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学院高等部 最終学年生
引き渡し
「あ、忘れてた。この子はミリィって言うの。もうすぐ6歳って聞いてるわ」
「6歳?」
6歳にしては小さすぎる。もしかして私と同じ境遇なのだろうか?
「ミリィ、行きましょ。みんなも一緒にね。レオナルドさんもマリアさんもよ」
全員で仮称ホバークラフトの所まで歩いていく。途中でミリィちゃんが躓いて転倒しかけて、レオナルドさんが肩車をしていた。
ミリィちゃんも最初は遠慮してたんだけど、レオナルドに慣れたようで着く頃には表情が明るくなった。
体重の都合上、レオナルドさんが真ん中に座る。その前に私とララさんとマリアさんとミリィちゃん。レオナルドさんの後ろに魔道具士3人が座った。
「それではいきますよ」
魔道具士が操作をすると、『ごおぉぉおぉぉぉ』という爆音が轟いた。とっさに耳を覆う。周りを見ると、全員が耳を塞いでいた。
「この音っ!!、改善したんじゃっ!!、なかったのっ!?」
ララさんが叫んでいる。
「無理だったっ!!あははっ」
「笑ってんじゃないわよぉっ!!」
「あはははは……っ」
これって遮音結界でなんとかなるわよね?範囲は仮称ホバークラフトの人が乗っている部分。完全に音を遮断するんじゃなく、少しだけ音を通すように緩く張る。
「キャシーちゃん、何かした?」
音が小さくなったのに気付いたらしいララさんに聞かれた。
「緩く遮音結界を」
「簡単に言うわねぇ」
全員が耳から手を外す。
「音はやはり問題だな」
「前後左右は安定しているようだが」
魔道具士達が後ろで話し合っている。その間に仮称ホバークラフトに取り付けた紐を外にいた人達が引っ張って、コースを進み始めた。
「スゴい。滑らかに動くわねぇ」
「ララお姉ちゃん……」
「大丈夫よ。私もいるんだから。くっついていなさいね」
ミリィちゃんが不安そうにしている。小さな手でギュッとララさんの服を握っているのが見えた。
仮称ホバークラフトは水の上も泥だらけの場所も瓦礫だらけの場所も、問題なく安定して通り抜けた。紐を引いていた人達はスゴい有り様だけれど。風圧での泥跳ねで、腰から足元までドロドロだ。
「なかなか問題が多いな」
「これらを解決するのが快感なんだよなぁ」
私達が仮称ホバークラフトから降りる間にも、魔道具士達は賑やかに話し合っていた。
そういえば聖国にはファルマメントバトゥという飛行船があるのよね?風の魔結晶と火の魔晶石を使うって聞いたけれど。参照には出来ないのかしら?
「知っていますよ。でもあれは内部構造が開示されていませんので。我々はこういった物の開発から始めているんですよ」
近くにいた魔道具士に聞いたら、そんな答えが返ってきた。そうなんだ。
「おひめさま」
ミリィちゃんに服をツンツンと引っ張られて、我に返る。
「どうしました?ミリィちゃん」
「あのね、ララお姉ちゃんが呼んでるの」
「あぁ、ごめんなさい。行きましょうか」
私が立ち止まっていたから、ララさんが呼んでくれたらしい。レオナルドさんとマリアさんも待ってくれていた。
「申し訳ございません。お待たせいたしました」
「何か考えていたわね」
「はい。少し」
「無理はしていないわね?」
「しておりませんでしてよ」
「それならいいけど。戻りましょ。キャシーちゃんはミリアディス様にご用かしら?」
「顔は見せにまいりますが、すぐに救民院に行こうと思っていたのですが」
「分かった。じゃあ、キャシーちゃんはミリアディス様に会いに行ってきて。その間にこっちの準備をするわ」
「こっちの準備?」
「いいから行ってきて。レオナルドさん、マリアさん、お願いします」
2人は知っているようだ。何なのかしら?
ミリアディス様に顔を見せると、着替えるように言われた。いつものパンツ姿だったんだけど、白く長いワンピースにギンプと呼ばれる肩や胸を覆う布、それに花嫁のようなマリアベールを付けられた。
「ミリアディス様、これって……」
「今日いらっしゃる事は分かっていたから、用意していたのよ。光の聖女様風のお衣装。どうかしら?気に入ってもらえたかしら?」
気に入ってもらえたもなにも、なにがなんだか分からないのですが。
「奥様、光の聖女様は戸惑っておられるようです」
「そうねぇ。あ、ダメよ。ここでは副神官長でしょう?」
「失礼いたしました。副神官長様」
「よろしい」
侍女との茶番の後、ミリアディス様が私に向き直る。
「キャスリーン様のお屋敷、あるでしょう?侍女や使用人達の教育が終わったの。だからお披露目したくって。そのお衣装は聖国に連絡を取って、許可をいただいてこちらで仕立てた物よ」
「ウィンプルではないのですね」
「違うのよ。『ウィンプルは神に仕える者が着ける物だから、聖女様には相応しくありません』って言われちゃったわ」
ミリアディス様と一緒に外に出る。いつの間にかサミュエル先生が待っていた。
「やぁ、似合うねぇ」
「先生もご存じでしたの?」
「一応婚約者だからね」
略式ではあるものの、きっちりした高位神官風の格好をしたサミュエル先生の腕に手をかける。
エスコートされて私用だと言われたお屋敷に着くと、お屋敷の前に何人もの人が待っていた。その中にリーサさんとララさんがいた。
「ララさん、リーサさん」
「似合うわねぇ」
「スゴーい」
エドワード様が教会枢密院長の格好で現れた。ミリアディス様がその隣に並ぶ。
「ここは今日からフェルナー嬢の物だよ」
「ありがとうございます」
「本当はちゃんとした式典をしようと思ったんだけどね」
「エド様、それはキャスリーン様がご遠慮なさるのでは?と申し上げたではありませんか」
「妻がこう言うのでね」
「ま、私の所為になさいますの?」
「そんな事はないよ。聡明な奥様で嬉しい限りです」
「うふふふふ」
えっと、惚気ですか?
「エドワード、さっさと鍵を渡したらどうだい?みんなも待ちきれないと思うよ」
「すみません、サミィ兄様」
手のひらより一回り小さい鍵が手渡された。キーヘッドがクローバーのような形の、キーブレードが付いた昔ながらのウォード錠の鍵だ。
「それはダミーだからね。ちゃんとした鍵を後で設定するよ」
サミュエル先生に囁かれた。
「設定?」
いやまぁ、こんなに大きい鍵が実用的な物とは思っていませんでしたけど。もしかして魔法錠でしょうか。
最初から開錠しているドアを開けると、揃いの執事服とメイド服を着た6人が、一斉に礼をして私を出迎えた。
「彼らは家令と執事と従僕と侍女とメイド2人だね。もちろんこの他にも下働きの者が居るよ」
その中のひとりに非常に見覚えがあるんですが。
「何をやっているんですか?メアリー・ターナー先輩」
「うふふ。秘密にするの大変だったのよ。私はここの侍女頭、かしらね。使用人のトップはリーサ様よ」
家政婦長と侍女頭って同じ意味なんだけど。役割を分けているのかしら?
「様は止めてと言ったのに。ターナー様って呼ぶわよ?」
「それはやめてぇ」
2人で笑いあっている。仲良しのようね。
「今は居ないけど、侍女は後2人、メイドは7人居るよ。ハウスメイド2人、キッチンメイド2人、ランドリーメイド3人だね。それから見習いとして孤児院の子達も短時間で働きに来るよ」
「え?あの子達も?」
「ちゃんと賃金も出すし、勉強の時間も取る。窮民院の女性達にもいずれは役割を持ってもらおうと思っている」
私の屋敷が雇用促進に使われるという訳ね。それはとても嬉しい。私を利用してはいるけれど、利用する事で雇用場所が出来るなら、少しでも救いたいというのは傲慢な考えだろうか。
「6歳?」
6歳にしては小さすぎる。もしかして私と同じ境遇なのだろうか?
「ミリィ、行きましょ。みんなも一緒にね。レオナルドさんもマリアさんもよ」
全員で仮称ホバークラフトの所まで歩いていく。途中でミリィちゃんが躓いて転倒しかけて、レオナルドさんが肩車をしていた。
ミリィちゃんも最初は遠慮してたんだけど、レオナルドに慣れたようで着く頃には表情が明るくなった。
体重の都合上、レオナルドさんが真ん中に座る。その前に私とララさんとマリアさんとミリィちゃん。レオナルドさんの後ろに魔道具士3人が座った。
「それではいきますよ」
魔道具士が操作をすると、『ごおぉぉおぉぉぉ』という爆音が轟いた。とっさに耳を覆う。周りを見ると、全員が耳を塞いでいた。
「この音っ!!、改善したんじゃっ!!、なかったのっ!?」
ララさんが叫んでいる。
「無理だったっ!!あははっ」
「笑ってんじゃないわよぉっ!!」
「あはははは……っ」
これって遮音結界でなんとかなるわよね?範囲は仮称ホバークラフトの人が乗っている部分。完全に音を遮断するんじゃなく、少しだけ音を通すように緩く張る。
「キャシーちゃん、何かした?」
音が小さくなったのに気付いたらしいララさんに聞かれた。
「緩く遮音結界を」
「簡単に言うわねぇ」
全員が耳から手を外す。
「音はやはり問題だな」
「前後左右は安定しているようだが」
魔道具士達が後ろで話し合っている。その間に仮称ホバークラフトに取り付けた紐を外にいた人達が引っ張って、コースを進み始めた。
「スゴい。滑らかに動くわねぇ」
「ララお姉ちゃん……」
「大丈夫よ。私もいるんだから。くっついていなさいね」
ミリィちゃんが不安そうにしている。小さな手でギュッとララさんの服を握っているのが見えた。
仮称ホバークラフトは水の上も泥だらけの場所も瓦礫だらけの場所も、問題なく安定して通り抜けた。紐を引いていた人達はスゴい有り様だけれど。風圧での泥跳ねで、腰から足元までドロドロだ。
「なかなか問題が多いな」
「これらを解決するのが快感なんだよなぁ」
私達が仮称ホバークラフトから降りる間にも、魔道具士達は賑やかに話し合っていた。
そういえば聖国にはファルマメントバトゥという飛行船があるのよね?風の魔結晶と火の魔晶石を使うって聞いたけれど。参照には出来ないのかしら?
「知っていますよ。でもあれは内部構造が開示されていませんので。我々はこういった物の開発から始めているんですよ」
近くにいた魔道具士に聞いたら、そんな答えが返ってきた。そうなんだ。
「おひめさま」
ミリィちゃんに服をツンツンと引っ張られて、我に返る。
「どうしました?ミリィちゃん」
「あのね、ララお姉ちゃんが呼んでるの」
「あぁ、ごめんなさい。行きましょうか」
私が立ち止まっていたから、ララさんが呼んでくれたらしい。レオナルドさんとマリアさんも待ってくれていた。
「申し訳ございません。お待たせいたしました」
「何か考えていたわね」
「はい。少し」
「無理はしていないわね?」
「しておりませんでしてよ」
「それならいいけど。戻りましょ。キャシーちゃんはミリアディス様にご用かしら?」
「顔は見せにまいりますが、すぐに救民院に行こうと思っていたのですが」
「分かった。じゃあ、キャシーちゃんはミリアディス様に会いに行ってきて。その間にこっちの準備をするわ」
「こっちの準備?」
「いいから行ってきて。レオナルドさん、マリアさん、お願いします」
2人は知っているようだ。何なのかしら?
ミリアディス様に顔を見せると、着替えるように言われた。いつものパンツ姿だったんだけど、白く長いワンピースにギンプと呼ばれる肩や胸を覆う布、それに花嫁のようなマリアベールを付けられた。
「ミリアディス様、これって……」
「今日いらっしゃる事は分かっていたから、用意していたのよ。光の聖女様風のお衣装。どうかしら?気に入ってもらえたかしら?」
気に入ってもらえたもなにも、なにがなんだか分からないのですが。
「奥様、光の聖女様は戸惑っておられるようです」
「そうねぇ。あ、ダメよ。ここでは副神官長でしょう?」
「失礼いたしました。副神官長様」
「よろしい」
侍女との茶番の後、ミリアディス様が私に向き直る。
「キャスリーン様のお屋敷、あるでしょう?侍女や使用人達の教育が終わったの。だからお披露目したくって。そのお衣装は聖国に連絡を取って、許可をいただいてこちらで仕立てた物よ」
「ウィンプルではないのですね」
「違うのよ。『ウィンプルは神に仕える者が着ける物だから、聖女様には相応しくありません』って言われちゃったわ」
ミリアディス様と一緒に外に出る。いつの間にかサミュエル先生が待っていた。
「やぁ、似合うねぇ」
「先生もご存じでしたの?」
「一応婚約者だからね」
略式ではあるものの、きっちりした高位神官風の格好をしたサミュエル先生の腕に手をかける。
エスコートされて私用だと言われたお屋敷に着くと、お屋敷の前に何人もの人が待っていた。その中にリーサさんとララさんがいた。
「ララさん、リーサさん」
「似合うわねぇ」
「スゴーい」
エドワード様が教会枢密院長の格好で現れた。ミリアディス様がその隣に並ぶ。
「ここは今日からフェルナー嬢の物だよ」
「ありがとうございます」
「本当はちゃんとした式典をしようと思ったんだけどね」
「エド様、それはキャスリーン様がご遠慮なさるのでは?と申し上げたではありませんか」
「妻がこう言うのでね」
「ま、私の所為になさいますの?」
「そんな事はないよ。聡明な奥様で嬉しい限りです」
「うふふふふ」
えっと、惚気ですか?
「エドワード、さっさと鍵を渡したらどうだい?みんなも待ちきれないと思うよ」
「すみません、サミィ兄様」
手のひらより一回り小さい鍵が手渡された。キーヘッドがクローバーのような形の、キーブレードが付いた昔ながらのウォード錠の鍵だ。
「それはダミーだからね。ちゃんとした鍵を後で設定するよ」
サミュエル先生に囁かれた。
「設定?」
いやまぁ、こんなに大きい鍵が実用的な物とは思っていませんでしたけど。もしかして魔法錠でしょうか。
最初から開錠しているドアを開けると、揃いの執事服とメイド服を着た6人が、一斉に礼をして私を出迎えた。
「彼らは家令と執事と従僕と侍女とメイド2人だね。もちろんこの他にも下働きの者が居るよ」
その中のひとりに非常に見覚えがあるんですが。
「何をやっているんですか?メアリー・ターナー先輩」
「うふふ。秘密にするの大変だったのよ。私はここの侍女頭、かしらね。使用人のトップはリーサ様よ」
家政婦長と侍女頭って同じ意味なんだけど。役割を分けているのかしら?
「様は止めてと言ったのに。ターナー様って呼ぶわよ?」
「それはやめてぇ」
2人で笑いあっている。仲良しのようね。
「今は居ないけど、侍女は後2人、メイドは7人居るよ。ハウスメイド2人、キッチンメイド2人、ランドリーメイド3人だね。それから見習いとして孤児院の子達も短時間で働きに来るよ」
「え?あの子達も?」
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