が良い」

「そんなワガママを言うんじゃない。状況を考えなさい」

 うーん。ずいぶん厳しいなぁ。なんというか出来の悪いペットを躾ているような感じだけど。

「はぁい」

 おとなしく空いたソファーに座ったカティさんの隣に、ローレンス様お義兄様が座る。婚約者というか夫婦の距離ではない。けっこうな距離が空いている。

 カティさんが近付いたら、スッとその分の距離を開けた。

「状況を考えなさいと言ったよね?」

 なんだろう?カティさんを大切にしているように見えない。

「お義兄様、カティさんとお散歩に行っておられたのですか?」

「運動不足は良くないとウェイド先生に言われてね。屋敷内で暴れられても困るから、日に2回散歩に行っている」

 違和感が大きくなる。ローレンス様お義兄様ってこんな人だった?

 少しだけ話をして、ローレンス様お義兄様とカティさんが退出する。

「お義母様、ローレンス様お義兄様はあのようなお方でしたでしょうか?」

「昔に戻っちゃった感じね。キャシーちゃんと会う前よ」

 あぁ、氷の貴公子フロストエィル再来状態なんだ。

「それよりも今日は泊まっていくのよね?」

「その予定ですが」

「楽しみだわ」

 夕食時にはお義父様も帰ってきていて、夕食は鴨のオレンジソース掛けで、私の大好物だった。

 サミュエル先生もお義父様に話があるからと残っていたし、夕食のテーブルは和やかな時間が過ぎていった。

 カティさんの食べ方は、はっきりいって上品じゃない。大口を開けて食べるし、口に物が入ったまま話そうとするし、カトラリーはカチャカチャと音を立てて使うし。その度にお義母様とローレンス様お義兄様が注意するんだけど、それに対して不満そうにしているし。学ぶ気はあるのかしら?
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