3歳で捨てられた件

玲羅

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学院高等部 最終学年生

浮遊の魔道具

 王都に帰ってきて、少しだけのんびりした後、久しぶりに教会に顔を出した。この後救民院に行く予定だったんだけれど。

「あっ、キャシーちゃん。いらっしゃい」

「こんにちは、ララさん」

 教会の方で先にお祈りをしていたら、ララさんに見付かった。ララさんの後ろには孤児院の子だろう、女の子がピッタリとくっついている。女の子は前髪を長く伸ばしていた。

「お散歩ですか?」

「そうね。後は試運転」

「試運転?」

「ホバークラフトっていうのかしら?ゴムボートみたいな感じの魔道具?その試運転よ。風魔法で動かすらしいわ」

「ホバークラフトですか。空気を遮断する物質なんてございましたっけ?」

「有ったらしいわよ。使い所がないって廃棄されていたんだって」

「それを使えばタイヤももしかして?」

「それは無理だったみたい。重さに耐えられなかったんだって。今は耐久値を上げる研究中みたいよ」

 成り行きでララさんと一緒に、試運転場へ向かう。

「この子は?」

「ご家族がご病気でね。預かっているの。試運転に人手が欲しいから連れてきてくれって言われてね。気分転換も兼ねて」

「ご病気ですか?」

 光魔法使いのララさんがいるのに?

「まぁね」

 詳しく教えてくれないところをみると、この子の前では話せないか、それとも病気自体が虚偽なのか。

 虚偽だとしたら様々な理由が考えられるけれど、この子には聞かせられない理由の方が多いよね。

「ララお姉ちゃん、このおひめさま、だれ?」

「キャシーちゃんよ。とっても優しいの」

「こわくない?」

「キャシーちゃんが怖くなるのは、悪い人に対してだけ。悪い事をしなかったら、とっても優しいのよ」

 女の子とララさんが会話している。

「おひめさま」

 女の子が私に話しかけた。

「はい。お姫さまではないですよ。キャシーとお呼びくださいね」

「こんなにきれいなのに?」

「ふふっ、ありがとうございます」

 ちなみに、レオナルドさんとマリアさんは少し離れて歩いている。レオナルドさんは自分の姿が威圧感を与えるんじゃないかと、気にしているらしい。今年に入ってから、護衛の姿を見せた方が効果的な場合は近くにいてくれるんだけれど、教会や救民院に行く時には少し離れてくれている。

 教会から歩いて5分程で、試運転場に着いたらしい。でこぼこした所や木が植えられていたりと、いろいろな地形が見てとれる。池のような所もあるらしく、キラキラしている場所が見えた。

「ここですか?」

「えぇ。少し前からやってるのよ。目的はやっぱり『空を飛びたい』よね。この世界って飛行機って無いし」

「その他の手段もございませんからね」

 風魔法では飛行は出来ないらしいし。他者は飛ばせても術者自身は浮き上がれないらしい。私も風魔法は持っているけれど、ほとんど使っていないからその辺りはまったく分からない。マルムクヴィスト博士の著書で読んだ知識しかないのよね。

「何度か来ているのよね。今までは人が乗れば大怪我をするのは確実な物ばかりだったのよ。高く浮き上がりすぎたりとか」

「その魔道具の目的はどういったものでしょう?」

「最初は空飛ぶイカダだって言ってたの」

「イカダ、ですか」

 空飛ぶ絨毯じゃないんだ。

「アイデアは出たんだけど、作ったら派手に前転しちゃって。推進部の位置を変えたら後転したり横転したり。で、周りにぐるっと取り付けたら安定はしたんだけど、今度は速度が出なくてね。というか、速度と高度が安定しなくて、今日、やっと安定したって連絡が来たのよ」

「ララさんのアイデアですの?」

「私はホバークラフトという物があったと言っただけよ。そこからここまで持ってきたのは彼ら、魔道具士の技術者達ね」

「教会所属の魔道具士達なのですか?」

「そうよ。エドワード様も面白そうだって許可をくれてね。最初は大変だったわ。怪我人続出で」

「大丈夫だったのですか?」

「大怪我はなかったからね。お医者様に『唾を付けときゃ治りますよ』なんて言われてたわ」

 唾を付けときゃ治るというのは、唾液の持つ抗菌、殺菌作用や傷の修復を促す成分による「ある程度本当」な言い伝えだ。唾液の持つばい菌の繁殖を抑えるリゾチームなどの抗菌物質や、細胞の成長を促す『細胞増殖因子』の働きで、小さな傷の治癒を期待している。そして実際に治癒はするのよね。大きな傷には意味が無いし、細菌感染のリスクもあるから、積極的にはおすすめしないけれど。

 目の前の試運転場では、最終的な調整が済んだらしい。前世のホバークラフトとは形は違うけれど、ちゃんと浮き上がっている。高さは30cm位だけれど。

 それでもちゃんと浮き上がっている。周りにいた人から自然と拍手や歓声が上がったのは必然だと思う。

エリアントゥス太陽の花、来てくれたんですね」

 魔道具士だろう男の人が走ってきた。

「もぅっ、その言葉を出さないでって言ったでしょ?」

「すっ、すいません」

「光の聖女様の方が良かったんじゃないの?」

 ララさんがニヤニヤしながら言う。

「光の聖女様は近寄りがたいというか、我々なんか目に入りませんって」

 あなたもララさんしか目に入っていないみたいね。

「そんな事はないわよ?光の聖女様には何度もお目にかかっているけど、気さくでとても優しい方だったもの。それに要請を受けたら、いいえ、受けなくても怪我人が居ると聞いたら、真っ先に飛び出していくお方なのよ。おかげで私達は気を揉むしか出来ないんだから」

 ララさん、私に言っていますね?反省はするんですよ?後悔はしませんけれど。

 途中で気が付いたらしい女の子に、シィーとしておく。コクコクと頷いてくれた。

「どうぞ、乗ってみてください」

「あら、良いの?」

「えぇ。元々あなたが言っていた事ですから。重い荷物を楽に運びたいって。地面との接地面が少なければ摩擦も減りますから、使えると思うんです」

「体重制限とか無いの?」

「体重というか、重量は500kgまでは平気なはずです」

「レオナルドさんって、体重は何㎏?」

 突然振り向いたララさんが、レオナルドさんに聞いた。

「あぁ?俺か?83kgだな」

「ホントにぃ?」

「動くからな。以前より減ったし」

「キャシーちゃんは?」

 私にまで聞く必要があるのでしょうか?

「ナイショですわよ。身長155cmでBMI値18.7です。ご計算くださいませ」

「びーえむあいってどうやって計算するんだっけ?」

「体重÷身長の2乗ですわ」

「えっと、身長が155cmだから155×155……。そこから無理なんだけど?」

「あ、身長はメートル換算ですからね?」

「め、メートル換算?余計に無理っ。キャシーちゃぁん」

「女性に年齢と体重は聞くものではございませんでしてよ?」

「分かってますぅ」

「本当に?」

「はい……」

「お分かりになられたのならよろしいのですけれど」

「あ、マリアさんの体重は?」

「お答えいたしかねます」

 分かってないようですねぇ。わざとらしくため息を吐いてみたんだけれど、ララさんは気付かないようで地面に数字を書いて計算していた。

「えっと、レオナルドさんが83kgでミリィちゃんが12㎏、私が……㎏で、っと、えぇっと……キャシーちゃんとマリアさんを足しても100kgはいかないわよね?だから……っと……。あれ?キャシーちゃん、合ってる?」

「全員足しても250kgはいかないのではないかと」

「さすがキャシーちゃん。計算が早いわね」

「ご自分の体重は誤魔化されましたね?」

「うっ……。それを言われると……」

「怒ってはおりませんでしてよ。それに衣服の重量も加算して、やっぱり250kg位ですわね。今は夏ですし」

「そっか。夏と冬じゃ衣服の重さが違うもんね」

それより私は女の子ミリィちゃんの体重が12㎏というのが気になるんだけれど。この子って何歳?




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